「第一回、ユニークシナリオ略奪作戦会議を開始しますよぉ!」
前回同様、開催場所は旧大陸錬金術師ギルドの禁忌エリア。
参加人数は4人から9人に増員されている。
おー、というやる気があるようなないような掛け声と共に数人が手をヒラヒラと振り、会議は滑り出した。
「と、いうわけでシュテルメア、仕切ってくれ」
「いや僕じゃなくてキリキリ舞いさんのほうが適任でしょ」
「いーや、俺は最近臥竜点睛に脳筋脳筋って言われて根に持ってるからな。意地でもやらん」
何だこの人、おいまずほぼ知らない人の現状をどうにかしてくれ、ていうかなんでこんな重要そうな隠しエリア占拠できてるんだ、などなど、多くの意見が飛び交う会議室で、その空気感にニコリと笑ったシュテルメアがパシンと手を叩いて切り替えを促した。
シロミ魚が、さすが社会人……いや、皆わりと社会人か、と変な納得をしているが……それはさておき。
「じゃあとりあえず僕が一番上、難しい話はライブラリから出張してきているミレィさんとシロミ魚さんに頼むことにしよう」
数秒反応を見るも、特に反対意見はなさそうだと判断したシュテルメアは第一の議題は、と続ける。
「ルルイアスに向かう船を沈めてやろうという話になりました。その方法検討かな。」
議論点として禁忌エリアに持ち込まれた黒板(錬金アイテム。作成者はシロミ魚)に書き込まれたのは3つ。
・どうやって沈めるポイントまで向かうのか
・PKになりたくはないが、どうやって沈められたプレイヤーの安全を作るのか
・そもそもこの方法で事前シナリオ「深淵の使徒を穿て」を経由していない僕等はルルイアスに行けるのか
これを受けて臥竜点睛が手を上げ、シュテルメアが学校の先生のような動きで彼に話を振った。
「あー……ポイントまで向かう方法は船かナナさん関連しかないんじゃねぇか?」
「否定:当機の持つ手段では戦闘への移行とこの人数の収容に難があるかと」
「なるほどな。じゃあ船長……いや、アルケーノって呼んだほうがいいか?」
「船長の方がわかりやすいでしょう。それで問題ないかと。船は……レンタルでならばすぐに準備可能ですが……戦闘前提では難しいですね」
「こ、購入……!?」
多分金額を知っているミレィさんとシロミ魚さんが白目を剥くようなジェスチャーをした。こーれはヤバそうだ。
「いくら?」
「……最新型の本当にやばいやつがありましてぇ……。それはプレイヤーが個人で所有しているらしいですけどー……その、いえ、最新型ですよ?」
「うん」
「………………………………50億」
ゴッ、バッ、個人所有!?!?!?
正気の沙汰じゃなさすぎる。何して稼ぐんだよその額を。
「いやそれは極論すぎるでしょう。9人以上乗れて、ルルイアスを目指す程度の船であれば……そうですね、良いものであれば一億前後でしょうか」
「……武器なんかは後でカスタムするとして、まぁ5000万マーニぐらいか……」
無理だろ、という雰囲気が室内に充満している。うん僕も無理だと思うよ。ていうかこのままいくと船に船でぶつかるんですケド……5000万マーニの消耗品とか考えたくないです。
「いったん静まってもらっていいですかぁ?」
「はいどうぞミレィさん」
「このミレィ先生がなんの案もなく船の使用を提案すると思いますかぁ? もちろん策がありますよぉー!」
おぉ、と一瞬静まっていた室内(今後会議室と呼称する)がにわかにざわめくが、まぁまぁというミレィさんのジェスチャーにより再び全員が話を聞く姿勢に戻る。
「それは?」
「ルルイアスの城には金銀財宝があるのは皆さんご存知ですね!?」
「あーうん」
あるとは聞いている。一回目は急過ぎて、二回目はメンタルやられ過ぎて見れていないのだけれど。
「それを根こそぎブン獲るとちょうど数億になります!」
「あー、後払いで買ってそれを使うと」
んーまぁ作戦が失敗したらどうするんだとか、本当に億の金額を後払いにしてくれる商社があるのかとか色々疑問点はあるが、一点を除いてミレィさんがそう言うならできるのだろうと思われる。……一点を除いて。
「いやあんな量の金銀財宝、インベントリに入りきらんだろ」
「甘い、甘いですよキリキリ舞い君! その解決策とて当然あります!」
ギン、と目を見開いたミレィさんが取り出したのはリストバンドのような……アクセサリー?
