半兵衛の信頼を勝ち取る為に一緒に暮らす事にした。
「半兵衛食事作ったぞ」
「若様!? ごめんなさい! わ、私が作ろうと思ったのですが……」
「気にするな。食事ぐらいオレが作るよ」
朝食と夜食の用意をすると半兵衛は顔を青ざめさせて申し訳なさそうにするので慰める。
「半兵衛布団暖めておいたぞ」
「若様!?」
夜になると布団の中に入り温めて置く。
風呂場・・・
「若様……」
目の前には衣服を脱ぎ、白く細い見る者の視線を奪う綺麗な身体をした銀髪の美少女がいたのであった。
「お背中流しましょう//……これは無いな……悪いすぐ出る……半兵衛?」
豊臣秀吉が半兵衛調略に行った行動を真似たけどやっぱり二つ目は可笑しいよな……特に最後の変態的行動。流石に半兵衛みたいな美少女と風呂に入るのは俺も恥ずかしいし……さっさと出よう。
「若様……!? ……!? きゃぁぁ//」
「若様まさか主に邪な考えを見せるとは……見損ないましたぞ」
「主の危機だ!!」
羞恥心で顔を赤らめた半兵衛はポーチから取り出したお札を乱舞して沢山の式神たちを召喚すると前鬼は勿論他の式神たちも主に対しての振る舞いに怒り牙を向く。
「悪い半兵衛すぐ出るから! って物の怪お前らそんなにいたのかよ! 多いな!?」
「若様。物の怪とは酷いぞ!」
「我らを愚弄するとはますます許さん!!」
「危ねえ!」
慌てて式神たちの追撃を受け止めると自身の衣服を持って外に逃げていく。
流石に今回は自分に非があるので反撃はしなかった。逃走劇は朝方まで行われたのである。
半兵衛と暮らすようになってしばらくの月日が過ぎていった……
「龍君の作ってくれたご飯凄く美味しいです!」
美味しそうに鯉の天ぷらを口に運ぶ半兵衛。未来の料理で再現出来そうな物を再現して何度か作るとどうやら気に入ってくれたようだ。
「嬉しいよ。一杯作ったから沢山食べてくれ」
「ありがとうございます! 私龍君の作ってくれた手料理大好きです。出来たらその……毎日食べたいなと」
「何か言ったか?」
「いいえ//何でもないです!!」
半兵衛が何かを言ったみたいだけど声が小さくて聞こえなかった。
最初は主君の息子の俺に遠慮して余所余所しい態度だった彼女も今では俺の事を龍君と呼んでくれるようまでなり親しくなった。
「龍君」
「どうした?」
「龍君に聞きたいことがあって……私と初めて出会った時私や佐々木殿がもし龍君と戦になったらどうするって」
「おう言ったな。それがどうしたんだ?」
「はい。もし私が軍師として戦場に出陣して策を練り龍君を戦わせないようにしたらどうしますか?」
「半兵衛が策を使ってか……ならその策を力でねじ伏せるかな」
半兵衛のように軍略の才能がない俺なら必ず突撃して戦わなければいけない状況を作ると思う
「えっ……クスクス」
半兵衛は俺の可笑しな考えに目を点にさせると口を抑えながら楽しそうに笑う。
「半兵衛?」
「ごめんなさい……やっぱり龍君なんだと思って……」(お馬鹿さんだけど強く優しい龍君……不義理かも知れないけどやっぱり私は貴方を)
俺と半兵衛はその後別れる。俺は鍛錬と風呂を沸かす為に必要な薪割り。半兵衛は部屋で書物を読む。
「ふう~こんなもんか」
「きゃぁ!!」
「あの悲鳴は半兵衛!? 」
薪割りが終わったので一息吐くと悲鳴が聞こえる。
俺が駆けつけると目の前では忍が半兵衛を抱えて行く現場を目撃した。
「半兵衛!? 鏡栗毛!! 頼む!」
俺の声を聞き遠くから鏡栗毛が駆け寄ると俺は飛び乗り風のように走らせる。
「追いついた……」
鏡栗毛が頑張って走ってくれたお陰で忍に追いつく。忍は華麗に木と木の上の枝を素早く飛びながら移動していた。
「俺の斬撃なら届くか……いや……届かせる!! 頼むぞ」
木を避けながら素早く走る鏡栗毛木を信じ目を閉じて深く息を吸い、息をゆっくり吐いて呼吸を整えながら刀を握る。
「覇王御剣流……二の太刀……飛竜一閃!!」
「きゃぁ!!」
刀を鞘から勢いよく抜き横から振ると斬撃を放ち遠くを走る忍を切り裂く。
切られた忍は半兵衛と一緒に木の上から落下していく。
「大丈夫か?」
「龍君ありがとうございます」
鏡栗毛が走るスピードを一気に上げて追いつくと落下してくる半兵衛をお姫様抱っこで受け止めた。
「おう。怪我は無いか?」
「はい! あのう……もう下ろしてもらっても……いえやっぱりこのままで//」
「何処か怪我したのか?」
