不倶戴天   作:雨傘なななな

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戦闘描写リハビリ。


海の王の誇り

 【異形術】とは亡くした命を背負って戦う術。

 【異形術】とは成り立ちこそ命を冒涜するようなモノだったかもしれないが……だからこそ、その最初に切り開いた者と同じ道を行かぬために命を尊び、重く扱わなくてはならない。

 でなければそれこそ悪霊のような存在になってしまうだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「【爆水】起動」

 

 残り20秒を余すことなく使うため、最後の【爆水】ストックを使ってキメラ野郎とすれ違う形で背後を取る。

 どうせ杖弓を取り戻すために戦わないといけないとは言え、背中から撃たれる危険を持ちながら戦いたくはなかった。

 

 吹き飛ばされながらも取り出した異形術用ポーションを口にし、魔法名を唱える。事前に効果確認出来てないからあまり使いたくなかったモノだが、クターニッドでぶっつけ本番よりはずっと良い。

 

「【異形術・炎雷ノ鯱】…………!!!」

 

 思い浮かべるのはそう、この偉大な海に君臨する最強の存在! リベリオスとナナさんの二人と共に打倒したこのモンスターは雷と炎を貯め、放出する!

 僕の身体の腕が炎と雷を纏い、頭に宝石のような角が生え、牙が生えた。

 

「変化量の多さは、元の生命の強さの証ぃ……!」

 

 かなり長い期間深海に置ける先代青竜の影響で異形化したモンスターを楽にするというクエストを遂行してきたが、ついぞこのアトランティス・レプノルカが“混ざった”個体を見ることはなかった。

 それはつまり先代青竜ごときの影響力を受けないほどの強さ、正確には個としての確かさを持っているということだ。

 その誇りを証明するように、その強さを証明するように、この異形化ポーションの作成難度は高かった。

 

「g.ooa!!!!!!!!!!」

 

 そんなことを知る由もないキメラ野郎は咆哮と共にバチバチと鳴り響く雷を放ち、受けた僕の身体により雷が広く纏われる。

 

「チャージ!」

 

 再現するは何度も何度も見せられた街すら焼き払う放電ビーム!

 これ使えばあの魚共も倒せたんじゃないかという問いは無視する。だってこれくっっそ高いんだぞ雑魚の群れごときに使いたくない!!

 

 身体がバチバチと帯電し、燃える……!

 

「ggaaaaaaaaaa!!!!!!!!」

 

 だがどうやら雷は効かないと理解されてしまったらしい。魚人もどき到達まで残り5秒もなさそうだ、急がねば……!!

 距離を詰めての近接攻撃に以降しようとするキメラ野郎に対応するべくさらに異形術を重ねる、キメラ対決だ!!!

 

「お前にこのレベルのモンスターが取り込めるか!? 【異形術・封将バーシューど…………グゥ゙ッ!?!ァ……?」

 

 王者のプライドを示すかのように、一瞬フジツボによる防御力を得ようとしていた肉体が炎と雷に侵食されて消えた。頭が割れそうに痛みを発し、熱を持っている。角が巨大化している。

 

 バチバチと溜まった電気はより強い力を発し、周囲のモンスターにすら影響を与え始めた。

 

「くっそ、雷の制御がキツイ……死ぬ!!!」

 

 もともと長いとはお世辞にも言えないHPバーがゴリゴリ削れていく。

 

「ご、ぐ……こうなったら……!!」

 

 やけだ!!

 炎と雷を貯め続けては焼け死ぬ以上、するべきことは全放出!

 角に貯めることで指向性を持ってキメラ野郎を貫く予定だった雷を全方向にぶっ放すことで巻き込んで諸共沈めてやる!

 

「Ga.goa!?!?!?!??」

 

 狙いに気づいたらしいキメラ野郎が僕から離れるが……もう手遅れなんだよ、と毒づきながら【爆水】をストックが一つ溜まった傍から起動、距離を詰める!

 スキルは使えないようだがアクセサリーの起動ぐらいはできたらしい。僥倖! いやそんなん言ってる場合じゃない!

 

「くっっっっそ、gwoooooooォ゙ォ゙オオオオァッッッ!!!!!!」

 

 一瞬肉体乗っ取られかけた!!

