不倶戴天   作:雨傘なななな

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目標よりも更新が遅れてしまったことをココに謝罪いたします……。

定期的にある体調不良……というかまぁ例の流行り病ですね。
吐き気系列の症状が一番死を感じるというのが私の言い分です。

季節の変わり目、花粉、新たな環境などなど、体調を崩しやすい時期ですので、皆様もできるだけご自愛ください。


星映しの水面に愛を謳う 其の一

「こんにちはー」

 

「お、よく来たねシュテルメア君」

 

 オルケストラの劇場前にて僕を待ち受けていたのはライブラリのトップであるキョージュその人である。

 

「お久しぶりです」

 

「そうだね。……先に謝っておこう。先日の件はすまなかった」

 

「先日の……件……?」

 

 どれだ……?

 まぁいいか。とりあえず感謝と謝罪は受け取れば解決すると僕はつい昨日にミダス王に習ったのだ。

 肩を竦め、話を先へと促す。

 

「では……まず冥響のオルケストラのユニークシナリオ自体はライブラリの征服人形と契約できたメンバーでそこそこの回数発生させられている」

 

「そう聞いています」

 

「うむ。ミレィ君からだね。だがここまでオルケストラに入ったサンラク君以外のメンバーは皆、偽典という結果を残した。

 

それを踏まえ、我々は少し前から君が挑戦した場合どちらが選択されるのかということに注目していた。……あぁ、心配しなくて良い。例え君が偽典を引いたとしてもそれは考察しがいのある結果だ。なんの問題もないよ」

 

「なるほど」

 

「だからこそ、我々は君をバックアップする。もちろん贖罪の意味もあるがね」

 

 実際、何に関する謝罪なのかは分からないが、ディープスローターさんに繋いでもらったりユニークシナリオ融通してもらったりサンラク女史に繋いでもらったりと、ライブラリには数え切れないほどの恩を受けている。

 ミダス王に関してもそうだが、むしろこちらこそどこかで大きな礼をできたらといった所である。

 

「まずサンラク君からの情報だが、征服人形の持ち込みはイベントリアというアクセサリーを介せば可能だ。……チェストリアでもね。そちらはミレィ君が証明している。

 

その上で、征服人形はオルケストラ内で混線を受け自我が揺れる可能性があるのだが……」

 

「否定:なんの問題もありませんの。当機はシュテルメア様の横に立つという一点だけでもそのアイデンティティを保障できます」

 

「だそうですけど」

 

「うむ。コチラでも個人差……人形差があることは確認済みだよ。Nパッチがなくとも、攻略自体は可能だと真理書の裏付けもある。……この場合、最終的な報酬のレベルが若干下がってしまうようだが。

 

が、Nパッチ自体は偽典では必要としない。報酬のレベルのためにNパッチを確保するかどうかは、君がどちらのルートに進むかを確認できてからとなる。……良いかね?」

 

 Nパッチ……?と疑問に思う隙もなく、キョージュの後ろに控えていたプレイヤーからNパッチと表紙に描かれた紙束を手渡された。分厚……今じゃなさすぎる。

 これは後で確認するとして、

 

「まぁそれが最善とライブラリの方々が思うなら特に何も言うことはありませんね」

 

「よろしい。信頼には結果で応えるとしよう。それで授業の続きだが……」

 

 あ、これ授業だったんだ。やっぱり?

 なんか僕の話すタイミングないなと思ってたんだよ。

 

「正典の場合、第四楽章を攻略した後の最終楽章で君の能力をコピーした相手との戦闘が始まる。相手は歌姫による援護を受け、君は征服人形の援護を受ける形でね」

 

「…………そこまでは?」

 

「そこまでは君が今まで戦った強敵との4連戦だね。そこに征服人形は戦力以外の意味を持てない」

 

 君はもしかしてサンラク君の配信を観ていないのか……?という顔をされた気がする。観てないんですぅ〜。仕事と自分の強化で忙しすぎるから〜。

 

 それはさておき、強敵4連戦……。

 タラルトスクズ、海の化身、ブラックライトニングワイバーン、ミノタウロス、アトランティクス・レプノルカ……嫌な奴ばっかりだな。

 とはいえ、ユニークモンスターと複数回戦っていると言うサンラク女史のソレに比べれば随分楽な前奏になりそうだ。

 

「ちなみに、4連戦は討伐に成功した相手のみですか?」

 

「うむ。今のところ、撃退したに留まる相手の出現は確認されていない。また、ユニークモンスターも討伐したもののみ出現が確認されている。

 

