小鳥遊ホシノの先輩   作:燐檎あめ

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久しぶりにウマ娘やってて投稿遅れました、申し訳ない。

総話数100話目、遂に三桁の大台に乗りました|´-`)チラッ


逃げるが勝ちという時もある

 震える手で銃を構えるゲーム開発部の視線の先に立つのは、ミレニアム最強と名高い美甘ネルその人である。

 

 

 

「よっ、久しぶりだな、先生」

 

「久しぶり、ネルちゃん。……見逃してくれたりしない?」

 

「そいつは出来ねぇ相談だな。……あとちゃん付けは辞めてくれ、あたしにはそういうの似合わねぇから」

 

「そう?可愛いと思うんだけど……」

 

 

 

 キヴォトスの住人と比べ遥かに脆い先生は、一切臆することなくゲーム開発部の前に立ち、ネルとの会話を取り持つ。……全ては、()()()()()()()()

 

 しかし当然ながら時間の経過というものは先生たちだけに有利に働くものではなく……追い立てる側であるネルたちにもまた、等しく味方をするものである。

 

 

 

「リーダー、流石にちょっとやりすぎなんじゃないか?」

 

 

 

 ……ただでさえ勝てる気がしない相手だというのに、追い打ちをかけるように他のC&Cのメンバーも続々と姿を現し始めた。

 

 

 

「大丈夫だろ、ギリギリとはいえあたしの攻撃に反応して防いでたしな」

 

「それは……本当ですか?遠目から見ていた私たちでも、捉えるのがやっとの速さだったと思うんですが……」

 

「んな嘘ついてどうすんだよ。それに──」

 

 

 

 ネルは近づいてくる他のメンバーを手で制すと、砂埃が立つ、未だアリスがいるであろう場所へと目を向ける。

 

 

 

「──あいつは、まだまだやる気みたいだしな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「魔力充電、100%──」

 

 瞬間、砂埃の奥底で光が点り──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──光よ!!」

 

 ──ネルへと向けて、一直線に解き放たれる。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 当たればネルとて無事では済まない、しかしただ真っ直ぐに飛んでくるだけの一撃など、彼女にとっては交わすことなど造作もない。……にも関わらず、彼女はあろうことか両手を前面に交差するように構え、真正面から受け止める体勢を取った。

 

 これには思わず、C&Cだけでなく追われていた側であるモモイたちも驚愕に目を見開く。……アリスの持つスーパーノヴァの一撃の威力を、彼女たちは幾度も目にして知っていたが故に。

 

 ……既に放たれた一撃を止めることは、誰にも出来はしなかった。

 

 

 

 ドカアアァァンッ!!!

 

 

 

 直撃──レールガンによる一撃は、轟音を立てネルを起点として爆発を引き起こす。……その威力は凄まじく、ただの余波ですらしっかりと踏ん張らないと立っていることもままならず、吹き飛ばされてしまいそうなほどの超火力。

 

 撃ち放った際の副次効果で吹き飛んだ砂埃の中から、所々傷を負いながらも堂々とした立ち姿で己が得物を構えるアリスが姿を現し──

 

 

 

「……やったか?」

 

「「いやそれこのタイミングで一番言っちゃいけないやつゥ!!」」

 

 

 

 ──彼女が口にした、あまりにも有名すぎるフラグに双子は反射的にツッコんだ。

 

 お陰で緊張は解けたが、楽観視もしていられない。……普通なら幾らフラグを立てたといえど、壁を容易くぶち抜く一撃が直撃したのならば戦闘不能になったと思っても仕方がない。

 

 ……にも関わらず、アリスを除いてこの場にいるものは誰一人として"これで終わり"とは微塵も思っていなかった。

 

 

 

「あ、当たる瞬間……見間違いじゃなければ、ね、ネル先輩は笑ってた……」

 

「私もこの目ではっきりと見た。……これで終わってくれてたならそれに越したことはないないと思うけど……」

 

 

 

 ゲーム開発部は爆煙から目を逸らさない。……目を離して逃げようとしたその瞬間、自分が床に這い蹲るビジョンが脳裏を過ぎって離れないから。

 

 ……そしてその認識は、決して間違ってはいなかった。

 

 幾度目かの風が吹き、爆煙が吹き飛ばされ……変わらず二本の足で立つネルの姿が顕となった。

 

 

 

「ふぅ……これでお互い一発ずつ、お相子だな」

 

 

 

