不倶戴天   作:雨傘なななな

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倶に天を戴いて 其の四

 焦っていた、と思う。

 そんでもって、自分の光を見せてクターニッドを納得させるなんて理屈こねてたくせに、自分は自分がどこに行けばいいのか分かってなかった。何をすればいいのか、どこに行けばいいのか、分からないけれど、分からないから、藻掻いて、戦っていた。

 

 …………だから、あんな事になったのかもしれない。

 僕が光だと思っていたソレは、きっとチョウチンアンコウの光のように、そうさせたいモノが悪意を持って照らしていたから。

 

 

 

 

 クターニッドの警告のような声が耳に届く。

 エルドランザはソレを気にもかけず高笑いしながら深海へと僕達を引きずり込もうとしている。

 なんとか振るった拳はその硬い外殻に阻まれ、作り出した雷は解けて消えた。

 

 視界の端で聖杯が何度かチカチカと輝き、世界が反転し、反転し、反転する。

 

「ギャハハハ!!!! 無駄なんだよ!!!! この青竜様にそんな小手先の技は効かねぇ!!! ジークヴルムの野郎とて爪だけでは俺達に勝てねぇんだぞ!?!?」

 

『…………!!!』

 

「まさか!!!」

 

 引きずり込まれ始めてから5秒。

 短い時間でもユニークモンスターであるクターニッドがされるがままになっていることに疑問を持っていたのだが、そうだ、あの肉体は僕と戦うために無理やり現世に持ってきたアバターでしかない……!

 

「く、【暴虐の雷獣】で呼び出されたモンスターをほぼ全滅させた分ステータスは低いのか……!!!」

 

 深海へと潜れば潜るほどその水圧は増し、【海の化身ここにあり】により強化された肉体はそれに適応するためにより力を増している。が、それはエルドランザの「災害状態」とやらによる強化も同様……!

 

「グ、ロァァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙!!!」

 

 散々甚振られた鼓膜がさらに悲鳴を上げる。急接近していた強者がコチラに到達した……!!!!!

 

「クソッ、まじでか!?!?」

 

 視界に収めたその強者は、明らかに竜の形を持っている。

 

「おいよいよい、シャンフロのドラゴンは特殊だってミレィさんに聞いてんだけど!? …………ッ゙あ!!!!!」

 

 バーゲンセールかよ、という言葉を発する直前、その強襲に気付いたエルドランザが僕にブレスを浴びせて新たなる竜の方へと向き合う。

 

 ギリ雷の防御は間に合った、今なら詠唱可能……!!!

 

「【加算詠唱】……!!!」

 

『真なる竜種:No.Ⅶ』

 

『アドバンテージ』

 

『参加人数:1人』

 

『竜狩りが開始されました』

 

「参加人数ひとり!!?!?!?!?」

 

「テメーだったか、カスが!!!! 竜を騙る偽物が!!! このエルドランザ様を前に竜を名乗ってんじゃあねぇよ!!!!!」

 

「グラァアアアアアアアア!!!」

 

 強襲してきた何故か不安を抱かずには直視できないような異形の真なる竜ことアドバンテージとエルドランザが組み合い、ブレスを吐いた、いやコレマジで……!?!?

 

『ルルイアスの力が……弱まる……!!!!!』

 

 クターニッドが不協和音で叫ぶ。

 なんだ、どっちだ、クターニッドが弱まるのか? それともルルイアスに込めた……力、が………………?

 

「え、まじでか……?」

 

 一瞬自身の危険も状況も完全に忘れ、呟いた。

 いや、違う。待って、僕が【海の化身ここにあり】を使ったからコイツラはココに来たのか? それで? クターニッドがルルイアスから引き離されて? 向こうにいる、そう、いや、そんなまさか、あれは、

 

「ゲームオーバーが来るのか……!?!?!?!?」

 

『抑え……切れない……!!』

 

 まだギリギリ目視できる範囲にあったルルイアスで、「青」が爆発した。

 

『モンスター急襲!』

 

『討伐対象:狂える大群青』

 

『レイドバトルが開始されます』

 

『参加人数:1人』

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 「青」が喜び蠢く。

 絶対であるはずのクターニッドがたった一人の開拓者によって揺らいだ。揺らいだのだ!!

 

 正史であれば、戦うことはなかった……そう、「案ずることなかれ」とすら呼ばれていたソレは、しかしてここに日の目を見る。

 

 本来であれば、本来であれば、本来であれば……ある意味「神」である者達はゲームオーバーでしかない「青」と戦闘が起こるようなプログラムを用意してすらいなかったのだ。何故ならば開拓者とは持てるリソースの次元が違い過ぎて戦いにならないから。

 

 しかし……

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「ぐ、クソッ!!!! どうにかならないのか……!?!?」

 

 参加人数1人!!!1人!!!1人!!!!

