めちゃくちゃ励みになっております!!!!
クターニッドの取り巻きモンスター相手に放った過剰強化を施した【暴虐の雷獣】よりもさらに強化を重ねた雷が狂える大群青を貫いた。
直撃と同時、雷の餞花が咲いて狂える大群青が凍りついたように固まった。
轟音と、悲哀と歓喜の叫びが混ざり合い、耳を劈く。
「ぐ……狙い通り……あとは……ッ!」
全「青」がコチラを見ている。背中を貫く悪寒に耐えつつも周囲の触手に触れて、自分から離す。
僕は良い。せめてクリオネちゃんを……!
「クターニッド!!!! 後は……頼みます!!」
『────────』
凍傷の状態異常の影響か、既に聴覚はほぼ働いていない。クリオネちゃんの言葉を聞けたのが奇跡だ。耳元で語りかけてくれたからね!!!
なにか叫ぶクターニッドに応えられないことを心の中で頭を下げ、落ちて行くクリオネちゃんと目線を合わせた。
深海。本来人の生きることの出来ない暗く美しい世界で僕は彼女を見つめ、今よりも更に深い深海へ向けてクリオネちゃんを強く押し出す。
エルドランザと殴り合いながらも無理くり待機させておいた【ウォーター・ジェット】を放つ。
「君も……生きてくれ……!! クリーオ・クティーラ!」
深海へと弾き飛ばされながらも何故か微笑んでいるクリオネちゃんに目を丸くした僕は、頭を振って1秒でも長く狂える大群青のターゲットであり続けるために1ミリでも深い地点へと藻掻き進む。
止まらない。クリオネちゃんも当然だが、ここでこのゲームがバッドエンドを迎えるなど許してはいけない。これからも友達でいたい人達がいる。開拓者にも、そうでない者にも!
「【──】」
まさか自分の声も聞こえないとは……!
狭まっていく視界の端に移るウィンドウは深度3000メートル近くを記録している。エルドランザの激流込みとは言え余りにも早い沈没速度だ。【合金】が切れた僕が今生存している理由が不明に過ぎる。
『─────!』
クリオネちゃんに引っ掛けて置いた「海中移動促進筒」が先程の僕の【爆水】宣言を受けて起動し、彼女を引きずり危険海域から逃がそうとしている。よっっし、上手く良っ、て……
『生き、て』
どうやら腕にクリオネちゃんの触手がまだ絡みついていたらしい。触手越しに伝わってきた言葉に、思わず目を見開いた。
視線の先で、クリオネちゃんは先程から変わらず聖母かなにかのような美し過ぎる微笑みを湛えている。
激流に逆らい海底から昇る無数の泡沫が暗闇に白銀の光を見せ、その微笑みを神秘的なものへと昇華してしまっている。まるで今から死んでしまうような儚さの笑みに思考が硬直した。
「─────」
自分が何を言ったのかも分からないまま、絡みついた触手に腕を体ごと引き摺られ、クリオネちゃんと場所を入れ替えるように海底へと向けて投げ出された。
待ってくれ、だか、そんな、だか、そういう感じの自分の声が耳に届かず海に消えた。「非流動性海水」、「海流操作」、ここまでの道のりで得たあらゆるスキルは一瞬足りとも狂える大群青を止めてくれはしない。
「────!!!!」
瞬刻視界起動、この一瞬を引き伸ばし、彼女を生かす手段を捻り出す。なんだ、なんだ、考えろ、さがせ、NPCは復活しない、ここでしっぱいすれば二度と会えない彼女を!救う手段を、さがせ!
