転生者、綾小路清隆がAクラスを目指す話 作:きよすず
オレは時計を見る。時刻は九時五十分、約束の時間まであと十分といったところだ。時間には余裕があるが、オレは龍園の指定した場所である屋上へと続く階段を上る。
「遅えじゃねえか綾小路」
屋上に出ると、そこには龍園が一人でいた。
「約束の時間の十分前なんだけどな」
「ハッ、俺が待ったと言ったらそれはもう遅刻なんだよ」
「横暴だな」
そう言って、オレは龍園の近くに歩み寄る。
「それで、改めてオレに何の用だ?」
「単刀直入に言うが、俺と契約しろ、綾小路」
「契約?」
龍園は屋上から見える景色に視線を向けながら続ける。
「お前は頭のキレるやつだ。だから契約の内容もある程度、わかってると思うがな」
「さあ、よくわからんな」
「クク、とぼけるなよ。――っと話がそれたぜ。とりあえずこの契約書を見ろ」
そう言って龍園が取り出したのは三枚の契約書?だった。内容は――
――――――
・この契約は綾小路清隆(以下綾小路)と龍園翔(以下龍園)が結ぶ契約である。
契約を結ぶに当たっての注意事項
・この契約を破ったり他人に口外した場合、綾小路と龍園どちらでもプライベートポイントを八万ポイント払うこととする。(なお、プライベートポイントは一人八万ポイントとカウントし、口外した人数によって倍に増える)
・違反をした場合、ポイントはその日の内に払うこととする。
・この契約は五月二日に破棄される。
綾小路の契約内容
・五月一日に何か事件が起きても綾小路が関与する事は許されない。
・なお、五月一日までに何かが起こるとクラスメイトに警告することも許されない。(警告には口頭で伝える他、電話や手紙、メールである。
龍園の契約内容
・龍園は綾小路に先払いで二万プライベートを払う。(なお、一括払いとする)
・龍園は五月二日までDクラスを妨害することは許されない。
――――――
「なるほどな。つまり龍園は五月一日にオレたちDクラスの誰かをターゲットに事件を起こすわけだな」
「なんでそこまで読めるんだよ…」
「龍園、一つ聞くが、もしこの契約書にオレがサインしたら何ポイント払ってくれるんだ?」
「クク。話が早いな。二万ポイント払う」
「そんなに貰っていいのか?」
「ああ。問題ない」
オレはペンを持ちサラサラと契約内容にサインした。そしてそれを龍園へと渡す。
これでオレはこの一件――いわゆる須藤の暴力事件から手を引くこととなったわけだが、あらかじめこの事は予想できていた。当然対策も考えているわけだ。幸いにもこの世界線ではあの須藤は少し頭がいい。それを利用すれば、オレが関わらなくても勝ち目は十分あるだろう。
「この契約書にも書いてあるが、この契約を破ったらペナルティでプライベートだからな」
「ああ。分かってる」
「クク、それでいい」
そう言うと龍園は満足気に屋上を去って行った。龍園は満足気だが、この契約書は穴だらけだ。録音は禁止されていないし。
それにしても――
「龍園、お前は本当に愚かだな」
オレの勝ち誇ったような――否、無気質な声は誰もいない屋上に静かに響いた。
――――――
Dクラスの教室の中でオレは須藤に昨日の録音を聞かせていた。録音に気付いていない龍園には少しばかり同情するが、オレはホワイトルームでそういう教えを受けてきたからしょうがないだろう。
「――ということだ。Dクラス内だとお前が一番狙われやすい。気を付けろよ須藤」
「ああ。だが、Cクラスがいずれ気が短い俺を狙ってくることはだいたい予想できてたからな、一応対策は練っているぜ」
「それは頼もしいな」
原作では考えなれない程成長している須藤はすぐにオレの話を飲み込んだ。今回の事で須藤の対策とやらをされたら困るが、オレに忠告されても逆上しないという精神の成長には素直に称賛を送る。
「今回はオレに考えがある。少し聞いてくれないか?」
「もちろんだ綾小路。お前は俺の危機を教えてくれた恩人だからな」
「なら話すぞ――」
須藤はオレが話す策謀を全ては理解できなかったものの、だいたいは把握したようだ。Cクラスを嵌めてプライベート、クラスポイントを絞り出す方法を。
朝、オレは登校し自分の席につくと、すぐに携帯を取り出しある人物へと電話をかける。その人物は2コールほどで電話に出た。
その人物とは――坂柳有栖だ。
オレは昨日龍園から聞かされた話とオレから話があると伝えるとすぐに食いついた。
原作で坂柳有栖は幼い時に父親の付き添いでホワイトルームを訪れた時に、ホワイトルームの最高傑作であるオレ――綾小路清隆興味を持った。そして高育で綾小路清隆と再開したとき、自分とどちらが上か勝負をしていた。この世界線でも坂柳有栖はオレに興味を持っているようだ。
