不倶戴天   作:雨傘なななな

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補足ですが、前話でシュテルメアとミレィさんはリヴァイアサンの第3殻層(遊び場)まで辿り着いています。リヴァイアサン内の戦闘ってわりと原作と変わらないので……ユザーパードラゴンが咆哮を上げたとでも思っていただければ。


異常事態:

「ではでは〜」

 

「うん、ミレィさんの名前が響くの楽しみにしてるよ」

 

「おぉう……もちろんですよ〜」

 

 ぐっとサムズアップしたミレィさんが僕に背を向けて、彼女の征服人形と共に樹海へと入っていくのをしばらく見つめていた僕は、改めてナナさんの方へと向き直る。

 

「僕の勝手な判断でオルケストラは保留にしたけど……問題なかった?」

 

「肯定:当機のステージはシュテルメア様がいるところですから」

 

「いいね。深海こそ僕等の居場所だと僕も思うよ」

 

 リヴァイアサンは港に出現したエリアだ。ミレィさんに背を向ければ自然と僕達の視線は広がる海へと移される。

 

「疑問提起:これからどうするつもりですの?」

 

「んーーーー」

 

 正直あまり決まっていないのだが、感情的にはキリキリ舞いさんに挨拶に行きたいところだ。

 

 共にクターニッドと戦ったメンバーには、詫びとしてライブラリから便宜が図られているらしい。僕はクターニッドへの挑戦権といくつかの人伝だったが、キリキリ舞いさんと臥竜点睛さんは自己強化につながるユニークシナリオを貰ったらしい。……前に進み続けられているようでなによりである。

 

「提案:もしシュテルメア様に明確な予定がないのであれば、海中での狩りを提案しますわ」

 

「ふむ。まぁないけど……それまたなぜ? レベルもキャップ開放まではどうせ上げられないし、海棲モンスターって金策には向かないと思うんだけれど」

 

「理由としては2つありまして……シュテルメア様が海中戦闘から離れて長いというのが1つ、そして当機の調査対象がこの新大陸の近くに存在するというのが2つ目ですの」

 

「おっけー、じゃあそうしよう」

 

 ナナさんの調査対象になり得るほどの存在。討伐対象かどうかは分からないが、なにかの足しになるかもしれない。

 

「それと、金策に使える狩り場を紹介できるかもしれませんわ」

 

「おっ、それはすげーありがたい」

 

 高価な素材を落とすエリアがあるのであれば僥倖だ。提案を受け入れて、新大陸にプレイヤーが作ったという城にリスポーン地点を設定した。

 余談だけど、理由が3つになってしまいましたねと肩を竦めるナナさんの姿が様になりすぎる。横を通ったプレイヤーにくっそ睨まれたんだが……。

 

「いっくかぁ〜〜〜」

 

「同意:」

 

 本日の天気は快晴。青い空から世界を照らしている陽光は海に反射して銀色の光を煌めかせている。……などとそれっぽいことを言ってみても、深海の暗さと孤独は変わらない。

 僕は海中も海中戦闘も好きだが、それが孤独との戦いであることは否定できない。

 

 けれど、今僕の隣で見様見真似の伸びをしているナナさんが横にいて、共に戦ってくれると考えるだけで、より大きな勇気が湧いてくるような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 孤独の世界だなんだと言ってみたは良いものの、海に入ってみればやはり世界は変わる。

 青くどこまでも透き通った世界。空から差し込む光は海中を照らし、陸上では想像もつかないような生命が暮らしている。

 

『──提案:まずは調査対象の元へ向かいましょう』

 

 しばらく久しぶりの海中世界に感動していると、ナナさんに声をかけられた。多分僕が楽しんでるのを見て気を遣ってくれていたのだろう。恥ずかしい。

 

『おーけー』

 

 とりあえず肯定し、明らかに海中使用のブースターを吹かして進むナナさんに腕を引っ張られて進む。なんかこう……裂けそうだ。嗚呼魔法職、魔法職、なぜこんなにも耐久が低いのか。……威力出すためか。

 

『ちなみに今回の調査対象ってどんなモンスター?』

 

『返答:先代の青竜ですの』

 

 青竜というと、たしかジークヴルム関連……先代?

 

『いえ、正確にはその汚染を受けた個体ですわね。「海の化身」が消えたことでその力の源が深海のモンスター達に広がったことはご存知かと思いますの』

 

『一応ね』

 

『その2種の強化要因が競合した結果、異形のモンスターが生まれつつありますわ。その調査ですの』

 

『……なるほど』

 

 コレ、もしかしなくても原因の一旦は僕だな??

