小鳥遊ホシノの先輩   作:燐檎あめ

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パヴァーヌ編第二章の始まりです


密かなる会談

 ゲーム開発部の存続が決定してからしばらく経ったある日の事……ミレニアムサイエンススクールのモニター以外の明かりが灯らぬ暗い一室にて、四名の人物が一堂に会していた。

 

 

 

「あら……超天才清楚系病弱美少女の来訪を、電気もつけずに迎えるなんて。来客をもてなす気がこれっぽっちもないという点、とても貴女らしいとは思いますけれど……」

 

「暗い部屋でモニターをつけていると、目が悪くなりますよ?」

 

 ──"リオ"

 

「……万全を期しているだけよ。……この会談を外部に知られてはならないもの」

 

 

 

 うち二人、暗闇の中で目立つ真っ白で華奢な体付きの女生徒"明星ヒマリ"と、暗闇に溶け込むような真っ黒でメリハリのある体付きの女生徒"調月リオ"。

 

 見た目も性格も……良くも悪くも対象的な二人の間には、剣呑な空気が漂っていた。

 

 

 

「……人目を気にするのであれば、他の場所にすればよかったのでは?例えば、そう……誰かさんがこっそり作っている──」

 

「──セーフハウス、とか」

 

「………」

 

 

 

 押し黙るリオの様子に、ヒマリは"やはりアレはあまり人に知られたくないもののようですね"……と、揶揄うように小さく笑みを浮かべる。

 

 "さて、彼女はいったいどう返してくるのでしょうか"と返しの言葉を脳裏で思い浮かべるヒマリに対し……リオが告げた言葉は、ある種予想外なものであった。

 

 

 

「……失念してたわ」

 

「…………はいっ?」

 

 

 

 "失念していた"……話を逸らすのではなくそう返ってくるのは流石のヒマリでも予想外だったのか、思わず惚けた声を漏らしてしまう。

 

 

 

「えっ、と……隠したり、とかは……?」

 

「……既に貴女が知っているということは調べが着いていたわ。……なら、態々隠す必要も無いでしょう?」

 

「………はぁ、何だか調子が狂いますね。……過ぎたことは仕方が無いですし、早速本題に入りましょうか」

 

 

 

 "私も暇では無いので"と話の続きを促すヒマリに対し、リオは頷くと……此度の会談の本題へと話題を移す。

 

 

 

「まず、お互いの認識の擦り合わせを。……前回、"鏡"を巡ってミレニアム生が起こした一連の騒動……それは、私たちが共にしかけたことだったわね」

 

「ええ、私が"鏡"という手段を用意し、リオが"C&C"という危機を用意する……珍しく、一つの目的のために貴女と私が協力した事でした」

 

 

 

 ──"全ては、アリスの正体を解き明かすために"

 

 

 

 ヒマリの言葉に、リオは頷き肯定する。……そう、ゲーム開発部がエンジニア部とヴェリタスの協力の元、セミナーとC&Cの防衛網を突破する為に試行錯誤していたあの日の戦いは──全てはアリスの正体を解き明かすために二人の天才が用意した、ただの舞台だったのだ。

 

 ……ただし、美甘ネルが想定よりも早く戻ってくるのは、流石に少し予想外ではあったのだが。

 

 

 

「リンさんも同行させるのは……少し、やり過ぎだったかも知れませんね」

 

「……ええ、そうね」

 

 

 

 思い出すのはあの日、ネルから連絡を受け取った時のこと……まさかゲーム開発部とC&Cが接触してから数十分ほどで、"正体不明のロボットの鹵獲及び殲滅が完了した"という連絡が来るとは思わず……その時二人の天才は柄にもなく、揃って冷や汗を流したものだ。

 

 報酬としてクレジットを送り、昼食を促す事で二人の帰還を遅らせたりしたことで何とかネルとゲーム開発部が戦うという未来を避ける事が出来た時……リオとヒマリは揃って、安堵の息を吐いていた。

 

 

 

「……話を戻しましょう。あれから随分と経つけれど……解釈の結論は出たかしら?」

 

