斎藤義龍の野望   作:侍魂

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壱の巻 義龍と半兵衛

 

「……」

 

目の前を見ると防具を着けた同い年ぐらいの少年が気絶していた。

 

「一本! ???君の勝ち!!」

 

「わあぁ!!!」

 

審判の判定により俺の勝ちで終わる。

高校の剣道の全国大会で優勝したからか観客の歓声が凄い。だが俺の心の中はまるで雨が降ってるような気分だ。やっぱりこの世界で俺の力は強すぎるのかと疑問に思うもし俺が違う世界に……あいつが好きな戦国時代に生まれたら……

 

「馬鹿馬鹿しいな……」

 

 そう心の中で悪態をつくと突然目の前が真っ白になる。そして気がつくと身体が小さくなっていた。

 

「殿元気な赤ん坊ですね」

 

「うむ。ご苦労であったな」

 

苦しそうな顔をした女性の胸には赤ちゃんの俺が優しく抱えられ威厳があり怖そうな男の人に見せる。

赤ちゃんの……俺……? 

 

(戦国時代に行きたいと言ったけど……赤ん坊かよ!?)

「おぎゃおぎゃ!!」

 

大きい鳴き声を上げながら俺の意識が途切れた。この時の俺は知らなかったがどうやら俺は転生したようだ……転生先はあいつも好きだった戦国時代……その中でも油売りの商人から下剋上を成し遂げた美濃の戦国大名……斎藤道三……その息子……斎藤義龍として……

 

 

 

    <<斎藤義龍の野望>>

 

 

 

数年後・・・

 

「戦国時代……でも可笑しな世界だよな……」

 

 転生してから数年の年月が経つ……刀を腰に差しながら心の中で呟く。

俺は忍を使い周辺の情報を調べさせると驚くべき事を知る。なんと未来で知る戦国武将たちが女の子になっていた。この国の近隣だと甲斐の虎武田信玄に東海一の弓取り今川義元か……親父殿の家臣に聞くと今流行の姫武将と呼ばれているらしい。俺は戦国時代に転生したと思っていたが……どうやら戦国時代と似たパラレルワールドへ異世界転生したようだ。

 

「若様!!」

 

「ああ。今行く」

 

親父殿の家臣に呼ばれ訓練所に向かう。

 

「やい! へっぽこ侍!」

 

「くすん、くすん。や、やめて……い、いぢめないでください」

 

「書物ばかり読んでるから弱いんだよ! 武将なら腕っぷしが大事だぜ!」

 

「佐々木元太様! 流石です」

 

目の前には俺より少し下ぐらいの陰陽師風の服を着た銀髪で小柄な少女が親父殿の家臣たちに囲まれて虐められていた。

 

「あいつは誰なんだ?」

 

俺はあの子の事が気になり親父殿の家臣に問いかける。

 

「あれは佐々木元太です! 最近実力をつけてきたものです」

 

「違うそいつじゃない……まずいな」

 

「若様!?」

 

俺は嫌な予感がしたから地面を蹴り駆け出す。

 

「侍たるもの若様みたいに腕っぷしが強くないとな」

 

「虐めないで!!」

 

「我が名は前鬼。主を虐めた罪、貴様ら万事に値する。こーん」

 

少女は胸元から取り出したお札から狐型の式神前鬼を呼び出し虐めていた元太やその考えに同調していた周りの家臣たちを攻撃させる。

 

「おいおい物の怪を呼び出して襲わせるのは流石にやり過ぎじゃねえのか?」

 

 俺は少女が召喚した前鬼の攻撃を刀を鞘に納めたまま受け止めた。

 

「ご、ごめんなさい……くすん、くすん、い、ぢめないでくだ、さい」

 

 虐められてたからなのか元の性格からなのか分からないが身体を抱きしめて震える少女。多分両方なんだろうな……

 

「大丈夫」

 

 俺は女の子を安心させるように微笑み近づくと前鬼が女の子を守ろうと立ちはだかる。

 

「主に近づかないで頂きたい……何!?」

 

「邪魔だ」

 

俺は主人を守ろうと立つ前鬼を軽く投げ飛ばし少女の頭にそっと手を乗せる。

 

「ごめんなうちの家臣が失礼な事をして」 

 

「い、いえ私がいけないのです書物ばかり読んでるうつけですから」

 

「そうだぜ若様! 侍たるもの力が必要です! 若様みたいに腕っぷしが強かったら俺たちも絡まないですし!」

 

「そうだ!そうだ!」

 

「うっうっ」

 

元太の言葉に家臣たちは頷き同調した。そんな様子を見た少女は余計に泣き出してしまう。

 

「書物を読んでるからうつけね……俺には難しい書物なんか読めねえけどな。スーウ」

 

俺は深呼吸し息を整えると腰に差してある刀を鞘から抜き思い切り地面に叩きつけ地面に穴を開ける。

 

「確かにこの戦国乱世……俺みたいに力が必要だ……」

 

泣きながら俯く少女を見ながら俺は答える

 

「でもなこの日の本を……天下を納めたかったら力だけじゃなくこの女の子のように知力も必要だ!!」

 

少女は大きく目を開く。

 

