だいたい治った(微熱)ので更新です。
「とーりあえず初心に帰ってここルルイアスでしたいこと、しなければいけないことの確認だな」
ひとまず周辺の安全確認と杖弓の探索(見つかってない)を終え、リスポーン地点として設定した家屋内にて紙とペンを取り出した。
今回は、最優先事項、優先事項、通常のやりたいことリストという形で作成する。
■最優先事項
・杖弓の探索
・ルルイアスの財宝回収
・クリオネちゃんに会う
■優先事項
・回復アイテム及び異形術用のアイテム収集
・封将討伐
・船長のようなユニークシナリオに付随したキャラクター捜査
■やりたいことリスト
・使用可能な船舶の回収
・ユニークシナリオ「哀しき深海へ贈る唄」の攻略
・ユニークシナリオに頼らない継続的なルルイアスへの渡航手段作成
「……これぐらいかな」
ルルイアスに滞在する期間は一週間とは言え、意外と多いな。
最優先事項に関しては最初の方でなんとかなるというかなんとかしないと始まらないとして……鬼門は遠距離攻撃無効の封将討伐とユニークシナリオ「哀しき深海へ贈る唄」の攻略情報収集だ。
「なーんの情報もないんだよな今のところ」
一応、発生したタイミング的に「海の化身」の被害者関連のユニークシナリオであろうことと、アイドルグループがモチーフになっているらしいナナさんが関係してそうってぐらいだろうか?
「海の化身被害者に向けたオリジナル楽曲を作るとか……?」
んー、ありそうなのが怖いところだ。
流石にプレイヤーに作曲能力を求めたりとか、むしろ征服人形さえいれば勝手に攻略してくれたりとか、そういうものではないだろう。多分。
「あー、忘れてた、異形術師の先……隠し最上位職の捜索もあるんだっけ」
コチラは導師もどきとの雑談中に少し小耳に挟んだ程度だ。
分かっていることは「存在する」ということと、「改宗が関係している」こと。
んー、種族変更を求めるあたり、その種族の特性に応じたより強力な【異形術】を獲得できるとかそのへんだろうか。
この捜索をやりたいことリストに入れない理由は単純。僕の改宗先は確実に魚人族になる訳だが、魚人族への改宗は魚人族の街でないとできないためルルイアスからどうこうという話ではないからだ。
「まーこれは導師もどきもよく分からんって言ってたし、なりゆきに任せるしかないでしょ」
転職シナリオも踏んでないし。
口を滑らして、やらかしたって顔をした導師もどきから伝えられた「まだ探すな」と言う忠告もある。今度だ今度。
最後に継続的なルルイアスへの渡航手段についてだが……これは正直着地点が決まっていない。
例えばもうクリオネちゃんに会わないことにするのならば必要のないこと……ぐ……ぐぅ……!!!!そんなわけあるかよ!!!!!
「フッー……………」
よし落ち着いた。まぁその、クソッ、そういう、わけだ。
もしくはこう、リモート会議みたいな手段があればそれでの代用も一応可能だ。あとほら、クリオネちゃんに二度と来ないでみたいなことを言われる可能性も……ぅ……考えただけで吐き気してきた。
「まぁそういうわけでリスト下位に分類されるって話だよね」
んー、と美しい深海の街を眺めて伸びをする。
またすぐ近くで破壊音が響き、僕は深海の短杖を持って動き出した。
実際、どこにあるんだろうか僕の杖弓。
奪われた武器関連の話は封将のカトラスがあったけれど、あれって確かユニークシナリオ関連NPCを奮起させるための遺品アイテムとしてカトラスを落とすってだけで、ルルイアスで武器を落としたらあそこにとかではないと思われる。つまり……普通に落としただけの僕の武器はいずこへ……?