「これは最近……え、というかそもそも皆さんサンラクさんのオルケストラ攻略配信見てます?」
「なんそれ」
「自分は見たな」
「目指すべき限界が拡張されて良かったな」
「分かる……が、あれのタンク版も欲しい所だ」
「ジョゼットさんに指導してもらおう」
「そもそも配信……とは?」
「同意:当機や船長に見れるものではないかと存じます……が、オルケストラの攻略模様は征服人形間で共有されておりますの」
「すごいな征服人形」
ゴホン、と改めてミレィが咳払いをして、そのアクセサリーを高く掲げた。
「これはチェストリア! インベントリアという無限インベントリの下位互換ではありますが、巨大な物体を除けばかなり無限に近い収容量を誇るアクセサリーですよぉ!」
崇めろ、と言わんばかりのミレィさんの様子に場がざわめく。具体的にはマジかよぶっ壊れアイテムじゃんという話だ。
「と、言うわけでシュテルメア君にプレゼントです〜」
「あ、あー、これで全部持って帰ってこいと」
「そうなりますねぇ。多分実際にルルイアスに向かうのはシュテルメア君とナナちゃんのみになると思われますのでぇ」
……しばしの間チェストリアについての説明が入りまして……
「そうですね、そこでグースカ寝てるレミィちゃんも収納可能なことは確認済みですよぉ」
「すごいな。おっけーなんとなく把握した」
うんまぁそこの説明パートは全カットで。
というかアクセサリー欄がまた一つ確定枠で埋まったんだが……お揃いですねぇとニコニコとつけているチェストリアを見せてくるミレィさんは大変かわいらしいが、ちょっとごめんアクセサリー欄とにらめっこしてもいい??
「駄目ですねー。と、いうわけで船の問題は解決です。次に行ってもらって〜。あと敵プレイヤーの安全云々とかルルイアスに行けるのかもコチラでなんとかできるので大丈夫ですよぉ!」
んーライブラリってやっぱめちゃくちゃ有能だよね。
この人クラスのプレイヤーがいっぱいいてなお情報戦負ける真紅の女は何者なんだ……。
「……おっけー、じゃあ次。作戦の詳細は船を見てからにするとして……情報系はシロミ魚さんに任せて良いんですよね?」
「ああ。自分がなんとかする。あと敬語もういいぞ」
「んん……分かった。あとなんか議題ある……!?」
特に話すべきことが思いつかないぜ。それもこれもなんでもこなすライブラリ陣が悪い。
「いやあるだろ(キリキリ舞い)」
「あるな(臥竜点睛)」
「あるでしょう(船長)」
「同意:ありますね(ナナ)」
「あ、そうだ、私ライブラリ辞めてきたんで〜(ミレィ)」
「自分は一応ライブラリに籍を置いているな。色々とライブラリから支援できることはあると思う。ちなみにミレィさんと自分でどっちが残るかじゃんけんに負けた結果だ。悔しい。(シロミ魚)」
「あぁ、僕も黒狼は解散しましたよ(リベリオス)」
「うん……うん……?(僕)」
何いってんだコイツラ。いや本当に何言ってんだコイツラ。
んー、皆それぞれ元いたクランを辞めたり解散したりしたと。臥竜点睛さんとキリキリ舞いさんも今は独り身、船長はNPC、うーんうん……え?マジで?
「マジですねー。クラン名どうしますかぁ?」
「いやいやいやいやいやいやいやいやいや」
ぶんぶんと首を振って皆には皆のしたいことがあるだろうと主張するが、第一回ルルイアス攻略メンバーは元々この面子でパーティーを組む話に概ね同意していたし、リベリオスは友達だからと言うし、ミレィさんは何も言わない。なんでだよ。
「新大陸に作成中らしい海上拠点みたいなやつ欲しいですねぇ。いっそあれも占拠します?」
「守れないでしょ……」
「さすがに人手が足りないかな。……けど魚人族の街探して拠点置くとかはいいかもしれないな」
「いやリベリオス、お前はそんな深海に染まっていいのかよ」
「僕は僕ですから」
「分かんないよ何いってんだ」
「全員魚人族に改宗したクランとかもおもしれぇな」
「それは早くないか? 俺神秘の剣が使いやすい種族探してる所だったんだが」
「それもそうかー」
やっべーとか言いながら、クラン名自体は「ユニークシナリオ略奪作戦」までに各自考えることになった。
まずそもそもクラン作成をするかどうかを考えるべきだと思うよ僕は。
プロットが勝手に壊れたんです……。まだクラン作成までは行かないつもりだったのに……こっちの方が面白いよって本能が言うから……
あとすみません感想は全部ありがたく読んでいるのですが返信遅れております。感想返信よりかは更新優先かなと。
感想を頂けることはとても嬉しいです!いつもありがとうございます!!!