ルルイアス攻略七日目・最終日。
限界まで引き絞られた杖弓から【迸る雷律】が撃ち出され、雷鳴と共に既にボロボロのアンモナイト騎士の頭部に直撃する。
「よし。やっぱ意外と火力でるなコレ」
断末魔と共に最後の封将がポリゴンへと変わり、シュテルメアは適当な勝利の声を上げて封塔を出た。
「肯定:ここまでの連戦であればレベルキャップ開放時のスキル強化にも期待ができますの」
「うん」
たった二人による2日間の行軍。それまでに倒されていたのはクリーオー・クティーラーのみであったが、そこから彼等は他3体の封将を全て撃破している。
既に戦闘中に取る行動などを完全に把握していることもあるが、魔法禁止という縛りがなければシュテルメアは既に充分に特記戦力と言えるほどのものになっているだろう。
「じゃ、集合場所に行こうか」
「え、あ、あぁ……」「つっよ……」「コレが無名ってまじ??」
最後の封将を倒していざクターニッドへ挑まんとちょうど気合を込めていた二日前クリーオー・クティーラーを討伐したパーティーが、そんなシュテルメアの様子を見て呆然としながらも彼の号令に従って封塔前から最終決戦前の集合場所であるルルイアス城へと歩き始めた。
周囲の魚群が直前の基礎訓練時に狩られ尽くしたこともあり、いつもよりも静寂を保つ深淵都市。
雷が悲し気に鳴り響き、決戦は幕を開ける。
◆
「ふぅ……よし。シュテルメアが1人で封将3体を討伐しましたので……我々も憂いや問題なくクターニッドへ挑む事ができます」
そう決戦前の作戦会議を仕切るのはやはりリベリオス。
なんか違和感あるけど……あー、大衆前だから敬語なんだ彼。隠したい本性があると大変ですねって感じ。
……そう言えば昨日ログインすると、ミレィさんから心配と応援のメッセージが来ていた。ライブラリの方は今批判への対応に追われているらしい。オルケストラの調査も結局あんまり進んでないとかで、僕がルルイアスから戻っても直ぐにユニークシナリオ「哀しき深海に贈る唄」の検証が出来るかは怪しいらしい。大変だなー。
「クラン黒狼は是が非でもユニークモンスターを倒し、実績を作った上で新大陸に帰還します」
「「……了解」」
「他のパーティーの方々もここでの働きに応じてになりますが……希望があれば黒狼への参入権を作るつもりです。是非」
なんだかんだ言っても黒狼は名前の売れた新大陸攻略クランだ。そこに入れると言うのは中々魅力なようで、他のパーティーからもそこそこの歓声が上がった。
まぁ落ちぶれた最高峰クランを自分の力で再建とかロマンあるもんね。
僕は新大陸にそもそも大した興味がないんだけれど……。
ただリベリオスも落ち目クランをなんとか盛り上げようと努力しているのは伝わってくる。今後も頑張ってほしい所だ。
「さて目下最大火力のシュテルメア」
「え? うん」
「やる気は……大丈夫そうですね」
「そうだね」
「皆さん、クターニッドの動きは頭に入れましたね?」
「初手が触手落とし、次手で聖杯による反転、三手でモンスター召喚とその吸収、最後がプレイヤーの戦闘スタイルコピー」
名前も知らない剣士プレイヤーが呟くように説明し、リベリオスがニコリと頷いた。
そう言えば僕は前回あのPK女のせいもあって戦闘スタイルコピーを見れてないんだよな。今の僕のコピーとか……怠そう。
「じゃあ行きますよ。我々なら必ずユニークモンスターを討伐できます。……ぶちかましましょう」
「「「おう!!」」」
号令が響き、全員が会議に使っていた家屋を出てすぐ近くにあるルルイアス城を見上げる。
自分が英雄の1人になるんだという希望や期待を抱いているのだろう。……なんとなく帽子を深く被り直して、杖弓を握った。
◆
「……シュテルメア」