一応沈没した(させた)船内の探索をしてみるも、食料や回復薬なんかの在庫が増えただけで杖弓自体は出てこない。……ゲームなんだからなくした武器はなんらかのイベントの一つなのではないかという思考とこのゲームは普通になくしただけが全然あり得るという思考が混ざって、ぼんやりとした焦りに変換される。
「くっそー、虱潰しに街の上から探すしかないか……」
幸いなことに手元に残った深海の短杖は移動用兼切り札。海中移動促進筒なんかも含めたらそこそこの範囲を探せることだろう。
チェストリアと至金の歯車・密、海中移動促進筒以外の一部非必須アクセサリーを取り替え、水系統の魔法のキャスト、リキャストタイムを減少させる。具体的には先程つけた【異形術】の強化アクセサリーを水霊のコインを始めとした馴染みのあるモノへ。
ついでに軍服も雷系統の強化用から今回の事前準備に当たってミレィさんからチェストリアと共に贈られていた水系統魔法強化用の執事服へと着替える。しかもあれ、燕尾服みたいな感じのめちゃくちゃ本格的なやつ。
「おぉなんかミレィさんの好みがわっかりやすく出てる……」
ミレィさんの名誉が残せているか分からないが、試着させられたときのミレィさんの表情は言わない方向性で調整させていただこうと思う。
別に僕自身もわりとこういうコテコテの服は好みなのだ。ファンタジーでぐらい着ても良いだろう。今は顔も良いことだしね。
「準備完了〜」
【ウォータージェット】を待機させ、さらにもう一度【ウォータージェット】を発動させる。
久々だなこの流れ。前はしょっちゅうやっていたけれど、最近はナナさんやアルジェントの助けがあったからあまりやっていなかった。ここに来る直前の海上戦じゃ船底に身体からロープ型アイテム伸ばして捕まってたし……。
ゴォ、と地面に叩きつけられた水流の反動を受けて身体が宙へと飛び出して、回転による推進力を得ながらさらにナナさんから借りていたとあるアイテムを起動する。
「海中移動用アイテムその2! 海中探索用征服人形専用装備:バックパック」
スクーターが内蔵されたこのバックパックは、背負っている者に海中での高度維持能力を与える。
問題点はゆっくりとしか前に進まないことと上昇する手段を別で準備しなければならないこと。
だが普段これなしで海中探索をする僕には当然この問題を解決でき、さらに推進力を定期的に生み出す手段も持ち合わせている。
コレを起動したことにより高度は保たれ、海底にある町並みから10メートルほどの高さの所から杖弓を探す。ナナさんがいてくれたら望遠やらサーチやらでもっとはやく見つかっていただろうに……。
「よっしゃ探すか、【爆水】起動!」
……水流が生み出され、シュテルメアが移動をはじめる。その行動が起こす結果を忘れて……。
◆
と、言うわけで思い出しましたそうだルルイアスってめちゃくちゃモンスター集まってくるんだったやばいやばいやばいやばい。
「いや……えぇ?」
後ろを振り返れば、大量の剣や槍を持った魚人もどき、下を見れば遠距離武器で少しでも動きを止めたら射抜いてくる魚人もどき、少し離れたところには僕を追う魚人もどきを追う巨大生物。
「うーわ、終わりだ……!!!」
ワラワラワラワラワラ、ワラワラワラワラ……
数え切れるようなレベルではない。もはや魚人もどきだけでルルイアスの海底を埋め尽くせるのではないかという量。浮遊ができないらしい魚人もどきに至っては数体で組体操をしてまでこちらに剣を伸ばそうとしている。怖い。
「つ、杖弓があれば至金の歯車と【暴虐の雷獣】で一発なのに……!!!!」
バチバタと足を動かし、少しでも前へ逃げる。いや逃げる先なんてないわけだが、先程僕がいたところももはや魚人もどきに埋まっている。今リスポーンしてもリスキルされるだけなのだ。
ひえっ、投げられた槍が足を掠めた!死ぬ!!
「きっしょすぎでしょ、【ウォーター・ジェット】!」
逃げるために使う【ウォーター・ジェット】の流れの先に魚人もどきがいるのも良くない。挑発を受けたと思った奴らはより苛烈にこちらを追うのだ。なんだっけ、ヘイトの切れる暇がないってやつだっけ。キツイ。魔力が。
もうかれこれ二十分は逃げ回っている。……時間が経つほど奴らの数が増えるのも心が折れそうな要員の一つだ。あとは絵面のキショさと魔力のなさと火力のなさ。どうしろってんだ。
……もはや、杖弓が見つかるまでひたすら逃げ続けるしかあるまい。
「なんでこんなこと、に───なっ、おい嘘だろッ!」
ここまで逃げ切れたのは、というかここまで前方に敵が現れなかったのは、立ち回りもあるが……運が良かっただけに過ぎない。
その運が切れたらしい。
「よりによってぇ……キメラ野郎!!」
全身にこれまで捕食した大量のモンスターの肉体を反映させる巨大生物!
ぐぁと口を開けて咆哮を放っていたその化け物は、右手を構えるような動きから三筋の雷を放った。
「何食ったんだよ死ぬ!!」
【爆水】起動、なんとか斜め前に弾き飛ばされることで雷をすれ違うように回避し、少しキメラ野郎と近づいたことでその右腕についたそれを見た。
「……………天啓!!!!!」
愛してるぜ杖弓!!!! なんかキメラに食われてるけどそれコイツ倒せばドロップするんだよなそうだよな!?
後ろからは大量の魚人もどき、だが猶予は20秒はある、一瞬でポリゴンの塊に変えてあげよう!