【加算詠唱】【ハイレート・スペル】【雷撃の道筋】その他スキル、アクセサリー、防具、共鳴の雷単杖の「共鳴」効果など、様々な強化を乗せて、【暴虐の雷獣】の詠唱が滑るように進む。
一瞬、【海の化身ここにあり】の使い所かと迷うが、あのスキルのクールタイムは一週間。ココで使ってはクターニッド戦で使えなくなってしまう。
「三十秒は1人で稼げる! 他は全員キリキリ舞いの援護に行ってダメージ稼げ! 詠唱の長さからして一撃で倒せるだろ!」
「肯定:まかせますの」
「了承した!」
「タンクが三十秒回復なしって正気か!?」
それぞれ信頼や心配を口にしながらもキリキリ舞いさんの方へと走り寄り、銃器による攻撃、アイテムによる回復、剣撃を放った。
僕も臥竜点睛さんからの信頼に応えるべく、不発のリスクを取ってでも詠唱の速度をさらに上げる。まぁ雑魚って言われるんだが。信頼とは……?
「黙って任せとけ……! スキルの条件だ、動くなよ雑魚!」
詠唱を続けるままにサムズアップすると、チラリとそれを確認した臥竜点睛さんが何らかのスキルの光を纏った。
一旦、使う予定のない「深海の単杖」をしまい、代わりに一応1人5個ずつ配られた回復ポーションをいつでも投げられるようにしておく。
流石に長い詠唱と迸る魔力に気づいた2体の半魚人がコチラへと向かってきはじめた。
大人数で止めている方はともかく、臥竜点睛さんの方は…………、いや、信じる方が可能性は高い……!
「撃ち砕け雷霆! 其は喰らい付く飢えた狂犬! 其は我が意に従い敵を滅ぼす忠実なる猟犬……ッ!」
コチラへと伸ばされた半魚人の腕をメイスがはたき落とし、鬱陶しげに繰り出される噛みつきを盾が防ぐ。
武器を使うだけでなく、肘や蹴りも使い攻撃を凌ぐ姿からは、戦いの歴史を感じさせられた。死にかけたら虎の子の回復アイテムを使おうと思っていたが、どうやら彼の能力の高さを舐めていたらしい。
さぁさぁ喰らえ、
「【暴虐の雷獣】ッ!!!」
「〜〜〜〜〜〜ッ!!」
撃ち込まれた雷撃により半魚人の片割れが悲鳴のような叫び声を上げ、泡の塊と化した。どうやら2体同時に倒さなければいけないということも魔法耐性が高いということもない、ならば倒せると確信しながら魔力回復薬を一気飲みしながら次の魔法へと思考を進める。
強化系も最大火力のバイオレンスサンダーもリキャスト中、ならば今使うのは……!
「まぁまだ詠唱覚えてないから補助がいるんだけれど……」
HPを大きく削られた臥竜点睛さんへシロミ魚さんが回復させ始めた。回復役がいなくなったにも関わらずキリキリ舞いさん達が戦っている方も崩れる気配もない。安心して詠唱の長い魔法を使えると言うものだ。
武器を共鳴の雷短杖から深海の短杖へと変更、回復アイテムを終い、魔導書を取り出して、詠唱文を読み上げはじめる。
「────其は太陽の光すら届かぬ深海の世界」
魔導書に書かれた文面を読み上げながらコンソールを開く、クソ、両手にアイテムを持ってるとコンソール操作がムズいのがアレだな……!!
「揺蕩う海月は見た、遊泳する魔魚は見た、海に棲みながら空すら喰らうその姿を!」
詠唱は覚えていないと言っても一言目を見ればそれに続く言葉は思い出せる!
確認程度に詠唱文を見ながらもコンソールを視界に収めてアクセサリーを変更可能だ。
水の魔法を強化するアクセサリーはそれほど多数所持しているわけではないが、それでもアクセサリー欄の半数を埋めるほどにはある。そろそろアクセサリーオタクを名乗れるぐらいだ。
既に詠唱も後半、一度「海の化身」へと至った経験から会得したこの魔法は、その極意、あの巨大生物が海そのものと呼ばれていた理由の一つを顕現させる!