ルルイアス城内、アリスという女性の像に宝石を嵌め込むための作業(既に情報があるため本当に作業。妄想帯に攻撃するなも先に言われている)の最中、えらく緊張した顔をしたリベリオスに話しかけられた。
「なんだよ?」
「その……僕のせいなんだよ」
「……あ?」
余りの理解不能さについ口が悪くなり過ぎたことを軽く反省しつつ、話を続けるよう促す。
「君が好きなクリーオー・クティーラーを封将の中でも一番最初に、それも君の前で倒させたのは僕だ」
「…………」
目を細める。まぁ元からなにか企んでいるのは分かっていたし、別に実害……それこそナナさんが殺されるみたいな事態になっていない以上、僕から言うことは特にない。倒されるべき存在ではあった。
「そういう……指示が出ていた。その、いや、だから何という話だが」
「そっか。で?」
「ちなみにここで言えと指示されていたセリフは、眼の前で愛するモンスターを殺されてどんな気持ち?だ」
「へぇ」
どうもこうもねぇよ殺すぞ。
「それで、誰だよ指示出したやつってのは。あいつか?あいつか?」
前方で作業をしつつコチラの会話に聞き耳を立てているリベリオスのパーティーメンバーを指さしながら聞いてやるも、彼は首を横に振るだけ。……ルルイアスには来ていないようで。それはそれは、僕ごときに随分と警戒してくれているらしい。
「言え、ない」
「ふーん」
持っていた日誌を机に置く。無意識に乱雑にしてしまったらしい。響いたデカい音に聞き耳を立てている奴らがビクリと肩を揺らした。
どうせコイツが何もしなくとも、僕とクリーオー・クティーラーが、人間とモンスターが相容れないことは決まっていた。他の誰とクターニッドに挑もうと僕はこういう心境になっていただろう。前回は倒す前にクターニッドに挑まされたから良かっただけ。
「で? それをなんで今僕に?」
「こういう徹底したやり口を使えるのは、そういう才能に溢れた人間だけだ」
「まぁね。物語の悪役みたいだ」
「それに抗えるのも、強さや精神に才能を持つ人間だけだ」
「……」
元々思っていたことだが、彼の立ち振舞は心を折られた者特有のソレに見える。彼が実際にそういう才能のある人間達に直面したのが……黒狼と黒剣が分裂したタイミングなのだろう。
「僕にだって才能がある、剣の才能が」
「あ、そうなるのね」
違ったらしい。思ってたより自信満々だった。
「当然だ。僕は剣聖のJOBさえ手に入れればいずれサイガ-100をも超える」
「…………にしては悪役に操られる小悪党に見えるけど」
「…………ッ!」
どうやら彼にとってそのワードは地雷だったらしい。まぁ見るからに勇者に憧れてますって格好だしな。僕は精鋭部隊の格好良く死ぬ役に憧れてる。軍服カッコよすぎる。
剣を抜きかけたリベリオスを聞き耳を立てていたパーティーメンバー達が焦ったように止めたことで、僕等は険悪な雰囲気のまま作業に戻った。
というかもうさっき他のパーティーメンバーが必要アイテムを見つけたからもう銅像に宝石を嵌めるだけなんだが。
世界が反転する直前、リベリオスが僕にギリギリ聞こえるか聞こえないかぐらいの小さな声で呟いた。
「僕は君を友達だと思っていた。だから……すまない」
「…………………………そうですか」
そしてルルイアスは深海を出る。
深淵のクターニッドが顕現し、その触手が聖杯の光を受けて揺らめき、ソレへと挑む15人の勇者はそれぞれの武器を構えた。
シュテルメアの内面に触れていく章として今章は頑張ってきたつもりですが、やはり戦闘させないと書き飽きますよね。飽きました。ということでクターニッド戦です。
あとシュテルメアはキレると口数が減るタイプです。
ついでに軍服の話をするのですが、葬◯のフリーレンって漫画あるじゃないですか。作者的にはあれの魔導特務隊のメンバーみたいなイメージです。かっこいい!!!!!