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後ゴルドゥニーネ編楽しみすぎ。切実にタイトルセンスを分けてほしい。
とりあえず雷が効くのか試そうということで、選ばれたのは毎度お馴染み【雷轟の矢】。今の僕が放つこの魔法がノーダメージであれば、さすがに正面突破を選択肢から外すべきだろう。
「【加算詠唱】……!」
リベリオスさんがなにやら泣き言を叫びながらスキルを連続で起動し、少しでもアトランティス・レプノルカを僕から離そうと走っている。大変そうだなー今の僕は最悪横で構えてるナナさんが抱えて逃げてくれるっていう安全マージンがあるわけで、大変申し訳無い限りだ。
ていうかナナさんも時間稼ぎしてきてくれても良いんですよ?? 怪我しない範囲でなら。
あーだめですかそうですか僕のセーブポイントがコチラにない以上僕の護衛ですかそうですかありがとね。
「おっけーリベリオス、一旦引いていいですよ!【雷轟の矢】!!」
雷が装填された杖弓の弦を引き絞り狙いを定める。弓系統の強化はとりあえず必要ないか。【異形術】で頭を鮫にしたせいで狙いがつけづらい。
「選択肢ミスった〜」
距離はそこそこ、的は大きい。練習量も考えれば外す道理は……あるんだよなぁ……。
【雷轟の矢】の脅威に気付いたらしいアトランティス・レプノルカが狙いをコチラに変えて、放電と発火を込めた突進をする。開けられた口から放たれた咆哮が僕の身体の自由を一瞬奪うものの、問題ない。後は手を離すだけだ。
余波だけで人を殺せそうな勢いでの突進、まだ冷気と金化の解けていない頭部を、雷の矢が貫いた。
「g.g.Gaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!?!?!!!!!!!!!?」
直前のコチラの行動を封じるための咆哮とは違う、明確な悲鳴。【雷轟の矢】を準備する僕を優先的に狙ったことも含めて一定以上の雷が効くことは確定……!
「これなら作戦のたてようがあるかな……ッ!」
蛸の下半身を全力活用してアトランティス・レプノルカの大暴れ範囲から離脱、ナナさんは……問題なし!
「で、どうするんです!」
「おぉう……しぶといなリベリオスさん」
「当たり前でしょう! それで!」
透明な剣を抜いての臨戦体勢。やる気があるのは素晴らしい事だが本当に3人だけであの巨大生物のHP削りきれるかなー。
「……リベリオスさんのできることによる」
「職業は剣豪、特殊な部分は冷気を纏うコキュートスぐらいです。最近は冷気の有効活用と範囲の強化をしています!」
「ふむ……真面目なタイプだ」
「その言い方は非常に不服ですが一旦水に流しましょう。というか最初に半魚人に放っていた【暴虐の雷獣】であれば倒しきれるのでは?」
「……知ってるんです?」
どうやら見られていたらしい。
あぁ、出てきたタイミング的にあの魔法のエフェクトを見て合流しようとしたのか。なるほどね。
それよりもアレがエフェクトだけで【暴虐の雷獣】だと分かったことのほうが驚きだ。
「元団長が使っていましたから。ただ威力だけで言えばシュテルメア君のモノの方が上ですよ。純魔法職なんですからそれくらいしてもらわねば困りますが」
「ハッ、そうですか〜」
いつの間に僕は彼の配下になったのだろうかと困惑せざるを得ない上から目線だ。実際に出てきたのは鼻笑いだったわけだが。
この人なんでこんな腹立つんですかね。才能?
「で、策は?」
「あっ」
考えてなかったとはいえないので高速で頭を回転させて弾き出した策は4つ!
