不倶戴天   作:雨傘なななな

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謀略は動き、渦中の人物はクリオネに無限の愛を贈った。

 五時間半。

 これ何の数字だと思います??

 そうですねコレは僕とリベリオスとナナさんがアトランティス・レプノルカと戦っていた大体の時間です。

 モーションやビームのチャージ時間を覚えてしまえば対処は難しいというほどのものではなく、避けては毒や冷気や金化や電撃を打ち込むだけの戦闘は……うん。言ってしまえば詰まらなかった。ひたすらしんどいって感じ。楽しくはない。

 

「よくあるよね……巨大生物すぎて駆け引きがなくなることって」

 

「ないかな」

 

「否定:そもそも戦おうと思いませんわ」

 

 僕も別に戦おうとは思ってなかったよ。

 

 それはそれとして……僕等は今3人共疲労困憊という様子で地面にへたり込んでいる。いやまじでつかれた。致死量も分からない巨大生物を毒殺とか馬鹿でしょ。誰が考えたんだ本当に。

 クターニッド戦に備えて【異形術】を出し惜しんだのが間違いだった。

 回復薬になる魚を乱獲する前なのもあって回復ポーションの在庫が不味い。

 

「……そろそろ目をそらすのを辞めよう」

 

「だねぇ……」

 

 リベリオスに言われて、極力見ないようにしていた方向へと顔を向ける。

 アトランティス・レプノルカ、その巨体が横たわっていた場所には今、数え切れないほどのドロップアイテムが散乱している。

 

「マジかぁ〜、マジで勝てるのかこれ……」

 

「いや本当に。まさか勝てるとは」

 

「肯定:」

 

 コツン、と横でもはや寝転がり始めそうな勢いのリベリオスと拳を突き合わせ……疲労感に耐えて仕方なく立ち上がった僕達はドロップアイテムを二等分する作業に入った。

 

 ちなみにこれだけあっても【異形術】の出費でプラスマイナス0だ。……戦力強化という意味では大きいけれど。時間で強さを買った感じ。ゲームの常だな。……人生の常の間違いかも。

 

「これだけあれば……武器防具全部アトランティス・レプノルカシリーズにできそうだ」

 

「わっかる。でも海棲モンスター由来の防具がかっこよかったことは一度もないよ」

 

「それは……」

 

 リベリオスが言葉に詰まった。分かる分かる。いや本当に分かる。嫌だよなゲーム内とはいえダサい格好をするのは。というかむしろゲーム内だからこそ厨二病的なかっこいい装備が使いたいんだよな。盾とか剣みたいな武器類はわりと格好良くなるからそちらに期待。

 

「性能は良さげだけどね」

 

「……僕が前に倒したガイアール種の特殊個体の方が強かった」

 

 そもそもガイアール種がなにかを知らないんだよな。

 ドラゴン???

 

「その装備?」

 

「いや切り札」

 

 へぇーえ。と適当な相槌を返しつつ、ドロップアイテムを拾い終えた僕達はクリオネちゃんが待つ封塔に向けて歩き始めた。

 ていうかお前わざと一緒に戦ったナナさんの分のドロップアイテムをカウントに入れずに2等分にしたのバレてるからな。まぁ三分の二僕が持って行くのあれだし指摘はしないけど。そういうところだぞ。

 

 

 

 

 

 

「じゃ、行ってくるから」

 

「え?」

 

「了承:1日に十回まででお願いいたしますの」

 

「…………」

 

「推奨行動:無視による挑戦条件の有耶無耶化を避けること。五回で切り上げさせますわよ」

 

「すみませんでした。十回いかせてください」

 

「よろしい」

 

 その後も何度かの襲撃を切り抜けた僕達はついに封塔へと辿り着いた。やっと……やっとだ!!!

 後はよろしく、と適当な近くの家屋でセーブポイントを作った僕はナナさんに拠点作成の全てを任せた上で装備を全てイベントリに戻した。ナナさんには迷惑をおかけするが、もう我慢などできるはずもない。

 待ち侘びた再会に高鳴る胸はもはや抑えらなくなり、その音量は体外に響き渡っているのではないかという錯覚に襲われた。

 踊るように封塔内部に入れば、クリオネちゃんの初撃が塔の壁を揺らす。さぁ!!!(ここまで早口)

 

「クリオネちゃん、いや、クリーオー・クティーラさん!!!」 

 

「……? …………!!!!?!?」

 

「貴女にまた会いに来ました!!! 好きです!!!」

 

 美しい女性を模した上半身、クリオネらしく触手がうねっている下半身、その二つをあわせてできたこの神々しい存在!!!