 どうやら任務の実態は僕の尻拭いだったようだし、本気で挑まねば……などと考えている内に、目的地についたらしい。ナナさんが急停止しつつ僕に負担がかかりすぎないよう配慮してくれる。……これ僕がエスコート?するべきだよな……どこかで主導権を取り戻さねば。

 

『警告:問答無用で襲ってくるでしょう。武装を』

 

『りょーかい』

 

 共鳴の雷短杖と深海の短杖をイベントリから取り出して装備。ナナさんも遠距離戦闘寄りな以上、僕も自分で移動する必要がある。ならば……

 

『【魔法待機】【ウォーター・ジェット】自然とこうなるよなぁ』

 

 久方ぶりとは言ったものの、クターニッドの所でもある程度水中の道理で戦っていた。鈍り過ぎているという程ではないらしい。

 

『来ますわ!』

 

 カチャリとナナさんが銃を構え、岩陰から海蛇と鯨を無理やり合成したような……二対の頭を持つ化け物が表れた。

 おいおいおい……まじでこのレベルの異形をお出しされるとは思ってなかったな。

 

『『iiiiiiiihiiiigiiiii!!!』』

 

 悲鳴のような叫び声。海蛇側の頭は僕達を見つけたと同時に攻撃しようとし、鯨側の頭は一瞬迷った後逃げようとした。身体がそれこそ裂けてしまいそうな動きだ。行動方針の違いで喧嘩でもしたのだろうか、その体は何度も裂けかけた後があり、それぞれの頭にも無数の傷跡がある。

 

『ナナさん……コレを殺すのか?』

 

『……………肯定も否定も出来かねますわ。これ以上この異常事態が広がる前に殲滅するべきではあるのですが……』

 

『…………ッ!【ウォーター・ジェット】ッ!』

 

 コチラが迷っている間に向こうは僕達を排除する方向性で決まったらしい……!

 反射で魔法待機を解除することで迫りくる蛇頭の攻撃を避ける。ついでに鯨の方へ襲われかけていたナナさんを吹き飛ばされる方向にいれることで巻き込むように攻撃から庇った。

 

『ナナさん、これは躊躇してる場合じゃなさそうだ……!』

 

『…………了……!?』

 

 海蛇がブレスを吐き出した。いやいやいやいやいや……!

 

『了承:ブースター起動』

 

『ありがとう……! クソッ、【加算詠唱】……ッ!』

 

 溜めがなさすぎる! この攻撃のためだけに【ウォーター・ジェット】を待機に残しておかないといけないレベルだ……その状態で通常攻撃を避けられるか……!?

 

『肯定:お互い様ですの! 展開……ッ!』

 

 ナナさんが周囲に6基のユニットを展開し、それぞれに追尾光線を海蛇鯨へと放ち始める。

 海蛇鯨の内特に鯨の部分が悲鳴のような方向を上げて身を捩らせた。余裕ができて始めて確認したんだが、モンスターの種族名のところが「不明」になっている。これは……。

 

『今は気にしている場合じゃないか……ッ! 【エリア・サンダー】ッ!』

 

 アクセサリーは雷属性強化に多めに割り振っているお陰で、通常よりもかなり広い範囲に雷がばら撒かれる。

 

『避けんなよな……ッ! 【魔法待機】!』

 

 詠唱するのはいつも通りの魔法。今の反射で読み上げられるタイミングに状況の詳細な把握と……そうだな、覚悟を決めなくては。

 

 この生物は僕のせいでこうなっている可能性が高い。それこそ僕が「海の化身」を継ぐか、ユニークシナリオに関わらなければ起こっていないことだ。

 ……攻撃を受けたときの悲鳴よりも、行動の度に裂けそうになる身体への悲鳴の方が大きいのだ。終わらせてやるのが優しさだ……と、思わねばやっていられない。彼等、もしくは彼女らは生を望んでいるだろうが……身体の異常による変死などではなく、食物連鎖の一部として終わらせてやるのだ。

 

『【ウォーター・ジェット】……。魔法待機完了。ナナさん、ここで終わらせるぞッ!』

 

『……ッ、了解:』

 

 後天的に異形となってしまった海蛇と鯨が泣き叫ぶような声を上げた。ブレスが僕達を襲い、鯨頭が叫び声と共に魔法による盾を生み出した。

 

『【加算詠唱】……!』

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