龍興side
お兄ちゃんと十兵衛さんが隣国、尾張(後の愛知県西部)の姫大名、織田信奈との会見の為に聖徳寺に向かいました。
お兄ちゃんの部屋には私、半兵衛ちゃん、左近さん、高虎さん、一豊さんの五人が集まってます。
「高虎ちゃん、五月蝿いですよ」
「長年の宿敵織田家と会見だぞ! 落ち着いてられるかよ!!」
「義龍様を心配なのはみんな同じです。落ち着きなさい」
高虎さんは会見に行ったお兄ちゃんの事が心配で部屋の中をウロウロとして落ち着きがなく、そんな高虎さんを、左近さんが注意をするが、そんな彼女も同じく心配で動揺していて普段では絶対にしない茶器に入れたお茶が溢れていた。
「大丈夫です。龍君なら……絶対」
半兵衛ちゃんは私の隣で座り心配で涙目になっているが冷静になろうと拳を握り平静を保とうとしている。
「お嬢様大丈夫ですか?」
「うん、ありがとう! 私は大丈夫だよ!」
お茶を入れてくれた一豊さんが心配をしてくれたので笑顔でお礼を言うと安心してくれました。
「軍師殿。今回の会見はどうなるんだ? 軍師殿の考えは?」
高虎さんが質問すると半兵衛ちゃんにみんなの視線が集まる。
お兄ちゃんの家臣の中で一番の古株で、軍師として手強い敵との戦を何度も勝利に導いてきたので、半兵衛ちゃんに考えを聞きたいのは無理ないよね。
「は、はい。私の考えですが……恐らく荒れるかなと。龍興ちゃんの知る未来のお話では道三さんは織田信奈をとても気に入り息子ではなく、織田信奈に美濃を譲ると」
「それって……織田家ではなく……」
「はい……身内同士の戦になりますね」
左近さんがみんなが思ってる事を聞くと、半兵衛ちゃんが頷き答える。
この戦国時代では親、兄弟で争うのは珍しくない。本来の歴史では道三が信長に美濃を譲ろうとしてそれに反発した義龍と争い、<長良川の戦い>で義龍が道三を討ち取る。
「義龍さまと道三様が争う事になるって事ですか?」
「確かに本来の歴史ではそうなる筈だと思います。でも未来を知るお兄ちゃんですから道三さんと争いになるその前に対策をしました」
「流石だぜ大将!」
一豊さんが私に問いかけてきたので、お兄ちゃんの事を話す。
話を聞いた高虎さんは嬉しそうにお兄ちゃんを称える。
「それに半兵衛ちゃんに策をお願いしてましたし、護衛として十兵衛さんも側にいるので必ず大丈夫です!」
「半兵衛ちゃんが策を……それなら安心ですね!」
「光秀殿も義龍様のお側にいますからね……お嬢様、こんなに完璧な人選は考えられませんね!」
左近さんは半兵衛ちゃんを見ると優しく微笑み、一豊さんも笑う。みんなお兄ちゃんたちの強さを知ってるので心配は無用な事に気づく。
「龍興様。他の者たちは首を縦に振り文を書きました。後は龍興様たちだけです」
顔に疲れを見せ急いで私たちのいる稲葉山城まで来たと思う三太夫さんが現れて沢山の文を私に提示する。
「軍師殿」
「これは一体?」
沢山の道三さんの家臣の名前が書いてある文を見て高虎さんは口をポカンと開け、左近さんは口を手で隠して驚く。という私もまさか全員を取り込めるとは思わなかった
「くすん、くすん。では龍君には美濃の油売りとなってもらいましょう!」
考えてるよりも計略が上手く進み楽しそうに笑う半兵衛ちゃん。いや、楽しそうというよりはお兄ちゃんの人望の厚さに自分の事のように嬉しそうにしていた。
美濃の油売り……それは斎藤道三の代名詞とされていてその意味は……すぐにみなさんも分かると思います。
義龍side
美濃と尾張国の国境にある<聖徳寺>で何度も斎藤家と戦い続けた尾張の姫大名である織田信奈との会見がある。
今回の会見場所の近くにある古小屋の中で尾張の大うつけと評判の織田信奈を観察している俺たち。
「龍様! ここで織田信奈を殺せば、尾張は道三様の物……ゆくゆくは龍様の物デス!!」
「……」
噂を真に受けている十兵衛は信奈を完全に侮っていた。そんな評価の十兵衛とは違い親父殿は黙っている、流石美濃のマムシと呼ばれる事だけはあるな。
