不倶戴天   作:雨傘なななな

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見上げた空、広がる海、ただ貴女に会うために
一定のラインを超えると突然装備が一点物ばかりになるやつ。


 ユニークシナリオクリアから1日。

 謎にキョージュの文面がしょぼくれていると言う問題こそあるものの、ライブラリとの取引は無事に完了した。

 龍災の影響でそもそも大半の高レベルプレイヤーが新大陸にいる現状、クターニッドの挑戦権はそれほど人気がないらしい。まぁ新しいコンテンツに挑みたくなる気持ちは理解できないでもない。クリオネちゃんがかかわらなければ。

 

 3日後に規定のプレイヤーがユニークシナリオを発生させた状態で港に来るため、その日その時間にその場所へいれば、自動的に僕はクリオネちゃんに会いに行けるらしい。やっと、やっとである!!! 長い、長い、長い溜め期間だった……!!!

 

 それまでにできるだけ装備やレベル、スキルを整えておき給えよというキョージュのありがたいお言葉に従い、僕は今プレイヤー最高峰の鍛冶師との面談を行っている。

 

「それで、イムロンさん。その素材は……貴方のお眼鏡にかかりますか?」

 

「……………まぁ、問題ないわ、ぜ」

 

 うむ。噂に聞いていた通りとてもロールプレイの剥がれやすい人のようだ。

 熱心に僕が先日得た「海の欠片」を眺めるその姿はたしかにどこからどう見ても凄腕鍛冶師なのだが……。

 

「……そもそも、なぜ旧大陸に?」

 

 彼、と一旦呼称するが……彼はつい昨日まで新大陸で龍災の渦中にいたはずだ。わざわざほとんど使い手のいないという転移魔術を利用してまで旧大陸に返ってきた理由が!僕には想像もつかなかった。彼の武器を望むプレイヤーは、新大陸にこそ多くいそうなものだが。

 

「会いたい……鍛冶師に会うためよ、だぜ」

 

「?」

 

 ライバルだ、と彼は言う。もしかせずとも彼女と呼ぶほうが良いだろうか?

 その意味は測りかねたが……鍛冶、そしてそのライバルとやらにかけるイムロンさんの熱量は、僕のクリオネちゃんへの執着と同様に煮えたぎっているように見えた。

 ならば、そのために必要なことなのならば彼女は何でもできるのだろうと納得することにした。

 

「俺には今! 新たな発想がいる……!!!」

 

「はぁ」

 

 とはいえ突然荒ぶられると怖い。ビビった。

 

「このアイテムを使った装備は、どのようなものを想像しているの!?」

 

「え、あ、えーと、水中専用です。水系統の魔術で移動を行うんで……それ目的の。できれば片手で持てるものかな。」

 

「なるほどなるほど……この海の欠片の灯籠、良いデザインだわ……その形を崩すのはもったいないわね……かと言って杖の先にドッジボールくらいの物体をつけるのは重くなりすぎる……」

 

 ブツブツとイムロンさんが完全に素の口調で装備のデザインと性能を決めていく。とても……そう、とてもありがたい話である。

 ライブラリ(というよりミレィさん個人)の紹介で会った彼女は、多忙な中わざわざ僕の装備を作ってくれるのだから。

 オーダーメイドというわけだ。

 

「金額は?」

 

「素材はほぼそちら持ちだも……だからな、コレぐらいで」

 

「おーけー」

 

 正直目玉が飛び出るかと思った。

 僕は「海の化身」のユニークシナリオで結構な貯蓄を投じたものの、装備以外、いや装備にすらそれほどお金をかけない。一番かけたアクセサリー関連もここまでではなかったはず。お陰でそこそこの金額が残っていたのだが……その四分の三が消えた。すげー、1回でこれとか、さすがプレイヤー最高峰。

 ただ、もちろん断るという選択肢はない。もちろんクリオネちゃんに会うためだからだけれど。

 

 ……それと、あの「海の化身」の理性として生きた人々の想いを中途半端に扱いたくないというのも大きい。

 

「あー、よし。方向性は決まった。他の依頼との兼ね合いもあるから……2日後にここに取りに来てくれれば」

 

「わかりました」

 