 決して無傷という訳では無い。……しかし彼女の瞳に宿る闘志は全くもって衰えておらず、それどころかギラギラと滾っている始末であり……これには流石のアリスも思わずたじろいでしまう。

 

 いったい何が彼女をそこまで焚き付けるのか、彼女の目的は何なのか……気になった先生はネルへ問う。

 

 

 

「あたしの目的はただ一つ、C&Cに一発食らわせてくれたっていうそいつに興味がある……それだけだ」

 

「アリスにですか?……なるほど、理解しました」

 

「お、話が早いな。それzy「これは所謂、告白イベントと言うものですね!」………はっ?」

 

「そして先程の衝突は言わばフラグ建て、慌てて走ってきたチビメイド様がアリスとぶつかり合い、そこから恋に発展していく……スチル獲得です!」

 

「……でもごめんなさい、チビメイド様へのアリスの好感度が足りていないので告白は「ふっ、ふざけんなこの野郎っ!!」」

 

「誰がチビメイドだ!てか何であたしがフラれるみたいな流れになってんだ!?」

 

 

 

 全くもって予想だにしていなかった言葉にフリーズしていたネルであったが、流石に聞き逃すことが出来ず怒り心頭な様子で怒鳴り散らす。

 

 そのあまりの気迫に縮み上がるゲーム開発部の様子に、未だ怒りは収まりきらないながらも"このままでは一向に話が進まない"とネルは意識を切り替え話の方向性を元に戻すと改めて自身の目的を告げる。

 

 彼女の目的、それは端的に言うなれば──"あたしとタイマン張れや"と言うものであった。

 

 

 

「……改めて理解しました。つまり今から始まるのは、一騎打ちのイベント戦闘みたいなものですね」

 

「イベント戦闘……っつうのはよく分かんねぇが、そうだ。応じるならそれでよし、終わったら見逃してやる。……応じねぇなら鬼ごっこが再開するだけだ」

 

「……つまり、選択肢は実質ひとつ……という事ですね」

 

 

 

 アリスの問い掛けに対し……ネルは獰猛な笑みを浮かべる事で返答とする。

 

 ──覚悟は決まった

 

 両者は己が得物を構え臨戦態勢に、一触即発の雰囲気が漂う中で……"ガラッ"と瓦礫の崩れる音が響く……その直後──

 

 

 

「光よ!!」

 

 

 

 ──再びスーパーノヴァから放たれた一撃により、開戦の火蓋は切られたのであった。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 自身へ向けて迫り来る光の柱に対してネルは嗤いながら、自ら地を駆け距離を詰めると──スライディング、床と光の柱のほんの僅かな隙間を縫うようにして攻撃を躱す。

 

 勢いそのままにアリスの足元へと辿り着くと、右手側のSMGの銃口を突き付け掃射──銃弾の嵐がアリスへと襲いかかった。

 

 ……最大火力の一撃を放った直後の反動により回避することが出来なかったアリスは幾発かの弾丸を食らったあと、砲撃を終えたスーパーノヴァを前面に構え防ぎながら──

 

 

 

「はああっ!」

 

 

 

 ──自身の足元にいるネルへと振り下ろす。

 

 攻防一体、200kgの超重量とそれを容易く扱う膂力を持つアリスの一撃は、光の柱と同じく当たればただでは済まない。

 

 一手で戦況を覆しうる方法を選んだ彼女の選択を前に、ネルは冷静に地を蹴りアリスの左側へと移動し、振り下ろされるスーパーノヴァの軌道上から離脱する。

 

 

 

「ハハッ、やるじゃねぇか」

 

 

 

 あまりの威力に砕け散るミレニアムの床、それ程の威力で叩きつけられておきながらビクともしないエンジニア部の傑作、それを扱うアリスの力量……その全てに、ネルは"面白くなってきた"と言わんばかりに笑い、嗤う。

 

 

 

「……ま、その程度じゃあたしには勝てねぇけどな」

 

 

 ズガガガガガガァンッ!!!