「十兵衛、まだ織田信奈が本当に大うつけなのか分からない。それに……」
「どうしたデスか?」
十兵衛の問いに俺の考えを伝える。
「親父殿や東海の弓取り、今川義元と激闘を広げた尾張の虎、織田信秀がいくら信奈が嫡女だからって大うつけなら譲るはずがない」
「その通りじゃ。儂もそれが引っかかっておった」
俺は未来の信長の歴史を知ってるので、余り噂を信じてないが、道三は何度も激戦を繰り広げた宿敵、信秀が信じて家督を譲った姫大名なので自分の目で見るまでは評価をしないようだ。
「龍様も道三様も考えすぎデスよ!! この十兵衛にお任せを! 織田信奈を抹殺する準備は出来てるデスよ!!」
十兵衛はここで信奈を殺して尾張を道三に取らせて、ゆくゆくは俺の物にする為計画し足軽隊を伏兵させていた。
十兵衛が忍ばせていた数百人の足軽隊たちが今か、今かと伝令を待つ。
「ん、なんデスかあの格好は……」
「やはりただの大うつけだったか……」
十兵衛は余りの格好にポカーンと口を開け、唖然とする。親父殿は失望し信奈に興味を無くす。信奈は水色の湯帷子を片袖脱ぎにして、腰には虎の皮を巻く。皆が噂する大うつけの姿をしていた。本当に演技なんだよな? 信長の偉業を知ってる俺も心配になってきた。
「龍様!! 織田信奈、おおうつけ確定デス! 明智十兵衛光秀出陣するデス!! 皆の者!! 出陣……ひゃう//」
「落ち着け。あの鉄砲の数を見ろ」
伏兵した足軽に指示をしようとしたので慌てて口を押さえて指示を止めさせ、織田信奈が率いる軍隊を確認するように言う。
「見たことねえ鉄砲の数デス……」
十兵衛は鉄砲の数に驚き興味を無くしていた親父殿も視線を信奈の軍隊に戻す。
「ひぃ!!」
十兵衛が悲鳴を上げる。義龍が織田軍を確認すると、この戦国時代では貴重で高価な鉄砲を500丁用意していた。しかも鉄砲隊たちは暴発も恐れずに火縄に火薬を点火させる。
「暴発するのも恐れるずに火をつけさせるとは余程のうつけかあるいはな……ほほほ。これまでじゃな」
親父殿のは扇子をしまい会見場所である聖徳寺に歩いて行く。
「やっぱり凄かったな。織田信奈は」
「はいデス」
計画が失敗した事に落ち込む十兵衛の頭を撫で慰める。
「まあ気にするな。俺も織田信奈がうつけじゃないのは半信半疑だったからな」
「……ありがとうデス」
「おう。じゃあ行くとするか」
「はいデス! 行きますよ! 龍様!!」
十兵衛に笑みが戻り俺に右手を差し伸べる。
「手を繋ぐ必要あるのか?」
「細かいことは気にしなくて良いです! さあ行くデス!!」
何故か俺と十兵衛は手を繋ぎながら聖徳寺に向かう。十兵衛の横顔を見ると幸せそうだ。まあ俺も美少女と手を繋ぐのは嬉しいから良いけど。
聖徳寺に着いた俺たち。親父殿は座り、目を閉じてじっと信奈が来るのを待っている。
本堂より遠く離れた場所で護衛役の俺と十兵衛は待機する。
隣には俺たちと同じ護衛役と思われる鎧を着ている髪をポニテールにした姫武将と無表情で槍を背負ってる虎の皮を被った小さな少女。
そして何故か姫武将は俺をチラチラと顔を赤らめて見る。 なんか俺の顔についてるか? と考えるが今はどうでもいい。
問題はあいつだ……中に黄色いTシャツ、俺も令和で着ていた高校の制服を堂々と羽織り、聖徳寺をワクワクとしながらジロジロと見る猿顔の少年、相良良晴。
あの馬鹿この時代に制服を堂々と着る奴があるか。俺の正体と俺たちと同じ令和から来たハルの事は面倒くなりそうだから隠しとくか。
悪友だった良晴の相変わらずの姿を見て微笑ましい気持ちと呆れる気持ち正反対の気持ちを抱えていた。
「俺は相良良晴ってんだ! キミ、可愛いよな! 俺とLINE交換してくれよ」
良晴はこちらに目を向けると頬を緩まして十兵衛に笑みを浮かべてLINEを聞く。まあ現代の俺たちから見てもアイドル級に可愛いから分からなくもないが、今じゃない。というかこの時代にスマホはないだろうが!?