 軽く挨拶をして、部屋を出る。

 現在地はフィフティシアだ。つまり……イレベンダルからフィフティシアにライブラリと交渉に行った後、イレベンダルにユニークシナリオのために戻り、その後イムロンさんとの交渉にフィフティシアに出てきて、今からイレベンダルに戻るわけだ。

 最近海以外を移動することが増えたな……。クリオネちゃんに近づいているからこそではあるが、はやく深海へ探索に行きたい気持ちも大きい。

 

 このゲームには素晴らしい景色が深海以外にも多く存在することは知っているが、想定以上にあの暗く壮大な世界が僕の性にあっていたらしい。

 

「まぁそれ自体は良いことではある」

 

 このゲームの主戦場が地上であることを考えなければ。

 ミレィさんにイムロンさんを紹介してくれたことへの感謝のメッセージを送り、フィフティシアの街を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 無事イレベンダルに辿り着き、僕はコルトさんの鍛冶場に顔を出していた。理由は簡単、武器の進化をしてもらうためだ。

 イムロンさんとの交渉で水系統の強化に特化した杖を新たに作ってもらえることになった以上、普段から使っていた杖を雷に特化させる必要がある。

 

「こんにちわー」

 

「おうシュテルの兄ちゃん! 装備の……強化の方かい?」

 

「そうですね。杖を雷系統の強化に特化させたいんですけど……できますか?」

 

 ふむ、とコルトさんが口元に手をあてて、考え込む。

 

「できないことは……ねぇな。雷の属性を持った素材があれば。あいにく俺の手元にはねぇが……」

 

 僕は海生モンスターは数多く倒し素材を集めていたけれど、雷の属性を持ったモンスターに出会った記憶はない。確か掲示板で海のモンスターの中にアトランティスレプノルカ……?とか言ったそれこそ「海の化身」と同格であろうモンスターがいるらしいが……。あれ深海生物なんだよな。

 

「雷の属性を持った素材に心当たりは?」

 

「…………奥古来魂の渓谷の両上……水晶群蠍の棲家があるのはわかるか?」

 

「もちろん」

 

 イレベンダルまで来る道のりで一度立ち入ったことがある。3秒で死んだ。え、あそこ……!?!?

 

「もちろんあんな魔境に入れってわけじゃねぇ。そこから去栄の残骸遺道側に少し進むと、あの水晶のおこぼれを貰うためにワイバーン達が適応して群生してるはずだ」

 

「えーと、そいつらが雷属性を?」

 

「おう。奴らの名はライトニングワイバーン。めんどくせぇ相手だと聞いてるが、シュテルの兄ちゃんなら勝てねぇ相手じゃねぇはずだ。そいつらの心臓部が現状使える最高級品だな」

 

「……分かりました」

 

 正直海中じゃない時点で不安しかないのだが、ユニークモンスターに挑みに行くというのに今の量産感丸出し装備ではいけないだろう。

 

「パーティーメンバー……ねぇ」

 

 やはりこういうとき、前衛がいると大きく違う。

 ミレィさんと共に戦っていたときの動きやすさを思い出してしまう。……できればクターニッドに挑む過程なんかで気の合う人が見つかれば嬉しいかな。……ミレィさん、ひいてはライブラリの検証班に継続的に迷惑をかけるわけにもいかないし。

 

「行ってきます」

 

「おう、気をつけてなー」

 

「もちろんです」

 

 店を出た。

 とりあえずここまで来る過程で装備していた地上戦用アクセサリーシリーズで問題なさげだけれど……ライトニングワイバーンとやらの弱点ぐらいは聞いておけばよかったと後悔を残しつつ、去栄の残骸遺道へと向かい始めた。

 1レベルは上がれば嬉しい。

 

 アイテムを渡してから武器の完成まで1日はかからないぐらい。つまり、今日中にアイテムを手に入れて、コルトさんに渡し、次回ログインで装備を受け取った上でイムロンさんの元へ向かうのが最適解だ。多分。

 

「魔術の効きが良い訳ないんだよな……雷と水しか使えないんだけど僕」

 

 雷の属性を操る地上の相手! 苦手な要素しかない。

 

 レベルもかなり上がり、実を言うと今回の敵はそこそこ格下。まぁさすがに耐性を貫いてダメージを通せると信じている。頼むぞまじで。

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