つまり坂柳との交渉にオレとの勝負を条件として出せば、余程条件が悪くない限り坂柳は承諾するということだ。
その後オレは坂柳との交渉内容を考えながら授業を受けた。
――――――
坂柳有栖視点
私は生まれながらの天才です。小学生の頃から学校のテストは満点、全国模試は全国一位でしたが、問題が簡単過ぎます。周りの人たちは凄いと絶賛しますが、私からしたらそれは当たり前の事なのです。そんな時私は私を超える存在を見つけました。
『ホワイトルーム』という人工的な天才を作る施設を見学に行った時に彼は無表情で淡々と難題と思われるカリキュラムを熟していました。私でさえ熟せるか怪しいカリキュラムだというのに余裕とでも言いそうな雰囲気でした。そうして私は生まれて初めて誰かと戦いたいそう思いました。
高校生になる頃でした。これはきっと運命のイタズラなのでしょう。私が進学する高度育成高等学校に彼が進学するとお爺さまが私に伝えてくれました。
クラスこそ別れてしまったものの実力で生徒を測る学校なら、恐らくどこかで戦う機会がある。私はそう確信しました。
そんなある日彼――綾小路清隆くんから電話が掛かってきました。そもそもなぜ私の電話番号を知っているのでしょうか?フフ、もしかして私のスト――こほんこほん失礼しました。内容としては綾小路くんからお話があるそうです。電話の中で龍園くんとの会話の録音と綾小路くんと龍園くんの契約が説明されたのですが、思わず「なんというか詰めが甘いですね」という感想が口から漏れてしまいました。
Cクラスの王と言っても所詮は私以下なんですね――こほんこほん今日は咳が多い気がします。とりあえず私は綾小路くんとの約束の場所に向かっているのですが、その足取りは軽く、色々な事に興味を持てない私でも口角が上がっているのを感じます。
綾小路くんが私に求める事は恐らくBクラスを潰すということでしょう。そして対価は私と綾小路くんの勝負。
一見私のメリットが少ない様に感じますがそれで構いません。私は綾小路くんと競うことを楽しみにしていますから……フフ……本当に楽しみです。
私が約束の場所に着くと既に綾小路くんは待っていました。
「待たせてしまいましたか?綾小路くん」
「別に待っていないぞ。それで話の内容なんだが――」
「ちょっと待ってください!」
「……?」
フフ…なぜこうも話を進めたがるのでしょうか?約八年ぶりの再会だというのに。
「挨拶くらいさせてください。――約八年ぶりですね綾小路くん」
「オレはお前と初対面の筈だが?」
「ホワイトルーム」
「それがどうかしたか?」
「え……」
……フフ…綾小路くんはホワイトルームという言葉を出されても動じない。それどころか私の反応を楽しんでいるかのように見えます。
「フフ……面白い人ですね綾小路くんは」
「それはどうも、それで話なんだが、オレはお前に一つ頼みたいことがある」
「分かっていますよ。Bクラスを潰せというお願いでしょう?」
「ああ。正確にはBクラスのリーダー――一之瀬帆波に対して誹謗中傷をしろという事だがな」
「誹謗中傷ですか。それで綾小路くんはどのような反応を示すのですか?」
「オレはそれをダシにしてBクラスを潰すつもりだ」
「なるほど、分かりました。そのお話お受けします。ですがそれには一つ条件があります」
「条件だと?」
綾小路くんの顔が少しだけ険しくなったような気がします。
恐らく彼からしてみれば私が友好的に接したこともあって、少し気を緩めていたのかもしれません。ですが元々対価を用意するつもりがあるのなら私から申しても構わないでしょう。
「はい。別に難しくありません。綾小路くん、私とチェスで勝負をしてください」
どこか少しズレている坂柳さん。
知らないところで狙われている一之瀬さん。
詰めが甘過ぎて、頭が退化している龍園さん。
殆ど出番無しの堀北さん。
原作でクラスのリーダーの人たちは酷い目にあってます、はい。
ヒロインは誰?
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軽井沢恵
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櫛田桔梗
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椎名ひより
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坂柳有栖
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一之瀬帆波
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松下千秋