「武力知力だけじゃない他の全てを備えた奴が……この日の本を治める天下人の大器になる……でもな……それは俺一人の力じゃ無理だ……支えてくれる家臣たちがいる……」

 

家臣たちは黙って俺の言葉を聞いていた。泣いていた女の子は俺の言葉に何かを感じたのか涙を引っ込め俺の瞳を見つめる。

 

「もしお前が俺と戦場で戦う事になったらどうする?」

 

 俺は元太に問いかけると自信満々で答える。

 

「勿論武士たる者正々堂々若様と戦います」

 

「そうか。キミならどうする?」

 

 俺は少女にも問いかけると先程のオドオドした様子では無くはっきりと自身の考えを伝える。

 

「わ、私は若様とは戦いません。私の知識を使い様々策を考え若様とは絶対に戦わないよう兵を動かします!」

 

「そうか」

 

「一騎打ちをせぬとはなんて卑怯な」

 

 少女の言葉を聞いた元太は無論他の家臣達も蔑む。だが俺の心は晴れやかで少女の考えに惚れた。

 

「ああ。卑怯だな。でもな……それがこの乱世を生き残る為に必要な判断だ。お前名は?」

 

「は、べい」

 

「小さい! もっと堂々と大きな声で!!」

 

「竹中半兵衛です!!」

 

「は?」

 

竹中……半兵衛? 半兵衛かよ!? あの天下人豊臣秀吉を支えた天才軍師……おいおい良晴!! 半兵衛が女の子って話聞いてないぞ!?

落ち着け俺……俺なら出来る深呼吸だ……前世で何度も叩き込まれた呼吸法。

そうだな。この世界ならありえるよな……

 

「あのう……若様?」

 

「ああ……竹中半兵衛……お前……俺の家臣にならないか?」

 

「へ?」

 

「俺はお前の全てが欲しい」

 

「ひゃう// 私の全て//ごめんなさい!!」

 

「あれ? なんか選択間違えたか?」

 

半兵衛は顔を赤らめると頭を下げ慌てて訓練所から逃げていく。

 

「あのうつけめ若様に何と失礼な態度」

 

「しかし若様が初めて自分の家臣に仕官させたいと言うとはあの女子そこまでの才能が……」

 

道三の家臣たちは最初は半兵衛の失礼な態度に怒りをあらわにしていたが、義龍が初めて家臣にしたいと言う武将がいた事に驚きそれ程の才能が半兵衛にあるのかと考えている。

 

稲葉山城・・・

 

 織田信長が名付けた未来の岐阜城であり俺が生まれた場所。難攻不落の稲葉山城と呼ばれている。

目の前にはこの美濃の国を治める大名……俺の父親である斎藤道三が座っている。

 

「親父殿頼みがあります」

 

「義龍お主がワシに頼みとは珍しいの言ってみなさい」

 

「今日訓練所で書物を読む女の子がいました」

 

「そうか、半兵衛とな。それでお主はあの子をどう思う?」

 

「俺はあの子を……竹中半兵衛を家臣に迎えたい」

 

「ほう。しかし奴は武芸はからっきしじゃぞ? 噂では書物に魅入られたうつけものと聞くが」

 

「はい。でも半兵衛には優れた知識があります。あの子は必ず美濃一いや、日の本一の天才軍師になると思います」

 

「日の本一とは大きく出たな……だがそこに気づくとは流石じゃ。あの子はこのワシを遙かに超える程の天才軍師じゃ……そしてワシは密かにあの子を<臥竜>と呼んでいる」

 

竹中半兵衛……美濃のマムシと呼ばれる親父殿をも遙かに超える……それにあの戦国マニアの良晴も言ってたが凄い才覚だな。確かゲームではアイテム補正無しで98だったか? 学校終わりによくゲームに付き合わせられた悪友の言葉を思い出しながら苦笑いする。

 

「そして美濃の竹中半兵衛<臥竜>以外にもこの日の本には天才軍師が潜んでいる。播磨に潜む」

 

「播磨……黒田官兵衛ですね」

 

「何故その事を知っている!?」

 

「人は城、人は石垣、人は掘り、情けは味方、敵は敵なり」

 

「その言葉は武田の」

 

「はい。甲斐の虎武田信玄の言葉で戦に勝つために大切な事は頑丈な城ではなく俺たちが従える家臣や民たちです……なので忍に調べさせました」

 

「流石じゃな」

 

 未来の知識から知っているが、それらしい理由を言うと納得したのか、親父殿は納得する。

 

「お主の好きにすると良い」

 

「では親父殿よろしいですか?」

 

「ああ、だが半兵衛はそう簡単には頷かぬぞ……義理堅い子じゃからの、一度主君と決めたワシを裏切る様な真似はせぬ」

 

「知ってます。あの子の瞳を見た時からそう感じてた。だけど口説き落とします」

 

「まさかお主がそこまで惚れ込むとはな。よかろう、もし義龍が半兵衛を説得する事が出来たなら半兵衛をお主の家臣にする事を許そう」

 

「感謝します、親父殿」

 

俺は親父殿に深く頭を下げ半兵衛が住む居城、菩提山城に馬を走らせる。

 

 

 

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