「今こそ世界の海を統べる時! 我が前にひれ伏せ! 【空呑む海竜】ッ!!」
杖を振るえば、海が竜のカタチを得て半魚人のもう片割れへと襲いかかった。
僕の魔力では頭部のみしか再現できないこの魔法は、進路上にある海以外の全てを喰らいつくし……半魚人ことスレイビール・ダーゴーン&ハイドーラがポリゴンへと変わる姿を幻視し……
『───────我が子等よ、舞台へ』
重厚な声が世界に響き渡る。
【空呑む海竜】が異形の半魚人を飲み込む直前、なにか光ったのが見えた。だが、まさか……!
「おい嘘だろマジか!!!!」
「おいシロミ魚、これは異常事態か!?」
「当たり前だ!! 誰かが……クターニッドに挑んでる!!!」
魔法の跡、海以外はなにも残っていないはずのそこには、一切の傷をつけられていない聖杯が浮かんでいる。
「──破壊しろッ!」
シロミ魚の叫びに呼応するようにスキルの光を帯びた2本の剣が聖杯を切り裂き……しかしその聖杯に一切の傷がつくことはない。物理無効の聖杯……、魔法なら!!!
「クソッ、まじかよ……ッ!!?」
「【詠唱短縮】ッ!!」
聖杯が再び光を受け、動き出す。
止める、「非流動性海水」、弾かれた、スキルも含めた物理無効、魔法なら……!!!!
凝縮された思考が、“イベントシーンゆえ全て意味をなさない”という最悪の現実を叩き出す。今までの封将にこんな事はなかった。シロミ魚はなんと言ったか?そう、クターニッドに挑んでるやつがいる、つまり……
「おいコレ、倒せなかった封将の能力がクターニッドに引き継がれるのか!?」
「そうだよ!!!!!! 今のやつらが物理無効……そして!!!」
全員がコチラを見る、ああ、そうだ、僕が連日挑んでいたクリオネちゃんは……!
「【ウォーター・ジェット】ッ!!!!」
発動しかけた魔法が何事もなかったように消えた、これは、
「……魔法無効!!!!!??!?」
「肯定:攻撃手段を通す方法に心当たりすらありませんわね」
物理、魔法無効のラスボスとか、もはや笑えてくる。
たしか聖杯を壊すことでその能力は失われるはずだが、これではどうやった壊せと言うのだ。
「おいどうする!?」
「ちなみにここで今挑んでる奴らが全滅した時点で自分達も全員このルルイアスから弾き出される!」
「おいおいおいおい!」
順調だと思っていた。まさかこんな罠にぶつかるとは……!
聖杯は引き寄せられるように城の方面へ、見上げた海底には巨大な目玉のついた魔法陣と触手……クターニッド!!!!!!
そして、今まで島が丸ごと海底に反転させられていた世界が……反転する。
「これだからあんな馬鹿共と来るのは嫌だったんだよ! 全部ぶち壊しやがった……!!!」
「クソッ、違う、無能を御しきれなかった皺寄せが俺達に来てる……その御する能力がなかった事も含めて俺達の問題だ!!!」
「無能無能うるせーな俺のパーティーメンバーだよ!!」
フィールド変更とでも言うように空から地へと落とされる。
……焦っても意味はない。思考を巡らせる。深海で重力に引かれながらの思考、詠唱には慣れているし、挑みもせずに負けるつもりはない。今すぐ僕達全員が決戦の舞台へと行くために僕にできることは?
今まで集めた情報を最速で攫っていく。コチラの手札、相手の手札、メタ読み、全て上手く操っていたミレィさんを思い出せ、彼女ならどうする?
「クソッ、僕の魔法だと……【ウォーター・ジェット】ぐらいか? とても全員は……」
ステータスを開き、自分の使える魔法を確認する。……多分【ウォーター・ジェット】が一番マシだ。
ドンッ、と全身を衝撃が襲い、海底の世界ではない、いつも通りの空と陸のフィールドへと着地する。
……一瞬僕の今までの経験がなにも役に立たないのではないかと思考停止しかけたが、どうやら先程までの海底と陸の摂理をあわせた空間のままではあるようだ。魚達は今も空を泳いでいる。
ここからできるだけ急いで詠唱し続けて【ウォーター・ジェット】で1人ずつ吹き飛ばして向かうとして……何回×6人で辿り着く? それに魔力を使った状態であの無敵化したクターニッドに勝てるか??
「─────────提案:次世代原始人類種、シュテルメア様」
「…………?」
「
「今!?!?」