不倶戴天   作:雨傘なななな

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少し長くなりました。今後は投稿間隔が延びる代わりに1話の分量が増える……かなぁ????(未定)


コレすら倒せんやつに娘はやらん。

「うん、うん、うん……?」

 

 再生された封塔、元はクリオネちゃんがいたその場所に新たに生み出されていたのは、まさしく竜や大蛇と呼ぶべき存在だった。

 クリオネちゃんとは似ても似つかないようなモンスターだが、聖杯の色は確かに魔法攻撃の一切を封じている。

 

「でっっっか」

 

 全長10メートルほどだろうか。身体を上手く畳んでもギリギリチェストリアには入らないぐらいの巨大な質量の竜……蛇……ワニ……?が佇んでいる。

 なんだったか、シャングリラ・フロンティアで発見されているドラゴンっぽい見た目のモンスターは色竜やジークヴルムも含めて全てドラゴンっぽい見た目の別物だそうな。クターニッドにも八首の龍みたいな記述に反して蛸……魔法陣だったわけだし。

 その辺りの詳しい理由などを僕は良く知らないが、こいつもその例に漏れずドラゴンではないのだろう。が、それがその重厚な威容を損なう理由にはなってくれない。

 

 目はバッチリと合っており、僕があと一歩この封塔の最上階に踏み込むだけで襲ってくることは想像に難くない。

 彼我の距離は……8メートルと言ったところだろうか。

 コチラが一歩踏み出そうと足を上げれば、その名をタラルトスクズと言うワニと海蛇と亀の特徴を掛け合わせたかのような存在もこちらに向けてゆっくりと前足を上げる。

 

「ソロで勝てるか……? いやまぁクターニッドなんかに比べれば弱いんだろうけど」

 

 魔術なしでこの近接戦闘力に富んでいることが一目で分かるような化け物相手に戦えと……?

 コチラはゆっくりと前に足を出すことなく下ろし、後ろへと一歩下がった。

 アチラは上げた足を一歩コチラへと向けて踏み出した。

 

 いや待ってちょっと待ってこっちはクリオネちゃんみたいな可愛い系の存在がいるのだろうと思って入って来てんだよいややるならやるよやるけど心の準備ってやつがががが

 

「GRRruuuuooo」

 

「………………………………よーしまぁ一回挑んでみよっか」

 

 一旦撤退するかどうか。長い葛藤の末、どういった戦闘を行うのかだけでも確認したいという結論を出し、装備していた杖弓をチェストリアへと仕舞い、深海の単杖を取り出す。

 聖杯の効果で攻撃系の魔法は完全無効、補助系の魔法は範囲外でならある程度意味を持たせられる形だ。

 タラルトスクズが唸り声と共に口の端から緑色の炎を噴き出して(ここ海中なんすけど……炎……?)コチラを威嚇している姿から一切目を離すことなく、装備とアイテムを確認する。

 

「至金の歯車・密は多分意味ない、王国弓兵部隊の矢筒も杖弓なしだとほぼ意味ない、あーいや、通常弓を使うならあるか」

 

 タラルトスクズの甲羅のような外皮に目をやる。あれに大した装備も持っていない、スキルも揃っていない、本職でもない僕の弓矢が果たして通るか……?

 

「通らなさそう……今回は弓も封印かな。海中移動促進筒以外のアクセサリーほぼ意味ないじゃん……」

 

 水魔法強化、詠唱時間短縮、魔力補助、雷魔法強化、弓強化、などなど……このへんのアクセサリーはどれも意味をなさない。えっ、僕他にちゃんとしたアクセサリー持ってる!?!?

 

「き、気が進まない……」

 

 多分この状態の僕だとレベル70とか60ぐらいのプレイヤーとも良い勝負をしてしまうのではないだろうか……? これ一応レベルダウンビルドまでした一次カンストステータスなんすけど。

 片っ端から今の僕でも効果を発揮しそうなアクセサリーを確認していく。ちなみに今僕が着ている執事服の見た目の装備一式の効果は水系統魔術強化! 防具まで交換とか……まじかよ。

 

「さてまぁとはいえ一応アクセサリー欄5個は埋められそうかな?」

 

候補アクセサリーその1:鍛冶師の符号

鍛冶師からの信頼度上昇と長く使っている武器の効果上昇。

今回は杖は使えません。没!