「もちろんです。……アリスの正体、それは無名の司祭が崇拝する"オーパーツ"であり──」

 

「──遥か昔の記録に存在する」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

名も無き神々の王女

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……どうやら、同じ解釈になったようね」

 

「ええ、そのようです。……つまり、アリスは──」

 

 

 

 ……互いの見解が一致している事を確認したリオとヒマリは頷くと、口を揃えてアリスの本質を告げる。

 

 

 ──"世界を終焉に導く兵器(かわいい後輩ですよね♪)"……と

 

 

 

「……?」

 

「……あら」

 

 

 

 リオとヒマリの至った結論は……まるで二人の関係性を表すように、対極に位置するものであった。

 

 ──眉を顰める二人の間に、険悪な空気が立ちこめる。

 

 互いに実力は認めている、故に(ヒマリは)不承不承ながらも同盟を結ぶ(休戦する)事に同意していたが……やはり二人は、水と油の様に相容れない存在らしい。

 

 

 

(少しはマシになったと思っていましたが……やはり本質は変わらないようですね)

 

「では、これで休戦は終わり……ということになるのでしょうか?」

 

「そうね……いえ、その前に──」

 

 

 

 ──"同盟者の意見も聞いてみましょうか"

 

 

 

 リオとヒマリの視線が、この間にいる残り二名の内の一人……調月リオと同盟を結んだ"カオナシ"こと──アビドス対策委員会の"赤飛リン"へと向けられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ん?」

 

 ──視線の先の彼は、肩肘を付きながらわらび餅を食べていた。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「……何を、しているのかしら」

 

「何って……見ての通り、わらび餅食ってるけど」

 

 

 

 爪楊枝でわらび餅を一つ取り出し、きな粉を付けて口の中に放り込む。洋菓子とはまた違う、優しい甘さに舌鼓を打つ彼の様子を無言で見つめるリオは……

 

 

「……トキ」

 

 

 ……と、最後の一人であり、C&Cの五番目のエージェント──"飛鳥馬トキ"の名を呼んだ。

 

 自身の名を呼ばれた彼女は小さく頷くと、今も尚わらび餅を摘んでいるリンの元へと真っ直ぐに歩みを進め……彼の前で立ち止まると、両手を前に突き出した。

 

 

 

「リンさん」

 

「ん?……おお」

 

 

 

 リンはトキの手と顔を交互に見比べ……得心がいったように頷くと、()()()を手渡す。受け取った彼女は"ありがとうございます"と一礼するとリオの元へと戻り───

 

 

 

「貰ってきました」

 

 

 

 ──わらび餅の入ったパックを差し出した。

 

 無表情なドヤ顔を見せるという器用な事をするトキと、差し出されたわらび餅に何とも言えない表情を見せるリオ。……その様子があまりにも可笑しくて、ヒマリは思わず笑ってしまう。

 

 

 

「ふっ、ふふふふふふっ…っ……っ!」

 

「………ありがとう、トキ。……でも、そうじゃないの」

 

「む、違いまひたか……モッキュモッキュ」

 

 

 

 貰ってきましたと言っておきながら、いつの間にやら自分でパックを開けて食べ始めてしまっている彼女の自由さに、リオは頭を悩ませるように眉間に手を当てる。……ヒマリは笑い過ぎて息も絶え絶えとなっていた。

 

 

 

「っ!……っっ!」

 

「……リンさん、同盟者である貴方に……二パック目に手を付けるのは後にしてちょうだい」

 

「りょーかい。……ま、話は聞いてたから何となく何を聞きたいのかは分かってるけど」

 

 

 

 "アリスの事だろ?"と確認の意味を込めて告げられた言葉に対してリオが首肯したことを確認すると……リンは、自身のアリスに対する見解を述べる。

 

 ……現在はリオとヒマリが対立している状態であり、彼の返答次第でこの場における勢力バランスがどちらかに傾く事は明白。その為先程まで笑いこけていたヒマリも"聞き逃すわけにはいきませんね"と呼吸を何とか整えながら意識を向け──

 

 

 

「……二人はアリスが兵器なのか、それともただの可愛い後輩なのかで揉めてたみたいだけど──」

 

 ──"アリスは、アリスだろ?"

