不倶戴天   作:雨傘なななな

74 / 101
難産過ぎた。
この話6通りぐらい書いたんですケド……
規模とやりたいことを伝えられると思えるまで書き直し続けてました。
ここからは更新安定させられると思いたいです。


旧大陸海戦 「急」

 別天律の隕鉄鏡。

 シャンフロ内での行動を外部の動画サイトにてリアルタイムで配信するこのアイテムがシャングリラ・フロンティアの世界に齎した影響は、たとえとある“極まった”プレイヤーには実際に使う羽目になるまでほとんど情報が届いていなかったとしても、凡百の開拓者にとっては絶大なものであった。

 なんのかんの言おうとゲーム機とは高い。上手くプレイできる気もしないし、続くかも分からないし……などという理由でシャングリラ・フロンティアに興味を持ちつつも行動に移せていなかったあるいはプレイヤー人口よりも多いかもしれない人々に、その魅力が直接届けられるという事実!

 ……当然のことながら、そこに商機を見出す数多くの開拓者やクランが飛びつき……無数の配信者クランが結成された。

 

 実際の所、彼らの活動は「彼らにとっては」という枕詞を許容すればかなり跳ねた程度のものである。

 

 前述の極まったプレイヤーによるユニークモンスター攻略配信

 シャングリラ・フロンティア前から配信内での行動や会話によって多数のファンを獲得していた者達によるゲーム内戦争

 さらにさらに前述の極まったプレイヤーによる100人組手配信

 

 これらの100万人規模というレベルを夢見ることすらできずに、しかし彼らは今日もシャンフロ配信を行っているのだ。

 

 

 

 

 

 

 アーサー・ペンシルゴンから情報屋を通じてシャンフロ内で後にも先にもないであろう船上戦闘の配信をしないか?という誘いを受けて、ハッド・ヘッド・ハッダーという名のシャンフロ配信クランに属するプレイヤーは旧大陸海戦の戦場へと来ていた。

 

 彼らのクランの主なターゲットは決闘や攻城戦などの比較的“ガチ”戦闘の配信と解説だ。

 

〈旧大陸海戦〉シャンフロ初! 大規模海戦の生配信!!

 

 というタイトルで行われている生配信の視聴者数は現在6000人。

 …………参考までに書くが、とあるプレイヤーのオルケストラ攻略の最高同時接続者数は300万人である。

 

 戦闘地点から少し離れた場所に浮かぶボー卜にいる彼らが操作する隕鉄鏡の数は6つ。

 海中に2つ、海上にクローズで2つ、空高くからルーズで2つ。戦上の様子を見逃すことなく視聴者へと伝えている。

 

 

 

 

 

 

 

 砲と杖が爆音と共に炎を吹き、アイテムと魔法が船の頭上で色とりどりにぶつかる。

 船の上からでは槍と剣がぶつけ合われ、ここぞというタイミングで海中から飛び出した開拓者達の奇襲が真紅の女を襲った。

 船の下の隕鉄鏡からでは、狩りをする水中肉食動物のように海上へ飛び出たり飛び込んだりしている者達の動きと、より深い場所から狙撃を狙う者達の動きが映されていた。

 

「んっふふ」

 

 その正体をあらわした真紅の女は解禁した勇者武器の槍を振るいながらも心地良さげに笑う。

 実力を隠す意味がなくなったことと、副船破壊によるバフと、なにより人に見られているという事実が真紅の女へとさらなる追い風を吹かせていた。

 

 大規模火力のぶつかりあいに船が大きく揺れ、しかし両船見事な操船技術により、近接戦闘を行う者達に不利を与えるどころか、味方の攻撃が行いような揺れを作り出す余裕まで見せる。

 

 その繊細かつ荒い動きに嵐によるそれよりも遥かに大きな波が生まれ、その波の動きすら丁寧に巻き込むように船は走る。

 ボーッ、と汽笛が響き、雷が走り、矢がクライニングデリバリー号を操船する者を襲う。

 

「くっそ、人手が足りない、乗り込んでくるぞ!!」

 

 ガリガリと互いの船の横腹を削り合いながら衝突し、その隙を見てクライニングデリバリー号すら捨てても敵を殺そうとする非開拓者のギャング達が獲物を構えて“愛する者へ”の船長を狙う。

 

『悪手でしょそれはぁ!』

 

 槍を構えた女がスキルと後方からの水魔法による急加速を得てクライニングデリバリー号の船底へ突進。

 人手が減ったことにより海上戦を成立させる最低条件であった狙いをつけさせない操船に綻びが出たことに気づいた真紅の女が顔を顰めるが、バフにより強さを得た彼女にすらもう状況は止められない。

 

 しかし積み重ねと準備は常に彼女へと微笑むのだ。

 

『くっそが、アイテムが尽きる! 残り……数十秒!』

 

「おいコラッ、はやく来いよクターニッド!」

 

 たった一人で魔法部隊を相手に攻撃を相殺し続けた男の在庫が底を突き、真紅の女の槍が盾を持つ男を貫いた。

 どちらもギリギリ。既に真紅の女の本命部隊は彼女ともう一人の剣士を除いて壊滅し、乗り込もうとしたギャング達もフユネ=77とミオン=071が一瞬で制圧している。

 対してシュテルメア陣営の者達はここまでの戦闘を成立させるためにほとんどのリソースを使い切ってしまっていた。

 

 視聴者達が歓声を上げている。……それが今熱い征服人形達がタッグ技による大きな活躍を見せたからか、それとも決着の時が近いことを悟ったからかはともかく。

 ……ともかく、視聴者数は増えた。

 

 

 

 

『────至金の歯車・密、起動ッ!!!【ライトニング】!』

 

