小鳥遊ホシノの先輩   作:燐檎あめ

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番外編(というより閑話?)その1、先ずはヒナちゃんとリンくんの模擬戦です。

数十話ぶりの1対1、お楽しみいただければと思います。


閑話、もしくは番外編……?(更新停止中)
イオリちゃん強化月間─模擬戦観戦①─


 ある日のこと、ゲヘナ風紀委員会の部室にて──

 

 

 

「……イオリ、準備は出来てる?」

 

「もちろん出来てるよ、委員長」

 

「なら良かった。……今から向かうから、着いてきて」

 

 

 

 自身の属する組織の長である空崎ヒナに連れられて、彼女──銀鏡イオリは、再びアビドスの地へと足を踏み入れた。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「お、来たか。……呼んでおいてなんだが、ゲヘナから出ても良かったのか?」

 

「問題ない。──全員、捕縛済みだから」

 

「流石」

 

 

 

 二人がアビドスの校庭に足を踏み入れると、丁度外に出ていたリンが彼女たちの来訪に気づき、気安い様子で出迎える。

 

 

 

「その……大丈夫、なのか?」

 

 

 

 ……しかし、流石に見て見ぬふりができないものが一つ──否、四人。

 

 対策委員会に属するメンバーのうち、ホシノを除く後輩組四名がぐったりとした様子で地に伏せる様は、真っ先に死屍累々という言葉が思い浮かんでしまうような様相を呈していた。

 

 当然息はあるし、なんなら既に立ち上がっているものも居る。……見た目ほど怪我は負っていないのだろうか?揺らりと立ち上がった狼耳の生えた銀髪の少女──砂狼シロコは彼の背後から襲いかかった。

 

 

 

「隙あり「って、声出しちゃ奇襲の意味無いだろうが」──ッ!?」

 

 

 

 直後、リンは振り返ることなく……まるで後ろに目でも着いているかのように軽く身を屈めることでシロコの蹴撃を躱すと、そのまま時計回りに半回転し足払いを繰り出す。

 

 蹴撃を躱された直後で体勢の崩れてしまっていた彼女は、疲労が溜まっていたこともありこれを躱し切る事が出来ずに転倒………しかけたところで、受身をとって被害を最小限に抑えながら距離を取った。

 

 

 

「はぁ…はぁ……」

 

「うん、今のは悪くない動きだった。……ヒナたちも来た事だし、今日はここまでにしよう」

 

「……ん、ありがとうございました」

 

 

 

 シロコが一礼するのと同時に、残りのメンバーも立ち上がり……これまた彼女たちも、砂汚れは付いているものの目立った外傷はなく、同じように"ありがとうございました"と一礼し、汚れを落とすために校舎へと向かっていった。

 

 後輩たちを見送った彼は再びヒナたちへと視線を移す。

 

 

 

「悪いな、待たせちまって」

 

「気にしないで。……休憩は必要?」

 

「いや、必要ない。今日は銀鏡の事もあるし……5、10、5でどうだ?」

 

「それで……ううん、やっぱり5、10、10にしよう」

 

「ん、了解」

 

 

 

 口を開くや否や、突如として告げられた数字の羅列に首を傾げるイオリ。

 

 聞こうにも既にヒナはリンと共に校庭の中心へ向かって歩いていってしまった為聞くことが出来ず……"まぁ、後で聞けばいいか"とホシノたちの居る方へと歩いていく。

 

 

 

「やっほ〜、銀髪ツインテちゃん。いらっしゃ〜い」

 

「あ、うん、お邪魔します。……あと、私の名前は銀髪ツインテじゃなくて銀鏡イオリだから」

 

「おっとっと……ごめんねぇイオリちゃん」

 

 

 

 挨拶もそこそこに、彼女は再び校庭の中心部へと視線を移す。それにしても……

 

 

 

(──委員長があんなに入念にストレッチしてるの、初めて見たな)

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 シロコ達が戻ってきたタイミングで同時に身体を解し終えた二人は、約十メートル程の距離を開け──静寂の時が訪れる。

