不倶戴天   作:雨傘なななな

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倶に天を戴けど 其の四

 数多のモンスターが入り乱れ、襲い来る。

 先程までとは違いクターニッドからの直接攻撃はないが、まだ直接攻撃をしてくる方がマシだったと思わされるほどの物量だ。

 水が、雷が、肉が、奔流している。

 

「ちっ……宿儀更新【トール・ハンマー】」

 

 目の端に写ったシュテルメアが雷を放とうとしていた、周囲に雷は準備されていない。おそらくアトランティス・レプノルカを引き付けつつも雑魚を散らす魂胆なはず。

 火力は高い方が良い、事前に聞いた「共鳴」効果を引き出すため、雷神の名を持つ魔法の雷を纏わせた儀礼刀を振るう。

 

 起動するスキルは効果の拡散に向いたモノを選択、雷の効果を巻きさえすればシュテルメアならば巻き添えにして数体は倒せるはずだと踏み、そちらから一旦意識を逸らす。眼の前のモンスター、体力はそれほど多くないことは経験が知っている、ならば……!

 

「これで十分だろ、【二の太刀いらず】!」

 

 弱点部位を斬った、【二の太刀いらず】はその名の通り斬ったモンスターを倒せていようがいまいがこれ以上の攻撃ができなくなる代わりに攻撃力を爆発的に高めるスキルだ。

 倒せたかどうかを確認する意味はないため、より重要度の高いことへ意識を移す。

 

「やっぱシュテルメアがいるときはこれだよなー」

 

 ダーティー・ソード起動。暫くの間、状態異常を持つ対象への攻撃力を高めるスキルに、さらに宿儀更新により剣に付与するのは【連鎖爆泡】……!

 

 刀から吹き出た泡が爆発し、状態異常、通常攻撃、爆発、とダメージの重なっていた奴らをポリゴンへと変えていく。

 

 意識を向ける対象を変え、魔法を変え、モンスターを斬り殺し続ける。

 仲間達の奮闘に奮い立たせられて、斬って斬って斬った先……まだ大量に残っているモンスター達の中に、1人の女が立っていた。

 

「……………誰だ!?」

 

「私は、」

 

 見覚えはある。そうだ、なぜ忘れていたのだろうか、集合場所に遅れてきた女だ。なぜここに?

 ああいや、クターニッドとの戦いに助力しに来てくれたのか、宿儀を更新しながらも彼女へと話しかける。

 

「モンスターを減らす、手伝ってくれ!」

 

 スキル起動、モンスターへと儀礼刀を振り下ろし、モンスターに襲われかけていながらも一切動く気配のない女の方へと不信感とともに目を向けて、

 

「──は?」

 

 赤く輝く「ヒイラギ」のプレイヤーネームと、

 

「ふふふ、美味しく頂く、ね?」

 

 自身の首を切り裂かんとする分厚い鈍色を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

「────はぁ?」

 

 首を飛ばされたキリキリ舞いさんがポリゴンの塊へと姿を変えた、いや、おい、はぁ?

 

「もう1人、美味しく頂く、よッ!」

 

 女が刃を投げた。しっかりと僕に狙いを定めたその攻撃はただの反射で【ウォーター・ジェット】を起動することで避けた、魔法待機を使ってしまった、もう次はない……ッ! 死ぬ!

 

「クソッ、【詠唱短縮】……!」

 

「あー! 避けないでよ!!」

 

 バックステップで女……いや、ヒイラギと言う名のプレイヤーキラーから逃げながらも詠唱を開始、プレイヤーを殺すのに大した火力はいらない、威力減衰込でも【雷轟の矢】ならば……!

 

「じゃあ、他をもらうよ、ね?ね?」

 

 アトランティス・レプノルカと戦う臥竜点睛さんのパーティーメンバー二人、盗賊と聖職者の首が飛んだ、モンスター達を抑えきれない、ヒイラギの強行に同様して被弾した船長を指差し、ナナさんに合図を出す。彼女ならきっと深海方面に逃げられるはず……! 後は……まだ、まだ!

 

「……了承:ご武運を!!!」

 

「クソッ、邪魔……すんなよ!!!!! 【雷轟の矢】!!!!」

 

 深海の短杖を投げることで杖を引き絞る、絶対に当てる、逃さない、殺してやるッ!!!

 放った雷の矢がヒイラギの頭部へと放たれ、

 

「あはは! 当たるわけないでしょ!」

 

 気づいていたヒイラギがスルリと臥竜点睛さんの方へと身体を動かすことで雷の矢を避けた、臥竜点睛さんの首が飛んだ、残るは僕とシロミ魚さん、それと剣士の青年、このメンバーでクターニッドに勝てるのか? いや、まだ、この女を殺してナナさんと船長を戦線復帰させられれば……!!!

