不倶戴天   作:雨傘なななな

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ツチノコ・コミュニケーション

 サンラク女史曰く、女史曰く……???、ドワーフの里のあるという火山地帯へと向かう道程は既に巨人族秘蔵の新大陸地図によってマッピング済みだそうで。

 竜人族のラダーさんが途中で通る沼地について詳しいこともあり、効率的かつ比較的安全な道を今回の意味不明最強メンバーで踏破できるそうな。

 

 それはつまり、1秒でもはやくドワーフの里に辿り着きたい僕にとってこれ以上ないほどに最適な移動手段となっているわけだ。

 

 いやミレィさんのサーチ力とねじ込みパワー怖っ。

 こんな……こんなことあります???

 それは本当です……??

 

 あまりのドリームパーティーっぷりに、ミーハーの毛がなくもない僕は今後待ち受ける地獄の決戦のことも一瞬忘れてテンションを上げていたのだが、僕以外はどうやらそうでもないらしく……上澄みのプレイヤーってのは上澄みのプレイヤーと組み慣れている、あるいは類は友を呼ぶとは真なのだなぁとやや現実逃避的なことを考えながら、【最大速度】と【最大火力】とか言う最強のタッグが竜化モンスターを蹂躙する様を見守って(助力しようという気はある。ホントだよ)いるわけだ。

 

「悪いな、俺は直角に曲がりながら加速できる」

 

「追加のモンスター、です……! 私、一人で対処できますから任せてください……!」

 

 か、かっこいい……!!

 数多のプレイヤーを阻んできた樹海というフィールドは現在99レベル“程度”でしかない僕は死ぬほど苦戦必死な相手なわけだが、彼らの奮闘は15週は回って「僕にもできるのではないか」と思わされる程のものだった。

 

「前線が頼りになりすぎて出番ねぇな、甦機装以外の修理なら出来るから存分に戦え〜」

 

「一応構えてるんで多少死にかけても問題ないですよ〜」

 

「時短のために火力だけ出す感じで行きます」

 

 最後が僕である。

 定期的にリキャストの空けた【轟雷の矢】と【暴虐の雷獣】をぶち込んでいるわけだが、当初の内心では必要のない魔術を打つことは経験値盗み的に良くないのではないかと戦々恐々していた。

 

 一応確認したが、はよ着きたいから好きにしろとのことだ。

 まぁあんまし言うとあれだが、遠慮とかこういうゲーム知識不足が好感度低下に繋がりそうなタイプの方々(特定個人を指す)に僕には見えたのもあって、できるだけなにも気にせず好きにすることにしている。

 

 つまるところ、パーティーを組んだ時点でその辺の公平分配は当然……と。勉強になるなー。

 

「【代償詠唱】、【ハイレートスペル】、【加算詠唱】……【轟雷の矢】」

 

 杖弓に雷が走り、装填された矢が様々なスキルや「王国弓兵部隊の矢筒」などの過剰バフを受けてバチバチと音を立てて巨大化していく。

 ……敵の数多いし物理矢も入れとくか。

 

「ほー、変則的に物理弓と魔法弓を兼ねてるのか。結構面白い装備なんだな」

 

「ちょっと勇者武器の聖弓に似た方向性ですね〜、ていうか火力たっかい」

 

 イムロンさんと火酒夏さんの雑談を聞き流しながら、引き絞った弦を手放し矢を放つ。

 

「……なんか上手く避けてくださーい! 僕あんましパーティー戦慣れてないので!!」

 

 5本の物理弓と【雷轟の矢】は、いつの間にか射線から外れていたサイガ-0さんとサンラク女史の間を綺麗に抜け、ドラクルス・ディノトリアシクスの群れを全滅させ、ついでにドラクルス・ディノケラスをスタン状態にさせた。

 

 良〜い感じだ。

 

 サンラク女史にミスって当てそうなのはどっちかっていうと早すぎて目が追いつかないからだが、そこまで言う必要もないでしょ。はっや……ほぼ見えん……直角に曲がりながら加速してるぅ……。

 これ見えないのって僕の老化の問題か?……さすがに違うか。

 

「この火力にスタン効果付き……終わってないですか???」

 

「それな。これで陸での戦闘よか海中戦のが強いってんだから分からねーもんだよな。特化した奴らは」

 

「【最大深度】……競合相手が少ないにしても相当ですよね〜」

 

「あはは、こうも褒められるとくすぐったいですねぇ」

 

 どうもどうもと手を振りつつ、サイガ-0さんがスタンしたトリケラトプスもどきを大剣で吹き飛ばすことでトドメを刺したのを見届け、樹海を進む。

 

「……どうしたもんかな」

 

 サンラク女史がメニューを見ながら途方に暮れているが、これは触れないほうが良いのか??

 良さそうだな。辞めとこ辞めとこ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて。ひとまず目の前のモンスターの処理が終わり、イムロンさんにお願いしている武器の整備を待つ間に先ほどから気になっていたことを聞くことにした。

 

「そういえばサンラク女史、さっきから聞きたかったんですけど」

 

「じょ、女史……? ……なに?」

 

「スキルリキャストの合間ってどうやって埋めてるんです? こう……ずっと速いままだなと思って」

 

「…………んー、別に。全部リキャストタイム、みたくならんようにはしてるけど。今なんて逆位置のせいでリキャストタイム4倍だぜ4倍。さすがにやばいよなぁ」

 

 つまり?まだサンラク女史の中では遅いほうってことか? 本気で?