「……すいません実は脚を捻ってしまって……」
「じゃあこのまま城に戻ろうぜ」
「はい……お願いします//」
半兵衛は怖かったのか俺を抱きしめる腕に力を入れ抱きつく。
陽が暮れ始めた頃・・・
屋敷の中では義龍と忍衣装を纏った水色の少女が密談をしている。
「百……誰が半兵衛を攫うために忍を雇ったか分かったか?」
「はい義龍様……依頼の主は佐々木元太です」
「やっぱそうか……」
半兵衛と初めて出会った時元太は異常に敵意を半兵衛に向けていたので予想が出来ていた。
「俺の家臣に舐めた事を。分かったありがとうな」
「はっ! またご用があればなんなりと」
半兵衛を攫おうとした元太に激しい怒りを覚えるが抑え水色髪の少女に礼を言うと影に消える。
「半兵衛後は任せろ」
すやすやと眠る半兵衛の寝顔を眺めると屋敷を出ていく。
「龍君……」
話を聞いていた半兵衛は目を開けると城にいる父親の元に向かう。
「父上!」
「なんだ半兵衛こんな遅くに」
「ごめんなさい。でも私龍君に……義龍様に仕えお側で支えたいと思うので伝えに来ました」
「ほう。だがお前が嫌う道三様に対して不義理を働く事になるぞ?」
「はい。しかし義龍様はうつけだと評判があった私の知識を買い今日まで心から私の信頼を勝ち取ろうとしてくれました。そんなお方の信頼を裏切る事こそ不義理です!」
重元の言葉に一瞬顔を暗くする半兵衛だが……今は何の迷いも無く力強く自信満々に言い放つ。
「そうか若様はお前が側で支えたいと思える程の……それ程の男なのか?」
「はい! 龍君は必ずこの日の本一の猛将になると思います」
「日の本一か……お前が言うならばそうなのだろうな。持っていけ」
重元は刀掛けに飾ってある刀を持つと半兵衛に渡す。
「その刀は竹中家の家宝……虎御前」
「いかにも。父上から受け継いだ大切な我が家の家宝だ。次の世代に受け継がせろ」
「次の世代……!? っ//私と龍君はそんな関係では」
「俺は若様とは一言も言ってないぞ。好きなんだろうあの少年が」
「……はい// 私はお馬鹿で優しい龍君の事が好きです」
「じゃあ行ってこい半兵衛! 元気でな」
「今まで本当にありがとうございました。お父さんもお元気で」
半兵衛は虎御前を大事そうに持つと義龍が向かったとされる稲葉山城に小馬を走らせる。
「まさかあのおめんこな半兵衛がな……若様……いや、義龍……半兵衛を泣かしたら例え当主になろうと絶対に許さねえからな」
重元は走り去る半兵衛の後ろ姿を見続けまるで花嫁を見送る父親のようであった。
「急がないと……ごめんねお馬さん急いで」
臆病な性格からか気性の荒い大きな馬には乗れない半兵衛は大人しい小さな馬に乗り急ぐが小柄なので余りスピードが出ない。
「その速さでは義龍様には追いつかない」
「貴方は……元太殿の差し金ですか?」
突然闇から現れた水色の髪をした忍衣装を纏った少女に警戒して札を持ち構える半兵衛。
「違う……私は百地三太夫。義龍様に仕える忍」
「龍君の……お願いします! 私を龍君の元に連れて行ってください!!」
「そのつもり」
三太夫は半兵衛を抱えると消える。
視点は変わり稲葉山城に着いた義龍・・・
「ここが元太の屋敷か……」
黒幕である佐々木元太の住む屋敷に着くとノックをすると元太が現れる。
「……!? これは若様! こんな時間に何のようですかな?」
「遅くに悪いな……用事は……忍に依頼して半兵衛を攫おうとしたお前が一番分かるだろう?」
「何を言ってるのか分かりませんな」
目的を伝えると顔を青くしながらも言い逃れをしようとする。
まあそうなることは分かってたけどな。
「証拠はここにある」
「何故それを!?」
「忍が言ってたけどお前の屋敷にあったようだぞ」
半兵衛を攫うように忍に依頼した密書。それには佐々木元太の名が書かれていた。
「何で半兵衛を襲わせた?」
「許せなかったからです……あのうつけが若様の家臣になれるなど……」
証拠を突き出され観念した元太は動機を語り出す。
「そうか。でもな俺やお前にはない才能を半兵衛は持っている」
「納得が出来ません」
「だったら俺と決闘しろ……武士なら力が全てなんだろう? 俺が勝ったら二度と半兵衛に手を出すなよ」
「分かりました。私が勝てば半兵衛の処分を」
俺と元太は外に出ると互いに近づいて行き後ろに一歩下がる……そして元太が刀を抜き斬りかかる。
カキンッ!!
