不倶戴天   作:雨傘なななな

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若干長めとなっております。更新速度が遅くなる分、一話ごとの文章量を増やしていければと思っています。がんばります。


倶に生きるため

 なんかドワーフってエルフ族っぽさを感じるんだよなー、なんていうか、こう、ヴォーパル魂に欠けるというか皆無というか、不安だなーとガラテナさんの後ろを付いて進む道中にてサンラク女史がポツポツと呟いていたわけだが、彼女?彼?が目を丸くしているのを見るにどうやらその心配は杞憂だったらしい。

 

「酒じゃああああああ!!! 酒樽を開けぇぇぇぇぇぇい!!!!!」

 

「宴だぁぁああああああ!!!!!!」

 

「ひょおおおおおおおおおお!!!!!!」

 

 赤竜ことドゥーレッドハウルに醜いという理由のみから迫害されていたらしい彼らは、僕らが伝えたその怪物の死に喜び狂ってしまった。

 

 この地底都市/本拠地はホルヴァルキンと呼称されているらしいが、その喜報は一瞬でホルヴァルキン全体へと余すことなく伝えられた。

 

 僕は会ったこともないその赤竜の死を1秒でも一ミリでも悼むものがいなかった、というだけで彼らの魔竜への恨みが分かるというものである。

 僕もまぁまぁ青の色竜嫌いだし、少し同情しないでもない。

 アレに支配される街とか想像したくもない。めちゃくちゃ自分勝手なんだろうな。うげー。

 

「どうする? 当初の目的としては多分、元首だかリーダーだかに会いに行くのがベストだろうけど……」

 

「んー、芋焼酎っぽい感じ?」

 

「え、僕も欲しい」

 

「どぞどぞー」

 

「いやしれっと飲むなよ」

 

「シャンフロって味の再現は中々だけどやっぱりアルコールの脳味噌炙って溶かすような感覚はカットされちゃうんですよねー」

 

 へぇーえ。芋焼酎ってあんまり好きじゃないんだよな……と思いながら飲んだわけだが、あんまり好きじゃない味からアルコールを抜けばそれは無なのではないだろうか。といったところである。

 んー、というかそもそも味がしない。なんでだ??

 これに芋焼酎を感じられる味覚が信じられないんだけど僕。

 

「あーそれ、称号だっけ?美食舌持ってないからじゃね?」

 

 まじでか。

 (確認中)

 ………………まじでそれじゃんか。

 

「ま、まじか……味って概念後付なのか……取得条件きついです?」

 

「んー分かってればお金かかるだけ」

 

「あぁ量と質ですか。ぐっ……諸々解決して……クリオネちゃん関連もなんとかして……その後に……その後に……!!!」

 

 というわけで苦しんでるフリしてるけど優先順位がだいぶ下の方に直送された【美食舌】君でした。ちゃんちゃん。

 

「話戻すけど、元主だがリーダーだかってどこにいるかな」

 

「とりあえず明らかに偉い人がいます、みたいなところを探してみます?」

 

 サンラク女史がスッと話を戻すのに合わせて火酒夏さんから受け取ったお酒を返し、チェストリアを弄る。

 もう戦闘なさそうだし……封将の霊魂取り出しておこう。あーあと、そう、目的を忘れる所だった。

 

 チェストリアのウィンドウを一度消し、今度は装備及びステータスを表示させる。

 

「至金の歯車・密……」

 

 かつてのドワーフの王の魔力が封じられていた琥珀を元に作り出された我が切り札とも言うべき歯車をアクセサリー欄から取り外し、手の中で転がす。

 

 僕がここでするべきことについて考え事をしている間に元締め探しの方は結論が出たらしい。

 酒盛りをしているドワーフ達の元をスッと気配を消しつつ離れ、ドワーフの王探しへと向か……うーわ、どわーふ、すごい、めっちゃ、こっち、みてる。

 

「……でもツチノコさんはここに釘付けですねー」

 

「なぜ俺だけ……?」

 

 その視線にいち早く気づいたらしい火酒夏さんがさっとサンラク女史の肩を掴み、腰に下げられたアラドヴァルと言うらしい剣がドワーフ達に見えるように固定した。

 

 あっ、スケープゴート的な……

 

「なっ、火酒夏貴様っ」

 

「失礼しまーす!」

 

 サンラク女史をドワーフの方へと突き飛ばした火酒夏さんに押し込まれるように宴会から追い出される他4名であった……。

 

 

 

 

 

 

 サンラク女史を一旦スケープゴートにすることでドワーフ達の酒盛りから逃げ出した我々だが、結局の所一旦女史を待ってから行動することになった。

 理由?言わせないでよそりゃあ……うーん。

 

「誰かを一方的に利用するのは……良くない、です」

 

