不倶戴天   作:雨傘なななな

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くっ……書き始めるとさらに書きたくなってしまう……!
俺は……勉強しなければ……!!!!!!

感想・評価などありがとうございます。大変励みになっております。


全ては深淵の盟主の気分によって左右される。

「え……?」

 

 クリオネちゃんとの再会のため向かった封塔が完全に崩れ、その威容や存在感、ボスモンスターの気配が消え去っている。

 一応途中で近くを通ったときに見たルルイアス城を見かけたのだが、崩壊しているようには見えなかった。ココだけなのか、それとも全ての封塔が似たようなことになっているのか……?

 

「地理的にここはクリオネちゃんの居場所で間違いない……はず」

 

 そう思い、しばらく周囲を探索するもモンスターとの会敵以外に成果はなし。

 このルルイアスに来たとき、僕を受け止めてくれたのがクリオネちゃんだったとして……この崩壊の原因は彼女が封塔を出てしまったから、とかそういった理由だろうか?

 

 目を覚ましたときに一瞬見えた彼女は、今どこにいるのだろうか?

 

『────ユニークシナリオ「世界を反転す、封将は祈る」を開始しますか? はい いいえ』

 

「……なるほどね」

 

 数多くの疑問にフリーズしていた僕の前に降りてきた1枚のウィンドウ。

 

「聞かれるまでもないね」

 

 僕は、クリオネちゃんに、会いに、来たのだ!

 ここを出てからはともかく今それ以上に大事なことなどなにもない!!!!

 

「ピョー」

 

 間抜けな鳥の声が聞こえた。ミレィさんからルルイアスの財宝は忘れずに持って帰ってくるようにとのことだった。この会話はどこかで聞かれているのか……?!?

 

 

 

 

 

 

 さて、改めてユニークシナリオについてなのだが、【爆水】と【ウォーター・ジェット】を駆使して封塔を回って戻ってきたのだが、他の封塔にはちゃんと将が今も存在することと、この崩壊した封塔が間違いなくクリオネちゃんのものであることが分かった。

 

「つまりこのユニークシナリオはクリオネちゃんを探すシナリオで間違いないってことだ」

 

 こ、こんなときにミレィさんがいれば……!!

 一応メールを送ればいつでも知恵は貸してもらえるだろうが、それは最後の手段として取っておくことにするとして。

 

 考えるべきはクリオネちゃんの行きそうな場所、何故このユニークシナリオに至ったのか、そしてクリアするための鍵は何か、だろうか。

 

「ルルイアス城、他の封塔、ルルイアスの外……」

 

 分かっていた話だが、このルルイアスには特筆してイベントの起こりそうな場所があまりない。

 1週間この街に閉じ込められることも、最初の一回は経験値稼ぎや普段会わないモンスターの討伐、封塔対策、クターニッドの考察などできることが多くあるのだが……2回目以降は目新しいことの何もない少しアレなシナリオへと変貌してしまう。

 僕はクリオネちゃんに食べてもらうとかいう最高のイベントがあったから楽しく過ごせてきたが、他の人達にとってはそうでないことは想像に難くない。

 

「あとは……『狂える大群青』か」

 

 僕はクターニッドのシナリオをクリアせずリスポーンで帰らされているから見たことがないのだが、イベント終わりに現れるというレイドモンスター。負けイベント的なものだとだけ聞いているが……ユニークシナリオとして出される存在ではなさそうか……?

 そんでもって僕はそもそもこの『狂える大群青』の居場所を知らない。クターニッドに封印されている以上ルルイアス城かどこかにいるとは思うが……このルルイアスで起こるイベントからのアプローチは意味をなさない気がする。

 

 ライブラリから何も言われていない以上、「消えた封将を追え!」というユニークシナリオはおそらく初受注。

 つまり僕と他のクターニッドに挑んだプレイヤーの間で何らかの違いがあり、そこを考えればある程度このシナリオの答えに近づける……はず?多分。

 

「……………挑んだ回数?」

 

 クターニッドに対してだとしても、クリオネちゃんに対してだとしても、筋は通っている。

 クターニッドに挑むのは3回目、クリオネちゃんに挑んだのは127回だ。次はいつになるだろうか。

 

「どちらにせよこのタイミングで、というのが腑に落ちないかなぁ」

 

 百回超えたら、みたいなタイミングなら納得もできるけれど……このギミックボスに3回挑まないと発生しないイベントがある、というのもシャングリラ・フロンティアらしくはない。

 

 となると……

 

「まぁやっぱり感情だよね。僕……いや、こういうのはあまりプレイヤー側の感情を重視しないことは「力を持てど民は守れず」や「偽りの神へ、ただ純粋な敬意を」の件で分かってる。つまり……」

 

 クリオネちゃん側の感情が答えの鍵、だと思われる。

 (クターニッドの感情の可能性もあるが)

 

「封将ごときが僕をここへ招いたこと、そこに発生の理由があるんだろう。それ以上は分からないけれど」

 

 一旦思考の海から脱却し、大きく伸びをしながら周囲を見渡したのだが……少し離れた家屋、その崩れかけた壁の裏から細い触手が覗いている。いや……いやいや……え?

 

「クリオネちゃん……!?!?!?」

 

 デカい声が出た。急いで口を押さえるが、遅かったらしい。触手がビクリと跳ね、壁から美しい顔が少しだけコチラに出てきた。目が合っ……一瞬バレた、とでも言うように顔を歪ませた彼女は即座に体の向きを反転、僕とは反対方向へと走り出した……!!!

