転生者、綾小路清隆がAクラスを目指す話 作:きよすず
綾小路清隆。その人物は『ようこそ実力至上主義の教室へ』というノベルスの主人公である。
綾小路清隆は幼い頃から父親が立ち上げたホワイトルームという施設で教育という名の訓練を受け、様々な格闘技の達人となり、頭もキレる。綾小路清隆は天性の天才だ。
『ようこそ実力至上主義の教室へ』では、そんな彼が事なかれ主義を掲げながらもクラスを上へと押し上げる物語だ。
僕はそんな彼が好きだった。でも、まさか彼に転生するとは思わなかったな…
――――――
春の暖かさを感じる日にオレは現実逃避のような事を考えながらバスに乗っていた。向かう先は高度育成高等学校、これからの3年間を過ごすことになる学校である。
バスは目的地に到着して乗客を降ろしていく。オレもその乗客の一人だ。
降りた先でまず最初に目に入ったのは学生の数だった。他校の制服を着ている生徒も何人かいるが、殆どは自分と同じ学校の生徒たちだ。
そして次に目に入ったのは真新しい巨大な校舎だった。
この学校で3年間を過ごすのか……と感慨深い気持ちに浸りながらオレは校門を潜る。この学校は就職・進学百パーセントと言うことで世間一般では人気を集めている。
だが、別にオレはそれが目当てでこの学校に入ったわけではない。ではなぜこの高育に入学したのか?それはただ単によう実の世界を満喫したかったからだ。原作とは違い、高育に入学する前に親父さんは黙らせているからホワイトルームからの妨害はない。つまりオレは、綾小路清隆としてよう実の世界を満喫することができるのだ。
一つ問題があるとすれば、オレは原作通りホワイトルームで教育を受けてきた為、感情を感じることがなく、何事にも機械のように最適な行動で行ってしまうことだ。無論、原作と同じように原作キャラたちと絡むことは可能だろうが、それでは原作と同じでつまらない。
だからオレは綾小路清隆のスペックをフル活用してAクラスを最速で目指すことにした。Dクラス全体でAクラスに上がるのはさすがに面倒くさい。だからオレ個人でAクラスを目指すのだが、そのときに龍園率いるCクラスも壊滅させようと思う。
これに関してはただの気紛れなのだが、その一手間で少しでも感情を学びたい。
「ちょっと、こんなところで止まらないで頂戴。邪魔でしかたがない」
声が聞こえた方向に顔を向けると原作キャラの堀北鈴音が目を吊り上げてこちらを睨んでいた。
「すまない。校舎の雰囲気に圧倒されていたんだ」
「そう。そこをどいてくれないかしら?」
「ああ、今どく」
原作通り、近づく者すべてを刺すような雰囲気を漂わせてオレの言葉を無視して歩いていってしまった。
オレは堀北の後ろ姿に向けて「原作のように育てたりはしないぞ」と心の中で警告しながらクラス発表がされているところまで向かった。
クラス発表の用紙を見ると原作通り、オレの名前はDクラスの欄に書かれていた。入試テストの点数でAクラスに入ることもできたのだが、一度Dクラスになりたかったから入試の点数は全科目五十点で揃えている。面接もCクラスなどにならないように調整した。
教室に向かうと、平田が中心となった男子グループ、櫛田が中心となった女子グループに分かれていた。オレは平田のグループに入ることも考えたが、足を引っ張られるだけだと堀北のような結論に達したから辞めにした。
それから程なくして始業時間を迎える。
茶柱先生が現れると、平田たちは全員着席をして先生の話を待った。
「これからDクラスを担当することになった茶柱だ。この学校にはクラス替えは存在しない。卒業までの3年間、私が担任としてお前たち全員と学ぶことになると思う。よろしく。今から1時間後に体育館で入学式が行なわれるが、その前にこの学校の特殊なルールについて書かれた資料を配らせてもらう。以前入学案内と一緒に配布はしてあるがな」
そうして先生は前の席の生徒にプリントを配っていく。そのプリントにはクラスの仕組みやこれからの学校生活の決まりが書かれていた。
「今から配る端末。それを使い、敷地内にあるすべての施設を利用したり、売店などで商品を購入することが出来るようになっている。クレジットカードのようなものだな。ただし、ポイントを消費することになるので注意が必要だ」