 サイガ-0さん迫真の引き留めによるものである。

 ま、まぁね……なんかこう……所属団体ごとに常識ってのは違うもんで、それのすれ違いはどっちが悪いみたいなことではないんだけれど、などと言い訳をしてみる。

 

 いやぁ無理筋か。

 サイガ-0さんの後ろに鬼が出てたもんねアレ。サンラク女史ってばビックリするほど鈍感なのかもしれない。

 

「…………利用してるつもりはないけど、確かに不義理かもですね。待ちましょっか、イムロンちゃんもそれでいい?」

 

 と、いうわけで火酒夏さんがささっと譲歩する。

 

「ちゃんをつけるなちゃんを、私はそういうのには関わらない主義なんだから気にしなくていいわよ」

 

「そですかー」

 

 こういう時のイムロンさんの立場は生きやすくて良いよな、などと思いつつ、適当な雑談がてらサンラク女史の合流を待っているわけだ。

 

「実際、なんでサンラク女史をスケープゴート……じゃなかった、注目の的にできたのかがあんまりよくわかってないんですよね。あのアラドヴァル?って剣が関わってるのは想像つくんですけれど。火酒夏さんとかは知ってたりします?」

 

「そーれは私もですねー。鍛冶師とかじゃないですし、あの人が持ってる武器ってほとんどオーパーツ的なんでー」

 

 ほへー。

 ドゥーレットハウルのこととかは皆知っていたし、案外周知の事実で僕が情弱に過ぎていたりするのだろうかと思っての質問だったわけだが、どうやらそうでもないらしい。

 

 なんだったか、サンラク女史によるオルケストラの攻略配信とか言う動画がある(本人にその話をするのは厳禁だが)らしく、どうやら早めに見ておいたほうが良いようだ。

 知っている前提で話される場合が多すぎる。

 

「わ、俺はなんとなく知ってるぞ。交換条件で聞いたから」

 

「……………………それは、聞いても良いやつですか?」

 

「ですねー。わたしも気になりますー」

 

「そう、ですね……、業物だとは見るだけでもわかります、が……」

 

「流す許可は取ってあるし鍛冶師にはそこそこ知られてる話だから問題ないな。アレはアラドヴァル・リビルドと言って──────」

 

 曰く、アレは英傑武器。

 曰く、アレは元々どこかで伝説を成した武器の再構成。

 曰く、アレは竜を狩った偉業に依るもの。

 曰く、あの武器は新大陸の亜人達にとって伝説的な装備。場合によってはイムロンさんと火酒夏さんが持つ勇者武器よりも優先されるほどに。

 

「ふむ……」

 

 英傑武器。

 戦力の足しになるのであれば是非とも欲しい(特に自身のスタイルにあわせて再構成できるというのが良い)が、生憎そう言った英雄譚に心当たりはない。

 ユニークモンスターの情報と交換ならライブラリあたりから引っ張ってこれるだろうか。ライブラリにもあるか怪しいし弓の英傑武器を探すのは骨が折れそうか……。

 

「おっ、追いついてきた」

 

「!」

 

 思っていたより時間が経ったらしい。

 手段は想像もつかないが、ドワーフ達を撒いて追いついてきたらしい。

 

「なんで雷纏って天井走ってんのぉ……?」

 

「こっちの方がはやいからだが」

 

「インテリジェンス」

 

 これ置いていった方が良かったまであるだろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 合流後、少しの間ドワーフの里を探索する中で見つけた神殿の門を潜り、回廊を進んでいく。

 

 さて、少し前の考え事に話を戻そう。

 僕以外のメンバーがドワーフの里にてトップに会いたい理由は2つ。

 「黄金のマグマ」という装備強化素材の回収と、ラダーさんが赤系竜人族に会うための伝手としてドワーフの里のトップを頼りたいがため、である。

 

 対して僕からの要件も2つ。

 狂える大群青から僕を守ろうと身を挺してくれたクリーオー・クティーラの霊魂を復活させる手段として、ミレィさんがドワーフを提示したことと、いつの日かイムロンさんと猫妖精から“至金の歯車・密”を受け取った際の約束である「ドワーフのトップであるミダス王に、数代前のミダスの最期を伝える」というクエストを果たすため、だ。

 

 2つのアイテム、“封将の霊魂”と“至金の歯車・密”が手の中で揺れる。

 

 通り過ぎたいくつかの壁画を見て他数名がなにやら会話しているのも右から左へと抜けていき、相槌もそこそこに足早になる自分を自覚した。

 

「ふーーーーーー、大丈夫。ミレィさんも言っていただろ。大丈夫だ……!」

 

 ずっと、不安を心の奥底へと沈めている。

 深海での戦いからまだ1日。だが、昨日の夜は悪夢に魘されてろくに寝れなかった。

 きっと全て解決できるまでは毎晩そうなのだろう。

 

