不倶戴天   作:雨傘なななな

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投稿間隔が乱れに乱れておりますが、8月になれば安定する……はず……!!!
まだ4月!?!?!?!?!

感想、評価、お気に入り、ここ好きなどなど……とても励みになっております。ありがとうございます。

合間を縫って書いたものなので誤字や内容のズレがあり読みづらいかもしれません。余裕ができたら確認、修整する予定です。


星映しの水面に愛を謳う 其の三

「ふーーーーーーーーーーーー」

 

 リスポーンしたオルケストラの劇場横にある拠点ベッドにて、クソデカい溜息を吐ききった僕はささっとチェストリアからクリオネちゃんとナナさんを呼び出しつつ、起き上がる。

 

「……起動:オルケストラはいかがでしたか?」

 

「ん〜〜〜〜。いつもの無限突撃コースかな……」

 

「……………………」

 

 クリオネちゃんへと目を向けながら、そう答える。

 ほら、クリオネちゃんの時とかタラルトスクズの時とか、封将関連でばっかだから僕の無限突撃。

 

「ムゥ…………デモ、諦メナイデショウ?」

 

「当然!!!」

 

 そーっと決意を固めている様子のクリオネちゃんの頭部に頭を突っ込もうとしたのをナナさんに見咎められ、引っこ抜かれながら考える。

 

 まず矢に対処できるようにならないとどうしようもないよなぁ……でもってエリーゼの海流操作による援護……

 至金の歯車・過密の方はどうかな、多分どれだけ規模の大きい雷を撃っても【雷撃の道筋】でスカされるのがオチだよな。まぁだからお互いに使わなかった訳で。

 

「おぉシュテルメア君。どうだった?」

 

 考え事のままにリスポーン用ルームから出ると、僕を送り出してからずっと考察しつつ待っていたらしいキョージュに声をかけられる。

 

「正典です。Nパッチとって……いや先にオルケストラの動きに慣れる方が……?武器種……特に異形術関連のポーションを持ち込まなければ……ああそっか、前提の四楽章で使えないと進まないんだ。一から十まで嫌らしい戦法ですねチクショウ」

 

「………………ふむ。やはり正典の難度は偽典とは段違いに高いようだね。攻略の糸口は?」

 

「ん〜〜〜〜ナナさんを出せば歌姫はある程度マシになるんですよね? ナナさんがいる状態でもそこそこのトライ回数になりますが……うん。100回じゃ足りない回数挑めば行けると信じたいですねぇ」

 

 下手すれば1000回……【世界の終わり、希望は潰えて】のタイムリミットまでに間に合うかな……まだいくつか強化しなきゃいけない部分があるんですけど。

 

「Nパッチ自体は1日もなく取りに行ける。先に行くべきかもしれないね」

 

「新しい方のバハムート……象牙でしたっけ」

 

「…………否定:当機を伴ってのオルケストラ攻略に限り、すぐさまNパッチを必要としないことを進言させていただきますの

 

チェストリア内部から外部の様子は分かりませんが、シュテルメア様の戦闘データからある程度予想は立てられますわ。

 

当機は……征服人形の中でも少し例外に分類される個体ですので。数日前に勇魚内にて代替の操作を行っておりますの」

 

 ナナさんが無断でのアップデートを行ったことへの謝罪と共に発言を終え、キョージュが眉を潜めてサンラク女史から受け取ったというオルケストラの真理書を捲る。

 

「そのアップデートって?」

 

「解答:当機は初期状態では諸事情により歌唱機能が搭載されておらず……前回シュテルメア様がルルイアスに滞在されている際にバハムートを探訪、勇魚様との交渉の末歌唱機能の搭載を行いました」

 

「それがNパッチとやらのかわりになる、と」

 

「必ずとは言い切れませんが……」

 

 なるほど。まぁ……無限突撃に時間を割けるのは正直助かる。

 全力の全力の全力で攻略しなければ、オルケストラは越えられないのはたった一回の挑戦でもよーーーーく分かった。

 自己強化のためだとかなんたとかを抜きにしてもあの歌姫は絶対に超えてやらなくてはならない。なーにがラララだ。あの仮面野郎をぶっ飛ばして目にもの見せてやろう。

 

「追加事項:そして、当機としてはシュテルメア様は次のオルケストラ攻略に全てを賭けるべきだと考えますの」

 

「…………………?」

 

 ゆっくりとどこかへ想いを馳せるように目を閉じたナナさんが口にした言葉に、僕とついでにキョージュが訝しげに首をかしげた。

 次に全てを賭ける……一回での攻略を目指せって話だろうか。

 

「確認:先日お会いしたサンラク様は、既にオルケストラの攻略を終えられ、シュテルメア様にある程度の情報が伝えられております。」

 

「そうだね。まぁ断片的だったんだけど」

 

「また、キョージュ様の手元には真理書があり、完全に攻略までに必要な事項が分かっていることになりますの。

 

当然ユニークモンスターたるオルケストラの攻略難度は目を逸らしたくなるほどのものですが、それでも、」

 

「………………うん」

 

「ここで一回の挑戦でオルケストラに納得を与えられない者が、どうして世界を滅ぼす災厄に挑めましょうか」

 

 「狂える大群青」は、僕がその動きに慣れるまで待ってはくれないし、何度も挑戦できるような存在でもない。たった一回の戦闘で勝利を掴む経験に欠ける僕は、ここでその感覚を、あるいはその意識を理解する必要がある、と。

 

 閉じた瞼をゆっくりと上げたナナさんがなぜか哀しげな表情と共に視線をそっとクリオネちゃんの方へと向けた。

 

「ウン。私モ覚悟デキテル、ヨ?」

 