端末には生徒の名前と学籍番号が記載されており、学校にある施設で機械に読み込むことによって商品が購入できる仕組みだ。このポイントは毎月一日に自動的に振り込まれるらしく、既に十万ポイントが支給されていると茶柱先生から説明があった。他にも敷地内にあるカラオケやシアタールームなど様々な施設を利用することができるようだ。
「それからポイントはプライベートポイントと言うのだが、一ポイント一円の価値がある。つまり、お前たちは十万円を手にしているということだ。」
茶柱先生の言葉にDクラス内がざわつく。山内なんかは今にも立ち上がりそうな様子だ。
「この学校は実力で生徒を測る。お前たちはそれだけ期待されているということだ。話が変わるが、一時間後に入学式が体育館で行われるから、その頃に戻って来る。準備しておけ」
そう言い残し、茶柱先生は教室を去っていった。
「ねえ、平田くん。本当に十万ポイントもらった?」
そう言って一人の生徒、軽井沢恵が平田の机の前にやってくる。軽井沢は親しげに声をかけていた。原作通りだな。
「ああ。本当に十万ポイント入っていたよ」
二人は親しげに話し始める。この段階で既に二人の関係性は出来上がっているようだ。
「私もだよー」
そう言って軽井沢は平田の机に端末を置いた。
「この端末に連絡機能がってるんだけど、もしよかったら連絡先交換しない?」
「別にいいよ、クラスのみんなも交換しようよ!」
そう言って平田は携帯を取り出し、軽井沢と連絡先を交換する。その流れで他の生徒たちとも連絡先を交換し始めた。
オレはその様子を傍から観察していた。そして、オレと堀北以外は原作通りだということが分かった。
堀北は原作だと、オレ――綾小路に罵詈雑言を言い放っていたはずだが、この世界線ではそれがない。なぜだろうか―――バスのイベント忘れてた………。
原作では綾小路がバスの中で堀北隣の席だったが、オレは原作とは違う一人席に座ってしまった為、堀北と関わえなかったのだ。
――まあ、過ぎてしまったことは仕方がない。むしろ堀北と関わりがない方がAクラスを目指すに置いて少し楽になるかも知れない。
「なあなあ。平田は部活どこにするか決めた?」
「うん、僕はサッカー部に入るつもりだよ。でも、部活だけじゃなくて、みんなで仲良くやって行きたいと思ってるよ」
軽井沢たちと話していた平田に池が話しかける。
「やっぱり、イケメンは運動部じゃなくちゃ。な、綾小路!」
池はそう言って何故かオレに同意を求めてくる。そんなこと言われてもオレは何も言えないんだが…。
だが、この状況だと、先程の結論は撤回して一度でもクラスに好印象を与えた方がよいかも知れない。
それが後々響いてくると思うからな。
「そうだな、――オレもそう思った」
だが、肝心の面白いであろう返しが思いつかなかったからありきたりな返しになってしまったが、池はオレの返しに満足したように、「やっぱりそうだよな」と嬉しそうに笑っていた。
その後、山内が女子の話題を振ろうとしたところで再度茶柱先生がやってきた。
そして体育館へと移動を始める。その道中で平田は女子たちに声をかけていた。どうやら彼は本当にクラスの中心人物になるようだ。だが、オレはそんな平田に好感を持てなかった。それはオレが原作を知っているからだろう。この学校は実力至上主義だ。つまり優秀な生徒にはそれ相応の優遇が約束されている。もちろん、それにはそれ相応の義務も発生している。
人をまとめるのは、下手すればクラスを崩壊に導くこともあるからだ。
――――――
入学式が終わったあと、校長先生、理事長の長い話から開放された生徒たちが次々と下校していた。
今日は昼で学校が終わりなのだが、恐らく寮の家具を揃えろということだろう。だが、オレは家具に興味がない。だから入学式のあと、オレはすぐに帰るつもりだったが、そうはいかないらしい。
「綾小路くん。ちょっといいかな?」
帰ろうとしたオレの背中に声がかかる。振り返るとそこにはクラスの人気者である櫛田桔梗がいた。
「何の用だ?」
「実はさ、色々学校の中見て回ったんだけど分からなくて……。職員室ってどこにあるかわかる?」
「それならこの廊下を真っ直ぐ行って左に曲がると、直ぐ近くにある」
櫛田はオレの説明に笑顔でありがとうとお礼を言い、小走りで去って行ってしまった。オレはその後ろ姿を見送ったあと学校を後にした。
そんな入学式から早くも一週間が経過した。この一週間は学校内の施設や構造を覚えるのに費やされた。だが、オレはその時間を無駄にすることなくDクラスを観察していた。そして原作とは違う事を幾つか見つけた。