「ま、要するに勇者武器の誕生プロセスみたいなもんだろ」

 

「───その通りだ、巨いなる槍を携えし者」

 

 神殿から冠を被った小柄の青年が現れ、サンラク女史の疑問に応えた。

 

「あんたが鉱人族の……」

 

「如何にも、僕は当代の「ミダス」だ。いや、ミダス28世と言った方がいいかな……失敬、僕の代では初めての他種族なんだ。

 

そしてそちらのお二人……その輝き、まさしく聖槌ムジョルニアと聖杖アスクレピオスとお見受けする」

 

「ああ」「はい」

 

 少しの間の静寂。なんらかのイベントシーンなのだろうが、僕には今はあまり関係が……あるのか??

 勇者と言えば、世界を救う役割を持っているわけで、「世界の終わり、希望は潰えて」なんてユニークシナリオが受注されている状況で最も頼るべき相手では……??

 

 覚悟を決めるような、何かに堪えるような表情から一転し、その溢れ出る感情を呑み込んだらしいミダス王が高らかに告げる。

 

「我ら守り人、赤き竜より隠し通せし黄金を第二十八代ミダスの名に於いて確かに勇者へ届けるものなり。星を救う者に成り得る勇者たちよ、どうか試練に挑まれ給え」

 

 セイヴァースターに成り得る……やっぱりこれって僕よりも彼女達こそが星を救うのに適任、みたいな話……今はいいか。

 

「おっ」「わっ」

 

「どうした?」

 

「勇者専用ユニークシナリオ「勇ましの試練」が進行しましたねー」

 

「鎧の器と共に灼熱を超えろ……か」

 

「「…………」」

 

 勇者達がイベントシーンを進める中、ひたすら蚊帳の外の僕ら……ああいや、次は僕の番らしい。

 

「俺は少々レイ氏と絵画を見ていても?」

 

「構わない、他でもないアラドヴァルに選ばれた貴公であるならば。むしろあちらの壁画も見て欲しい」

 

 サンラク女史とサイガ-0がなにやら密談に入ったのを見届けて、僕へと向き直ったミダス王の目を見据える。

 

「それで、君の要件を聞こうか。こんな僻地までなにをしに来たのかな?」

 

「そうですね。……まずは、コチラを」

 

「…………? それは?」

 

 差し出したのは“至金の歯車・密”。まずはこちらの頼み事及び交渉よりもコチラを優先するべきだろう。

 ユニークシナリオについて考えこんでいたイムロンさんが思い出したような顔でコチラを見ているのに少しだけ笑顔を零し、その歯車を手の中で空転させる。

 

「この魔力は僕達の……!」

 

 パチパチと音を立て、歯車からあふれ出た魔力が僕の指を金へと変えたのを見てミダス王が顔色を変えた。

 

「…………………………4代前のミダス王は、この里を出奔した後行方を眩ませている。コレは……どこで?」

 

「旧大陸、海を越えた遥か遠い大陸の……水晶で出来た蠍が無数に運びる場所で採掘致しました」

 

「えっっっっっっっっっっ」

 

 離れた所でサイガ-0さんと密談していたはずのサンラク女史が分かりやすく目を丸くして、なんらかの加速スキルまで使ってコチラへと文字通り跳んできた。

 

「まじで!?!? どれ!?」

 

「これ。元は琥珀だっけ」

 

「マジかよあそこを俺以外に攻略できるやつがいるとは」

 

「や、攻略っていうかラッキーパンチの1回。琥珀のランクも“密”だよ。災害なんかを封じ込めたものには敵わない」

 

「肯定しよう。だが、この魔力は確かに4代目のものだ。そのような遥か離れた土地で彼は……」

 

 偲ぶような、願うような、そんな表情をする彼に“至金の歯車・密”を手渡す。

 少しだけ手のひらでその歯車を弄んだミダス王は悲しげな表情で歯車を回し、金色の魔力にその手を染めた。

 

「歴代のミダスを代表して君に感謝を。よくぞ持ち帰ってくれた」

 

 あっ、これは“至金の歯車・密”とはお別れかな。

 長く戦った装備とお別れになるのは寂しいが、今はクリオネちゃんの相談を控えている。この寂しさはあとでサンラク女史でも誘って水晶群蠍無限特攻チャレンジでもして紛らわせれば良い。

 

「それともう一つ」

 

「…………………………………何かな?」

 

「ドワーフの里には、魔力を武器に封じる術がある、と友人に教わったのですが……」

 

 手の中でクリオネちゃんの霊魂、あるいは魔力が一際強く輝く。

 

「─────僕の愛する精霊を、武器に封じて頂きたく」












次回更新は6日後の予定です。よろしくお願いします。
あとネタバレになってしまいますが至金の歯車・密とはお別れしません。
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