不倶戴天   作:雨傘なななな

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倶に天を戴いて 其の二

「一人で効果発動中の聖杯を把握して、一人で全部自分に向けて降りてくる触手攻撃を対処して、一人で聖杯を破壊して……行けるかなぁこれ!!!」

 

 ついでに第3形態では無数に呼ばれるモンスター達を少しでも減らさないと行けないし、第4形態は……第4形態はどうなるんだ……?

 確かパーティーメンバーの戦法をランダムコピーしてくる感じだったけれど……。

 一人の場合、自分VS自分みたいなイメージになるんだろうか? ミレィさんから聞いたオルケストラの正典と丸かぶりだけど大丈夫かそれ?

 

 第一形態のNPCへの「恐慌」状態付与と触手叩きつけ攻撃のみのクターニッドとの戦闘はコチラにNPCがいないこともあり一瞬でクリアした、現在クターニッドは第2形態。

 

 つまり、触手の叩きつけと聖杯による「反転」がメインの時間である。

 

「オルケストラとは能力の本質が違うから良い……のか?……っと!」

 

 現在効果が発動しているのは青色と紫色、つまり性別とダメージに反転。

 一人で攻略する以上、あれもこれもと欲張った所で手は届かないのだ。やることを……絞る……!

 

「今は他の聖杯は無視してダメージ反転の紫色だけを狙う……!」

 

 降りてきた触手を【異形術・蛸】を使用して回避しつつ、詠唱を開始する。

 

「【詠唱短縮】【代償詠唱】……!!!」

 

『信ずる己を見い出せ』

 

 ここ数日タラルトスクズとひたすら近接戦闘を行っていたこともあり、回避に磨きが掛かっている! 我が事ながら正直めちゃくちゃありがたい!

 

 代償として捧げるHPは4割、一撃で決めきるための魔法選択として【雷轟の矢】に矢の強化魔法をいくつか乗せる……!

 

 第3形態のモンスター召喚を至金の歯車・密+全力強化【暴虐の雷獣】の範囲攻撃で乗り切る算段な以上、そちらに割きたいリソースはなるべく使わない。【異形術】と魔力消費もできるだけ抑えた魔術で決めきりたい。

 【魔法待機】に【エリア・サンダー】が装着されていることを確認し、触手による叩きつけ攻撃を【爆水】のストックを1枚切り回避。

 

『世界が変わり果てようと、根幹は揺るがず』

 

「第三形態ぐらいまで大きなダメージなく乗り越えたいところだね! 【雷轟の矢】!!」

 

 詠唱の終わりと共に杖弓に雷の弦が現れ、矢が装填される。

 今は紫色の聖杯の効果中なため、ここで破壊して戦闘終了まで「ダメージ反転」状態で戦いたくない。その効果が切れるタイミングで今番えた【雷轟の矢】を速射する準備をしながらとはいえ、ある程度は回避に集中できる……!

 

 はいここで一言。

 

「女性アバター用の装備じゃないから弓が引きづらいんだよ!!!!!!! 変態蛸!!! 義息子に何させてんだ……!!!!!」

 

『…………………………………………………………。』

 

 先に青の聖杯から破壊することにすれば良かった!!!

 女声での詠唱も違和感多くて噛みそうになるし弓は引きづらい!

 そんでもって身長そのまま胸と髪だけ変えられてる感じが嫌!! なんだこれ!! 胸!! 邪魔!!

 

 文句を言っている間に、聖杯が光る。色は! どの効果だ!!?

 

「緑!!! 効果は……し、ししし、し色調反転だぁああああ!!」

 

 世界が一瞬色を失い、反転した色を得た。

 いや待っっっって藍色って反転したら何色だ!?

 効果が切れたのか付いてるのか反転してるのかしてないのか分からない!! 一番嫌なことしてくるねクターニッド!

