不倶戴天   作:雨傘なななな

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コイツだけは好きになれる気がしない。

「戦わないとはなんです? そもそも同じユニークシナリオクリアを志す以上、共に戦う仲間です。わざわざ別行動する必要がありますか?」

 

 うーん胡散臭い。

 半魚人達に追われつつも、お互いそこそこの余裕を持って封塔へと走り抜ける。

 

「いやぁ……」

 

 と、いう形の曖昧な誤魔化しも意味無し、と。

 余裕な表情はともかく見下す姿勢と自分の指揮下に入らない存在を疎ましく思ってるのが透けて見えるんだよな。

 シロミ魚さんも最初は酷かったけどそういうのとは違う、こう……どちらかと言うとプライドと自信に裏付けられた自己の過大評価って感じ。シロミ魚さんはなんだかんだ自分と他の実力は把握した上でボーダーラインを引いていただけ。

 どちらかと言うとリベリオスさんのほうが苦手だ。

 

「とりあえずここで僕の実力をお見せしましょう! 凍てつき迸れ【コキュートス】!」

 

 冷気を司る川の名が叫ばれ、リベリオスさんが持つ剣から白いオーラが吹き荒れる。

 あー、凍らせて固める訳だ。

 

「g.g…………」

 

「いいね」

 

 接近を許していた数体の半魚人の動きが止まり、地を這う氷がその後続をも鈍らせた。

 便利〜。ユニーク武器かな、ユニーク武器っぽいな。でも勇者専用武器とかザ・デザイアーとかとは違って僕の深海の短杖よりに見える。

 実際のところはともかく、トップクランのリーダーだなんだと言うだけはあるわけだ。

 

「さて、どうです? 封将戦を共に戦うに不足はないでしょう!」

 

「いやだから戦わないって……エッ!?」

 

「なに、を……いや……はぁ!?」

 

 空が暗い、とは思ってたんだよ。思ったから見上げたわけ。深海……いや上に海底があるとはいえこんな暗かったっけ、海に曇りなんてないだろって思ったからさ。

 深海には数多の強者がいる。その中でも上澄みも上澄みの存在、ソレが僕等を明らかに獲物として見つめていた。

 

「おいおい、コイツは……アトランティス・レプノルカ……!!!!」

 

 上半分が炎上している巨大シャチ、その威容に先程まで饒舌だったリベリオスも言葉を失っている。

 ……ていうか前に見た個体より2周りぐらいデカくない?食い過ぎで太った?

 

「ど、どどどどうするんですアレ、まだ僕はリスポーン地点を設定してませんよ」

 

「僕もだよ! どうするって……どうしようもないでしょ」

 

 嘘だろ!?みたいな顔でコチラを見るリベリオス。いやお前さっきまでの威勢はどうしたんだなんとかしてくれよトップクランのリーダーさんよ。

 

「推奨:退避行動」

 

「よしそうだなそうしよう逃げるぞリベリオス!」

 

「お、え、分かったよクソッ!」

 

 3人してクルリと背を向けて走り出した。

 

 んが、とレーザーでも放ちそうな雰囲気でアトランティス・レプノルカが大口を開けた。誰かコイツ倒したことあるのか!?

 前回のクターニッド戦で臥竜点睛さんには倒せって言ったな僕! 無理だろ!!!

 

 深海の短杖を急いで取り出し……ああもう、最近強くなってきたせいで【魔法待機】を忘れがちだ。

 いやそもそも突然戦闘が始まるのが悪いのか。常に待機させとけるのならばともかく、時間制限が厳しい。

 

「そもそもアイツに雷属性効くのか……?【詠唱短縮】」

 

「おいアレビーム吐くんじゃないのか!?」

 

「肯定:身に覚えがありますの」

 

「最悪だよ!!」

 

 リベリオスと口論をしているナナさんに先に行けとハンドサインで指示を出すと、お気をつけてと言外に伝えるような表情をした後ブースターを吹かせて先行を始めた。

 方向は……封塔の方か。確かに合流しやすいし合理的だ。

 

「【ウォーター・ジェット】!!」

 

 バチバチと音を立ててチャージされていたビームが放たれた。先程の僕の【暴虐の雷獣】とは比べ物にならない範囲の街が抉れ、ギリギリ【ウォーター・ジェット】を間に合わせて前に吹き飛んだ僕の足先が焦げた。いや死ぬ! ……ていうかリベリオスは!