 ちょっとあんまりにもバケモン過ぎる!!

 

「g.g.ogaaaaaaaaaa!!!!!!!!!!」

 

 抗うように敢行された我武者羅な攻撃は雷のスタンにより掻き消され、ついでに周囲数メートル内にいた魚人もどき共も消えた、雷と炎が全て使い切られたことで異形化は掻き消え……そしてポリゴンの塊となったキメラ野郎の中に共鳴の雷短杖を……見つけたァ!!!!

 

「ぐっ……スタンきっつ……」

 

 自身にも掛かっていたスタンをスキルの効果も使って無理やり外し、杖弓のを掴んだ。

 まだ的は無数にいる、全滅させてやろうぜ相棒!

 

「至金の歯車・密、起動!」

 

 ドンと腕輪を叩けば、くるりと歯車は回る。

 たったこれだけの動作で詠唱は終わり、装填するのは僕の持つ魔術の中で最強の雷獣!!

 

「【暴虐の雷獣】!!!」

 

 流れるように「追撃の矢筒」を始めとした大量の弓矢強化系統のスキルという手札を切り、待機させておいた【ウォーター・ジェット】を使い距離を離すことでより多くの魚人もどきを射程の中にいれる!

 

 バチバチと雷鳴を響かせる弦を引き絞り──

 

「なっがい逃亡劇だった! しんどい!!!」

 

 ──放った。

 

 轟音。真横に雷が落ちたかのような音と共に大量の魚人もどきが蹂躙され、一撃の元に消えていく。

 

「すごいな……」

 

 前回も見た光景だが、至金の歯車の特殊効果により辺り一帯の町並みそのものが金と化している様子はやはり壮観だった。

 

 チェストリアを駆使して無数に散らばった素材アイテムを拾い集めていく。あー、逃げすぎた。現在地が分からな……くもないな。どのモンスターのモノかまでは分からないとはいえ少し離れた所に封塔がある。クリオネちゃんのやつだと良いんだけれど。

 

「とはいえ、なんだったんだあの暴走。異形化の重ねがけ拒否……?」

 

 強過ぎるモンスターの素材を使った異形術は重ねがけが出来ない……ゲーム的に見れば納得の行く理由だが、シャンフロ的に見ると納得できない理由だ。

 アクセサリースロットを弓戦スタイル(例えば王国弓兵部隊の矢筒とか)に戻しながら、考察を重ねていく。

 

 そもそも異形術とは錬金術から派生し、その冒涜的な在り方故に禁忌に指定された技術の一つ。

 フレーバーテキスト的には力に溺れた錬金術師が開発し、溺れすぎた結果異形そのものとなったとかそんな感じだったはずだが……暴走の方向性が異形に染まるって感じじゃなかった気がする。

 アトランティス・レプノルカ……想像していたよりもじゃじゃ馬だったらしい。

 

「使用には気をつけないと……ってのは一旦置いておいて」

 

 金化した街、炎と雷で焼け消えたキメラ、【暴虐の雷獣】で全滅した魚人もどき。

 その魚人もどきを狙っていた巨大生物が残っているのだ。

 ゴォ、と同族の力を利用されることに憤っているかのように身体に纏う炎の出力を上げている。

 

「まだいるのかよ……バーゲンセールか……?」

 

 やっと取り戻した杖弓を構えて、【迸る雷律】を装填することで出現させた弦に仕込み矢を2本番えた。

 この一連の流れに出現したどのモンスターのソレよりも力強い咆哮が轟き、吹き荒れた雷が既に金化している町並みをさらに蹂躙していく。

 

「…………ふー」

 

 ボスラッシュ的な?

 まだ1日目なんだが……海中移動促進筒、【ウォーター・ジェット】共にすぐには使用可能にならない。逃げ……られないか。

 

「矢強化のスキルを片っ端から使ったのはミスだったかな」

 

【衝撃の一矢】

【特殊エンチャント:火鳥撃】

「追撃の矢筒」

 

 先程発動させたのはこの3つ。

 意外と残っているような……使い勝手悪いやつから残っているような……まぁ仕方ない。切り替えなくては。

 

「【代償詠唱】、【詠唱短縮】……!」

 

 アイテムを集めながら飲んでおいたHP回復ポーションの効果で残り体力は7割のところまで回復している。

 体力を減らす代わりに威力を落とさず詠唱時間を減らす十八番のコンボだが、最近は周囲にたいてい味方がいることで詠唱時間を確保できていたこともあり随分と久しぶりだ。

 これはこれで少しワクワクしてきた。

 

 【迸る雷律】と仕込み矢を放ったことで爆発と雷がコチラへと迫っていたアトランティス・レプノルカの鼻先に直撃し、甲高い咆哮が上がる。

 ふっふふ、これぞ速射テクニック、詠唱終わりに矢を放つことで擬似的に2連射で攻撃できる的なやつ……!!