 

「……! いーや、落ち着け落ち着け僕、対処法は……ある」

 

 なぜか微妙に不満そうな動きをする魔法陣で出来た蛸とその触手に目を細め、好機を待つ。

 

 色が分からなくとも、ダメージが反転されていないことが確認されたタイミングで光っているであろう紫色の聖杯を貫けば「ダメージ反転」はこれ以降気にしなくて良くなる。動き続けている聖杯をいつ光っても良いように全て視界に収めていくことは難しいけれど可能だ。後は光った聖杯が「ダメージ反転」なのかどうかを確認する手段だけれど……

 

「【魔法待機】解除」

 

 範囲を広げ威力を下げる形で調整して待機させていた【エリア・サンダー】をクターニッドの足元に発生させた。

 これによりクターニッドにはしばらくの間微ダメージが入り続ける。「ダメージ反転」が再度光るまでは回復され続けるが、大したダメージはまだ与えていないためノーカウント!

 

「まだまだ……【加算詠唱】!!」

 

 耳元にピアス型のアクセサリー「雷結びの耳飾り」が装備されていることを確認し、詠唱するは【エリア・サンダー】。今発動した分の効果時間が切れるまで「ダメージ反転」が来ない可能性に備えつつ、杖弓に1本、2本、3本、4本のそれぞれに効果を持った物理矢を追加で番えていく。

 

 ていうかおいなんだその不満そうな触手の動きは! こちとらクリオネちゃんとの度重なるデート()で触手の動きには詳しいんです!! その動きは確実になにかに不満を持ってる!! どれに対してだ!? 僕が変態って言ったからか!?

 

「ちゃんとランダムにしろー!」

 

 聖杯が輝き、新たな効果がでる……おぉう性別反転……!!

 ありがたいけどソレじゃない!!!

 

「【エリア・サンダー】!!」

 

 【異形術・蛸】が切れた。

 触手をバックステップで避けつつも【エリア・サンダー】を再展開、ついでに……!

 くっ、一回「試験管ポーチ」によるモーションカットに慣れたら異形化ポーションを一回一回飲む隙を埋めるのがムズい!!

 

「【異形術・雷電亜竜】、ついでに……【深淵覗き】!!!」

 

 あー、だめだデバフはあんまし意味なさげだ。

 MP温存したいんですけどぉー?!?!

 ポーションを追加でがぶ飲み……聖杯光った! 【エリア・サンダー】は……ダメージ入れてる!!!!

 

「【衝撃の一矢】!!! 喰らえ!!」

 

 スキルを重ねる、重ねる、重ねる、杖弓の「共鳴」効果も発動している。

 コチラへと伸びる触手に対して【雷電亜竜】による放電で牽制、狙いは紫色の聖杯……!!!

 少しでも威力を上げるべく引き絞った弦を離し、矢は一直線に効果を発揮した直後で一瞬硬直している聖杯へと向かう! 止まった的を外すことは……ない!

 

『………………………』

 

「しっ!!」

 

 狙い通りに強化を重ねた【雷轟の矢】が直撃し、きっちりと一撃で紫色の聖杯を破壊した。

 さらに、【雷轟の矢】に追随していた5種の矢の内2本がそれぞれ聖杯に当たる。爆発と放電がダメージを与えるものの、さすがにほぼ未強化の物理矢じゃあ一撃破壊までは難しいらしい!

 

 ともかく、コレでダメージ反転はなし。効果の発動していない聖杯ならいつでも撃って良し……!

 

「まー今はどれが発動してどれが待機してるのか分かんないんだけど。【魔法待機】……………【ウォーター・ジェット】!」

 

 うねり迫る触手を……バックステップで下がって避けるにはスペースが狭い、一旦【爆水】を起動することで宙を潜り抜けて回避する。

 アクロバット戦闘も動きながらの射撃もだいぶ上達したものである。

 本職は魔法使い……いや、錬金術師なんですけどね……。

 

「【異形術・鮫、蛇、金喰らい】……ほぼ常に魔法待機が使えるお陰で詠唱タイミングまで計る必要がない……杖弓バンザイ! 【加算詠唱】!!」

 

 MPポーション、MPポーション、【鮫】異形化ポーション、【蛇】異形化ポーション、合金!!!