 アナウンスレベルの敵が目の前に四体……!【海の化身ここにあり】だけでなんとかなるのか?本当に!?

 

「ゴ、ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙!!!!」

 

「ギャハハハッ!!!! 死ねぇ!!!」

 

 巨体が躍動し、海流が荒れ、世界が反転している。

 

『ぐ……我が肉体を捧ぐ……!』

 

 人型を持っていたクターニッドが消え、その場所から現れた魔法陣が勢いよく深海を侵食し、世界にラグが入った。

 爆発した「青」が海を喰らい、さらにその体積を増殖させて─────

 

「【海の化身ここにあり】を切れば状況は好転するか……!? 残り時間は……20秒……ッ゙!」

 

 詠唱失敗判定を喰らいリキャストタイムに入った【加算詠唱】の代わりに【詠唱短縮】と【代償詠唱】の二つを起動! 海の化身の力を使えている間に今できる最大火力で邪魔なアドバンテージとエルドランザを撤退させる……!!

 

「加えて……【異形術・雷電亜竜】……!」

 

 詠唱開始、巨大な力を内包しつつも人の形を保っていた肉体が変質し、普段使用していたときよりも遥かに異形度が高くライトニングワイバーンに近づいていき……ほとんど同様の姿になって尚、身体は巨大化し、さらなる力を乗せていく!

 

「ゴ、ガ……詠唱は……できる!」

 

 2体の竜に並び巨大な竜のような姿へ変質した僕へとアドバンテージとエルドランザが吐いたブレスを放電により相殺し、殴り合いながらも詠唱を続ける。

 

 その傍らで、魔法陣を広げてこの世界にラグすら起こしたクターニッドが今の僕達すら上回る巨大な蛸へと化し、「青」を止めんと咆哮を上げた。

 

「超巨大な杖弓があれば……!クソッ、とりあえず対処できるとこからしていくしかない……! 【雷轟の矢】!!!!!」

 

 HPの3割を込めて放たれた巨大な雷の矢が海中を駆け、アドバンテージが盾のようななにかを広げ、エルドランザが「災害状態」とやらでその肉体をより強固にすることで衝撃に備え…………【雷轟の矢】のさらに数倍の太さのビームが煌めき、世界を貫いた。

 

「待っっっっっ、くそが!!!!!!!!!!」

 

「ギャハハ!!! 笑えねぇレベルになってきたな!!!! ようこそゴミ共!!!」

 

「グロロァァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙!!!!!!」

 

『モンスター不世出の発見!』

 

『討伐対象:アトランティクス・レプノルカ“三位一体”』

 

『エクゾーディナリーモンスターとの戦闘が開始されます』

 

「何回戦闘開始するんだよ!!!」

 

 叫びはどこにも届かず、放った【雷轟の矢】は奴のビームに飲み込まれた……は?

 いやアドバンテージに直撃し……て……

 

「反射スキル……違うコレより強化して反射するスキルd……!?!!!?!?!?!?」

 

 二重のビームが世界を埋める。反射で起動した【激水】と無理やり生み出した激流により若干のダメージを受けつつも生き延び……エルドランザァ!!!!!!

 

 殴りかかってくるエルドランザにギリッ゙ギリで対応は成功したものの、さらに深海へと引きずり込まれ、当のエルドランザはよりその威容を増していく。

 

『コレは……間に合うのか……!?』

 

 クターニッドが叫ぶ。なんとか目を向けた先、「青」はその範囲をさらに広げ、あり得ない勢いで点滅する聖杯が世界をひっくり返し続けている。

 喰らい、喰らわれ、喰らい、喰らわれ……広がっていく。クターニッドが「青」を抑え込むためステータスと身体の大きさを大きくすればするほど「青」はソレらを喰らい、海を狭めている。

 

「な、ん……!? やっっっっばい!! 詰みか!?」

 

 僕の肉体が萎み、力が消えていく。

 この、何もなせていない状況で【海の化身ここにあり】の効果時間が終わった。

 

 「青」が広がる。

 “三位一体”がこの魔海を悠々と泳ぎ蹂躙し、

 アドバンテージがその異様な威容にて圧倒的な存在感を示し、

 青竜エルドランザが「災害」として嗤う。

 

 だが、ここまで来てなお、“最悪”には届いていない。













聖女「───青き大群が母なる海を呑み込む」





次回の更新日は未定ですが、3日後か4日後になるのではないかと思われます。頑張ります!
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