 

「おい無事か!?」

 

「くッ……当たり前でしょう! 僕は強いと言ったはず!」

 

 よーし無事だ。ゴロゴロと転がる様もアバターの顔が良いから様になるのちょっとおもしろいな。

 

「移動強化スキルは!」

 

「持ってる……けどこのレベルから逃げ切れるスキルなんて中々ないでしょう!」

 

「僕にはちゃんとあるんだよ!」

 

 アトランティス・レプノルカの放電と発火を混ぜた突進、進路上の家屋は海中にも関わらず全焼し、ガタガタと地面が揺れている。

 いや死ぬ……! てかコレもしかしなくとも装備してる水中移動促進筒のせいで狙われてるんだな……!? ならば、

 

「策がある! 僕が引き付けるからそっちはそっちでなんとかしろ! 封塔集合!」

 

「くッ……本当になんとかなるんでしょうね!?」

 

「当たり前、だ……ですッ!!」

 

 やっべ敬語忘れてた。どんな相手にも敬意を払うと決めてたのに……。一旦頭を振ってリセット、詠唱を始める。

 了承の意を示すようにリベリオスさんが僕とは反対方向へとかけていく、よーし見晒せアホ面、喰らえ!

 

「【スプラッシュ・バースト】!!」

 

 鼻面に一撃。もともとコチラを狙っていたとはいえこれでリベリオスとナナさんから意識は逸れたはず!

 咆哮を上げたアトランティス・レプノルカが再び喉奥にビームを溜め始めた。よーしノータイムで放てるわけじゃないと分かっただけで充分。常に【ウォーター・ジェット】か【爆水】を一回分残しておけば回避はできる……!

 

「あとはどれくらいの距離を離せば見失ってくれるか、だけど……ッ! 【爆水】起動!」

 

 溜めながらの突進、避けた、その場での回転による水圧の刃、もっかい【爆水】、突進……!

 

「いや無理だろ!」

 

 既に待機時間は経過した、詠唱をしている暇はない……ッ!

 至金の歯車・密を起動、発動する魔法はちょうどリキャストタイムの開けた【ウォーター・ジェット】……! だがすぐ起動せずギリギリまで引き付けることでぇ……!

 

「特殊属性:至金が発動する……!」

 

 頭部に【ウォーター・ジェット】が直撃したアトランティス・レプノルカが失速した。肉質の金化は思っているより強い効果らしい。つまりそう、頭を突然重くされるってことだ……!

 

 失速と加速で距離が空いた。残り一回の【爆水】を起動することでより距離を離す……!

 

「もう見つからないでくれよな……!」

 

 水流に流されながらも「水律踏破」の起動により姿勢制御をすることでUI操作、アクセサリー欄の水中移動促進筒を仕舞いつつ代わりに魔縮の髪飾をセット、さらにポーションを2本取り出す。

 

「咄嗟に使いづらいのが不便過ぎる……【異形術・蛸】」

 

 下半身を蛸へ異形化、さらに【異形術・鮫】により頭部を鮫のソレに異形化させることで、ルルイアスの海中ルールが適応された僕はさらに速度を上げ……いやおいなんかバチバチ聞こえ……!

 

 咆哮と光一線。街は薙ぎ払われ、家屋に隠れようとしていた僕の姿が無理やり見つけ出された。いやいやいやいや、

 

「【魔法待機】【詠唱短縮】……ッ!」

 

 雑な攻撃で家屋の上部が焼き払われたお陰で僕自身には被弾していない。とはいえ既にアトランティス・レプノルカはチャージ体勢。いやこれ死ぬでしょ。

 

「──凍てつき迸れ【コキュートス】ッ!」

 

「……はぁ!?」

 

 なんとか蛸足を最速で動かし逃げようとする僕を追いかけるアトランティス・レプノルカ。

 その横っ面を、氷を纏った剣が切り裂いた。

 

「策などないでしょうに、見栄をはって……!」

 

「その策が今粉砕されたんだよ!!」

 

「あっ…………………」

 

 気まずいみたいな顔やめろやと笑いながら、彼が戻ってきてしまった以上、仕方がないので反転して蛸の加速力でアトランティス・レプノルカに接近しレーザー攻撃を出しづらいよう動き回りつつ、次の案を探す。

 てかこの鮫顔でよく僕がわかったな彼。

 

 あのアトランティス・レプノルカの巨体とて一応金化と冷気で動きは鈍っている。付け入る隙の一つや二つはあると信じたい……!

 

「とりあえず僕の魔法が通るか試す、時間稼ぎよろしく!」

 

「くっ……分かった!!」

 

 深海の短杖をなぜか戻ってきてる人2号のナナさんに投げ渡しつつ、共鳴の雷杖弓を取り出した。いやなんでルルイアス初日からこんなハードな戦闘してるんだ!!!

 クリオネちゃんの所へ行かせろ!!!

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