「いっ、てててて……」
リスポーン。
愚かにも水晶群蠍に挑んだ代償である。
今回の成果は、かなりの数の雷蜥蜴の鱗や爪に加え、水晶群蠍に挑む前は18個だった宝核が26個にまで増量した。いくらになるか楽しみである。
「とはいえ〜〜〜よっっっ、し!!!!!」
ついガッツポーズが出る。
僕が水晶群蠍へ魔法を撃った直後に襲いかかってきた雷蜥蜴達は当の水晶群蠍によって全てたった一撃で葬られた。いやマジでやばかった。「雷蜥蜴の逃げ場」内で見える位置にいたライトニングワイバーンを全てあわせても殺し尽くすのに数秒しかかからないとは。
ただ、その蹂躙されたライトニングワイバーン達が水晶群蠍を足止めするために放った雷属性の攻撃は大きな成果を僕に与えてくれた。あのつるはしの一振りが落とした物、そう!!!
・ローエンアンヴァ琥珀晶
たった一欠片!!! たった一欠片だ!!
命を捨てて、虎の子の【瞬間転移】の使い捨て魔術媒体を使って、つるはしも落として、周りにいたライトニングワイバーンを全滅させて(僕の力ではないが)、全力で雷フィールドを張って邪魔をして、やっと一欠片!!!!!!
でも多分あれ2度は効かないタイプの攻略法だ。今回すら一欠片のために死んだわけで、次回はライトニングワイバーンも水晶群蠍も本気で僕を殺しに来るだろう。困る。
ただ、「煌炎樹」から出た樹液が琥珀と化したというこのドロップアイテムは、稀に太古の魔力や生物を内包しているらしい。
……光にすかして琥珀の中を覗いても、なにかが内包されているようには見えない。ガチャで狙いと違う大当たりを引いた気分だが、まぁ詳細が判明する前に諦めるのもおかしな話だ。
どちらにせよ明らかに魔法職の装備を強化するのに使えるアイテムに思える。もしも太古の魔法を内包しているのならば、使い捨てアイテムのような形で切り札になり得るかもしれない。
「海の欠片」を使った短杖を受け取るときにどうにか使えないかイムロンさんに聞いてみることにして、他のドロップアイテムの換金と装備の強化に受け取りに宿屋を出た。
「そもそも、エイドルトじゃあの崖の水晶を使ったものは割と流通していたとはいえ……取りにくい場所にあった以上、レアな可能性は高いと思うんだけどなー、どうだかなー」
エイドルトでは崖から溢れ出た水晶を有効活用しているとは聞いた。
それはめちゃくちゃ高い水晶ではないのか? なぜ?
見た目、フレーバーテキスト、来歴。その全てから明らかに高級品かつ強力な一点物を予感させるようなドロップアイテムが大して強いアイテムでもなく、街で市販されている可能性……考えたくもないなぁ……。
目的だったコルトさんの店につき、ガラリと扉を開ける。
「コルトさーん」
「お、シュテルの兄ちゃん。宝核はとれたかい?」
「もちろんです」
促されてガラガラと26個もの宝核をカウンターに置くと、目を丸くしたコルトさんに頭を引っ叩かれた。こんなに使わないらしい。
「何個使えます?」
「短杖の強化だ。そうだな……5個。+3つは装備を格安にする対価に受け取ろう」
「おおう18個余った……」
どうやら水晶群蠍に挑んだときに得た分で事足りたようだ。まぁあのライトニングワイバーンを狩る時間がなければそもそも水晶群蠍に挑むことすらできなかったわけだし別に良いんだけども。
「これ、どうしたら良いと思いますー?」
「…………アクセサリーショップと錬金術師ギルド、後は……魔術師ギルドにでも持っていったらほとんどは捌けるだろ。あの性格の悪いモンスターは敬遠されがちだからな」
……だろうな。
水晶群蠍の生息地に直接行けることやドロップアイテムは魅力的だが、撤退がダルすぎる。諦めるのが吉だ。
「じゃあお願いします」
「まかせとけ。あとそう、街の地図はあるか?さっき言った店とギルドに印をつけてやろう」
それはまじで助かる。
「そうだ、その前に」
◆
どれほどのアイテムだったのかの試金石にするため、コルトさんにローエンアンヴァ琥珀晶を見せた所、彼ではこのレベルの素材の加工及び武器化は難しいとの話だった。やはり最高峰の人間でないと難しいのだろうか?