 

候補アクセサリーその2:異形の外套

錬金術師ギルドの隠しエリア『禁忌の終着点』で購入可能。

効果は異形術の継続時間延長。

ワリトツヨイ、そう、異形術が強ければね!(よわい……)

仮採用!

 

候補アクセサリーその3:海中移動促進筒

使わない理由が一個もない。採用!

 

候補アクセサリーその4:海中移動促進筒

二本目。使わない理由が一個もない。仮採用!

ちなみに二本目だけが仮なのは封塔内部が『爆水』を多様できるほど広くはないからである。一本は必須。二本目は……?みたいな。

 

候補アクセサリーその5:錬金術師の試験管ポーチ

錬金術師ギルドでついでに買ったアクセサリー。

効果は錬金術師系統のJOBに就いているときに限ったポーションを飲むモーションのショートカット。異形術師は錬金術師の派生職なので当然効果を発揮できるらしい。

くっっそ強いが普段は他の魔術強化と競合して不採用となっていた。異形術だけで戦うタイミングでは必須だろうと思って買っておいて良かった。

採用!!

 

候補アクセサリーその6:収納鍵チェストリア

確定枠。

ちゃんと今回の目的の一つだった船代も船の残骸エリアで回収できて良かったです。

変えられねぇ……それでうちのナナさんはどこですか???

 

候補アクセサリーその7:海魚人形/水霊のコイン

どちらも水中での戦闘にステータス補正が入るアイテム。

強い。強いのだが作成時に魔法を使った戦闘を考えていたためMP補正を中心にSTM、AGIが伸びる。いや必要だけどね。必要なんだけどMP増えても意味ないんだわ。

没。

ついでにAGI補正特化の孤独の足輪も没にした。回避は異形術と海中移動促進筒で行うため。

 

候補アクセサリーその9:魔術書ホルダー

海中戦闘を始めるまで使っていたアクセサリー。

片手に単杖、片手に魔術書を装備して戦っているのを見た先輩魔術師が気まぐれにくれた。

効果はシンプルで魔術書の装備効果を高めるというもの。

この後紹介する装備との兼ね合いで採用。

そもそも魔術書と単杖の組み合わせよりも通常の両手杖を使ったほうがコスパ・能力共に強いことから、あまり上級者向けの装備ではない。

だが当時軽い気持ちで貰ったわりには金額が高く、当の先輩とフレンド登録しなかったことを強く後悔している。あー思い出したら落ち込んできた。なにかお礼とか……うわー。

良いんだけどね。先輩もだーいぶ前に買ってインベントリの肥し業務に励んでたって言ってくれたわけだし……。

 

 

 と、言うわけで今回の戦闘で使用するアクセサリーを改めて紹介するぜ!

 

収納鍵チェストリア

錬金術師の試験管ポーチ

異形の外套

海中移動促進筒

魔術書ホルダー

 

 だ!!!!!

(これは作者の独り言だけどもうちょいかっこいい名前思いつける脳みそが欲しかったよね)

 うんうん。集めとくもんだねアクセサリー。

 特に試験管ポーチと魔術書ホルダーが偉すぎる。

 

 ちなみに元から試験管ポーチが有用なのは分かりきっていたのだが、異形術を多様するわけでもないことに加えて、近接戦闘をしない僕にはポーションを飲むモーションのカットよりも魔術強化なんかのほうが重要だったことから今まで一度も使ってこなかったのだ。買っとくもんである。

(いつか異形術師の隠された強さが見つかって有用なアクセサリーになるはずだ……! とか思って買ったわけではない。ないったらない。ない。)

 

「装備……装備はまぁこれしかないよな……」

 

 んーやばい。ひたすら待ってるタラルトスクズが苛ついた顔してる……。巻で行こう。一番大事なアクセサリーの選定は終わったわけだし。

 アクセサリーを変え終わると同時にパパッと執事服から黒を基調とした魔術を使った暗殺者と形容するのが相応しそうな見た目の装備に着替える。

 ちなみにこちらも『禁忌の終着点』でついでに購入した異形術師用の装備である。外套とセットで良い感じの見た目になるように作られている他、異形化時のステータスにそこそこの補正がかかる。

 この装備で補正がかかる対象はAGIやSTR、VITであるにもかかわらず、JOBは後衛向きの錬金術師派生。何度も言うが、中途半端なJOBである。武器も近接用の剣なんかは装備できないし。なにをさせたいんだよ。

 

「はーほんま、やる気が削がれる……」

 