それらの再現体は攻略時の戦闘を再現することで討伐したという判定を受け、次の楽章へと進む。

全く同じ装備で討伐すればより良い評価を得られるというのが我々の予想だが、そこは気にしなくとも良い。

 

……他に聞いておくべきことは?」

 

「特に。じゃあとりあえず行ってきます」

 

「うむ。装備の補修と回復アイテムの補充は任せ給えよー」

 

 よーし。目指せ1日短縮クリアだな……。

 

「肯定:一旦格納ですわね。武運を祈りますの」

 

「ありがとう」

 

「ガンバロウ、ネ」

 

「うん。がんばろう」

 

 頬に当てられた触手にできるだけ優しく触れて感謝を伝えた後、軽くキョージュさん達ライブラリの面々へと頭を下げ、劇場へと足を踏み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 実を言うと、ドワーフの里に行くまでの道中にサンラク女史からオルケストラについての話はいくつか聞いている。

 どうやら彼にとっては事故で行ってしまった配信を観ておらず、とりあえず今のところ観る予定もないことは好感だったらしく、大盤振る舞いであったのだ。

 

 どうも彼の主観での解説が多かったが、要点は大まかに3つ。

 征服人形の歌、勝利後のアンコール、勝ったと思っても勝ってないから気をつけろ、だ。

 まぁなんとなく言いたいことは分かるから良いが、なんにしても彼はもう少し伝える努力をするべきではないだろうか。まぁ……恩恵に預かる身として文句を言うべきではないけれど。

 

 自身を再現するという性質上、どう足掻いてもサンラク女史のそれに比べればマシな部類のユニークモンスター攻略になるのだろう……と、思いたい。

 

「えーと、確かコロシアムの壁に貼り付けられた音楽プレイヤーを再生する所からだっけか」

 

 薄暗い劇場に、何故か一緒に入ったはずのクリオネちゃんはおらず、僕の声だけが反響している。

 ……良かった。ちゃんとチェストリアに元「深海の短杖」が再格納されてるだけだ。多分ソロ専門ってことで強制格納なんだろうな。取り出しも……うん。問題なさそう。

 

「コレ、至金の歯車・密をミダス王に渡したままの場合どうやって戦闘再現すればよかったんだろう……」

 

 あのレベルの詠唱破棄も、金化の付与も他の手段を見つけるのは難しい。……もしかして詰んでた?

 

「…………発見」

 

 音楽プレイヤーへの攻撃が無意味なことは聞き及んでいる。不必要なことはせずYour Orchestraと画面に表示されるのを確認するないなや再生ボタンを押せば、パチンという音と共に“シュテルメア”のアバターがスポットライトに照らされる。

 

 ……今回の目標は最終楽章にきっちり到達し僕のルートを確認すること、正典の場合僕のトレースAIを持った上位互換のステータスに慣れ始めること。

 

 スポットライトが若干揺れる中、忽然と消えた音楽プレイヤーから舞台上に現れた人影……エリーゼへと視線を移す。再生ボタンの名に違わず、静寂を切り裂くようにエリーゼが美しいソプラノボイスで音楽を奏で始めた。

 

 スポットライト、スポットライト、スポットライト。

 光が一筋増えるごとに人影は増え、音楽を奏でる楽器の数も追加されていく。

 バイオリン以降の楽器の種類は音楽に通じていない僕には分からないが、それがオーケストラに使われるものであることは理解できる。

 オーケストラの演奏メンバーが出揃ったのか、スポットライトの光が増えるのが止まり、最後の役者が舞台と観客席の中央にあるコロシアムへと召喚される。

 

 形状は竜や蛇に近く、はっきりとは見えずとも雷がバチバチと音を立てているのが聞き取れる。

 ……最初は君かぁ。

 

『【シュテルメアの紡いだ物語】第一楽章……「黒き雷竜の叫び」』

 

「Goa.grrrraaaa!!!!!!!!!」

 

「えーと、最初は水魔法と異形術中心、最終的に過剰威力の【雷轟の矢】をぶっ放して決着だったっけ」

 

 あんまりにもあんまりに前のこと過ぎて記憶に薄いが、オルケストラは歌の内容がヒントになっていると聞いている。なんとかなる……と、信じたい。

 

『──黒き雷竜は、下僕の損失に怒り──英雄は不利な戦いへと身を投じる……』

 

「【異形術:蛇竜亀】」

 

 どうやら近接戦闘のお時間らしい。

 昔の僕はよくもまぁ面倒な戦い方をしてくれたものだ、と愚痴を心の中で並べつつ、黒き雷竜とまでよばれる蜥蜴野郎に肉薄し──────

 

 












次回の更新は1週間後を目標にしております。よろしくお願いします。
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