【推しの子】視点I(&U)   作:天星結衣

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本日、2話投稿しています。ご注意ください。


第3節 祝福する備忘録

今は身近な存在となった星野アイ。彼女にいつか伝えるつもりの(あたし)の気持ちを、今ここに記しておく。(あたし)が忘れてしまわないように、仮に忘れたとしても、いつの日かきちんと届くように。彼女に見せるつもりはない、下書きのようなものだけど。

 

まずは、いくら遠き日の彼に似ているからと言って、勝手にこの世界に君を生み出してしまった非礼を詫びよう。転生させてもよいか君に訊く手段は皆無だったとはいえ、それを実行したのは完全に(あたし)のエゴだ。

無論、君が彼ではないことは承知している。そういえば、彼がこの世界を生きたかったのかも結局分からず終いだな。せめてあの別れが突然でなければよかったんだけど。

君を転生させた時点でも、君は君として傍に置いたまま、(あたし)が彼の代わりを務め続けるという選択肢もあったんだろうね。しかし、(あたし)は結局偽物のようなものだ。より本物に近い存在が居る以上、偽物がこれ以上身分を偽り続けるのは(あたし)が耐えられなかった。それだけの話。

 

そうして、結果的にとはいえこの人生を生きることになった君に、一つ頼みがある。

君は君として、君自身の人生を生きてほしい。

確かに、前世で君が自身に課した行動指針や、(あたし)が彼の為に願いを抱いて追い求めていたものは、個体としての整合性のためなどには必要なものかもしれない。しかしそれは、それぞれの意思を縛り付けるある種の「枷」や「鎖」のようなものとも解釈できる。他人のものまで背負い込む必要はない。人間は操り人形ではないのだから。

他の誰かが選んだ舞台(ステージ)ではなく、君が選んだ物語(ストーリー)を生きてほしい。

前世で君は、「アイドル」という遠くで煌めく景色に飛び込んだ。それからの半生では、ある意味ではずっと一人孤独な世界で、祈り願う夢を描き、未来を見続けた。誰にだって出来ることではない、困難なことだと思う。

主人格を君にした以上、もうこれは君の人生だ。定められたフィクションから飛び出した今、君の心を縛るものは何もないはず。

もちろん、なるべくの手助けはする。必ず、とは言えないけど、必要なら共に居よう。(あたし)(あたし)でいられなくなる、そのときまでは。

 

最後になったけど、願わくば、君が手に入れた本物の愛をなくすことがないように。君のオリジナリティを、君が失ってしまわないように。

目一杯の祝福を、君に。

 

以上で、(あたし)の備忘録は終わり。いつか、自分の言葉で伝えたいな。

…祝福。祝福といえば、そんなタイトルの歌が最近発表されたんだったか。いや、結構前だった気もする。でもまだ聴いたことないな…いつか彼女と聴こうかな?今日はもう遅いから、後日にするが。

 




第0章エンディング: 祝福/YOASOBI
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