不倶戴天   作:雨傘なななな

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海よ、海よ! 其の三

 こちらの優勢な雰囲気は長く続かない。

 

『グゥオオオ!!!!!!!』

 

『……ッ!?』

 

 スタンがとけてなお、ヘイトを集めるため短槍で攻撃していたミレィさんが咆哮を受けて大きく弾かれた。距離が空いたことで一瞬の“溜め”ができたらしい。「海の化身」の突進攻撃が三度、お返しとばかりにスタンを食らったミレィさんを襲う。

 

『ゴ、アァァァッ!!!!』

 

 突進の速度、大きく開かれたその口は一撃で食いついた獲物を殺し切るだろう。

 スタンを食らっているミレィさんは回避行動をとることすらできない。詠唱を止めるわけには行かない。ココで止めれば次手がなくなる。だから……、

 

『まずっ……!』

 

 パチン、と、指を鳴らす音がたしかなイメージを伴って海中の世界に響いた。

 

 詠唱は止められない。だが、ミレィさんが今リスポーンしてしまったとして、僕だけでの勝ち目はない。そのどちらも通すためのアイデア。

 指を鳴らすことで無言でありながら魔法を発動させるイメージを固めきる! 発動するのは先程待機させておいた【ウォーター・ジェット】。もちろんミレィさんにダメージが入ってしまうが、これを当てることでミレィさんの位置を無理やり動かす!!

 

『た、助かりましたぁ……!』

 

 ミレィさんの言葉に手を振ることで答え、噛みつきを空振った「海の化身」へ詠唱を終えた魔法をぶつける……!

 

『【雷轟の矢】ッ!!』

 

 威力と速度とスタン、そして詠唱のある程度の短さ。その全てを兼ね備えたシュテルメアお気に入りの魔法が引き絞られた杖の照準を得て「海の化身」を貫いた。

 

『ゴ、ガァッ!!!』

 

 スタン発動。いやー我ながら魔法構成の性格が悪い。

 やはり詠唱は止めない! 次の魔法の詠唱、てかこれ最後まで集中力持つか……!?

 

『【詠唱短縮】【魔法待機】……ッ!』

 

『こっちですよぉ……っと!』

 

 スタンが解けたらしいミレィさんがヘイト集中スキルを切り、逃げ始める。

 

『ここらでこのアイテムのお披露目どきですかねぇ』

 

『!』

 

 ライブラリから受け取った支援アイテムその3、またまたアクセサリー。装備、アクセサリーは拡張性があって奥が深くとても面白いわけだが、今はそのへんの話をしている場合ではないので割愛する。

 というわけでそのアクセサリーというのがコチラ。

 

 

・海中移動促進筒

テッポウリュウと呼ばれる水生モンスターの排水器官を流用し作成されたアクセサリー。二分間水中にいることで溜め込んだ海水を利用して疑似【ウォーター・ジェット】を放つ事ができる。(これによる攻撃ダメージは反映されない)

また、このストックは3回まで保持できる。

起動キーは【爆水】。

 

 

 コレを一人二つずつ装備する訳だ。うーむ、ストック一つにつき2分かかるとは言え、詠唱なしで魔法を使用可能とか、とんだぶっ壊れアイテムである。なんでもクターニッドに挑んだプレイヤーが偶然倒したモンスターのドロップから作られたもので、少なくともライブラリが把握している範囲では数が6つしかないらしい。このアイテムと引き換えになんの情報をそのプレイヤーが得たのかは社外秘らしいが、かなり特ダネをもらったようだ。

 

 ここまでの移動に二人共6回分のストックが溜まってある。ほんっとーにライブラリ様々だ。ちがうか。ミレィ様々だ。

 

『まぁスタン貰ってると発動できませんけどねぇ……』

 

 ちなみにこれが先程僕が待機魔法を使ってまでミレィさんを助けた理由だ。他にも説明文にない制約がいくつかあり、お手軽ぶっ壊れアクセサリーとは行かない。

 

 一番やばい制約はこのテッポウリュウの肉部分がアイテム化したもののフレーバーテキストにある「人間には毒だが、その毒をものともしない巨大生物には海中世界でも上位にはいる美食として日々狙われている」という一文。つまり……ヘイトが集まるというか……モンスターが集まってくるというか。

 