 

「待っ……!!!」

 

 深海の短杖を取り出して、【ウォーター・ジェット】の詠唱をしながら走る。

 

「クリオネちゃん……!【ウォーター・ジェット】!!」

 

 斜め下への推進力が僕を家屋の上へと押し上げた。そのまま屋根に着地して、ポーションを取り出しながらもいつか動画で見たパルクールの要領で走り出す。

 

「待ってくれ……!【異形術・蛸】」

 

 深海の街並みを、移動手段を全力で活用しながら走り抜けるも、ボスモンスターのステータスを持つ彼女は更に早い。(もしかしてこれ封塔に閉じ込められてた時は戦闘力的にはマシだったのでは?)

 蛸のソレに変わった足がさらなる推進力を生み出した。彼我の距離は30メートル前後。足止めの魔法は魔法無効を持つクリオネちゃんには届かない。非流動性海水のスキルでの足止めは少し迷ったが辞めた。こういう和解系に見えるシナリオで対象に攻撃は良くないと海の王の件で学んだのだ僕は。

 

「ぐ……はやすぎ……るッ、魔法職にAGI求められましても!!【爆水】起動!」

 

 更に更に推進力を!

 前へ前へと進む。彼我の距離は小学校のプールの縦幅程度まで縮んだが、クリオネちゃんは一向に止まる気配を見せていない。これは……どこまで?

 

「く……【詠唱短縮】!」

 

 リキャストタイムの終了と同時に次の【ウォーター・ジェット】の魔法を詠唱しながら、パチンと指を鳴らすことで【魔法待機】にセットしていた【ウォーター・ジェット】がイメージと共に生み出され、前へと吹き飛ばされるように進む。

 

 動きも詠唱も一切止めず、最速でクリオネちゃんを追いかけながらもようやく冷えてきた頭の一部がこの車無しカーチェイスの行先へと想いを馳せる。

 ルルイアス城の方ではない、他の封将のところでもない。向かっている方角には何もなかったはずだ。ルルイアスの外へ向かっているのであればもっと近道がある。目的なく走る?ユニークシナリオの追跡対象が?

 

「【ウォーター・ジェット】……! ぐ、リキャストも【爆水】のストックもキツイ……!!」

 

 置いていかれまいと走って、走って、走った先。

 突然家屋の道が途切れたことで僕の身体は地面へとゆっくりと放り出された。

 

「わっ、ぶっ、ぼェッ!?」

 

 2転、3転して止まった先、顔を上げて周囲を見回してもクリオネちゃんはおらず……代わりに大量の船が沈没していた。

 

「船着場……? 違うか。全部沈んでるみたいだし」

 

 これは……「帰れ」みたいなことだろうか?

 理由は? もちろんクリオネちゃんに食われずして帰るつもりは1ミリもないのだが、それを差し引いてもこのユニークシナリオが帰ることで達成されるものなんてことはないだろう。

 なにか……ここに伝えたい事があるのだろうか?

 

 不時着で減ったHPと移動で減ったMPをポーションを飲んで回復しつつ、非常用に小さな船をチェストリアに収納しておく。5メートル×5メートルって意外とデカいな……先っちょ削ったけど。これ大丈夫?船頭ないとバランス崩れて沈まない?

 

「ふむ……船のある場所に誘導されていたってことは、やっぱり帰れって意思表示かもしくは自分も外に出たいって意思表示ぽいよね」

 

 実際、クリオネちゃんの封塔が崩壊したのがクリオネちゃんの意思なのか、何かの罰や褒美的なものなのか、クターニッドの意思なのかで大きくシナリオは変わる。

 

「……そのへんはクターニッドに聞かないと分からないか」

 

『───────応えよう』

 

 重く鈍い、重低音としか形容できないような声が世界に響く。

 

 暗い海底世界は街全体に影が差すことでより深さを増して。

 

 誰かが言った。クターニッドとは存在しないものだと。概念なのだと。

 

 それを否定するかのように明らかな質量が上空……いや、海底に浮かんでいる。

 

『─────娘は我が意に反した。聖杯の封将という任は……解任した』

 

 え……?

 世界が反転される。ここまで走ってきた道の先、封塔が再生し……何かの産声が鼓膜を強く揺らしている。

 

『異形の者よ、海の化身を継ぐものよ、開拓者よ』

 

「?」

 

『我等が深淵を埋めんとするか───?』

 

「はい?」

 

 深淵を埋めるって……証拠隠滅的な?そんなつもりは全く持ってないんだけれど……どこをそう取られた?

 

『───────示せ、示せ、示せ、その生命の輝きを』

 

 その言葉とともにイベントシーンの終わりを告げるかのように街に元の明るさが戻り、全身に掛かっていた重圧が消える。

 間違いなく本人……本蛸が来ていたのだろうという確信に驚きつつも、手を開いては閉じを繰り返すことで身体にも元の調子を取り戻される。

 近くにクリオネちゃんがいる様子はないが……これでこのシナリオはクリアになるのだろうか?

 

 ……そんなことはなさそうだ。

 

 しばらく(船代のために船にあった財宝を回収しながら)待つも、特になにか起きるようなこともクリオネちゃんが現れることもなく……その日はログアウトすることになった。















ヒント:クリーオー・クティーラはボスモンスターではない一般的なモンスターになった。

何が違うんだっけ。そうだねリスポーンの可否だね。ん……?
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