小鳥遊ホシノの先輩   作:燐檎あめ

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小説投稿を始めてから一年が経ちました。……二週間前に



天童アリスは魔王である

 ──天童アリスは魔王である。

 

 そう告げられた先生は困惑し、仲間を侮辱されたと感じたミドリは激昂する。

 

 

 

「またそんな設定を……どうしてそんな事を言うんですか!?……いったい、何を企んでるんですかッ!!」

 

「企んでなどいないわ。……貴方たちも実際に目にしたでしょう?」

 

 

 

 ──不可解な軍隊(Divi:sion)とアリスが接触した事で、何が起きたのかを

 

 

 

 ……彼女は先程、アリスのことを"不可解な軍隊(Divi:sion)の指揮官"と言っていた。そして今の"接触した事で"という言葉……もしや不可解な軍隊(Divi:sion)というのは、あの奇怪なロボットの事を指しているのだろうか。

 

 そんな先生の問いに、リオは頷き肯定し……そしておもむろに、彼女は先生、そしてゲーム開発部へと頭を下げた。

 

 

 

「本来、あんな事になる予定ではなかったのだけれど……完全にこちらのミスよ」

 

「C&CとAMASを通じて、同盟者の手も借りて全部追跡したと思っていたのに……まさか、監視網を掻い潜った個体がいたなんて」

 

「それは完全に私の不手際によるもの。謝罪をここに」

 

「……えっ?謝罪?会長が!?」

 

 

 

 先程までアリスに対して魔王だのなんだのと言っていたあのリオが謝罪した事に、ミドリは思わず驚きの声を上げる。……しかしそれも一瞬の事、"でも"と顔を上げたリオは……やはり変わらず、冷徹な眼差しでアリスを見ていた。

 

 

 

「でも──そのお陰で、私の仮説は証明された」

 

「貴方たちが接触したソレは廃墟から溢れ出した"災禍"」

 

「ミレニアムに……ひいては、キヴォトス全土に終焉をもたらす悪夢」

 

「そして、アリスの存在が"廃墟"からヤツらを呼び寄せているという事が証明された」

 

 

 

 今回は運良く、壊れかけの個体と接触するに留まったが……次もそうなるとは限らない。……否、確率で言えば、万全の個体……それも、何十、下手をすれば何百といった数のロボットと対峙することになる可能性のが遥かに高いだろう。

 

 故に……アリスは()()()()()()()()()()()()()、リオは告げる。

 

 

 

「そん…な……アリスはただ……勇者に………みんなと一緒に、ゲームを……。クエストを、したかった……それだけなのに……」

 

「……それは不可能よ。貴女がここにいるだけで、より多くの人が傷つくことになるのだから。……それは、貴方自身が一番よく理解しているはずよ」

 

「……まだ理解できないというのなら、はっきりと言ってあげるわ」

 

 

 

 リオは先生の後ろにいるアリスを……アリスだけを見て──彼女が無意識のうちに目を逸らしていた事を、直視させる。

 

 

 

「貴方は先程、自分の事を勇者と呼んでいたけれど──」

 

 ──友人に剣を向ける()()()()()、決して勇者ではないわ

 

「……ッ!!」

 

「アリスちゃん!聞かなくていい!生徒会長が変わり者だとは聞いていたけど、こんな人だとは思わなかった……!」

 

 

 

 "勇者ではない"……そう告げられたアリスの表情は悲痛に歪むだけで……ミドリが自分の為に激昂してくれている最中であっても、何も言い返すことができなかった。

 

 

 ……アリス自身が、リオの言葉に納得してしまっていたが故に。

 

 

 (モモイ)に剣を向けるだなんて、勇者のやることでは無い……寧ろ───悪役のやる事だと……そう、アリス自身が思ってしまっていたが故に、彼女は何も言い返せなかった。

 

 なら……ならばどうすればいいと言うのだろうか。仲間(モモイ)を傷付け、最早勇者足り得なくなった自分は、いったいどうすれば……

 