 一応補足するが、ここでやる気が削がれている理由は装備がどうとか異形術師がどうとかではなく、相手がクリオネちゃんでないからである。

 

 埃を払うように防具を何度か叩いた後、改めて深海の単杖を握り直し、左手に本型の武器を出現させる。

 

 ……一応こちらの紹介もしておくべきか。

 

左手用武器:セラエラの断章

防具?服?と同タイミングでアーカヌムもどきから受け取った異形術師専用装備。

効果は異形術師としての様々な能力アップが主だが、断章という名前の通りプレイヤーごとに固有の異形術が封じられている。

 

 んー覚醒の導師関連なのは分かるんだけど実際に異形術師の転職クエストに関わったのはアーカヌムモドキなんだよな。結局あれの名前知らないし僕。

 上位職業に就くためのクエストにも関連してくるんだろうし、詳しいことはその辺で分かる……のだろうか??

 

 シャングリラ・フロンティア、分かったような分からないような……みたいな感じで進めてくること多いからな……。

 多分頭の良い人がそうでない人のことを一切考えずにシナリオ作ってるよコレ。全員が全員限られた情報から答えに辿り着けると思うな。

 

「まぁつまりミレィさん案件だな」

 

 ちなみになぜ固有異形術まであるのにここまでこの装備を使ってこなかったかだが、普通に杖弓と至金の歯車・密の組み合わせの方が強いからである。当たり前だけども。

 

「よーし準備完了。待たせたね」

 

 改めて、今度は躊躇することなく一歩封塔最上階へと踏み込む。

 

「Graaaa!!!!!!」

 

 タラルトスクズが待ち侘びたと言わんばかりに吼え、ブレスを吐き出した。

 アトランティクス・レプノルカの放電攻撃に比べれば大した威力ではな……くない!!!嘘!!!

 最初は前方向への毒霧(プロレス技)的な規模の小さな攻撃だったそれは、僕がマヌケにもいつも通り魔術で防御しようとして発動に失敗している間により広範囲に広まる。既に戦闘エリアの5割の足場が推定毒で埋め尽くされている。いや止まらない止まらないていうか背中の突起からも噴き出しとる!!!

 

「その見た目で毒属性かよ!!【爆」

 

 海中移動促進筒のストックを早くも一つ使い文句を叫びながら空中へと飛び出─────

 

「水】、えっ!!!?!?!?」

 

 追随するようにタラルトスクズが頭を持ち上げた、口を開けている、口の奥には明らかにビームかなにかを放つための溜め、いやちょっ

 

「GggGGAAAAAAAoAAARraaaaaaaaaaaaaaaaa」

 

 ギリギリで脳みそに過ぎった思考加速スキル【瞬刻視界】を起動、スローモーションで迫るビームに対し、アクセサリーの効果でモーションなしに異形化ポーションを使用、いや待って待って間に合うかこれいや間に合わせろ気合だ気合だいや余計なこと考えてる暇があったら全力で思考詠唱しろ【異形術・蛸蛇蛸蛸】蛸蛇蛸蛸蛸蛸蛸蛸蛸たこたこタコタコはやくはやくへんかこいいや来た!!!!!

 

「うおっしゃ避けたぜいやおめーしょっぱなから即死攻撃撃ってんじゃねぇ!!!! 【異形術・金喰らい】!!」

 

 蛸足に加えて海中移動系及び海流操作系のスキルを片っ端から使った全速力で空中を駆け抜けて、ギリギリで放たれたビームを躱した! いや掠ったけど!

 ついでに防御力上昇発動、【金喰らい】はポーションじゃないからいちいち合金取り出して捕食するモーションがいる。めんどくさいね!

 んで次!!!! 次の行動は!?

 

 スローモーションながらタラルトスクズがコチラを振り向いた、目が合う、口を開けた。

 びーむが、たまって、いる

 

「いや待てお前さぁ!!!!」

 

 その見た目で近距離型じゃねーーーのかよ!!!!!!














備考:セラエラの断章装備時にのみ使用可能になる固有の【異形術】は全8種からランダムで一種解放です。購入アイテムではないためリセマラのようなことは……シュテルメアは気づいていませんが可能です。異形術師の転職クエスト周回は手間が多い上に人権取れるほど強くはないため……その……本編でも書きません……。3種類以上思いつく気がしないので……。
イメージは忍者JOBの【竜息吹】。
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