 どうやら今回はイベント扱い……いや、おそらくこの時期の「海の化身」の縄張りに他モンスターが寄り付かないためその意味はないが、普段遣いはしたくないものである。

 幸いというか当然というかミレィさんも僕も同数装備しているため、実際のスキルや厄介度に新たな考慮しなければいけない要素が加わったわけではないのが救いだ。

 むしろ手札の一枚として切り札を使う直前にこのアクセサリーを一つないし二つ外すことでミレィさんにヘイトを押し付けるというものはあるが……このアクセサリーは取り外すとスタックが解消される。使えるのは一度きりだ。慎重に機会を伺わねば。

 

『【爆水】起動ですよぉ!!』

 

 腰のあたりに生えた二本のバーニアのようなアクセサリーから海水が噴出し、ミレィさんをヘイトを受けて暴れる「海の化身」から引き剥がした。

 

『【ウォータージェット】……よし、待機完了。ミレィさん、6回しか使えないんだ! 2分に2回がベストの使い方だぞ!』

 

『ミレィ先生のことを舐めすぎではぁ!? 分かってますよぉ!』

 

 そう叫びながらも再び【ウォーター・ジェット】を起動し移動速度を上げたミレィさんが短槍特有の突きスキルを使い「海の化身」へと攻撃。かなり怯ませた! ココで……すぐに僕も追撃、とは行けないのが魔術師の辛い所……いやッ、使い所だろ!

 

『【ライトニング】ッ!!』

 

 使用するのは事前に作り溜めしてある使い捨て魔術媒体! 普段の狩りじゃ割に合わないが、惜しんできた分をココで投入する!!

 

 短槍の一撃と【ライトニング】を受けて、「海の化身」が怯んだ。同時に、やっと【加算詠唱】のリキャストが終わる!

 

『【加算詠唱】!!』

 

 【ウォータージェット】を待機し終わってからここまでの時間を詠唱するか、【加算詠唱】のリキャストを待つかの択。今回は後者を選んだが……これが吉と出てくるか凶と出てくるか……!

 詠唱をしながら、アクセサリーを一つ取り替える。

 いつもよりも二つアクセサリースロットが埋まっているのだ。元々他人に比べてそこそこおかしなビルド(魔術師の補助アクセサリーの装備数よりも水中適応用のアクセサリーの装備数が多い)故、あまり大した問題ではないが、アクセサリー欄は現在6個しかない。常時コンソールを開き続けるぐらいの勢いでなくては。

 

『お借りしますよぉ!【ライトニング】!』

 

 加算詠唱はろくな結果を産まないと踏んだであろう「海の化身」がコチラへと照準を帰るのを見越したミレィさんが渡しておいた使い捨て魔術媒体を使う。直後にヘイト集中スキルを使用したことでもはや「海の化身」の視界に僕はいない。

 

 取り外したのは海魚人形、取り付けたのは雷魚の護符。つまりより前のめり! 少しでも高い火力を!!

 

『詠唱完了、喰らえッ【雷轟の矢】ッ!!』

 

『ガァァァァッ!!!!』

 

 雷の矢が「海の化身」を貫く。

 魔法が着弾するのを確認すると共に開けっぱなしだったコンソールをいじり、さらにアクセサリーを変更する。

 検証に検証を重ねてわかったことだが、この雷魚の護符というアイテムはスタン時間に影響を及ぼさない。今すぐ変えた所でスタンしている「海の化身」に邪魔される心配もそのスタンが一瞬で解けることはない。あまりの体格差にすぐに解けはするが。巨大生物め。

 

『……【詠唱短縮】』

 

『私のターンですねぇ!?』

 

 今「海の化身」のヘイトはこちらにある。ミレィさんに合図を出し、【エリア・サンダー】の詠唱を開始。ついでに待機中の【ウォーター・ジェット】と【爆水】を放つための備えもしておく。

 

 せっかくの海中フィールド、四次元的に使わねばもったいないというものだろう!








シュテルメアのアクセサリー大公開コーナー。
現在のシュテルメアのレベルは94であるため、アクセサリースロットは6個解放済みです。

・海中移動促進筒(本来は海水の瓶)
・海中移動促進筒(本来は護剣のペンダント)
・海魚人形(適時、雷魚の護符へ変更)
・水霊のコイン(適時、魔縮の髪飾りへ変更)
・孤独の足輪(適時、雷石の指輪)
・智者の指輪

です。
それぞれの効果はゆっくり話内に出していきます。
どこかで書いた移動補助アクセサリーが孤独の足輪(AGIの実数値強化)で、代わりにつけた雷系統威力強化のアクセサリーが雷石の指輪です。
雷魚の護符と雷石の指輪は護符系と宝石系なので重複せず同時に効果を得ることができます。
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