 身体に取り込んだ合金と同じ色の鮫肌が広がり、左腕が蛇のソレへと変わる。

 くっ、試験管ポーチをメイン装備にするかの悩みどころだ!

 というかこれって、【蛇】に合金を食わせてスキル発動ができるならMPポーションも蛇に飲ませて使ったりできるのだろうか? もし可能な場合、常に適当な口用の異形化をしておくだけで利便性が改善され……いや今じゃない!!!! 【魔法待機】解除!!!

 

 【ウォーター・ジェット】により吹き飛ばされる勢いで触手攻撃を回避、着地地点を予測した攻撃に蛇頭を動かして迎撃(コチラのみHPが削れる)しつつなんとか詠唱を途切らせなかった魔法を番える。

 

「【ライトニング】!!」

 

 2本の蛇頭に各方向から一つの聖杯に向けて攻撃させることで聖杯の移動を制限、未だ「色調反転」は続いているが恐らくコレは「性別反転」の青!!!

 少し離れたところにある2つの聖杯が同時に輝き、色調が戻った、性別は反転していない、ステータス反転……!

 AGIとVITの入れ替えは、パーティー戦闘なら時間稼ぎの効果を出せるんだろうが両方大して上げていない僕には関係ない!

 

「むしろVITが上がって蛇が死にづらくなる……!」

 

 手元に残した蛇頭で引き絞った雷を放ち、青色の聖杯が半壊した。

 

「【加算詠唱】込みとは言え省エネ魔法じゃあさすがに一撃は無理か……! 【詠唱短縮】!」

 

 蛇を引かせ、触手を回避……あっ、二匹共引きちぎられた。もったいない……! 死にづらくなるって言ったばっかなんですけど!!?

 

 青の聖杯までの距離は5メートルほど。

 杖弓を放り投げ、チェストリアより取り出しますは昔なんとなくでコルトさんに打ってもらった直剣。その銘を「海喰の剣」だ。 効果は水棲生物への特効! コイツなら僕の貧弱STRでもダメージが入るはず!

 

「【ウォーター・ジェット】!」

 

 後方に移動用魔法を放つことで加速、蛇頭のない利き手に持った海喰の剣をすれ違い様に聖杯に叩きつけ、破壊した。

 

「いやーはっは! 剣術の心得もスキルも1ミリもなくとも行けるもんなんだね!!!!」

 

 着地でただでさえ削られているHPをさらに削りつつも、急いで体勢を整える。

 あっ、HPポーション蛇に飲ませても回復した。……でもだめだコレ、効果半減じゃ済んでない。

 

「没かー、残念!」

 

 残り聖杯は2個、今までとは全く異なるコチラの動きに若干動きが鈍っているクターニッドから目を一切逸らすことなく残った蛇で杖弓を回収、触手を避け……あぶなっ

 

「くそー、まだまだ先が長いなー、さみしい」

 

 クリオネちゃんにも会いたい!!!

 なんか流れで戦ってるけどコレって本当にクターニッドを倒したらクリオネちゃん貰えるんですよね!?!?! 念押しといた方が良いか!? よっしゃ!

 

「クリオネちゃんを!! 僕に下さい!!!!」

 

『……………………………』

 

 僕の魂の叫びを聞いてもなお、クターニッドは無言であった。なんかクターニッドってむしろ饒舌なイメージあったんだけど。さっきからずっと無言で不満げじゃない?












次回の更新日は未定ですが、恐らく3日後か4日後になるのではないでしょうか。
個人的な勉強優先ではありますが、せっかくずっと書きたかった部分に辿り着けた所なので、なんとか丁寧に描写していければと思っています。頑張ります……!
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