不倶戴天   作:雨傘なななな

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人と精霊と人形、音楽会へ

 「封将の霊魂」、「深海の短杖」。

 シャングリラ・フロンティアという世界に置ける僕を象る2大巨頭が、ドワーフの王の工房にて並べられる。

 

「精霊武器化とは消えかけた精霊を生かすための業」

 

 炉は煌々と金色の炎を上げ、ミダス王が愛用しているという金製の槌がゴトリと音を立てて持ち上げられる。

 ドワーフという鍛冶に生きる者達の王。

 唯一の旅する兎とは異なる手段と技術により鍛冶の真髄へと辿り付きし彼のメインJOBは「星匠」。神代に依らない鍛冶師の極みのカタチ。

 考古学、古匠を経て至った神匠が機械仕掛けの甦機装を手掛けるのであれば、星匠は────

 

「魔力を打つ業であり、生命を打つ業であり、実体のないモノを鍛える業」

 

 ミダス王は、クリーオー・クティーラの霊魂に対し消えかけてなお装備に封じるには格が高すぎると語った。

 精霊を封じるための器は、格が違いすれば砕けてしまうと。

 だからこそ、海そのものを受け入れるために産み落とされた海の器を元に鍛えた深海の短杖であれば……!

 

 炉に焚べられた深海の短杖が美しい青色の中に金色の炎を灯し、魔力を封じるための準備を始める。

 

「ヒトを護るため生命を賭けて消えかけた精霊、海を封じるための特注品の武器」

 

 どれもお誂向きだ、とミダス王が続け、金色の槌を振るう。

 金色の炎に吸い込まれるように封将の霊魂……いや、クリオネちゃんが揺らめき、振るわれた槌がコォンと美しい音を立てて杖の形を変えて行く。

 

「…………クリオネちゃん」

 

 つい、声をかける。

 炎の中へと進むその姿が、どこか遠くへ離れていってしまうようで。

 

「クリーオー・クティーラ」

 

 その名を呼ぶ。

 元気な姿を見せてほしくて。あるいは僕を食い殺して欲しくて。

 

「クターニッドの封将…………もう“元”だったっけ」

 

 その立場を呼ぶ。

 救われた事実を噛み締めて。立場を捨ててまで僕と倶にあろうとしてくれる彼女へ、愛を込めて。

 

「僕の……」

 

 これからの彼女をなんと形容すれば良いだろうか。

 恋人を勝手に名乗るのは無礼だろうし、相棒の座はナナさんに独占されてしまっている。

 

「僕の……………!」

 

 君の元気な姿が見たい。

 共に美しく雄大な海を泳ぎたい。

 抱きしめて欲しい。抱きしめて、潰されてしまっても良い。

 今ここで生きる僕の命は何度だって蘇ってしまうものだが、それが例え現実の、たった一つの命であったとしてもそう願うだろう。初めて貴女を見つけた時と同じように。

 

 目の周りがチカチカするのは、ミダス王の魔力によって世界が金色に染まってしまったからだろうか。それとも……

 

「僕の、大切な、大切な」

 

 ヒトではない、封将でもない、厳密に言えば精霊でもない。

 モンスターだなんて言葉は、似合うけれど似合わない。

 

「僕が、大好きな君と、」

 

 何だって良いか。呼びかけられればなんだって。

 

 ミダス王が槌を振るう。既に彼女の魔力は杖の内部に取り込まれ、視認も出来なくなってしまっている。

 いつの間にか、竜が器に食らいつくような形状をしていた短杖はその在り方を大きく変え、一ミリも使い手が直接手に持つことを想定していないような空に浮かぶ火を灯されたランタンのような何かになっていた。

 

「君と、倶に生きていきたいんだ……!!!!」

 

 想いが溢れるように言葉が紡がれ、一層力強く槌が振るわれる。

 ランタンに炎が灯り、

 

「─────────ワタシ、モ」

 

 クリオネの姿を半透明の魔力が象らせながら、浮かび上がった。

 

「クリオネちゃん!!!!!!!!!!!!」

 

「成功だ……!!!」

 

 ミダス王が告げる。フヨフヨと浮かぶランタンは僕へと近づき、その姿をより色濃く浮かび上がらせた。

 

 魔力で出来た触手が僕の頬に触れ、ニッコリと笑ったクリオネちゃんが僕の想いを見透かすように口を開く。

 

「ワタシモ、アナタト一緒ニ………居タイノ」

 

「ありがとう……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ひとしきり再開を喜んだ僕は、1メートル前後の大きさまで縮んでしまっているクリオネちゃんを側に浮かばせたまま、ミダス王へと向き直り感謝を告げる。

 

「改めて、本当に……本当に、ありがとうございます……!!!」

 

「いやいや、僕だって精霊が消えてしまうのは悲しいからね。気にしなくていいさ」

 

「それでもです! 本当にありがとうございます……!」

 