 

 互いに向き合いながら目を伏せるその様子は宛ら、瞑想をしている様にも見える。

 

 "一体何をしているのだろう"、"模擬戦をするって聞いてたけど、今はその前準備なのだろうか?"……彼女たちの疑問は、程なくして払拭されることとなる。

 

 閉ざされた目蓋がゆっくりと開かれる……ピンと張り詰めた空気に、"ごくり"と息を飲む音が聞こえてきた。

 

 

 ──否、自分が無意識のうちに息を飲んでいたのだと気付く。

 

 

 時間にすれば一秒にも満たない筈のそれは……ただ観戦しているだけのイオリたちですら、何十、何百秒とかかっているように錯覚を覚えてしまう。

 

 軈て完全に開かれたその眼。赤飛リンは空崎ヒナを、空崎ヒナは赤飛リンを静かに見据える。

 

 

 ──否、見据えるという言葉は正しくない。より正確に、今の状況を言葉として表現するのであれば──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「──ッ!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──赤飛リン(空崎ヒナ)は、空崎ヒナ(赤飛リン)の事しか見えて居ない、と表現するのが…最も正しいだろう。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 "ぶわり"と、二人を中心として風が吹く───気付けば二人は、校庭の中心部で互いの拳をぶつけ合っていた。

 

 開始の合図もなく唐突に始まったとはいえ……シロコたちは瞬きにも満たぬ一瞬どころか、瞬きなどせずほんの僅かな時間すら目を離していなかった。……にも関わらず、彼女たちは二人の動きを捉えることが出来なかった。

 

 十メートルもあったはずの互いの距離が一瞬にして詰められていたという事実を遅れながらにしてようやく認識した彼女たちは驚愕に目を見開く。

 

 

 ……そんな中で、二人だけ──ユメとホシノだけは普段通りの様子で会話していた。

 

 

 

「ユメ先輩〜、今のどうでした〜?」

 

「どっちも五分ピッタリだったよ!」

 

「おー!リン先輩は分かってたけど、風紀委員長ちゃんもなかなかやるねぇ」

 

 

 

 彼女たちの会話を耳にし、ようやく合点が行った。先程リン達が口にしていた数字は時間を表しており、"5"というのは模擬戦前の準備時間だということに。

 

 五分という数えるにはけして短くない時間を、ストレッチをしながらも正確に把握していたという時間感覚の精密さ故に、二人はなんの合図もなく互いに動き出すことが出来ていたという事実に目を丸くする。

 

 ……もし少しでもズレていようものなら、相手に先手を許すことになっていただろうということは想像に難くなかった。

 

 

 

「……ん、リン先輩のが進んでる距離が長い」

 

「えっ?……あ、ホントですね」

 

 

 

 横から聞こえてきた二年組の会話を耳にしたイオリは改めて二人の元の立ち位置と、拳を突き合わせている現在位置を確認する。……確かに見た感じだと、リンの方のが一メートル程前に出ているように見受けられる。

 

 その事実が示すところは、つまり──

 

 

 

「……まだまだ、上手くいかないわね」

 

 

 

 ──赤飛リンの方が、空崎ヒナよりも速いということに他ならない。

 

 

 

「いや、俺としては短期間でそこまで習得出来たことに驚きを隠せないんだけどな。……まぁ、流石はゲヘナ最強って言ったところか?」

 

 

 

 普段と変わらぬ無表情、しかし何処か眉を顰めているようにも見えるヒナと、そんな彼女に対して呆れと関心が入り交じったような笑みを浮かべるリン。

 

 二人はぶつけ合っていた拳を離すと、示し合わせたように揃って後ろへ飛び退く。

 

 体格差もあって一足早くリンの方が地に足を着けようかという、その瞬間──

 

 

 

「──それじゃ、始めようか」

 

 

 

 空崎ヒナは"バサリ"と翼を大きく広げ───大空へと羽ばたいた。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 風紀委員に属してからの三年間、数多の問題児たちを屠ってきた彼女の愛銃──"終幕:デストロイヤー"

