それはちょっとゆっくり実況の影響を受けすぎやね……。
気になってくれた方は本当にびっくりするぐらい面白い「剣魔の世界を統べる」ってやつを見てくれよな!!!
と、言う訳で本編です。シュテルメアのオリジナル魔法はまぁ多分出します胸を張ってシュテルメアが考えたオリジナル魔法だと言えるものを思いつけたら。
「お聞きくださいませ。ABYSS of HOPE!!!」
ナナさんが宣言と共にいつの間にか手にしていたギターを鳴らし、手を上げる。
「認証省略、自己判断にてプロセス開始。
簡易格納機構……展開。
重奏支援拡声機、設置。
自律浮遊照明、起動。
光子仮想有線、誘導開始………接続完了。
当機フユネ=77を中心点に半径1メートルを領域指定。
偶像概念舞台……形成ですの!」
「かっこいい!!!!!」
ふふん、とドヤ顔のナナさんへと向けそうになる目線をどうにかオルケストラ……「彼」の方へと釘付けにしつつ、歌に耳を傾ける。
ナナさんのソロギターに合わせるかのように歌姫エリーゼが小さく、どこか決意の籠もった歌声が響き始めた。
『ラ、ラ、ラ─────』
だが、その声は僕の脳髄にまでは届かない。
取り出した杖弓が音を受けて震え、クリオネちゃんが奮起するように触手を構えた後、目を閉じて魔力を集中させはじめた。
ナナさんへのオーダーは海流の操作による矢の軌道妨害だ。海に沈んだ世界は2つの歌声を受けて揺れ、荒ぶる海流はもはや舞台に立って戦う僕と「彼」では制御不能なほどにまで至っている。
僕側も矢の操作みたいな細かい行動は阻害されるけれど、これで……というかこれが良いのだ。海とは、波とは、本来僕ら矮小な者達に操れるようなものではないのだから。
「よっし、始めようか」
『……………』
「────どこまでも暗く、冷たい、孤独な深淵を旅する船の中で、誰もが温かい大地を祈っている」
だが、彼女はいつだって僕の予想通りの結果を出してくれない。
先程まではイントロでしかなく、ここからようやく歌が始まると主張するかのように力強い声が響き、同時に満ち満ちた魔力が闇雲に荒れ狂うだけだった海流に秩序をもたらし始める。
「けれど私は知っている。この深淵が孤独なものなんかじゃないってことを。私は抱き締めよう、雄大で、偉大で、未知にあふれたこの深淵を!」
二匹の海流で構成されたドラゴンが衝突し、海そのものが揺れて、その揺れはゆっくりと僕の背中を押す。
「この美しい深淵こそが私の故郷だと、そう魂が叫んでいるから!!!」
シャウト。魂の籠もった叫びに、表情の見えない歌姫エリーゼすらそのビートに乗せられ始める。
きっと歌姫の方が技術を持っている。
技術は比較できる。だが込められる想いや決意は比べものにすらならない。
スポットライトが次々と輝いては消え、スピーカーはもはや耳を塞いでも聞こえるような音量を吐き出して、しかしその爆音は一切の不快感に繋がらない旋律を紡いでいく。
「そうよ私は────」
ナナさんが支配下に置いたのは恐らく海の半分程度。2つに分けられた海流は互いに打ち消し合い、その狭間では空間すら割れはじめた。
ナナさんが口元のマイクを外して、その声にスピーカーによる強化を乗せない素の言葉で、世界に叫ぶ。
「──────深淵にこそ希望を見るの!!!」
「最高だ……!」
揺れた世界がナナさんの呼吸に合わせるかのように止まり、2頭の海流のドラゴンは弾け飛び、海底であるにも関わらず周囲には無数の星々が瞬いている。
余りにも美しく、素晴らしい世界に宇宙への愛を歌ったという中野冬音という女性に心の底から同意する。コレを愛さないなんて、なんて勿体ないことか!
「シュテルメア様:どうか前だけを見つめてお進みください」
「んはは、まっっかせろ!!!」
シュテルメアになるまで、音楽に興味を持つ機会がなかったことを若干後悔し始めてしまった。無駄なことに脳の容量を使わないよう頭を軽く叩き、手にしていた杖弓を握り直す。
最高の音楽に背中を押されて、気分は最高。
まさかここまで勝てるって気持ちにしてくれるものだったとは!!!
起動するは【加算詠唱】!!!
