とても励みになっております!
先程までの樹海に比べ、視界やモンスターの強さ、数にかなり余裕のある沼地地帯を淡々と進む。
途中で現れる蟹を初めとした沼地らしいモンスターも、約2名のレコードホルダーに順調に粉砕され、苦戦らしい苦戦もなかった。のだが……
「一応聞くけど向こう岸まで渡る手段を持ってる人」
火山の目の前まで来たところで、巨大な運河に道を阻まれるカタチになった。軽く周囲を確認したが、橋のようなモノは特に設置されていないらしい。
サンラク女史の質問に本人と竜人族のラダーさんと僕の3人だけが手を挙げ、一瞬の間気まずい空気が流れる。
「……ちなみにシュテルメアは全員渡らせる手段とかある?」
「んー……船で渡るには波が速すぎるから微妙?」
実際、僕個人もこの運河を渡る手段として水流操作系のスキルフル活用するぐらいしか思いつかない。ああいや、ナナさんに頼めばもうちょいやりようあるだろうけども。
「そいつは微妙だな。よーしではサンラククルーズと行こう。カモン! スーパーインテリジェンスドールユニット:サイナ!」
「インテリジェンス」
「鳴き声なの?」
「言語化しなければ私自身が知性の重みに押しつぶされそうなので」
クセつっよい。
征服人形って持ち主に若干似る節があるって聞いた気がするんだけど本当なのかなアレ。
「知性に重みはないだろ」
というか知性の言語化ってそういうことじゃないと思うんだけど……。
「わ、サイナちゃんだ!!!
スクショ良い!? スクショ! 可能なら動画!」
さて、サイナ……さん?の登場を受け、大きく反応したのは火酒夏さん。
手を握らんばかりの勢いで詰め寄った火酒夏さんは興奮そのままにスクショやら動画やら握手やらを求め、
「いきなりどうした」
「私ミーハーなので!」
「説明になってないので」
めちゃくちゃ普通に断られて押しのけられた。
僕もミーハー寄りだと数分前に自覚した所だが、どうやら本物のミーハーとはこんなもんではなかったらしい。
「いやいや、今やシャンフロNPCで世界一有名なキャラですよサイナちゃん! 普通の反応ですよ普通!」
「イムロンさんとかサイガ-0さんは握手求めなくてもいいんです?」
「別に……どちらかと言うと装備に興味があるぐらいで?」
「そう、ですね……いえ、ちょっと、特には」
あまり芳しくはない反応。
人によって興味の対象は違うんだな〜、僕も違うもんな〜、などと至極当然かつどうでも良いことを考えた後、こちらの征服人形にもご登場いただくことした。
……なんだっけ。えーと、カモン、スーパーインテリジェンスドール……ユニット? ナナさん!!!
「おはようナナさん。突然ごめんね」
「否定:シュテルメア様が謝られる必要はありませんの。状況は?」
「んー、この運河渡る手段持ってるかなと」
なぜかめちゃくちゃ久しぶりにあった気がするナナさんに挨拶しつつ、サイナさんにはできるらしいことを尋ねる。
実際、征服人形間でどれくらい性能に違いがあるのかは気になる所だったのでちょうど良い。
「不服:当機にもできることとできないことがありますの。とはいえ、目移りされるのは良い気分ではないですわね」
「おぉう……目移りなんてとてもとても。僕にはもったいないくらいの相棒だよ」
「…………」
「発見:インテリジェンスに欠ける個体がいるようですね?」
「あれ、征服人形。新大陸はあんま馴染みないって言ってなかった?」
なぜか一瞬フリーズしたナナさんに色々と確認しようとしている所に、火酒夏さんを押しのけきったらしいサイナさんとサンラク女史がそれぞれ煽りと疑問を口にしつつコチラへと寄ってきた。
「否定:当機の魅力は知能だけに依存しているわけではありませんので」
「嘲笑:愚かであることを可愛いと表現しなければいけないのは不便ですか?」
「解答:こっちのセリフ、と言うモノですわね」
「サイナ、なんかインテリジェンスで負けてそうだぞ大丈夫かこれ」
「否定:当機のインテリジェンスに敗北などあり得ません」
「んー長くなりそうだから一旦質問に答えるんだけど、ナナさんは深海エリアで契約できる特殊個体……だと思う」
「へぇーえ」
「ひゅー! 征服人形同士の絡み……! やっぱり動画良いですか!!!」
色々あるんだなーみたいなことを呟いたサンラク女史に押しのけられたはずの火酒夏さんが再び戻ってきて動画での記録を求め……あっ、ちょっと良くない記憶思い出した時の顔でしょコレ。あーあー。
「……サイナ、吊るして渡れる?」
「了解:武装を情報格納していただければ二度の運搬で可能です」
「三度で渡れ、火酒夏氏にはスプラッシュな体験をしてもらおう」
「えっ?」
「なるほど、スーパーインテリジェンスに行くわけですね」
「えっ?」
ディスコミュニケーション!みたいな字幕が流れるのを心のなかで想像しつつ、酷い目に遭いそうな火酒夏さんに黙祷しておいた。
あっ、吊るされて、回されて、あー。見てるだけで酔いそう……。
「疑問定期:当機が呼ばれた意味はありまして……?」
「色々邪魔が入ったから……ごめんね。出っぱなしでも戻っててもいいよ」
「……了解:シュテルメア様の珍しい他者との交流を邪魔するのは心が痛みますので、一旦戻りますの」
「おっけー」
「……追加事項:」
「?」
「当機のマスターとしても、シュテルメア様以上の方はいらっしゃいませんわ」
「!」
照れ隠しだったのか、置きゼリフ的なつもりだったのか、僕が感謝の言葉を伝える隙もなくナナさんは格納機に戻っていった。
うーんもっかい呼び出して褒め倒してやろうか。
ちなみに僕は【ウォーター・ジェット】と【爆水】で飛んで運河を越えた。割と飛距離ギリギリだったので焦りました。ナナさんに頼るべきであったか……!