 

 

「くぅっ……!」

 

 

 

 ……しかしそれは、あくまでも他と比べての話である。

 

 持ちえるものはどれも一級品で、扱う技量も悪くは無い。……選ぶ手段は悪くないがしかし、ミレニアム最強の名を恣にするネル相手では──

 

 

 

「──遅せぇよ」

 

 

 

 ──速さが、圧倒的に足りていなかった。

 

 どれだけ単発の威力が高かろうと当たらなければ意味が無いと言わんばかりに、ネルはアリスの攻撃を躱し、ダブルSMGによる質と量を兼ね備えた連撃を加えていく。

 

 誰の目にも明らかな程に一方的な状況、しかし当のネルは油断なくアリスを見据え目を離さない。

 

 

 

 美甘ネルの脳内辞書には、油断、慢心の文字は無い。

 

 ──例え力量差があろうとも食らいつき、覆してくる前例を知っているが故に……彼女は決して油断しない。

 

 

 

「てめぇの武器は確かに強い。だが引き金を引いた後、発射までにコンマ数秒の遅れがある。……その時間があれば、軌道を読んで躱すことは余裕でできる」

 

「その上、その強すぎる火力のせいで相手にある程度の距離まで入られたら撃つことも出来ねぇ。……爆圧に、てめぇ自身も巻き込まれちまうからな」

 

「咄嗟に武器を振るった判断は悪くなかったが……残念だったな」

 

 

 

「──この距離は、()()()()()()()だ」

 

 

 

「はぁ…はぁ……くっ……!」

 

 

 

 ……気付けばアリスは地に膝を着き、己へと銃口を突き付けてくるネルを見上げていた。

 

 誰の目にも勝敗は明らか、にも関わらず……ネルは両手に握るSMGの引き金に指を掛ける。

 

 

 

「リーダー!流石にこれ以上は……!」

 

「先生お願い!ネル先輩を止めてっ!」

 

 

 

 まだ勝負は終わっていないと言わんばかりのその行動に、ゲーム開発部だけでは無くC&Cのメンバーも"もう辞めるように"と声をかけるが……彼女は無言で佇み引き金から指を離すことはせず、そして先生もまた二人の事を黙って見つめていた。

 

 言ってダメなら実力行使に出るしかない。……止められるか分からないが、それでも行動しなければ取り返しのつかないことになりかねないとモモイ達が一歩踏み出そうとしたその瞬間───二人は同時に、口を開く。

 

 

 

 "──まだだ(まだ、終わってないよ)"……と

 

 

 

 二人は気付いていた。膝を付き、ネルを見上げるアリスの目を見て──彼女がまだ諦めていないのだということを……美甘ネルと先生だけが、気付いていた。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

(……強い)

 

 

 

 ……ただ一言、そう思う。

 

 戦う前から分かってはいた、それでも勇者の剣を抜いた(光の剣:スーパーノヴァを手にした)自分ならば幾らかやりようはあるだろうと、そう思っていた。

 

 しかし蓋を開けてみれば……最初の態と食らった一発以外、ただの一度も攻撃を当てられていなかった。

 

 ……火力さえあれば、どんな相手でも倒せると……そう、思っていた。

 

 

 

 ──ゲームならばそうかも知れないが、ここはフィクションではなくリアルである。

 

 

 

 ターン制のコマンドバトルとは訳が違う。相手は都度適切な行動を取ってくるし、余程の理由がない限り態々危険だと分かっている攻撃に当たってくれるほど馬鹿じゃない。

 

 攻撃の速度は、そう易々と上げれるものでは無い……ならば、このまま敗北を認めるのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 諦めるなど、冗談では無い。──自分は、勇者なのだから。

 

 絶望的な状況に置かれてもなお、勇者は決して諦めずに立ち上がるものだと……自分(アリス)は、モモイ達とゲームを通じて学んだのだから。

 

 故に、アリス(勇者)は──

 

 

 

「まだ、終わっていません!!」

 

 

 

 ──剣を手にして、立ち上がる。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 圧倒的に不利な状況において自身を見上げながらも啖呵を切って見せたアリスに対して、ネルは心底楽しそうに笑みを浮かべる。

 

 

 

「いい気迫だ、だがどうする?……依然として、あたしが有利である事には変わりねぇぞ」

 

「それにてめぇのその鈍重な武器じゃ、あたしに照準を定めることも出来ねぇ」

 

「……照準は、必要ありません」

 

 

 

 そういうや否や、アリスはスーパーノヴァの銃口を()()()()、引き金に手をかける。

 

 その不可解な行動に疑問が脳裏を過ぎり……すぐさま彼女の狙いを察したネルは目を見開いた。

 

 

 

「てめ、正気かッ!?」

 

「アリスは正気です!狙って当たらないのなら、全部纏めて吹き飛ばす──死なば諸共(メガ〇テ)です!」

 

「──光よ!!」

 

 

 

 ドカアアァァンッ!!!