鞘から剣を抜き一撃を防ぐ。
「竹中半兵衛が許せない……私は!! 若様の剣術に憧れて鍛えてました!! それなのにうつけが横から若様の評価をかっぱらっていったんです」
元太は激しい怒りと憎しみを刀に込めてぶつける。俺はその一太刀一太刀を刀で受け止める。その気持ちを俺が避けてはいけないと思ったからだ。
「はぁ、はぁ……龍君!!」
「半兵衛何でここに!?」
息を切らしながら半兵衛が走って来た。
「ごめんなさい……龍君と百地三太夫さんの話し聞いてました」
「そうか百が連れて来てくれたんだな」
半兵衛の話に納得すると視線を戻す。
「うつけ!! よくも顔を出せたな!!」
宿敵の顔を見た元太は激情を向ける。
「書物ばかり見てごめんなさい……でも私を評価してくれた龍君を……義龍様をお側で支えていきたいんです」
半兵衛が謝罪して義龍を支えたいと言うと元太は叫び声を上げて怒る。何故ならいま彼が一番聞きたくない言葉だからだ。
「貴様!!」
激しい怒りを込め刀を半兵衛に振り下ろす。
「覇王御剣流・・・一の太刀・・・虎切り!」
カキンッ!!
振られた刀に強力な一撃を当て叩き折り剣先を元太に向ける。
「元太……俺も半兵衛と同じ気持ちだ。前に言ったよな戦は正々堂々じゃ勝てえねえって……俺にはこの子が軍師として必要なんだ……もしこのまま半兵衛を斬るなら俺がその前にお前を斬らないといけなくなるぞ」
「若様……それ程までにその竹中半兵衛を……」
「ああ。この子はこの日の本一の軍師になる姫武将だ」
「それ程までに……分かりました。私は若様と争いたい訳ではないです。すいませんでした」
「そうか。分かった」
刀を鞘に戻して深く頭を下げた元太。これで話はついたのかと思ったが騒ぎを聞きつけた親父殿が鬼の剣幕で俺に問いかける。
「義龍!! この騒ぎは何事だ!?」
「道三様私の」
「元太と夜遅くまで訓練してました」
「すいません道三さん私が義龍様に進言いたしました」
「若様……半兵衛殿」
義龍が元太を庇うと半兵衛も言葉を補足する。
(半兵衛が義龍のことを様とな……口説き落としたか)「そうか。だが辺りはもう暗い余り騒ぐでないぞ」
「はっはぁー!!」
親父殿は城に戻っていく。
「若様……半兵衛殿……かたじけない」
「おう」
「はい」
義龍と半兵衛に助けられた元太は深く頭を下げて屋敷に戻っていく。
「じゃあ帰るか半兵衛」
「いいえ帰りません」
「え?」
半兵衛は拒否するとまるで宝石のように綺麗に輝く瞳で俺の事を見つめる。
「私を龍君……義龍様の家臣にしてください」
「じゃあ!?」
「はい。貴方の義に心を奪われました……私……竹中半兵衛は今日から義龍様の家臣になります。私の知略と陰陽師の力……殿のお好きに使い下さい」
「そっか……じゃあ最初の命令だな」
三つ指ついて頭を下げる半兵衛に俺は偉そうに命令する。
「はいどのようなご命令でも何なりと」
半兵衛は顔を上げると真剣な表情で俺の顔を見て命令を待つ。
「なら……今まで通り龍君で頼む」
「やっぱりお馬鹿さんですね……分かりました。末永くよろしくお願いしますね龍君」
「おうこっちこそよろしくな!」
俺の命令に嬉しそうに心の底から笑う半兵衛は腰に差してあった刀を俺に渡す。
「この刀……虎御前を龍君に」
「この刀は……名刀だな」
「はい。我が一族に代々伝わる名刀です。お父さんが私の認めた人に渡し次の世代に受け継がせよと。必ず龍君の力になってくれると思います」
「そうかありがとうな。半兵衛」
「はい//」
こうして名刀虎御前を手に入れ軍略が苦手な俺に頼れる天才軍師が味方についたのであった。
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