「……あはは、仕方ないな……感謝は受け取ろう。それで。君たちはこれからどうするつもりだい?」

 

 僕の視界にわざわざ入ってきてくれたらしいクリオネちゃんが、ミダス王と共に首を傾げる。かわいい。なにしてるんだ。

 

「…………世界の終焉を止めます。そのためにも、1週間でつけられるだけ力を付ける」

 

「それは……そうだね。今僕達が直面している終焉は救星主ではなく君が止めるべきなんだろうということは、少しだけ聞き及んでいるよ」

 

「えぇ。僕の罪です」

 

「罪という言い方は……いや、今じゃないかなこの話は。だから……そうだね。君のこれからの道程は厳しいものになるだろうから」

 

 せめてもの追い風としてこれを、と差し出されて受け取った何かを、脳が認識する前に目を見開く。

 

「コレはドワーフの里にあるべきものでは?」

 

 至金の歯車・密。

 僕の戦歴を支えた最高峰のアクセサリーを、しかし義のため受け入れないとミダス王へと帰そうとして、彼は大きく手を振った。

 

「僕達は彼の顛末を知れただけで充分さ。それは君が持つべきものだ」

 

「その、ありがとうございます。本当に。」

 

「感謝を受け取ろう。ついでと言ってはなんだが、その歯車には一つ僕の魔力を込めた歯車を追加しておいた」

 

「ありが……………………………え?」

 

 え?

 

 ……………おぉう……まじだ。2つの噛み合った歯車だった所に、少し小さな3つ目の歯車が追加されている。

 

「え????」

 

「これからは“至金の歯車・過密(ゴルドーザ・オーバー)”と言う銘になる。うまく使ってくれ給えよ」

 

 目を丸くして驚く僕の横で、クリオネちゃんも僕の手を覗き込んで目を丸くしている。かわいい……超かわいい……絶対元のカタチ知らないから何となくやってるだけだよこれ。可愛すぎでしょどうすんだまじで。

 

「戦いが終わった後、再びお礼に来ます」

 

「ふふ、それは楽しみだ。お土産は人族の槌で頼む」

 

「了解です。用意できる最高のものを持っていきますね」

 

 その言葉を最後に、もう一度心からのお礼を伝えた後、僕とクリオネちゃんの2人……あっ、ごめんて、うん君もね。そう、ナナさんとの3人はドワーフの里を出た。

 ごめんちょっと嘘。イムロンさんと火酒夏さんのとこに顔出してお礼言ってから出た。あーそれも嘘だ。ちょっとだけレアそうなアイテムを売店で買った。あー、あとコルトさんに槌のお土産……うわ、異形術に使う合金の素材……!えっ、ドワーフのお酒売ってる……!僕【美食舌】持ってない!!!ミレィさんのお土産にいいかも……うわっ、回復薬足りるかな、準備しとこう、あーあれもそれもうわこれも、

 

 ……うん。そんなこんな色々あってドワーフの里を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドワーフの里を出て樹海へと戻った僕に、突発的な戦闘に備えて銃を構えたままのナナさんが尋ねる。

 

「疑問提起:コレからどうされますの?」

 

「深海ニ、戻ル、前ニ?」

 

「そうだね。めちゃくちゃ昔に発注したユニークシナリオで、僕は完全に忘れてたんだけど」

 

「「?」」

 

「オルケストラを討伐する」

 

 今のところサンラク女史とミレィさんのみが成した偉業。

 ミレィさんによると、オルケストラには正典と偽典があるという。僕はどちらに分類されるのかも気になる所だ。

 

「肯定:もし討伐に成功すれば、確かに大きな戦力を得られるかと思いますの」

 

「ワタシモ、ガンバルネ」

 

「んん。ありがとう2人共。ちなみに僕の強化道中はオルケストラを倒してようやく3割ってとこらしい。ひー、1週間で熟す量じゃなくない……!?」

 

 ミレィさんってば、スパルタ〜。

 

「けれど、」

 

「……肯定:」

 

「ウン」

 

「死んでもやり遂げる。まだココにいたいから……!」

 

 それでこそシュテルメアだ、と一機と一体は強く頷く。

 

「オルケストラ攻略に掛けられる日にちはたった3日。正直めちゃくちゃ短いし、攻略難度には見合っていない。だからこそ全速力だ……!」

 

 樹海のモンスターを蜂の巣にしたシュテルメア一行がユニークモンスター「冥響のオルケストラ」の面前、劇場前に置かれたライブラリの滞在地点へと辿り着いた。













ちなみに精霊武器化したクリオネちゃんの外見は30cmぐらいのランタンを胸元辺りに包んでる感じ。
クリオネちゃん自体の大きさは格が下がったことで1メートルちょいまで縮んだ。
装備としての詳細は後ほど。


次回の投稿は1週間後を目標にしています。がんばります。
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