 

「別に、無理に区別をつける必要なんて無いと俺は思うけどな」

 

「「………!」」

 

 

 

 ──告げられた第三の意見に、リオとヒマリは僅かに目を見開いた。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 "アリスはアリス"……一聞すればヒマリ側に近しい意見にも聞こえるが……後に続いた言葉からしてそれは違うのだろうと二人は察する。

 

 

 

「今のアリスに関してだけ言えばヒマリの言う通りだと思う。……だけど、アリスが世界を滅ぼしうる可能性を秘めているという事実は、リオの言う通り間違いなく存在する」

 

「折角、この場に二人の天才が揃ってんだ。……だから、"アリスはこうだからこうすべき"って決めつけて行動するんじゃなくて、どっちに転んでも良いように準備しておけばいいんじゃないかってのが、俺の意見だな」

 

「貴方の意見には一理あるわ。……でも、それでもし誰かのヘイローが破壊されるようなことが「そうならないようにする為の同盟だろ?」」

 

「いくら頭が良くても、一人でできることなんてたかが知れてるんだからさ……もうちょっと周りを頼れよ。……つかそもそも──」

 

 

 

 ──"リオも別に、アリスのヘイローを破壊したいわけじゃないんだろ?"

 

「……っ」

 

 

 

 調月リオは押し黙る……まさに、彼の言う通りだから。

 

 自分とて、アリスのヘイローを破壊せずに済むならそれに越したことはないと思ってる……しかし放置した結果、より多くの人が傷付くようなことがあってはならない。

 

 そうした迷いと葛藤が視野を狭め……気付けば"大多数の平和の為にも、アリスのヘイローを破壊しなければならない"と、無意識のうちに決めつけかけてしまっていた。

 

 ……全部の責任を自分一人で背負えば良いと、そう思ってしまっていた。

 

 リオは今も尚そばに立ってわらび餅を摘んでいる、自身の専属メイドへと目を向け──視線に気づいた彼女は食べる手を止め、コクリと頷く。

 

 ……どうやら自分は、少し焦り過ぎていたらしい。

 

 

 

「そうね……でも、一人で背負い込もうとしていた貴方にだけは言われたくないわ」

 

「……人生の先輩が失敗から学んだ教訓だ、野暮な事言わずに大人しく受け取っとけ」

 

「貴方と私は1つしか変わらないじゃない」

 

「…………」

 

 

 

 意趣返しに放った言葉はどうやら効果覿面だったらしく……リンは不貞腐れたようにそっぽを向きながら、二パック目に手を付けるのであった。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 会談が終わり、リンがアビドスに帰るために退室しようとしたその時……リオは彼を呼び止め、一つの問いを投げ掛けた。

 

 

 

「一つ、聞いてもいいかしら」

 

「……まぁ、答えれる範囲なら」

 

「感謝するわ。……もしアリスが暴走して、総ての手を尽くしても止まらず、ヘイローを破壊する以外の手段が無くなった時──」

 

 

 

 ──"貴方は、何方の味方に着くの?"

 

 

 

 焦る気持ちは抑えられたとはいえ、それでもはっきりとさせておかなければいけない事もある。そんな思いで告げられた問いに、リンは特に悩んだ素振りもなく答えると……部屋を、あとにするのであった。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「んなもん聞くまでもないだろ」

 

「もし本当にアリスが暴走して、キヴォトスを……アビドスを害す存在になって、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──俺が、アリスのヘイローを壊す

 

「……それが、俺とお前の結んだ同盟だからな」




「……私、最後の方空気じゃありませんでした?」


ヒマリ
⇒原作と違い、この時点でリオに拘束されていない。


わらび餅
⇒実はアビドス過去編書いてる時からずっと書こうと思ってた。当初の予定では、トキがリンの両頬を掴み顔を近づけ……逃げられなくした状態でフッと息を吹き掛けて思いっ切りきな粉を撒き散らしてリンをきな粉まみれにし、その隙にしれっと奪わせる予定だった。けど、なんか気付いたら普通に貰ってパクパクしてた。


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