 

「く……!!!」

 

 シロミ魚さんは非戦闘職、アイテムによる攻撃さえ避ければ脅威ではないと考えたのだろう、彼と放心している剣士を捨て置き、ヒイラギが僕へとジグザグに曲がることで魔法を警戒しつつも迫る……!

 

「クソッ、なら……!!【迸る雷律】ッ!!!」

 

 スタンピード、手のひらから放たれた小さな対人戦用の雷も避けられる、投げた深海の短杖が手元に戻ってきた、そうだ、まだ切り札が……

 

「【海の化身ここに……ッ!!!!!!!」

 

 深海の短杖が投げられた小さな……カードにより弾き飛ばされ、魔法が不発に終わらされた、次の手札を……!!!

 非流動性海水は筋力でレジストされた、水流打……避けられた、既に眼の前……杖でのガードも間に合わな……ッ!

 

「無駄だ、よッ!」

 

 顔に刃を突っ込まれた、詠唱もできず、身体がポリゴンへと変わる……

 

「クソが……ッ、死ねッ!!」

 

「負け犬の遠吠えって奴だよ、ね?ね??」

 

 最後の抵抗、このルルイアスで倒したテッポウリュウのドロップアイテムである肉をヒイラギの腕に付着させ……僕は死んだ。

 

 せめてナナさんが逃げ切ったことを願うが……

 

 

 

 

 

 

「あはは、うふふふふ、やったー!!!」

 

 魔法使いを殺し、剣士を殺し、錬金術師を殺し、彼女は大量に落ちる彼等の武器を前に笑う。

 

「うっふっふっ、なんかユニーク武器っぽいのもいくつかあったよね?ね?」

 

 ふ、とそのシナリオをぶち壊した女は立ち止まって考える。魔法使いの男が最後になにかつけられたのをおもいだした。

 

「なんだったんだろ……? まぁいっか、キモいやつだったんでしょ」

 

 不快そうに顔をしかめ、彼女は魔法使いに触れられた腕を拭きながら征服人形とNPCの男を逃がしたのはもったいなかったなと愚痴る。

 

「あの征服人形、キルしたら何を落とすんだろうね、気になっちゃう」

 

「否定:貴女ごときに殺される当機(ワタシ)ではありませんわ!!!!」

 

「……! あっはは、殺されに戻ってきたんでしょ、ね!?」

 

 船長を安全圏まで送ったフユネ=77という征服人形が怒りに燃え、しかしその顔を歪めることは機能的に不可能なことに不快を感じながら……深海移動用ブースターを吹かせて決戦の地へと舞い戻った。

 ニタリと笑顔を深めたヒイラギが剣を引き抜き、次の獲物に顔を輝かせる。

 

「否定:当機《ワタシ》は皆様の装備を回収に来ただけですの!! 回収者起動ッ!」

 

 伸びたワイヤーがシュテルメア、キリキリ舞いのユニーク武器を優先的に回収する。

 

「あっ、ねぇ!! それ私の! 返して、よ!!」

 

 ヒイラギが焦ったように走り寄り、武器を振るうが……空から降りてこないフユネ=77には当たらない、そして

 

「否定:これはシュテルメア様が激戦の末獲得したものですの、浅ましい簒奪者のものではありませんわ! ……それと」

 

「! ……?」

 

 フユネ=77の勝ち誇ったようなその表情に、さすがのヒイラギにも動揺が走る。

 ユニークシナリオは失敗、彼女の主は死んだ。なにかコイツにとって良いことがあっただろうか、と。

 

「貴女、もう死ぬのは決まっていますわよ?」

 

 テッポウリュウの肉の特性。

 巨大生物に常に狙われている、という事実が……ヒイラギに牙を剥く。足止めを担うプレイヤー達は彼女が殺してしまった。そう、つまり……2体のアトランティス・レプノルカが彼女を獲物を見る目つきでジッと見つめているのだ。

 

「なっ……えっ……とぉ……」

 

 言葉の通じないソレらに対して今の彼女にできることはない。

 装備の回収を終えたフユネ=77は既にブースターを吹かして退避を始めている。

 

「待っ……」

 

 放電。

 

 …………そして、深淵の戦いは呆気なく閉幕する。

 どこか寂しげに……クターニッドが誰もいなくなってしまった世界を反転させた。












わかったな?察したな?そう!これは!!!!!!!

ちなみにこの小説内でヒイラギに復讐が成されることはありません。装備獲られてないし。
彼女に対するヘイ卜は原作を読んで解消しましょう。
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