 

 その銃口が、未だ宙に浮いたままの赤飛リンただ一人へと向けられ──直後、無数の銃弾を吐き出した。

 

 一つ一つが地面を抉り飛ばすような威力を持ちながらもそれがまるで雨霰の如き密度で迫り来るという、某温泉開発部の部長でなくとも思わず涙目になってしまう様な攻撃を前にして彼が取った行動は、防御でも迎撃でもなく────回避、であった。

 

 

 

「「「はぁ!?(えっ!?)」」」

 

 

 

 ……ただの回避であればそこまで驚くようなことではないかも知れない、しかし彼は未だ空中という逃げ場のない場所にいたにも関わらず、ヒナの銃撃を無傷で凌いでいた。

 

 

 ──何も無いはずの、空を蹴り離脱することによって。

 

 

 ただでさえ人がその身一つで空を飛ぶという、およそ理解の及ばぬ事象に対して、"まぁ、羽があるから空も飛べる……のかな?"と半ば無理やり納得させた矢先のまさかの回避方法に、観戦しているイオリたちの脳裏に宇宙が漂うのも無理からぬ事であった。

 

 一方、対峙するヒナは動ずることなくすくい上げるように銃弾をばら撒きながら嗾けるも──彼は再び、今度は回避しつつ右斜め下方向へと一直線に向かうように空を蹴り、着地。

 

 すかさずバックステップで距離を取るのと共に、背負っていたスナイパーライフルの銃口をヒナへと向けると──お返しと言わんばかりに一発の銃弾を撃ち放った。

 

 無意識に放つよりも多くの神秘が込められたそれは、直線軌道を描きながら今も尚空に鎮座するヒナへと向かっていく。

 

 

 ──もしあれが自分に直撃しようものなら、間違いなく無事では済まない。

 

 

 未だ神秘に対する理解度の低いイオリたちですら直感的に理解出来てしまうような一撃に対して、彼女は………一切の、回避行動を取る素振りすら見せなかった。

 

 

 

 ズガァンッ!!!

 

 

 

 直撃──凡そ人体を撃ち抜いたとは思えないような轟音が響くと共に、ヒナの身体が僅かに揺らぐ。

 

 思わず腰を上げてしまうイオリ……"カァン…"と乾いた音が彼女の耳朶を打つ。

 

 音の響いた箇所へと咄嗟に視線を移すと、そこには──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこまで出来るようになってるんだ。………うへ、ちょっと妬けちゃうな〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──弾頭が潰れ、拉げた銃弾がひとつ転がっていた。

 

 

 

「ホシノといいお前といい……硬すぎるだろ、まったく」

 

 

 

 ボソリと呟かれたリンの言葉を耳にした彼女たち。よくよく考えれば……今もなお空に佇む様子から、即座に察することは出来ただろう。

 

 見上げた視線の先に佇む空崎ヒナ───彼女は先の一撃を受けてもなお、傷一つ負ってはいなかった。

 

 

 

「……これで終わり?」

 

「なわけねぇ事くらい、お前が一番よく分かってんだろ?」

 

「そうね。……なら、続きといこう」

 

 

 

 言い終わるや否や、赤飛リンは地を駆ける(空崎ヒナは空を翔ける)

 

 

 

 ──二人の模擬戦は、まだ始まったばかり




神秘の込められた銃弾
⇒通常であれば、幾ら頑丈なヒナちゃんと言えども無傷で済むものでは無い。にも関わらず無事な理由は、勿論──
因みにヒナちゃんは、敢えて躱しませんでした。

※もちろんの事、ユメやホシノもまた無傷での対処が可能


感想や評価、ここ好きなどお待ちしています|´-`)チラッ


過去編の時の様に、設定集を作成予定です。
その際に記載する内容についてのアンケートを追加しました、お気軽に回答をお願いします。

当キヴォトスの先生は ※あくまでも参考程度です。必ずしも結果通りになるとは限りません。また、オネエ、姉御の場合はイオリの足は舐めません

  • オネエ
  • 姉御
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