不倶戴天   作:雨傘なななな

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散らした命を無駄にしないため、民は戦った

・王国弓兵部隊の矢筒

矢を利用した攻撃の威力、速度、射程を強化する。

また街の住民からの信頼度が少しだけ上昇する。

この矢筒を持つものは皆、誇りを持っていた。自分達こそが民に仇なす者を射抜く存在だと。

 

 

 

「…………よく分かってんじゃん」

 

 街中の弓兵の銅像の前、ユニークシナリオのクリア条件も兼ねて最後に祈りを届けに来た。

 仇は取った。……まぁもう前にも何度か開拓者が取った仇であろうことが微妙に締まらない要因だろうか。

 

「お」

 

 ここにユニークシナリオの発生条件として来たときにはなんのアクションもなかったのだが、今回ばかりは違うらしい。

 銅像の持つ弓がボンヤリと輝いた。

 

「おぉ! またこの光景を見せてくれる者が現れるとは! ミノタウロスは強かったかい?」

 

「へ? え? あぁ……まぁ」

 

 これから何が起こるのだろうかとワクワクしていたのだが、その鼻先を折られるように散歩中らしき老婆から話しかけられた。

 

「この像の人達が何をした人達か知っているかい?」

 

「いえ……」

 

 輝きを強める銅像から一旦目を離して老婆の方に向き直れば、老婆は何が楽しいのかニコニコと笑いながら話し始めた。

 

「コレは私の祖父から聞いた話だけどね、この弓兵部隊の人達は昔、王国に仕えていた兵の中で最も強い部隊だったのよ。優しい王様は彼等に民のためにその力を振るうように命じて、暗い世の中だったらしいその時代でも民は少しずつ明るくなっていったんだ」

 

「…………」

 

 良い話だと思ったけれど、彼等が全滅している以上どこかで悲しい話に変わるのだろう。

 

「ただ、その優しい王が病気で急死してしまって……その次の王が酷かった。王の命令に逆らえない弓兵部隊を民から全てを奪うために使ったのさ。

 

 そこから2年。どうにかこうにか王に逆らう方法はないか、王が父王のように聡明な王になってくれないか、あれこれ試した弓兵部隊は、自分達がいる限りそれができないことに気づいた。

 

 だから……とても悲しいことだけれど……彼等は死を選んだ。もちろん王の命令なしに兵は死ねない。唯一の味方だった大臣を経由して迷宮という弓兵の戦いづらい場所で、ミノタウロスに1人ずつ殺されることにしたの」

 

「それは、そんなことが、」

 

 許されるのか?という言葉は結局言葉にならず、老婆は話を続ける。その表情は昔のことであることを加味してもなお、優し過ぎるのではないかと思わされるほどだ。

 

「民は泣いた。泣いて泣いて泣いて、弓兵部隊の方々が命を失うぐらいなら自分達が苦しむぐらい耐えられると泣いた。

 

 けれど時間は戻らない。仇を討つためにその協力した大臣の下集った民達は、弓兵部隊がいなくなったことで大きく兵力の下がった国の兵達と王を倒し、国を救った。当時の人々は実際に国を救ったのは弓兵部隊の人達だと感謝してこの像を建てたって話だよ」

 

 長々と話して悪かったね、また1人弓兵部隊の未練ご解消されたことが嬉しかったんだ。と老婆は締め括り、彼女の生活の中へと戻っていった。

 像へと目を戻せば、輝く弓とその像がより誇らしげに立っているように見える。

 

「尊敬するよ、遠き日の誇り達を」

 

 ユニークシナリオの達成条件でもあるとは言え、敬意を込めて光り輝いたままの弓に触れた。

 

 手を離すと、光は消えた。

 ……恐らく魔法の譲渡だったのだろう。弓兵部隊の話をユニークシナリオの説明に書かないあたり、粋なことをするなライブラリ。

 

 

【この一矢にありったけの勇気を込めて】

HPが5割以下のときに発動すると、次に放つ一矢の威力にその戦闘で失った体力を参照した威力上昇が付与される。また、特殊な矢であった場合その効力も上昇する。

 

弓兵部隊の誰もが所持していたこの魔法は、しかし彼等の最後の戦いで猛威を振るうことは一切なかった。勇気は既にそこにいた時点で使い果たしていたから。

 

 

 徹底的に悪趣味なユニークシナリオだった、というのが総評だ。魔法のフレーバーテキストまで含めて少し悪趣味過ぎる。

 ただ、ミノタウロスからドロップしたアクセサリーである王国弓兵部隊の矢筒も含めて弓を使うにはかなり強力なモノだ。本職でないのが残念だが……上手く使って行こう。

 

 

 

 

 

 

 イレベンタルの教会

 ユニークシナリオクリアから3日。月日が過ぎるのは早いもので、いつのまにか次のルルイアスへの挑戦まで残り4日となってしまった。

 

 ……一応回想しとくか。

 