 

「【雷轟の矢】装填!」

 

 矢を失ったことで弦の喪失した杖弓に再びバチバチと音を立てる弦が引き直されて、雷轟の矢は引き絞られる。

 まだ【この一矢にありったけの勇気を】を使っても殺せはしない。雷律ごときでスタンさせられる敵じゃない以上「ダーティーショット」も不可。それなら雷律への「共鳴」効果ともう一つ……

 

「【迎撃の剛射】」

 

 痛みに頭を降って雷と炎を周囲に撒き散らしていたアトランティス・レプノルカが咆哮を止め、明確にコチラへと殺意を向けた。突進、迫る頭部、僕の足じゃ避けられない、護ってくれる仲間もいない、直撃すれば一発でリスポーン、できることは、

 

「いーや、逸らす!」

 

 ──口にした頃には【雷轟の矢】に重ねるように実態のある矢の方も番えている。

 「瞬刻視界」起動、自身も敵もスローダウン! だがコチラの攻撃は指さえ離せば雷速!!

 

「go.aaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!!!?!」

 

 自身へと迫る対象への火力上昇スキルを乗せた雷矢が狙ったとおりにアトランティス・レプノルカの側面へと真っ直ぐと進み、その横面を殴りつけるかのように貫いた。

 瞬刻視界の効果でスローダウンされても尚かなりの勢いで迫っていたアトランティス・レプノルカは攻撃を受け、僕を轢き殺す直前でその進路をズラされた。

 

 攻撃の迎撃に成功したのを確信する……と同時にチェストリアからアイテムを出しつつ瞬刻視界を解除。弓と刀、そしてパリィスキルから派生するというこのスキルは強力ではあるが、スローダウンという性質上どう頑張っても効果時間中の魔法の詠唱がファンブル判定を食らってしまう。

 弓をひたすら引いて放つだけならばそんな心配も必要ないからこその適正スキルなのだろうが……生憎僕には通常の弓は引けないのだ。

 取り出したアイテムは当然異形化ポーション。

 

「【異形術・蛸蛇】」

 

 脚部が蛸足状へ、右手が蛇頭へと異形化。さらに続けざまに【迸る雷律】を発動させ、弦に実矢を番えた、振り向きざまに敢行された放電を蛸足による速度でギリギリ範囲外まで退避し、どこからか生成された炎の矢を掻い潜る。クソッ、回避のときだけ「瞬刻視界」がオートで起動してほしい……!!!

 【迸る雷律】と【果てまで貫く雷鳴】を順に使うことで仕込み矢ですらない矢でアトランティス・レプノルカを苛立たせつつ、あーもうクソ! この魔法を使いながら他のでかい魔法の詠唱もできればいいのにな!!

 

 突進回避、放電回避、炎の矢も回避、回転に寄る尾の叩きつけも回避、回避回避回避……!! 威力こそ直撃=リスポーンと断言できるほどのものだが、たいてい大振りかつ海中故の慣性の働きによりなんとか回避が成立している。蛸足便利!!

 

 だが、折と隙を見てHPとМPを回復させているものの、蓄積されたダメージは自分の体力の全損が近づいていることを教えてくれているわけだ。

 気を抜けばそのまま死ぬ、ならば……!

 

「go.a!!!!!!!!!!!!」

 

「【加算詠唱】!!!」

 

 来た来た極太ビームを打つためのチャージモーション!!

 正面から砕いてやる!!!












シャンフロ読み返してたら当然みたいに視界をスローダウンさせるスキルは弓系と刀系のモノって書いてあってビビりました。
……手に入れたタイミングはレベルダウンビルド中ということで。
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