「うげえー! 発情した猿が私を見つめて怖いデス!!」
「やっぱ男は顔かよ!? きぃ!!」
十兵衛が眉を細めて気持ち悪そうに顔を歪めると俺に抱きつき顔をうずめる。そんな十兵衛の仕草を見た良晴は悔しそうに床を踏み鳴らす。
「良晴、五月蝿い」
「うげぇー」
あっ少女に槍で叩かれた。
「あのう……織田家の猿がすいません」
「大丈夫だ。織田の猿は元気だな」
「誰が猿だごるぁ!」
「五月蝿い」
ポニテールの姫武将が謝罪するので大丈夫と答えると良晴が騒ぐのでまた少女に叩かれる。
「せっかくだ、親父殿と織田信奈殿が会見を始めるまで時間もあるし自己紹介するか。俺は斎藤義龍。こっちが俺の護衛、明智光秀」
俺は自己紹介する。十兵衛はコクリと頷く。
「あた……わたくしは、柴田勝家といいます」
「勝家がわたくし? ぶふ!」
「笑うな!! ……こっちの小さいのが犬千代です//」
「私は犬千代、小さくない……いつか成長して勝家より大きくなる」
顔を赤らめながら自己紹介する。ポニテールの姫武将は柴田勝家。かかれ柴田や、鬼柴田と有名な武将だ。こっちの吹き出した無表情の女の子は前田犬千代。後の前田利家、加賀百万石の大名として有名だ。
「待て待て! 俺の事忘れてるぜ!! 俺は相良良晴! よろしくな!」
格好良く親指を自身に向けて格好良くポーズを決めるが女性陣からは冷たい視線を向けられる。
「「この猿は気にしなくて(良い)です」
「おい!?」
無視された事に怒り叫ぶが、それさえも無視されてる。安心しろ、俺が心の中で自己紹介してやる。
相良良晴。高校生。令和での俺の悪友で戦国時代が好きな猿顔の少年。こいつにゲーム、織田信長公の野望や太閤立志伝説を付き合ってる内に俺も戦国時代に詳しくなった。
体育の授業でドッジボールをしたが、ボールを避けるのが上手く、<球避けのヨシ>の異名を持つ。まあ、避けるのは常人離れしてたが、ボールを当てるのは普通だったのでドッジボール部に誘われた事はないみたいだけど。
「キミがあの織田家で有名な柴田勝家か。同じ鬼の異名を持つ人に会えて嬉しいよ。
「アタシも嬉しいでしゅ//」
勝家が同じ異名を持ってるので嬉しいと言うと、勝家も嬉しそうに顔を赤くしていた。台詞を噛むしなんかこの子そわそわとしてるな。
「織田家の者が龍様に馴れ馴れしいデスね」
「“龍”様!? お前こそ、たつ……義龍殿に馴れ馴れしいぞ!!」
十兵衛が挑発すると、売り言葉に買い言葉、先程まで塩らしくしていた勝家も本来の勝気な姿を見せる
「ふふーん! 私と龍様、いえ、旦那様との仲ですから当たり前です」
十兵衛は胸を張りどや顔で勝家に言い放つ。
「なっ!? 旦那様!? 義龍殿が祝言……嘘だ!?」
「返事が無い唯の屍のようだ」
勝家は何故かショックを受けてのの字を書く。そんな勝家を、犬千代が槍で突き反応がない事を知ると俺に視線で訴える。<家のもんに何してんだ!早く慰めろと!>……俺が悪いのか?仕方ない……フォロー入れるか。
「嫁さんじゃなくて十兵衛は大切な家臣だよ」
「そこの女はただの家臣? ……本当ですか!? やったぁ!!」
勝家に十兵衛の事を説明すると嬉しそうに立ち上がり両手を上げる。
「どうした十兵衛?」
「何でもねえデスよ。龍様の馬鹿……」
十兵衛は機嫌が悪くなる。片方は落ち込んでいたのに、今は嬉しそうに上機嫌。もう片方は上機嫌だったのに、今は顔をムスッとして不機嫌。女の子って分からないな……
「待たせたわね!」
俺たちの目の先には、先程のうつけ姿ではなく小綺麗に衣装を替えた金髪の美少女、織田信奈が自信満々に堂々とたたずむ。
「これ程の美少女とは!」
「うおおお!?」
「うふふ……度肝を抜かれちゃった?」
「うむ」
「デアルカ!」