 

「!!!!!!!」

 

 触手がギョルンと明らかに強い力が籠もっていることを知らせるように音を立てて、僕の横を通り過ぎた。外した……違う、動揺だ!! かわいい!!!

 

「かわいい!! 好きだ!!!! 僕を食べて下さいっっっっ」

 

「…………」

 

 返事はない。というか会話能力などないのかもしれない。あっかんべーをするぐらいの思考はあるはず、この気持ちはちゃんと伝わっているか?

 

 右からの触手を避け、一歩踏み込む。

 前より雑で威力が高い。フェイントを含めれば至近距離まで近づくのは余裕だ。後は何を伝えれば、何をすれば食べてもらえるのか、という問題のみ……!

 

「前回通りならここで数秒耐久できれば捕食モーションに……!」

 

 後ろから迫る触手を全速力で屈むことで回避、さらに繰り出される右腕による刺突を回避。

 

「ガ……ぁ……ッ」

 

 ここまでの健闘虚しく触手で軌道を隠すように敢行された左腕の刺突を肩に直撃させられた。HPはほぼ全損、だがここを気合で耐えれば捕食モーションが来るはず!!!!

 突き刺さった腕を両手で掴むことで固定、抜かれたら失血ダメージでリスポーンしてしまう……! まだ死ぬわけには……ッ!!!

 

「!!!!!」

 

 ぐぱ、とクリオネちゃんの頭部が8つに分かれた。

 きたきたきたきたきた捕食モーション!!

 

「好…………っ!」

 

 最後の声は言葉にならず、頭からほぼ丸呑みの要領で食われた僕はルルイアス二度目の挑戦にて最初のリスポーンを最も幸せな方法で味わったのであった。

 

 

 

 

 

 

 ガバ、とリスポーン地点のベッドから起き上がり、ジッと封塔を見つめているナナさんの横に立つ。

 

「あれ? リベリオスは?」

 

「報告:仲間との連絡がついたとのことで、そちらへ向かわれましたわ。」

 

「ふーん」

 

 無理にでも着いてきたりぽっといなくなったり、つくづく変な奴である。まぁいいや。

 

「で! ナナさん、どう思った!?」

 

「………………肯定:たしかにクリーオー・クティーラの攻撃に異常性が見られます」

 

 だよな。

 好きって言葉を聞いた時に動揺したあたり、思考する能力云々どころか人間の言葉を理解してるように見えた。他の封将もたいがい頭良さげなんだけど、人間の言葉まで理解できてるようには思えないと言うか、クリオネちゃんだけ微妙に人間に適応しすぎてるように見える。

 

「例の……神代関連でなにかあるのか、それともただ人型になるにあたって方向性が人間に似たのか……なんだっけ」

 

「収斂進化ですか?」

 

「そう、それ! 以心伝心すごいな」

 

「肯定:当然ですの!」

 

 ふふん、と胸をはるナナさん。

 最近の彼女はかわいい属性も狙いに来ているらしい。安心してほしい君は外見も内面も属性モリモリだし何してても絵になるから。強いて言うなら美人よりの外見だとは思うけど。

 

「ん〜、どっから影響を貰ってきたかだよな……クターニッド……?」

 

「と、思われますわね。……当機としてはそれよりもリベリオス様の不審な行動に目を向けるべきかと」

 

 うーんまぁ言いたいことは分かるんだけども。

 

「クリオネちゃんと並べると全ては些事だからな……とはいえまぁアレだけ露骨だと僕かナナさんの調査っぽいよね。正直海の化身関連以外で調査対象になるような事をした覚えはないんだけども」

 

「あの方にそれを行うような理由があるとは思えませんの。確実に裏になにかありますわね」

 

「だねぇ。まぁいんじゃない?」

 

 調べても出るボロなどないため、どうしても楽観視してしまう。

 いや嘘だった。海の化身倒して深海のモンスターの強さを1段引き上げた罪があるんだった。でもそれを知ってどうする?? なにか……誰かの利益に繋がるか?

 

「………………シュテルメア様、何事にも警戒していきましょう」

 

「おうよー」

 

 じゃ、僕は2回目行ってくるから……。そう続けてウキウキで再び封塔内部へと侵入する。

 

 背後でくっそデカい溜息をつかれた。ごめんて。

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