見つけ出せ、なんだなんだなんだなんだなんだ、なん……
クターニッド ×
魔術 ×
スキル ×
ステータス ×
僕自身はもうとどかない、まにあわない。
物理弓 ×
出す前に狂える大群青がクリオネちゃんに届く上、構える時間はさらにない、だが考えながら試しはするべき、取り出せ、取り出しながら案を絞り出せ、
剣 ×
エルドランザ ×
説得?駄目だ無理だそもそも言葉は交わせない、
アドバンテージ ×
劣勢を見て引き始めている、三位一体は戦うつもりだろうが、言葉が通じない、チェストリアを滑らせ、物理弓の項目で止める、ウィンドウを叩きつける……直前。スローモーションの視界の中で、物理弓の欄の一つ下に、銘のない小型の船が目についた。
「─────!」
最速。その意味や効果を考えるよりも早く目視で既に触手を捉えられ始めているクリオネちゃんと狂える大群青の間に照準を合わせ、
『…………………!』
船をチェストリアから現実へと呼び出した。
まに………あっ、た!!!!!!
突如現れた大質量の取り込みに狂える大群青は2秒もかけた。悠長にしやがって、巨大生物の余裕かなにかかよ……!?
クリオネちゃんの名を叫び、触手の一本をなんとか掴まえて引く。間に合う。問題ない、だから……!!!
「!!!!?」
生き延びようと足掻く獲物たちが気に食わなかったのだろうか、視界内で狂える大群青がさらに爆発的に増殖する。
さっきまでと明らかに違いすぎる速度!
どうやって……まさか、反対側の自身を喰らいすり減らしてコチラに無理やりリソースを回したのか!?!?!?!?
「───!!!」
船の残骸は一瞬で跡形もなくなり、遠くでエルドランザが悲鳴を上げた。
クソッ、間に合わない!!!!まだ、クリオネちゃんが……!!!
全力でより深海へとクリオネちゃんの触手を引くも、僕のSTRではクリオネちゃんのモンスターとしての巨体を早く動かすことはできない。
『─────』
目の前、そう、本当に目の前で……クリオネちゃんが諦めたようにニコリと表情を変えた。そして、狂える大群青に、駄目だ、最後なんて、そもそもなんて語りかけてくれたのかも聞こえてない。駄目だ、死ぬだなんて、僕なんか庇って、僕は生き返るのに、駄目だ、だめだ、どうすれば……!!
そして、彼女の触手が僕に繋がるものを残してほぼ喰われた。
脚部が、腰が、腕が、胸元が、頭が、喰われ、取り込まれていく、失われた聴覚に狂える大群青の笑い声だけが何故か響き、当のクソッタレ青色野郎はすぐ今取り込んだものを再現している。無数の青く染まったクリオネちゃんが僕を見て、触手が、最後の、触手が
『間に合った……!!!!!! 人よ! ……シュテルメアよ! 遍く奇跡達へ、進み続ける奇跡達へ警告を! そして』
最後のクリオネちゃんの触手が取り込まれ、僕をも飲み込む直前、狂える大群青がコチラに全力を注いだことで余裕ができたらしい巨大な蛸の姿を取ったクターニッドが叫ぶ声と共に、狂える大群青から一気に深海へと引き剥がされた。
何色かの聖杯が輝く。
凍傷がいつの間にか回復されている。
鮮明な五感がクリオネちゃんの不在を伝えている。
「クリオネちゃんが……!!!?」
『我が娘を頼む……!』
残った触手に向けて聖杯が輝き、魔力の塊のような何かに変わって僕の手元に収まった。見つめれば、安心させるような色を発してフヨフヨと揺れている。
「生きて……!?」
『備えろ、備えろ、この脅威に』
『このルルイアスでの戦いと同期間程度はこの忌々しき始原の亡霊を抑えてみせよう。』
『備え、武器を取り、集え!』
『人よ! 遍く人よ! 共に! 倶に!! 心を同じくして戦わなくては勝機はない!!』
『世界に三つ目の奇跡を!』
「…………!! 分かった!!!」
再び聖杯が輝き、コチラへ襲いかかろうとしていたエルドランザが吹き飛ばされて、狂える大群青が僕らを逃すまいとさらに増殖する。
触手を束ねて海流を収束させたクターニッドが、僕とクリオネちゃんの魔力らしきなにかを纏めて大陸の方角へと吹き飛ばした。