「……………………サンラクも中々だが、こっちはこっちでNPCたらしって感じだな」
「ですねー。いいなぁ征服人形…………吐きそう……」
◆
さて、これ以降も熱々カメレオンに襲われたり色々あった……いや嘘、熱々カメレオンに襲われた以外は基本雑談がてら歩いてただけ、なわけだが、やはりミレィさんがこのパーティーに僕をねじ込んだのは正しかったようで、ドワーフの里付近の火山に到着した。
新大陸の開拓って広すぎてマッピングが難しい上にモンスターが強く、遅々として進んでいないって話だけ聞いていたのだが、それにしてはあまりにも速すぎる。
誰も到達していない場所に特に困ることもなく数時間で……!?
「ツチノコさん……」
「サンラク女史……」
いや嘘ってのも嘘だな。色々ありました。
ドワーフらしき女児を蓮コラ?みたく結構やばいマスクをした半裸の怪物が奇声をあげながら追いかけるのを止め損ねたりとか。
クターニッドの聖杯で性別を女性にしている分、なんだかんだ犯罪臭が軽減しているのがよりアレである。
「あの、ツチノコさんそれ二度とやらないでもらえますか?」
「え?」
「いや本当にお願いするんで」
「あ、はい……」
唐突にぎょるんぎょるんと全ての目を違う方向に回し始めたサンラク女史に対して本気の駄目出しをする火酒夏さんに親指を立てて感謝を示しつつ、サイガ-0さんに視線を向ける。
うーん。僕って意外と人間関係に敏感なんだろうか。
アレが良いのか……?とか、アレに何も思わないのか……?とか、この熱視線に本人は気づかないのか……?とか思うのは僕だけなようだ。
「うーん。黙ってた方が良いことって世の中にはいっぱいあるよね」
「……そうだな」
お、イムロンさんからの肯定。やはりか……
とりあえず一旦こっち方面は放っておいて、さっさとドワーフとの正常なコンタクトを取るべきであるのは間違いない。
サンラク女史曰く、鬼武者と女口調のおっさん、そして何を聞いても怯えるだけの反応になってしまった女史本人はあまり彼女とのコミュニケーションに向いていないらしく、まぁNPCに任せるのもあれだし火酒夏さんはサイナさんに詰め寄った前科があるとかなんとかで、僕にお株が回ってきたのだ。
「よーし」
あ、君は……ふむふむ、ガラテナさん!
驚かしてごめんねー。いやほんと、ほんとごめんね。ぶっ飛ばしとくからアレ。
君はなにしにこんなところにいるの?
あー!お水ね! 喉が渇いたとかそういう?
だよねぇ。
ガラテナさんって何歳……は聞かなくていっか。
ああ。ドゥーレットハウルってのがいないからコッソリ来たと。
ドゥーレットハウル……?
ふむふむ。それは……なんでいたら駄目なの?
あぁ怖いんだ……なるほど、雷親父的な……?
違うか。ちょっと待ってくれる? 良い? ありがとねー!
「……………ドゥーレットハウルってなんですか?」
「知らないんです!?」
「情弱……」
「肯定:常識の欠如が見受けられます。インテリジェンスパワーを高めましょう」
「いや旧大陸にいたんなら仕方ないだろ。赤の色竜のことだ。この前の龍災……ジークヴルムとの戦いで倒した」
「…………? もういないって話?」
「うん」「そうですよ」「ちなみにそれさっき話した」
「えぇ……?」
だ、そうなんだけど……どう?ガラテナさん。
「──────え?」
え?うん。本当本当。死んだらしいよ。
はい息吸ってー、吐いてー。よーし。大丈夫?
うん。本当本当。後ろの強そうな人達が倒したんだって。
「……詐欺師に向いてると思う」
「そんなこと言われるほどのことはしてなくないです????」
「いやいや、褒めてる褒めてる。……多分」
「……ほ、本当に?」
ガラテナさん……ガラテナちゃん?が僕から目を離し、ここまで会話に混ざっていなかったラダーさんに確認を取る。
あぁそっか。色竜の影響?を受けた現地民である以上、彼らはお隣さん的なカタチになるわけだ。
根無し草の開拓者より随分信用できる。
「うむ。彼らの言葉を肯定する。事実であり、真実である」
「!!!!」
目を見開いた彼女は一瞬のフリーズをすぐに抜け、頭を振ったかと思えばわー!と叫びながら走り出した。
「とーちゃんに知らせなきゃ……!!!」
元々地下トンネルの入り口で一旦止まって会話をしていたのだが、僕の手を振り払って奥へと走り出したガラテナさんを追いかけ、僕達も進むことにした。
「レイ氏、このトンネルこれくらいの広さだったら後ろから迫りくるスラッシャー系モンスターのモノマネできそうじゃない?」
「流石に……敵対される、かと」
ちょっと見たいなと思ったのは内緒である。
全力ではっちゃけられるのも才能……ってね。
次回の更新は1週間後を目標にしています。
よろしくお願いします。