親父殿は信奈に見惚れていた、ついでに良晴も。その事に気づいた信奈は嬉しそうに微笑む。
「……!? 痛てえ! どうした十兵衛?」
「デレデレするなデス! 会見中にみっともないデスよ、龍様! 私だって……」
という俺も信奈の可愛さに見惚れていると、横に座りむすっとしている十兵衛に頬を引っ張られ注意される。
「悪い。でも驚いたよ。まさかあんなに綺麗になるとは……確かに可愛いけど、十兵衛たちの方が可愛いよ」
「もう旦那様// 可愛くて利口な十兵衛なら当然ですが褒めても何も出ないデスよ!!」
信奈を見ていたら不機嫌そうにしていたのに、褒めると今度は嬉しそうに指同士を会わせてもじもじとする。女の子って難しいな。
普段着の親父殿、信奈は綺麗に着替える。どうやら、親父殿は信奈を気遣い、信奈は親父殿を敬ったようだ。信長のイベント、聖徳寺の会見が始まる。
親父殿は質問する。
「そなたは何故、領民からも家臣から尾張うつけと謗られておるのかな?」
「逆だわ! 私の周りにいる家臣のほうがうつけなのよ」
互いに腹の中を探り合う。良晴を横目で見ると震えていた。怖いから震える、こいつの事だから違うか……戦国時代に来たんだと実感したんだと思う。
「亡き信秀公は何故何度もかなわぬと知りながら美濃に攻めてきたの?」
「父上の考えは分からないわ。でも私もそうするわ……」
親父殿が質問して、信奈は自分の考えを伝える。会話は順調に進み、そして終わる。親父殿はうつけのフリをした信奈の器量を認めるが、次は武将らしく戦場で信奈の群雄を確かめようとして、信奈もその挑戦を受ける。織田家と戦か……と思っていると……
「待て待て!! 斎藤道三! アンタの考えてる事は分かってる!」
「猿! 斬られたいのか!?」
良晴が大声を上げて本堂の中に入るが勝家と犬千代に抑えられ、床に伏せられる。それでも負けじと親父殿を睨み付けて心の内が分かると言い放つ。
「ほう……それは面白そうじゃな。良い余興じゃ。」
親父殿が俺に視線を向けると俺も本堂の中に入り竜牙を鞘から抜き構える。
「じゃが、デタラメを抜かせば小僧といえど、我が息子、義龍が貴様の首を即座に落とすぞ」
「猿!! 下がりなさい!! 今ならまだ間に合うわ!!」
「嫌だ!! ここで下がったら気が合ってる筈なのに、戦わなくても良い捻くれた二人が戦になっちまう!!」
親父殿は楽しそうに良晴を観察して、信奈は良晴の命を助けるために命令をするが、良晴は二人を戦わせないために下がるつもりもないようだ。
「斎藤道三! アンタはこの後に言うんだ、息子たちは信奈の門前に馬を繋ぐ事になるって言うんだ!!」
「戯言を!! 猿風情が龍様を愚弄するか!! 貴様は私がここで斬る!」
「落ちつけ」
デタラメな言葉で俺を侮辱したと十兵衛は中に飛び込み怒りに震え刀を抜こうとする。そんな十兵衛を抱きしめて止める。十兵衛は気持ちを静めると俺の横に立つ。親父殿の顔を確認すると内心を当てられて驚いていた。
「何と……小僧、いかなる妖術を使ってワシの心の中を読んだ?」
「ゲーム、織田信長公の野望、聖徳寺のイベント有名なイベントだぜ」
俺たちが何度も遊んだゲーム、織田信長公の野望で知ってたので良晴は道三の胸の内に秘めた思いを言い当てる。
「儂の義理の娘、信奈ちゃんに美濃を譲ることにするとしよう」
「マムシ……」
親父殿は信奈に天下統一という夢を託し、信奈は引き継ぐ。さてどう動こうか……信奈に美濃を譲るか……それとも親父殿と争い長良川の戦いで討つか。譲るにせよ、争うにしろ……後でゆっくりと考えるか……
話はこれで終わると思われたが、俺の事を大切に思ってくれてる女の子がそんな話を許すはずもなかった。
「けるな……ふざけるなです!!」