 とは言え、海中戦闘にて緊急回避手段を【ウォーター・ジェット】と【爆水】に頼り切りであることがそもそもの問題である、ということはなんとなく理解できた。

 

「おぉ……やっぱり僕の場合はスキル数の問題か……? 良いこと聞きました」

 

 ありがとう、と付け足す。

 まぁ緊急回避手段の個数なんて数あるわけじゃないから解決に直接繋がるわけじゃないんだけども。できれば恒久的に海中移動能力を向上できて魔法威力を下げないような装備/アクセサリーを……そんな都合良いものあるかなぁ……。

 

「まぁ俺の場合はアクセサリーの効果の場合も多いからなー、コレとかコレとか」

 

 ほへー、と軽く相槌を打ちつつ歩いていると、装備の整備を終えたらしいイムロンさんが装備をサンラク女史に手渡しながら会話に混ざってきた。

 あ、僕のもですか。わざわざありがとうございます。

 

「わた、俺はオルケストラの報酬について聞きたいんだが」

 

「……………………」

 

「オルケストラの報酬」

 

 オウム返ししつつ、少しだけ身を乗り出して話を聞くことにする。

 そういや僕ってばオルケストラ受注してるんだよな。

 ミレィさん曰く、ドワーフの里からの帰り道にクリアしてから旧大陸に戻れとの話だが、そんな簡単に行けば苦労しないんですけど……。

 

「まぁそんなむくれないで、ホラ私控えめに言ってプレイヤーの中じゃ頭ひとつ抜けた鍛治師でしょ? 偽典報酬の武器に関してライブラリから意見を聞かれた事があって」

 

 半目で目を逸らしていたサンラク女史だったが、イムロンさんに宥められた?ことで諦めたようにコレ、と言いながら報酬らしきアイテムを取り出した。

 

「……ペストマスク?」

 

「悪趣味なタイプの金色だな……」

 

「そんなこと言ってられるのも今の内よ。こいつは装備すると」

 

ボボボボボボッ!!

 

「うわきもっ!!!」

 

「酷くない?」

 

「悪趣味なことには代わりない気はしますけども」

 

 少し離れたところでサイガ-0さんと並んでコチラを見ていた火酒夏さんが悲鳴を上げたのに対して、イムロンさんはその勢いにのけぞることすらなく食い入るようにその変化を観察していた。

 

「執念って感じだ」

 

「やっぱこのゲーム、生産装備の自由度が高い以上にどういう原理で再現できるのか分からない非生産装備が多すぎるわね……」

 

「えー、蓮コラ一歩手前ですよこれ〜。もしかしてこの眼一つ一つに視界があったりするんですかね?」

 

「お、鋭いな火酒夏氏。これ色々検証したんだけど何処かの「眼」が塞がれてない場合、本体の目が潰されても視界が塞がれないんだよ」

 

 僕だとこういう眼の視界に関して“そういうもの”として受け入れかねない訳で、こういった細かい所まで検証が行われてるってのは最前線を走れる理由の一つなんだろうな。

 実際に前衛職に対して視界が塞がれないってことはかなりのアドバンテージになり得る部分なんだろうけれど。

 

 んー、検証ってやっぱり大事なんだよな。

 僕がしっかりと「深海の短杖」の能力を理解できていれば、今みたいな事態にはなっていなかったのだから。

 

「まぁ、今はちょっと使いづらいから装備しないんだけど……」

 

「ん? ……ああリキャストとの兼ね合い的な」

 

「…………シュテルメア氏も正解。スキルの発動回数を参照するせいで今のビルドと相性最悪ってわけ。まぁ意図したわけじゃないからビルドって呼ぶのも違うけど」

 

「へぇーえ。それは……どうしたらそうなるのか想像もつかないけどご愁傷さまです。

 

……というかシュテルメア氏って言いづらいでしょう。呼び捨てで良いですよ」

 

「お、マジ? じゃあシュテルメア、そっちもわざわざ敬語使わなくていいよ」

 

「わぁい」

 

「え? その装備の話終わり?? もうちょっと色々聞きたいんだけど」

 

「こころがしぬからおわりだよ」

 

「目的の沼地着きましたしね〜」

 

 ずっと鬱蒼としていた視界が少しずつ開け、踏みしめていた大地が腐葉土のそれから沼地特有の水気を含んだものへと変化していく。

 

「我が懐かしき沼地、我が愛しき沼地……!」

 

 ラダーさんの声が耳に届くのが先だったのか、その光景を目にするのが先だったのか……。

 夜空の星が沼地に映り込み、幻想的な景色を形成している。

 いかなシャンフロと言えど、これほどのモノは早々お目にできないだろうと思いつつ……

 

「こっち方面に来るのは初めてだ」

 

「私も、です……」

 

 サンラク女史とサイガ-0さんが見惚れたようにポツポツと話しているのを横目に、沼地が若干盛り上がっていくのに気がついた。

 ぜぇっっったいモンスター。

 余韻を邪魔されたくない気持ちが先行し、「至金の歯車・密」をドンと叩いて【暴虐の雷獣】を矢に装填、ざぶんと(ほぼ見えてないけれど多分)蟹が頭を出した瞬間に放つ。

 

「あっ」

 

 蟹が中身やら殻やらを撒き散らして吹き飛び、一瞬失われかけた静かな沼地が返ってくる。

 

 ………………………まぁ金化と飛び散った肉片のせいで幻想感は思いっきり目減りしたんだけども……。

 

 約5名からの微妙な視線をその身に受けることになった。

 

「なんかごめん……」

 

「あぁ……」

「うん……」

「はい……」

「まぁ……」

 

「なんか思ってるよりポンコツ寄りなんだなシュテルメア」

 

「ごめんて」 














次回更新は1週間後を目標にしています。
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