・1回目
塔に入ってすぐ、触手が腹に刺さった。
・2回目
塔に入って、はじめの触手を避けた。二本目に殴りつけられて壁まで吹き飛んだあと、連撃を受けた。
・3回目
二本避けた。死んだ。
・4回目
さっきより退化した。一本目を避けられなかった。フェイントを入れるのは反則ではないだろうか。
・5回目
ようやく「僕を食べてください!!!!!!!」が言えた。
困惑の隙に接近したが、明らかに接近されたときに使うようの触手の動かし方をされて壁際まで戻された。そこからは連撃。
・6回目
あまりの絶え間ない挑戦と敵意のなさにクリオネちゃんが困惑しているらしい。困惑している姿も良いものだが、やはり食べられたいところだ。頭が8つに割れるところをまだ僕は見ていない。
ちなみに触手で足を取られたあと塔の外に放り出されて動けないまま半魚人に殺された。
・7回目
さすがにさっきみたいな死因はごめんだ。
「君に!!!食べられたい!!!!」と言ったら今度は触手による溜め攻撃を喰らった。リスポーン。
・8回目
新記録。5本避けた。死んだ。
・9回目
調子に乗った。初手で触手攻撃ではなく直接平手打ちを頂いた。
僕はクリオネちゃんに食われたいのであってドMではない。
・10回目
6本。死んだ。
・11回目
クリオネちゃんもさすがに飽きてきたらしい。
僕はまだ食われていないのに飽きるもなにもない。まだまだ頑張りたい。
・12回目
魔法を解禁することにした。
詠唱し始めた時点で触手を避けきれなくなって死んだ。
・13回目
今回の作戦はこうだ。
【魔法待機】した【ウォーター・ジェット】で一気にクリオネちゃんの懐に入りこみ、触手が届かない場所で僕を食べる以外の選択肢をなくす。
おかしい、【ウォーター・ジェット】を発動した瞬間触手の壁を建てられた。弾かれて硬直しているところに触手をもらった。
・14回目
魔法なしで避けに行った。8本!!!
・15回目
ちょっとクリオネちゃん可愛すぎない???
ミレィさんが書いた絵も素晴らしかったけど実物はやはり神としか言いようがない。ちなみにコレはあまりにも勝てる気がしないので現実逃避だ。詠唱をはじめる前に殺された。
・16回目
僕は別にクリオネちゃんを傷つけたくないわけではない。クリオネちゃんとの死闘の果てに食われるのも一興だと思っている。本気の魔術を解禁した。
え? 【ライトニング】が当たる前に霧散するんだけど。呆けていると触手を食らわされた。
・17回目
【ウォーター・ジェット】も【魔法待機】も霧散した。
まさか直接攻撃しない魔術も使えないとは。さっきは使えた理由もあるはずだ。なんだろう。
ちなみに今回はシンプルに物量で殺された。
・じゅうはち……「なぁおい」18回目
集中が乱れた。
一本目を避けきれなかった。
・19回目
「なぁおい、シュテルメア君」
ずっと上半身を重点的に見ていたが、下半身のモンスター部分も最高である。もちろん両方あわせて初めて神になるのだが。
ちなみにそれに気を取られて5本目で壁に追いやられた、壁際からの脱出方法を考えればもう少し勝負になる気もする。
「なぁ」
・20回目
そういえば忘れていたが、リスポーン直後はステータスが下がっている。本気で攻略するときには時間を置いてから挑まねばなるまい。今?食われるのにステータスなんて関係ないでしょ。
「あのな、おい」
・21回……「おまえさ」目
十撃目まで避けることに成功した。気分は大縄跳び。近接職ならもっと簡単に喰われていたかもしれない。
・22回目
「あのな……」
魔法はやはり霧散する。もはや【ウォーター・ジェット】も完全に見切られている。というか最初の一回がなぜ撃てたのかが想像もつかない。クリオネちゃんの状態に関わらず無効化されている。
「おい、聞け、シュテルメア!!」
「……?」
23回目の挑戦に向かう直前、たしかライブラリの監視役をしていたはずのプレイヤーに呼び止められた。
正直、はやくクリオネちゃんに会いたいし、クリオネちゃんに食べられたいのだ。この蜜月を邪魔しないで欲しい。食べられたいのもそうだが、この戦いをそもそも僕は楽しんでいる。
みたいな心からの言葉を口にして封塔へと向かおうとするも、僕の肩を掴んだ彼は心底意味がわからないという顔でこう叫んだ。
「クリーオ・クティーラは!!!! 魔法無効だぁぁぁぁぁああああああああッ!!!!!!!!!!」
「…………!!!!!!!」
ああ、そうか、薄々そうではないかと思っていたが、僕がここで魔法職を選んだということはやはり!!!