「彼」は前回同様、異形術を駆使した変則三弓流だが、コチラの不合理に過ぎる行動に若干戸惑うようなモーションを見せた。悠長にしてる暇があるとでも!?
「───蒼穹よ陰れ、暗天に嗤え、轟々たる喝采はなお及ばず、其は天より下る裁きの鉄槌」
たった1節の詠唱で相手を含めた全員がなにを詠唱しているのかに気づいてしまう。それほどに、そう、それほどに一撃で勝敗を決めてしまいかねない強力な魔法の詠唱文。
既に「彼」も【雷撃の道筋】の詠唱を始めた。当然の話だが僕がこの魔法の詠唱を終えるよりも早く相手の詠唱が終わってしまう。ただ放っても無効化されて終わりだ。だから、
「詩人は謳う、其は神の威信と、僧侶は説く、其は神よりの天罰と。」
ナナさんの歌に乗せるようにさらに詠唱速度を上げる。
気分の高揚に合わせて詠唱もフルスロットルだ……!!
「真実を告げる、其に義は無く、其に邪も無く、其は純粋にして至極なる暴力」
既に「彼」は【雷撃の道筋】を詠唱し終え、タイミングを図りつつ杖弓に即発魔法と物理矢を継がえている。
「雷結びの耳飾り」と杖弓の併用。
さて、雷の軌道を変えられる魔法さえあればどこまで威力が上がろうと耐えられると踏んだのだろうが……サンラク女史直伝テクニックの披露時だ……!!
「叫べ 呵々大笑の【果てまで貫く雷鳴】」
既に詠唱は知られている!
「彼」は対処できると信じてしまった!
だからこその慢心!
サンラク女史曰く、人はそこで転ぶと思っていなかった時こそ転ぶ!!!
本来は自信満々に存在しない詠唱を即興で作り、最中に魔法を発動するものだそうだが……お互いに最も警戒するべき魔法の詠唱文であれば類似したことはできる。
雷鳴が「彼」の杖弓を通り抜け、強制的に共鳴効果を発動させる。ダメージはないとはいえ突然の暴発と大音響、【雷撃の道筋】は後数秒もすれば失敗判定を受けてリキャストに入る、ここで【暴虐の雷獣】を発動させれば勝て────────
「─────る訳ないから直接叩く!! 【静かなる電光】!」
杖弓に雷が走り、矢が番えられる。
ついでに二本物理矢!
「最速……!!!」
既に「彼」もなんらかの即時発動できる魔法で矢を番えている。全速の早撃ち勝負はほぼ互角、クリオネちゃんの【ウォーター・ジェット】で回避、モーションからして「彼」は【爆水】を切った、【雷撃の道筋】の失敗エフェクト、今!!!!
僕が至金の歯車・過密を発動するモーションを見せる。
ぜっっっったいにここで「彼」は僕が再度詠唱なしの【暴虐の雷獣】で決めに来ると踏む。というかそうされた場合対処しなければ負ける以上「彼」側に対処札を切らないという選択肢は存在しない。
雷を受けられる手段は【雷撃の道筋】以外にはたった一つ!
『…………!!!!』
遠距離無効の封将アンモーン・オトゥームの【異形術】!
もしくは賭けに出て【炎雷之鯱】だが、少しでもリスクを減らすなら暴発みたいな心配のないそっちだろうと思ったんだよ!! 元々【蛇】の異形術で腕増やしている以上、今すぐ発動するわけにもいかないだろう!
「てなわけでビンゴだ!! 【異形術・腐乱竜】!!!!」
「至金の歯車・過密」の発動を腕をぶつけずスカらせることで中止。コチラが代わりに使用するは本邦初公開、いつぞやの青竜の影響で異形化の被害を受けたモンスターの素材より作成した異形化ポーション……!
杖弓をクリオネちゃんの方向へ投げ捨て、巨大化/腐乱化した竜の右腕を「彼」へと向ける。
「コイツはHPを削ることで群体の小魚を精製、特攻させる……!」
ちなみに着弾次第爆発する。
とはいえ十体生み出せばHPは5割削れるし魔力そこそこ食うしであんまし良い攻撃手段ではない。
が、あえてこいつを選択する理由はたった一つ。堅実な戦法を取るアンモーン・オトゥームとの相性の良さである。ついでにまぁ……戦術的な理由じゃあないんだけれど音ハメで撃ったら気分良いかなって。ごめん後者が本音の可能性がそこそこあるかも。
目を見開いたナナさんにもこの感情が伝わってしまったのか、よりはっきりとした歌声が鼓膜へと届けられる。
「行く、ヨ【ウォーター・ジェット】」
クリオネちゃんとナナさんにそれぞれの方法で背中を押されて「彼」と僕の距離は既に10メートル未満。今までの戦いで培った間隔が7メートルと少しだと告げている。
根拠のない絶対に正しいという勘の中、音楽にあわせて手拍子をするように腐乱体が叩きつけられて爆発する!