彼の作る装備が僕の今のレベルに見合っていないと思ったことはないが、足りないなにかがあるのだろうと納得することにした。
一先ず苦労に見合ったアイテムであったことに安心すると共に、そろそろこのイレベンダルの街が僕のレベル帯に合わなくなってきたことを感じさせられる一幕だった。
「今日はもう狩りにはいけないよなぁ……」
一旦ローエンアンヴァ琥珀晶から離れ、今日の残りの時間の行動に思考を移す。
幸い、ログアウトの予定だった時間まで後三十分ほどある。(死に戻ったお陰で移動時間が省けた)その上、手元に杖もない。
ちょうど街を回るぐらいしかすることがないタイミングで良かったーなどと考えながら印をつけてもらった所を周っていくことにした。
「いいねー、こういう纏まった金額が一回の狩りで得られると気分も上がる」
大体一つ8万マーニの宝核が18個で、計140万マーニほど。まぁ……正直「海の化身」戦で使ったマジックスクロール一つにすら負けるんだけども。うっそだろ。すごいなライブラリ。
それ+その他の素材か。総合計は200万マーニぐらいになるか?
それと、歩きながら考えたことではあるが、その得た金額をそのまま使ってイムロンさんに琥珀晶の加工をお願いする予定だ。素寒貧まっしぐらである。
あこれおねがいしますーそうですねーやっぱり不足してますよねー、え、色つけてくれるんですか嬉しいですー、それでは、はい、はい、そうですねー、その金額で……はい。ありがとうございましたー、じゃあ失礼しますー
「三軒目完了。どこも不足してる素材なんだなぁ……プレイヤーならわりと数集めれそうな雰囲気だったけど、移動時間と得られる利益と敵の強さを加味したら美味しくはない判定なのかも」
肩を竦めながらつい独り言を口にした。まぁそこも含めてコルトさんは僕に宝核をとってこいと言ったのだろう。
報告もかねて宿屋に戻る前にコルトさんに会いに行って聞いたところ、そのつもりはあったが20個は多かったらしい。
それと、何故か最初から依頼だったことにして報酬をくれたコルトさんには頭が上がらない。ありがたい話である。
ちなみに当の報酬がこちら。
・鍛冶師の符号
腕利きの鍛冶師が戦士を認めた証として手渡す護符。
コレを持つ者が武器と共に生き、武器と共に死ぬ誇りを持ち合わせているのだと言うことを他の鍛冶師に伝えるために作られた。
このアクセサリーを装備している間、鍛冶師からの信頼度が上昇し、長く使っている武器であればあるほどその武器が持つ効果を上昇させる。
高き誇りを持つ戦士に武器を作ること、それは鍛冶師にとっての誇りである。
誇りを捨てて得たアイテムを売った成果としてこのアイテムを得ることがそもそもお笑い草であることを横に置けば、控えめに言ってコルトさんまじ神という感じである。拝んでおこう。
他の魔法の威力強化のアクセサリーと重複せずに効果を発揮できると言うだけで、パーティーでの戦闘時のアクセサリーセットとして一軍に入れるだろう。効果量は要検証だけども。
「前者の効果が主なら、戦闘時につけるものではないかなー」
というのが総評。ただ、所持しているアイテムが増えるというのは至上の喜びだ。アクセサリーのコレクションにまた一つ種類が増えたことにニマニマしつつ、ログアウトした。
今回出てきたローエンアンヴァ琥珀晶は封雷の撃鉄・災や兇嵐帝証・極のような無数回のリトライの上に得た比類なき力にはなりません。これに封じられてる魔力なんてせいぜい密です。呼び方はデンシティ。ちょっとあまりにもネーミングセンスがありすぎる原作者様。
雑、密、純、災、極。
他のゲームとかで出てきた流用なのかもしれないですけど、僕が一次創作で同じような設定をしようとすると、下、中、上、特上、神、とかになる気がします。ロマンがない。