「運命……ッ!!!!!」
「は? いやいやいやいや!!! 違う、そうじゃねぇ! あんたには他の役割が……!!!」
「ノルマが終わったら手伝うよ」
ただ、ユニークシナリオクリアの邪魔をするのは流石に気が引ける。時間が空いたら彼等による他の封塔攻略を手伝わねば。
「ノルマって?」
「……1日百回?」
「く、狂ってる……!」
彼の言葉はもはや耳に入らない……!!
僕は彼を押しのけ、封塔へと突入する……!!!!
・23回目
2本避けた。死んだ。
・24回目
彼の言う通り本当に魔法が使えないらしい。
これは運命に違いない!!!
僕は彼女を傷つけられない!!!!
・25回目
「非流動性海水」や「水流打」は使用可能なようだ。触手を防ぐのには使っていきたい。
そちらの検証に意識が行った。死んだ。
・26回目
「非流動性海水」で触手を一瞬固定、それでも襲ってくる触手を2本避け……懐に入った!!!
どうすれば食うモーションに入る!?
とか考えているうちに背中から触手で攻撃された。
えっ、後ろから攻撃されたら─────!!!
死んだ。
・27回目
フェイントが洗練され始めた。僕にクリオネちゃんへの決定打が一切ないことも気付かれている。詰んだ?
・28回目
詰んでいなかったらしい。食うか迷うようなモーションを頂いた。やはり懐に入るのは間違っていないみたいだ。
・29回目
ミスった。焦った。
・30回目
近くでずーーーーーーっと見ているライブラリのプレイヤーの目がすごい勢いで死んでいっているので、この挑戦で今日は一旦我慢しようと思う。
あといつのまにかライブラリのプレイヤーの横にいたキリキリ舞いさんも目が死んでいる。
ココの所装備は昔使っていた安物だけで挑んでいたのだが、僕の最強装備でいく。アクセサリーはソロの移動強化に重きを置いたものを。魔法の威力上げても意味ないからね。
「お前は常識人そうに見えたんだけどなァ……」
何を言ってるのか分からないな。僕は癖に全力なだけの常識人だ。
「行く、ぞ!」
塔に入る。既にフェイントには限りがあることは分かっている。一本目の触手の動きが変えられないところまで来るのを待ってから、かわす……!
うまく行った。一本目を躱すと数歩進めるし、数歩進めさえすれば触手は単調で隙を潰すだけの攻撃に変わる。
「非流動性海水、起動!」
躱した触手を止める。
一瞬とは言えその一瞬があれば、僕はさらに2歩進める!
喰うか迷うモーションは、一定距離に踏み込んだら始まる。普通なら躊躇なく喰われるはずだから僕のなにかが嫌で食べてくれないのだ!!
ならば、食べやすい距離を10秒以上保持し続ける!
既に迷うモーションは始まっている。頭が微妙に開きかけている。ちょっと化け物の割りに人間味が強い! 萌ポイントだ!!
かわいい!!! 美しい!!! 死ぬほどかわいい!!!
そう! もはや殺されたいぐらいの!!!!
「好きだ!!!!」
「…………!?」
叫ぶ。
僕の退屈な日常を明るく照らしてくれる君は、まさしく誰よりも美しい!!!
「…………!!!!」
何かが彼女の逆鱗に触れたらしい。より激しく振り回される触手を必死に数本避け、さらなる愛を叫ぼうともう一度クリオネちゃんの顔を見ようとして……
「き、た!!!!!!」
そこに美しい半透明の頭部はない。代わりにいっそ元よりも美しいほどに禍々しい僕を食わんとする開ききった頭部があった。
避ける気もない。
そして僕は、クリオネちゃんに喰われるというこのゲームに置ける目的を果たしたのだ。
◆
「さ、クターニッドの攻略の話をしましょう」
「お、おう……怖……」