『…………!!!!』
『ラ、ラ、ラ──────』
歌姫エリーゼが声を張り上げて周辺の海流操作権を奪ったのか、その内6発は直撃しなかった、けれど削れてる、ならばさらに前のめりに!!
「【加算詠唱】!!!」
「雷結びの耳飾り」での魔法詠唱、手に呼び出すは「海喰いの魔剣」、ついでに【異形術・桃花甲】により逆手に盾を生み出す。
いつもより詠唱のノリが良い。
身体がイメージした通りに動いている。
そのイメージも次々に湧いてくる!
どの動きにしようか、どうやって次の射撃を避けようか。どんな形をとっても詠唱を失敗する気すらしない……!
無数に集めてきた手札の有用性と面白さに今更ながら気づくような、そんな感覚に包まれながら「非流動性海水」により作り出した足場を踏みしめてさらに前へ。
クリオネちゃんに盾の裏でハンドサイン、前方へ向けて【ウォーター・ジェット】起動、直後に後方への【爆水】、前後の反復横跳び(縦跳びと言うべきか?)を経て「彼」の目前、「海喰いの魔剣」を振り抜いて「彼」に一切当てることなく「杖弓」だけを斬り飛ばす。
知っっってるんだよお前に当てに行ったらエリーゼが全力で護るってことは!!!
逆に言えば当たらない攻撃には強く反応しない!AIらしさと人間らしさを両方持ってる分対処はしやすいんだよ!
「【エリア・サンダー】!!!」
距離感完璧、自分の超常的な感覚野にさらに高揚しつつ、後方に効果時間ギリギリで「非流動性海水」を発動させて作った足場を踏み締めて、「彼」の胸部に蹴りを叩き込む……!
もはや成功することが怖いまである!
よろめいて後退した「彼」の後ろには慣れ親しんだ雷のフィールドが形成されている。
『…………ッ!!!』
アンモーン・オトゥームの【異形術】はクリオネちゃんと違い遠距離攻撃を無効化するのみ、至近距離で放った【エリア・サンダー】は受けるだろう!
「なんだ……、なんで、なんだ……!?!?」
口に出した絶好調への困惑や心を満たす高揚とは別に、頭は恐ろしいまでに冷静だ。
スタンを喰らう「彼」への追撃のためクリオネちゃんから杖弓を受け取って【詠唱短縮】起動。
『ラ、ラ、ラ───────』
必死になって歌うエリーゼを横目に脳内で無数の時計が使用したスキルのリキャストタイムをカウントしている。
少し遠くでナナさんの歌声が響き続け、杖弓を届けるためと「彼」を【エリア・サンダー】から解放するために海流を無理して操った歌姫エリーゼの領域が減少している。
「【雷轟の矢】」
破壊された空間の割れ目から差し込んだ一筋の光がナナさんを祝福するように煌めき、スポットライトを浴びた彼女は気持ちよさそうにさらに高らかに歌う!
「【雷撃の道筋】のリキャストが後数秒あることは知ってるよ!!!」
『…………!!!』
『ラ、ラ、L『だから、この深淵に希望を見て欲しいの!!』』
歌姫の……いや、エリーゼの歌を掻き消すようにナナさんが叫び、「彼」を対比させようとする激流が横入りした海流と合わさり消える、これは─────
『ま、だ……【アナタヲマモルタメ】』
────虚空から、いや、きっとずっとそこにいたもう一人のクリオネちゃんの声がする。
【雷轟の矢】を海流の盾が防ぎきった。世界の主導権はさらにナナさんの優勢へと進んでいる。
なんだ、僕は、なにを……??
大切な人たちに護られきった「彼」が再び立ち上がり、コチラを見据えている。
数秒の静寂……お互いに構えるのは杖弓。
第2ラウンドが、始まった。
シュテルメアの様子が……
次回更新日は未定です。頑張ります。
今回も一月は書けないと思ってTwitter載せたのに一晩で書きましたからね。本当に未定です。