 

 

 

 盛大に啖呵を切って起きながらのまさかの行動(自爆特攻)に一瞬動きが止まった隙をつき、アリスはスーパーノヴァによる一撃をミレニアムの床へと向けて撃ち込んだのであった。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 ──爆発が、二人を飲み込む。

 

 固唾を飲んで見守っていたモモイたちは驚愕と焦燥に目を見開き……直後、爆煙の中からボロボロになった状態で吹き飛ばされてきたアリスを受け止める。

 

 

 

「「「アリス(アリスちゃん)!!」」」

 

「隙は作りました、撤退を……くぅっ」

 

 

 

 一も二もなく頷くと、先生がアリスを背負い離脱する。もしかしたら追いかけてくるかもしれないと、モモイたちはアリスと先生を守る為にいつでも殿を務められるようにと震える手で銃を構えながら走り続け……

 

 

 

「……おって、こない……?」

 

 

 

 ……結局最後の最後まで出会すことはなく、C&Cから無事、逃げ果せたのであった。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 一方その頃──C&Cのメンバーもまた、爆発に巻き込まれたリーダー(ネル)を見て不安に駆られていた。

 

 ……ただし心配していたのは二年組(アカネとカリン)のみであり、ネルと同じ三年生のアスナは特に心配した素振りを見せておらず、"リーダー、大丈夫〜?"とまるで日常会話の様に緩い様子で爆煙の向こう側にいるであろうネルへと訊ねる始末。

 

 

 

「アスナ先輩、流石のリーダーでもあれだけの爆発に巻き込まれたら「ちったァ心配しやがれ」……あっ」

 

 

 

 "無事では済まないのではないか"……そんなカリンの心配は、爆煙の中から姿を現した当の本人の言葉によって遮られた。

 

 ……此度の戦いで彼女が受けた攻撃はたったの二発だけとはいえ、その両方が並の生徒で有れば一撃で戦闘不能に追いやられてもおかしくない様な高火力の一撃だった。

 

 事実、攻撃を受けたネルも()()()はボロボロになっているのだが……それでも一度目と変わらずに二本の足でしっかりと大地を踏みしめこちらに向かってくるその姿に、後輩たちは息を飲む。

 

 

 

「わーお、さっすがうちのリーダー!全然ピンピンしてるじゃん!」

 

「ったりめぇだろ、たった二発でくたばる様な柔な鍛え方してねぇよ」

 

「……まぁ、神秘操作で防御を固めなきゃ流石のあたしでもちと不味かったかもしれないけどな」

 

 

 

 "あんなもん作るなんて何考えてんだ、全く"……と、後頭部を掻きながらボヤく彼女のあまりの頑丈さに若干引きながらも、カリンとアカネは真面目に仕事をこなそうと自身の目にした情報を伝えた後、"ゲーム開発部を追いかけるか?"と問い掛ける。

 

 

 

「……いや、いい」

 

 ──対する返答は、否であった。

 

 

 

「あれ、でも最初に"戦いに応じなければ"って言ってませんでしたか?」

 

「ああ、言ったな……そして応じた。その上であのチビは一つの手として、戦いの中であたしから逃げ出す隙を生み出し逃げ切ったんだ。これで追いかけちまったらあたしが嘘ついたことになっちまうだろ?」

 

「目的は概ね達成した、リオがゲーム開発部に興味を持つ理由も分かったし……一通り暴れたら、スッキリしたしな」

 

 

 

 "だから、これで終いだ"と彼女は身体を解しながらゲーム開発部の逃げ出した方とは真逆の方へと歩みを進めると、そのまま仲間のそばを通り過ぎ──

 

 

 

「……思いっきり暴れたら腹減ったな。なぁ、ラーメンでも食いに行こうぜ」

 

 

 

 "カオナシの奴に美味いラーメン屋を聞いたんだ"──と、振り返りながら笑みを浮かべる。

 

 問われた三人は当然これを了承、ネルを先頭に四人は足並みを揃えながら帰路へと着いたのであった。




総話数100話目なのにオリ主が二話連続で出てこなかった……パヴァーヌはミレニアムメインなので仕方ないところは有るんですけどね。

次回でパヴァーヌ一章は終わり、その次は続けて二章を書くことになるかと思います。なんかエデンのが時系列的に先という話を聞いた事ありますが、本作ではパヴァーヌ二章が先です。


感想などなど、お待ちしております|´-`)チラッ

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