「光秀黙らぬか」
激情を抱いた十兵衛が親父殿に怒鳴る。親父殿は嗜めるが止まらない。
「黙らねえデス!! 龍様が必死に美濃を守ってきたのに……何処の馬の骨か分からねえ他の国の奴に何で譲らねえといけねえデスか!?」
「気持ちは分からんでもないが、まだ儂は義龍に家督を譲った訳ではない……当主である儂が決める事よ」
「しかし!!」
「光秀……口を慎め。部外者のお主に何の権利がある?」
「くっ……」
十兵衛は親父殿の言葉に涙を流すほど悔しそうにして拳を握り震えていた。この戦国時代を終わらせる為に後の天下人になるかも知れない信奈に美濃を譲るのは構わない……ふざけるな……道三、十兵衛を泣かせてんじゃねえ!!
「あるさ。十兵衛は俺の大事な腹心だ。」
「龍様……」
悔しそうにする涙を流す十兵衛に優しく笑いかけて頭にそっと手を乗せる。
「ありがとう俺の為に怒ってくれて……後は任せろ」
弱々しい十兵衛から視線を外すと、力強く親父殿を睨み付ける。
「親父殿こそ口を慎んで頂きたい。十兵衛に権利がないのならば、部外者の親父殿には権利の何一つも無い」
俺の言葉に親父殿……いや、斎藤道三は唖然とする。
「百……準備は出来てるよな?」
「はい。義龍様」
俺の言葉を聞き影に潜み姿を表す忍、百地三太夫は沢山の文を渡す。その文を見せる。そこには<我々は義龍様に従う>と書いてある
「美濃三人衆の文……義龍、貴様……裏切りおったな!!」
道三が見た文には俺の家臣の半兵衛たちは勿論だが、道三の家臣である半兵衛の父、竹中重元そして一番道三が信頼する美濃三人衆、そしてそれ以外の家臣たち全員が道三から離反して俺に着く。
「美濃のマムシ、アンタが昔に美濃を奪ったように、今度は俺がアンタから美濃を奪う」
「龍様……」
「隠しててごめんな。あいつ、マムシに気づかれないようにギリギリまで隠しておきたかったから」
十兵衛の声に頷く。俺は父親斎藤道三を追放する。そして今この時をもって俺が美濃の新たな当主……斎藤義龍。
信奈はジッと話を聞いてたが我慢の限界のようだ。
「ようは、マムシの許可もあるし、アンタをここで殺せば美濃はアタシの物って事よね?」
「出来るならな」
信奈は俺をここで暗殺して美濃を取ろうとする。望むところだ……俺はその挑戦を受ける。
「簡単よ……陸! 犬千代! ここで謀反人を斬りなさい! ……」
信奈の命令に頷かずジッと動きを止める勝家と犬千代。
「何で動かないのよ!?」
「姫様」
「それは無理」
そんな勝家と犬千代を怒鳴るが、俺は素早く刀を抜き接近して信奈の首元には刀が突きつけられてる。自身たちの動き次第で主の命が危ないので簡単に動ける筈もない。
「そう何度もお前の思い通りにさせるかよ!!」
「猿……さっきはよくも龍様を愚弄しやがったデスね!!」
どさぐさに紛れて俺の背後に回ると良晴は信奈を助けようと動くが、十兵衛が良晴の動きに気づいていて即座に斬りつける。
「猿風情が無駄なことを」
「無駄じゃない。お手柄良晴」
「でかしたぞ猿! これだけ近ければ!」
良晴に視線が釘付けになった俺たちの隙を突き犬千代と勝家が襲いかかる。
「なっ!?」
「十兵衛しゃがめ」
俺の指示に何の疑いもなくしゃがみ込む十兵衛。確認すると深く呼吸をする……
「覇王御剣流……守亀」
接近して斬りつけようとする勝家と犬千代。俺は鞘に治まれたまま刀を持つと左手で信奈を地面に伏せ、円上に斬りつけて、二人を壁まで思い切り突き飛ばす。
「り、陸まで……な、何なのよ……アンタは!?」
信奈の顔を見ると恐怖で顔を青ざめる。
「俺は美濃の鬼神。織田信奈……覚えておけ……お前が道を間違え魔王となった時、力が足りず腑抜けた時、その時はお前の目の前に現れてお前を……滅ぼす」