 細く、それでも僕に比べれば何倍も力強い触手が伸ばした手に触れる。

 

「ほら、ナナさんも。」

 

 本気での戦闘前はやはりこれがなくては。

 互いに命を預けて共に戦う、という実感が湧いてくる。

 

「肯定:最高の歌をお届けしますわ」

 

「そーれは……ふふふ、楽しみにさせてもらおうかな」

 

 ……一人の手と一体の触手と一機の手が重なった。

 円陣を組むの、いつぶりだったかな。2回前のクターニッド戦前……? 違う、海上戦の出港前だ。

 ニコリと自慢げに笑って見せるナナさんに笑い返して、キョージュさんを初めとしたライブラリの方々にちょっと待つようお願いして、さて。

 

「…………もし、次の攻略でオルケストラを倒せなければ、僕達はココを発ってアルジェントさんの所へ行く」

 

「同意:シュテルメア様であれば可能だと信じていますの」

 

「ウン」

 

「覚悟はした。相手はユニークモンスターで、僕は……僕達は多分アレに挑むにはまだまだまだまだ力不足で、それでも、」

 

 一拍置いて、ゆっくりと息を吸って、

 

「想いは足りてると、知っている。……背負っているものの重さも。そっちは足りるどころか、余ってるぐらいだ」

 

 エリーゼの願いも、征服人形の元となったアイドル達の願いも、もっと言うならば神代の無念も、知ったことではない。

 

「…………………………肯定:」

 

「まだ終わらせるわけにはいかない。歌姫エリーゼには悪いけれど、彼女が今後も正しい答えを得られるように、」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:チェストリア内部

 

 シュテルメアがオルケストラの最終楽章に至るまでの道程を戦う最中、意図的に意識を残しチェストリアに格納されたフユネ=77は思考の海に沈んでいた。

 

 想いを馳せるは、当然のように彼女の主たるシュテルメアの言葉と横顔。

 

 世界が、人々が、余りにも彼に重圧を掛ける中で、彼女は彼の横顔をいつも見ていた。隣に立っていたから。隣に立つと決めていたから。

 歌えない身体を持って生み出されたにも関わらず、彼の隣が自分のステージだと「征服人形」としてある意味本能的に信じていたから。

 

(疑問:シュテルメア様は、なぜあのような表情を……)

 

「────今回は譲ってもらう」

 

 彼の最後の表情は、その言葉に反して哀しみに包まれたものだった。言葉に込められた決意からは想像もできないほど。

 そんな疑問を振り払い、フユネ=77は主が前奏を攻略し終えて自身を再び呼び出す時を待ち続ける。

 

(それにしても、この格納鍵の中は懐かしいですわね。まるで……)

 

 かつてたった一人で大海の警護を務めていた時のようだ。

 懐かしい。そう、懐かしいのだ。

 

 ずっと感じていた孤独感や海への恐怖は、彼と出会ってその眩しいまでの輝きに塗り替えられてしまった。それはもう今は感じなくなってしまった感覚だから、懐かしいと共にむしろ温かいとすら感じられる。

 

 彼曰く、オルケストラは彼を前を見つめる旗取手だと解釈したそうだ。そう、それこそ彼に相応しい。

 その後に続く「冷たく強い光」という言葉は納得できないが、きっとまだ見通せていない何かがあるのだろう。

 

(そのまだ知らないところをこれからの旅で見ていきたい)

 

 まだ、見ていたい。足りない。知らない所を見せてほしい。自分も知らない自分を教えてほしい。温かい光に触れていたい。弱々しくても、力強くても、困っても、高ぶっても、変わらず前を見つめ続けるその瞳に吸い込まれたい。

 だから!

 

 弱々しく、けれど確かに感じる浮遊感。

 きっとシュテルメアがオルケストラの前奏を乗り越え、自身を呼びだそうとしているのだろう。少し早い気もするが、前奏で敗北してしまったからかもなどとは微塵も考えない。彼ならば必ず期待を超えてくれると願っているから。

 

 その浮遊感が一際強くなったと思えば、消える。

 一拍もしない内に真っ暗闇が晴れて、目の前には敬愛する主がいた。

 

「前準備は終わったよ。……やろう」

 

「……肯定:最高のライブをお届けしますの!」

 

 歌を披露するのは初めてだ。

 睨みつけた先、歌姫が感情の見えない目でコチラを見つめている。歌姫を冠する彼女に歌で勝てるような自信は持てていない。けれどここだけは、この場所だけは、彼の隣でだけは自分こそが世界一なのだと魂が叫んでいる。

 

 オルケストラを前にしたとして、私の自我が揺らぐ理由などあるわけがない。ここが、ここだけでは!

 

「宣言:当機は当機。たった一人のシュテルメア様の征服人形ですわ!!」

 

「んっふふ、頼りにしてるよナナさん……!」

 

「……モウ」

 

 イタズラっぽくにっこりと笑った彼が有り余っている勇気にさらなるニトロを注いでくれる。

 ないはずの心臓は燃え上がらんばかりにビートを刻み、海へと沈んでいく舞台は自分とシュテルメアを祝福しているかのようだ。

 

 後ろにいるクリーオー・クティーラから若干の嫉妬の視線を感じるが、フユネ=77は気にすることなくギターを鳴らし始めた。

 

「お聞きくださいませ。ABYSS of HOPE!!!」











次回の投稿タイミングは不明です。頑張ります。

小説用のアカウントという訳ではなかったので特に言及していなかったのですが、投稿間隔の狂いが凄いので一応Twitterのアカウントを載せておきます。今後は投稿ツイートもする予定ですので良ければご活用下さい。

https://x.com/okaki1201
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