3000メートルをも記録していたウィンドウの深度が目に留まらないほどの速度で減っていき、クターニッドと狂える大群青が暴れる海域が遠ざかっていく。確かに深度は上がっているはずなのにその巨体はいつまで経っても巨大なままで、奇跡と呼ばれた自分たちの矮小さをまざまざと見せつけられた。
ぎゅっとクリーオー・クティーラを抱き、奥歯を強く噛み締めて……僕の三度目のルルイアス挑戦は終わりを告げた。
……旧大陸で聖女が祈りを込めて胸を押さえ、開拓者達へと言葉を紡ぐ。
「──かの青き大群を討つため、深淵の英傑が立ちます。」
ついに状況は“最悪”へと至った。
狂える大群青はクターニッドと戦いつつもその領域を広げている。その勢いは数日で大いなる海をほぼ完全に呑み込み、膨大な力のリソースを保有するクターニッドにすら封印不可能な状態にまでなってしまうだろう……。
『──────規定深度観測、条件達成』
『称号【最大深度】を獲得しました』
『称号【ル・シュテルメア】を獲得しました』
『称号【深淵からの生還者】を獲得しました』
『称号【一攫億金】を獲得しました』
『深淵のクターニッドは未だ倶なる天にて戦っている』
『狂える大群青は永き眠りから目覚め、世界を滅ぼさんと再び動き始めた』
『ユニークシナリオ「世界を反転す、封将は祈る」をクリアしました』
『「封将の霊魂」を獲得しました』
『既定条件の達成を確認、【クターニッドの呪い】が付与されました』
『既定条件の達成を確認、【クターニッドの呪い】が【クターニッドの栞印】へと変化しました』
『ユニークシナリオ「深淵の使徒を穿て」が一時中止され、アナザーワールドシナリオ「世界の終わり、希望は潰えて」が発注されました。発注者は強制受注となります』
『ワールドクエスト「シャングリラ・フロンティア」が一時停止/退行しました』
◆
墓守のウェザエモンは、アーサー・ペンシルゴンとセツナの物語だった。
天覇のジークヴルムは、秋津茜とノワルリンドの物語だった。
冥響のオルケストラは、サンラクとエルマ=317の物語だった。
……ならばクターニッドは?
今こそ叫ぶ。これはシュテルメアとクリーオー・クティーラの物語だと。
そして、深淵のクターニッドのために紡がれる物語であることを。
・36話「倶に天を戴けど 其の四」
後書きの叫びはココ。
シュテルメア:「これは!!!そう!!!!僕の物語だ!!!」
・「ル・シュテルメア」
魚人族の英雄の証。
現在ではリヴァイアサンに遭遇して生き延びたことを示すものだが、元はリヴァイアサンに遭遇するほどの深度に到達したことを讃えて送られる名だった。
一部の種族からの好感度が上昇する。
・ユニークシナリオ「世界を反転す、封将は祈る」
いずれかの封将の好感度を最大まで上昇させてルルイアスを出たプレイヤーが再度ルルイアスを訪れた際に起こるユニークシナリオ。
私情を持ち出した封将はクターニッドの厚意により解任され、なんらかの「死」のイベントを経験する。それに対する開拓者の回答をクターニッドが認めた場合、その封将は制限付きでプレイヤーに同行することができるようになる。
・クターニッドの栞印
世界を託した証。
次回の更新日は未定ですが、なんとか3日後か4日後には間に合わせたいです。
このままの勢いでエピローグを書いた後、最終章に入ります。
更新は若干滞る可能性が高いですが、しっかり完結させますので楽しみにしていただければ幸いです。
がんばります。
最終決戦前のスーパー強化パートについて
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全部描写してから最終決戦
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一部描写して最終決戦→残りを適時回想
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描写せず最終決戦→全て適時回想