「ひ、ひい。化け物……」
震えて尻餅をつく信奈、周りには倒れる護衛である、良晴、勝家、犬千代。そして大人しく俺を観察している道三。令和で仲良く遊んだ悪友の顔を少しみる。良晴から心臓が動く音が聞こえる。道三の心を動かしたお前ならもしかしたら……これから先、信長の有名な戦があるけど死ぬなよ。
「こ、来ないで!!」
俺がチラリと振り返ると、信奈は身体を震わせ身体を抱きしめて恐ろしい物を見るように怖がり、俺から少しでも離れようと後ずさる。この戦国の世を終わらせるのは、この女の子なんだよな……頼むぞ……織田信長……いや、織田信奈。
もしキミが第六天魔王となって大事な人たちを傷つけるならば俺は容赦はしないが、弱くて優しい女の子何だったら俺が代わりにこの戦国時代を終わらせる。
「十兵衛、話は終わった。帰ろうか」
「はっ!……美濃の新たな当主……斎藤義龍様」
新しく当主になった俺にひざまずき忠誠を誓う十兵衛。俺たちは聖徳寺を退出して美濃に帰還する。
「な、何なのよ、あいつ……化け物じゃない……」
「あやつは、斎藤義龍……お主の父、尾張虎、信秀、北近江の鷹、浅井長政、甲斐の虎、武田信玄……名のある大名たちとの幾たびの戦を勝利に導いてきた、美濃の鬼神……天下無双と呼ばれる男よ」
「あの武田信玄に……そ、そんなの勝てる訳ないじゃない。勝家でもこのざまなんて……でも鉄砲なら……あいつを避けながら戦えば」
「それは無理だと思うのう、奴には儂以上の知恵者の天才軍師や才能豊富な先程の少女、光秀、そして他にも才能豊かな者を従えてる。更には美濃三人衆までもが義龍に味方につきおった」
「……」
「信奈ちゃん、お主は夢を諦めるのかのう?」
信奈は余りの絶望に口を閉ざす。無理もないだろう、義龍だけでも絶望的状況なのに更に義龍には先程の少女以外にも才能豊富な大勢の武将たちを従えてる。そんな怪物たちを倒して天下人になるため美濃を取るとは軽々しく言える筈もない。
「私は」
「お前らしくねえぜ信奈!!」
胸から斬られて死んだと思われた良晴は立ち上がり信奈に活を入れる。
「猿……アンタ生きて……良かった」
「まあ何とかな……」
信奈の下駄を暖めるために懐に隠してあったので、十兵衛が切りつけた場所に偶然下駄が当たり助かった。
「信奈、お前がさっき道三に宣言したように堂々としてれば良いんだよ! 俺やみんながお前を支えるからよ!」
「猿……」
「まあこの実質未来から来た神の俺に……ぶげっ!」
「何が神よ! 足軽が偉そうに!! 私は神も仏も信じてないのよ!!」(猿……ありがとう)
信奈は元の笑顔を取り戻して、楽しそうに良晴を足で蹴る。
「ほほほ……やはりあの小僧は信奈ちゃんの着火剤になるのう」
「犬千代……あたしたちどうしようか?」
「犬千代は返事がない屍のようだ」
「だよな……」
意識を取り戻した二人はタイミングが見つからずしばらく倒れたフリをして楽しそうに良晴を追いかける信奈の姿を見ていたのである。
好きなヒロインと見てみたいヒロインの話
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竹中半兵衛
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明智光秀
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島左近
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藤堂高虎
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斎藤龍興