 だが、折られて折られて折られた男はこの程度では崩れない。海中から、仲間の焦りの声しか聞こえていない状況から、なんの照準方法もなくとも金と雷の矢を装填する。

 

『援護:ソナー起動!』

 

 海中も含めての全エネルギーを込められたフユネ=77によるソナー送信。

 敵の位置を被視覚的に把握し、彼は装填した雷にさらに実矢を8本とエンチャント魔法による追い風を追加。

 

『ぐ……頼むぞッ!』

 

 拮抗していた魔法戦に決着が付き、アイテムによる相殺というガードをなくした魔法達が“愛する人へ”に直撃し、大きく船が揺れた。

 

 フユネ=77の合図を受けてリスポーン不可能な船長とミオン=071、既にリソースを使い切りいるだけ無駄となってしまったシロミ魚が海中へと飛び込むことで戦場を離脱する。

 

「あー、クッソ、準備時間が足りねぇ!!」 

 

 船に1人残されたキリキリ舞いが刀を悪態をつきながらも構えたまま、自身と船へ飛来する魔法群を見つめて覚悟を決めた。

 

「あっはは、こっちの勝ちかな!!」

 

「いーや、お前も道連れだよッ! クソが!」

 

 刀を放り投げたキリキリ舞いがイベントリから取り出したのは両側に機構のフックの付けられた鎖。

 

「わざわざリヴァイアサンから持ってきたんだ、チェーンデスマッチと行こうぜ!」

 

「くっ……!」

 

 投擲により追尾機能込みで放たれた鎖の片側がアーサー・ペンシルゴンを捉え、反射で行われた槍による払い攻撃は寸前の所でキリキリ舞いの肉体を捉えなかった。

 

「こっちは最初っから全部まとめて海に沈むつもりなんだよ、後先考えてるお前らに勝てるかよ!?」

 

「馬鹿に勝利の美酒は勿体ないでしょ!」

 

「こっちは痛み分けでもガブ飲みなんだ……よッ!」

 

 刀が“愛する人へ”の甲板へと突き刺さり込められていた爆発系統の宿儀が船体を貫いた。魔法が着弾し、積み荷の火薬に炎が灯る。

 同時に海中からシュテルメアが放ったであろう金雷はクライニングデリバリー号にバチバチと帯電させ……その船体全てを乗船していた非NPCごと金へと変えた。

 

「自爆は私の十八番だってのに!」

 

「知るかんなもん!」

 

 爆発まで8秒弱。

 既に非戦闘員やNPCの避難は済み……あ、嘘、ギャングはその場に放置されてる。

 海に飛び込もうとしたアーサー・ペンシルゴンの身体を鎖が止めた。海中から飛来した矢が救助に向かいかけた配信クランのハッド・ヘッド・ハッダー達を咎めるようにボー卜へと突き刺さり、金化したクライニングデリバリー号はその重量に浮力を失い深海への旅を始めた。

 

「うっそだろ、こんなとこで!」

 

「俺達のユニークシナリオが……!!」

 

「邪魔しやがって、カス野郎のくせによぉ」

 

 深海に沈み行く船の上で喚く魔法職の者たちへとフユネ=77による狙撃が襲い、状態異常回復ポーションを船に振りかけようとしていたプレイヤーが船から落ちて……落ちた直後にはピラニアに群がられた肉のように穴だらけになった後ポリゴンの塊へと変わった。

 

 2秒前。

 クターニッドの元へと誘う幽霊船が表れた。周囲の事情を考慮しないこの船は極めて機械敵な動きのままに爆発範囲内へと入る。

 爆笑したキリキリ舞いは完璧だろと呟き、愛刀を海へと投げ捨てた。

 そう、きっとあの男は神に愛されているに違いない!

 

「行け! シュテルメア!!」

 

「あーもー、最悪だよ!」

 

 ────爆発。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 “愛する人へ”の自爆により幽霊船も含めた全ての船が大破し、深海へと数多の乗員を乗せたままに沈んでいく。

 

 シャンフロ世界ではあまりにも珍しいラグを纏って表れたクターニッドの触手は、まだギリギリ沈んでいない3船を目の当たり(見てない)にしてどうするべきか迷った後、なにも捕らえることなく深海に帰って行く。

 

『ぐ、船が必要なんですかぁ!?』

 

『否定:まだ希望はありますの……!』

 

 深海にいたミレィ、ナナ、シュテルメア、シロミ魚、船長の5人が引いていく蛸の触手をそれぞれに追うが……泳ぎの速度でクターニッドに勝るわけもなく、その距離は容赦なく広がっていく。

 

『まだ、そう、まだ!!!!!』

 

 シュテルメアが叫ぶ。

 もう折れるのはたくさんだと、金化した船を蹴り飛ばしてより深海へと進み、残りストック一回の【爆水】を起動し、それでも無情に離れていく触手へと手を伸ばして、

 

『クリオネちゃん!!!!!!!!!!!!!! 君にまた……ッ!? がっぁ!!?』

 

 ポーションを飲み損ねていたことで呼吸不可判定が出され、シュテルメアが溺れる。ポーションを取り出すことよりも息を止めてでも深海へと進むことを優先してより潜る、だが……!!!

 

『────』

 

 呼吸不可状態での潜水である。急激な環境変化により気絶判定が出され、身体の操作能力を失ったシュテルメアは重力に引っ張られて深海へとゆっくりと落ちていく。

 ナナがなんとか命だけでも助けようと手を伸ばし……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゴポゴポと水中で空気が吐き出されるような音が響き、クターニッドのソレと比べると細い……とあるモンスターの触手が落ち行くシュテルメアを抱き締めるように受け止めた。










『────届いてるよ』










感想に返信したすぎる……けど100件……100件!?!?!?!?
こう、一文ずつとかでも返信していきたいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。