「【加算詠唱】【代償詠唱】【雷撃の狩り場】」

 

「いいね、【この一矢にありったけの勇気を】…………【雷轟の矢】」

 

 ……以上だ。

 

 ちなみに今のしょーもない回想はこの3日間毎日毎日群れるタイプのモンスター相手に新しく覚えた【エリア・サンダー】の上位互換(詠唱時間もほとんど変わらない)を使用して一網打尽にしていた内の一場面だ。でもどの場面切り取ってもコレだと思う。

 よくあることだが、群れのボスだけは体力が多く生き残ったため、【代償詠唱】で捧げたHPを参照する【この一矢にありったけの勇気を】の威力強化+「共鳴」効果による過去一威力の高い【雷轟の矢】で一撃だった。

 

 気づいていたような気づいていなかったような、ではあるが、僕も大分強くなっているらしい。

 

「さて、それはそれとして」

 

 今日はシロミ魚経由で伝えられたイムロンさんとの約束の日時である。深海の短杖を作ってもらったとき以来だが、何の用だろうか……?

 渡すものがあるとのことだが、心当たりが全然……いやある!!あるわ!!!水晶群蠍の生息地から一個だけとれた宝石の加工をお願いしていた気がする!

 

「それかぁ……まさかルルイアスまでに間に合うとは。心強いな」

 

 大きさ的に武器防具にはしづらそうだしアクセサリーとかだろうか? 消費アイテムだったらもったいないお化けが出てしまいそうだ。

 最近はあの崖産の素材も少しだけ出回り始めたらしく、加工できる鍛冶師がほとんどいないことを除けばかなりプレイヤーの装備の質向上に役立っているようだ。

 あれを安定して採取するとか……自分も強くなったとは思っていたが、やはりまだまだエンドコンテンツには遠いらしい。

 

「ん? あれ、遅かったか。悪いな」

 

「あぁ、イムロンさん。全然ですよ、僕が早く来すぎただけです」

 

 まだ約束の時間まで五分ある。むしろ速いくらいだ。プレイヤートップの鍛冶師を待たせるわけには行かない、と二十分前に来ていた甲斐があったらしい。

 

「まぁ分かってると思うが、例の宝石のアクセサリーが完成した。あとコイツが……」

 

 何故か申し訳無さそうな顔のイムロンさんがさっと横に移動する。背に誰か隠していたらしい。

 

「猫……?」

 

「今から渡すアイテムの作成者だ。お前に用があるらしい」

 

「私の名はダルニャータ! キャッツェリアの宝石匠です。どうぞお見知りおきを!」

 

 かわいい。

 

「あー、えー、僕はシュテルメアです。よろしくお願いします」

 

 で、なぜ彼はここにいるんだろうか? 作成者としてあのアクセサリーに思い入れがどうこうとかだろうか?

 

「まず! 私からお渡しいたしましょう。お納め下さい、コチラ、至金の歯車(ゴルドーザ)(デンシティ)です」

 

「おぉ……!」

 

 2つの歯車が噛み合ったアクセサリー……どうやら左手の手首につけるらしいそれには、大きい方の歯車に僕が採ってきた記憶が確かにある宝石が据えられている。

 

「コチラ、正直なところ、私がここのところ扱っていたローエンアンヴァ琥珀晶の中ではあまりランクは高くありません」

 

 あれまぁ。

 確かにそこまで良いものだとは思っていなかったが、悲しいお知らせである。ワンちゃんめちゃくちゃ強い魔力が封じられていたら嬉しいとか思ってたし。

 

「手付きの宝石もなく、本来なら断る依頼でしたが……込められている魔力の種類が問題なのです」

 

「ふむ?」

 

「それはドワーフ達の王、ミダスの魔力です。つまり……私も懇意にしている彼への恩返しです」

 

 恩返しに作ったものを僕に渡してしまって良いのだろうか、と思ったが、渡している以上良いのだろう。それに、その疑問はすぐに解消された。

 

「つまり……もちろんすぐにとは言いませんが、シュテルメア殿にはどこかでドワーフの里へ行って頂きたいのです。それを見せるだけで構いません。彼等も何代も前とは言え出奔した王の行く末を知りたいはずですから!」

 

「なるほど……了承した」

 

「すまんなシュテルメア」

 

「いえいえ全然です。素晴らしいアクセサリーの対価なので。では……お金の話をしましょうか」

 

「……おう」

 

「大事な所ですね! 私としてはよりランクの高い宝石だと嬉しいのですが!」

 

 うん無理、てかこのダルニャータさんにランクの高いローエンアンヴァ琥珀晶を纏まった数渡した人は何者だよ。











やっっと出せた至金の歯車・密!!!!!
名前がかっこい!!! 効果は次話にて!!

ちなみに最近シュテルメアの強化パートが続くのは、今章から攻略難度が三段階ぐらい上がるからです。(あと普通に魔法打ってるだけだと書いてる作者が飽きるからです。)
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