・策1
全力強化魔法を撃つ。
リベリオスさんとナナさんが時間を稼ぐ。
・策2
リベリオスさんがなんか新しい新技を生み出して倒す。
ナナさんにそんな危険な賭けをさせるわけにはいかないので僕達二人は逃げる。
・策3
このまま派手に戦って他のコイツを一撃で葬りされるような一撃を持ってるプレイヤーの現着を待つ
・策4
ナナさんの申請込みで使える素敵武器でなんとかする
「どれがいい?」
「ぶっちゃけ考えてなかったでしょう」
「うん」
「おい」
良い案が一つもねぇ。
ナナさんがいつのまにか回収しておいてくれた鮫頭になったことで滑り落ちていたらしい軍帽を人間のソレに戻った頭に被り直し、軍服を整えた後立ち上がる。
ずっと渡しっぱなしだった深海の短杖も受け取り、ついでにアクセサリーを一つ海中移動促進筒に戻した。
いやー、僕わりとセンスあるよね服装。魔法職の布防具に軍服デザインを見つけたときは感動したものである。
「まぁ強いて言うなら一つ目でしょう。今回のプレイヤーの中でトップクラスの火力を持つシュテルメア君に倒せないなら数の力以外では倒せません」
「まじかー重役じゃん」
「ちなみに貴方の現在の二つ名はライブラリの懐刀ですよ」
まじかよ。なんかリベリオスさんに言われるとそれっぽくて困るな。
「嘘でしょ……? いつのまにそんな……」
「マジもマジ。で? シュテルメア君はどうするんです」
んー、調子狂うな……リベリオスも同様にやりづらいらしく、先程からお互い敬語とタメ口が右往左往している。
仲良くなれる気はしない、しないが……。
「よし。とりあえずお互いタメ口で固定しよう。めんどくさくなってきた」
「はぁ? トップクランの団長たる僕と対等だとでも……!?」
「いや元トップクランでしょ、僕が自己紹介から一切下調べしないとでも思ってる?」
「…………」
痛い所をつかれた、という風に分かりやすく言葉に詰まるリベリオス。まぁこれだけ言い合えるならこれはこれでコミュニケーションの形なのだろうと思うことにした。
ちなみにだが僕等がこうして雑談している間にアトランティス・レプノルカは大音量の戦闘に引き寄せられてきた半魚人を殲滅している。いややばいやばい、ビームでほとんど消し飛んだよ半魚人。食らったら僕等も当たり前に死ぬでしょあれ。
「……シュテルメアもさっき半魚人なら消し飛ばしてただろ」
「お、いいね。まぁたしかにそう言われると希望も湧くな」
「だろう。それで、結局どうするんだよ」
ふふん、と諦めたようなヤケクソのような微妙に楽しんでいるような表情で改めてリベリオスが聞いてくる。答えは一つだ。
「よし、作戦を発表する!」
「肯定:そろそろ半魚人が全滅しますの。お急ぎ下さいませ」
「京言葉の嫌味?」
チンタラ話してんじゃねーよという裏のあれそれが透けて見えた。勘弁してほしい。へへ、ナナさん、ちょいとお待ちくだせぇ。コレも必要なプロセスなんですわ……。
なんか変なテンションになってる気がするんだけど……リベリオスのせいでしょコレ。
「まずリベリオスは中衛。発火も放電も死ねるから冷気でどうにか足止め。いけるだろ?」
「当たり前だろ。まかせてくれ」
「ナナさんは避難。てか今のドサクサでセーブポイントできたし別に最悪死んでも良いんだよ僕等」
「否定:当機のステージはシュテルメア様の隣だと言ったはずですの」
…………。
前も思ったが、随分な殺し文句だ。そう言われてしまえば死なずに勝つしかなくなってしまう。
改めて僕には勿体ない征服人形だなと苦笑いを浮かべて、自分がアトランティス・レプノルカを屠る未来を想像する。うーんちょっと厳しい。
「分かったよ……じゃあ後衛かな。銃での牽制と火力役よろしく」
「了承:お任せ下さい」
で、僕も中衛で【異形術】と杖弓で削り倒す。
「アイツの体力が何十万あるかは分からないけれど、削り続ければいつかは死ぬ。無理せず継続ダメージの打ち込みと離脱を意識していこう」
「姑息な手にも程があるでしょ……」
「策ってそんなもんだと僕は思うよ。【魔法待機】」
うぇー、みたいな顔された。なんだアイツ。
「報告:半魚人の全滅を確認しましたわ」
【ウォーター・ジェット】の待機完了。
はぁー……分かっちゃいたけど出費が辛い。材料費はまぁ許せる範囲なんだけど制作に使う時間がな……はやく異形術師に着く人間が増えることを祈るばかりである。
性能はともかくエフェクトやらネーミングセンスやらはかっこいいわけだし、選択肢に入らないこともなさそうなんだけどな……。
「【異形術・蛇】」
ポーションを飲めば、グニャリと音を立てて腕が蛇へと異形化する。
「準備完了」
「こちらも問題ない」
アトランティス・レプノルカの意識がコチラへと向き、バチバチと戦闘の余波で吹き飛んだ家屋の残骸が電気を帯びて弾けた。
そしてこのひたすら毒を盛り続けるという地獄の戦闘が幕を開けた。