まずは須藤健。彼は入学当初はバスケット推薦で入学している為、学力はお世辞にも高いとは言えない位置にいた。だが、この一週間の勉強で少しずつ学力が向上してきたようで、Bクラス下位程度の学力にはなっているようだった。
それから池寛治だ。原作ではDクラスの中で退学候補の一人だったが、現時点ではそんな様子は微塵も感じられず普通に過ごしているようだ。
そして山内春樹。原作では実際に一年生最後の特別試験でオレ――綾小路清隆に事実上破れて退学している。その退学は彼の幼稚さが原因だったのだが、今の彼は原作よりも大人びていて幼稚な発言が目立つこともセクハラ発言もない。
主にこの三つが原作とは違う点だろう。他にも違いはあったが、今後にあまり関係がないものだから今回は割愛する。
「ねえ綾小路。今日の放課後って時間ある?」
学校の玄関で靴を履き替えていると、後ろから軽井沢が声をかけてくる。
「少しなら大丈夫だが」
「じゃあさ、放課後カフェに付き合ってよ」
どうやら勉強の約束をしていた平田ともう一人の女子にドタキャンされてしまったようだ。それで他に声をかけれる男子がいなかったため、オレに声をかけたのだろう。
オレは特に断る理由もない為、軽井沢の誘いを受けることにした。
「わかった」
そう答えると軽井沢は嬉しそうにしていた。
オレはそのあと、携帯で平田に「お前の彼女と少しカフェに行くが許してくれ」メールを送り学校を出る。そして携帯をしまい、学校から出て少し歩いたところで立ち止まる。
すると数秒後、同じ学生服を着た一人の学生がオレの前に現れる。それはCクラスの生徒である龍園翔だった。
その後ろには同じくCクラスの伊吹澪、山田アルベルト、石崎などが控えている。まあ、オレにはバレバレなんだけどな。
「何の用だ?」
「ちょっと話があってな。明日時間作ってもらえないか?」
「それはここで話せないことか?」
「そうだな。ここだと何があるかわからないからな」
そう言って龍園は不敵な笑みを浮かべ、こちらの回答を待っているようだった。オレとしても明日の予定は特にないが、素直に了承するのも面白くないと思ったので少しからかってやることにする。
「ここにはオレと軽井沢とお前たちしかいないのだから問題ないだろう?それともお前の仲間たちに聞かれたくない内容なのか?」
そう答えると龍園は一瞬だけ驚いた表情を見せるが、直ぐに笑い出す。
「クク、確かにそうだな」
龍園はひとしきり笑ったあと、オレの横を通り過ぎる際に聞こえるように呟いた。
「明日の午前10時。校舎の屋上で待ってるぜ」
それだけ言って龍園たちは去っていった。軽井沢は心配したような顔をしていたが、オレは「大丈夫だ」とだけ言って、龍園たちが見えなくなったところで軽井沢とカフェへと歩き出した。
オレはカフェでは軽井沢と勉強をしながら思案を巡らせていた。龍園たちは何をオレに求めているのか。
その答えに思い至ったのは、カフェでの勉強会が終わった後のことだ。
オレは携帯を取り出しある人物へと電話をかける。その人物とは、龍園のクラスメイトである真鍋だ。
「あ、あの……綾小路くんですか?真鍋です…」
電話越しに聞こえる真鍋の声はどこか怯えているようだった。まあ、それも仕方ないだろう。ここでオレと真鍋が知り合った経緯を説明すると、一週間程前の学校からの帰り道に真鍋が同じCクラス内の生徒を集団でイジメているのをオレが見つけて動画を取り、それを真鍋たちに見せて脅したら全員でオレに殴りかかってきたからとりあえず全員動けないようにして言うことを聞かなければこの動画を学校に提出するともう一度脅したら大人しく言うことを聞くようになったということだ。
もちろん今もその契約は続いている。
「聞きたいことがある。…龍園は最近特別棟に出入りしていたりしないか?」
「……私の知っている限りになるのですが……出入りしているかと」
「やはりか。情報提供感謝する」
確証は持てた。龍園は恐らく――
今作のきよぽんは明るめに書いていますが、他の人から見たら原作通り常に無表情で機械的です。
ヒロインいる?
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いる
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いらない
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