 

 

「どうすれば、ね……先程も伝えたように、貴方がここに居ることで先の事件は起きている。ならば、あとは簡単でしょう?」

 

「危険なものは、安全な場所に隔離して周りに被害が及ばないようにしてから解体すれば良い。……そうね、分かりやすく言い換えるなら──」

 

 

 

 ──アリスのヘイローを、破壊すれば解決するわ

 

 

 

「「……ッ!?!?」」

 

「……ヘイローの、破壊?」

 

 

 

 今このタイミングで告げられた"ヘイローの破壊"という言葉。

 

 外の世界から訪れた先生はヘイローがないが故に直ぐにピンとくることは無かったが、キヴォトスに住まう生徒であるミドリとユズの反応、そして先の"爆弾を解体する"という言葉からして、"ヘイローの破壊"というものが良くない事であることは理解出来た。

 

 そうして思考を巡らせる事約一秒……ある一つの答えにたどり着いた先生は、普段の優しげな表情とは一転、険しい表情を見せながらリオを見る。

 

 

 

「リオ、それは駄目だよ。……それだけは、絶対にやっちゃいけない」

 

「普通ならそうかもしれないわね。……でも、彼女は普通の生徒ではない。実際に目にした貴方なら気づいている筈よ」

 

「生徒では無い、機械である筈の彼女がヘイローを持っている……それは、あのアビドスに現れた機蛇と同じであると」

 

「同じじゃないよ。アリスちゃんには心がある、感情がある。新しいものに目を輝かせて、みんなと共有して、遊んで、楽しんで……誰かを思いやる、優しい心がアリスちゃんにはある」

 

「それはただ、周囲の環境からラーニングしたに過ぎないわ。それに、仮に心があったとしても、実害が出ているという事実が消えることは無いわ」

 

「そうだね、過去は変えられない。……でも、人だって同じように間違えて、周囲の環境、物、人から色んなことを学んで成長していくんだよ」

 

 

 

 ……リオと先生の会話は平行線のまま、交わる事はなかった。……一を切捨て確実に九を救おうとするリオと、如何な壁も乗り越え十を救おうとする先生の意見が交わる事など、あろう筈がなかった。

 

 どれだけ会話を重ねようと互いの意見が食い違うのならば……後に残されるのはもう───実力行使のみ。

 

 

 

「──ネル」

 

 

 

 リオが一言、先生たちにとっても既知の女生徒の名を呼ぶと……呼応するように部室の扉を潜り、C&Cの"美甘ネル"が姿を現した。

 

 ……このタイミングで美甘ネルという最強のカードを切られたことに対し、先生たちは苦い表情を見せる。

 

 いくら類稀なる指揮能力を持つ先生と言えども……たとえ先生の指揮を受けたゲーム開発部(ミドリとユズ)であっても、そこまで戦闘に慣れている訳では無い二人しかいない状況で、ミレニアム最強の彼女に勝てると思えるほど楽観視は出来なかった。

 

 ……それでも、戦わなければならない。

 

 たとえネルが相手であっても、一帯をAMASに掌握されていたとしても……戦わなければ、訳も分からないまま大切な仲間(アリス)を奪われてしまうから。……それだけは、看過出来なかった。

 

 

 

「「アリスちゃんは、渡さない……!」」

 

 

 

 震える手を無理やりに押さえつけ、ミドリとユズはアリスの前に立ちながら……ネルに向けて銃口を向ける。

 

 対するネルは、彼女たちの事をじっと見つめると、徐に"ふっ"と小さく笑い声を零し──直後、右手側のSMGを持ち上げ引き金を引く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……どういうつもりかしら」

 

 ──直属の上司であるはずの、リオに向けて。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 咄嗟にリオを庇うようにAMASが前に出たことで銃弾が届くことこそ無かったものの……明確な離反の意を示すネルの行動に、ミドリたちは目を見開き、リオは眉を顰める。

 

 

 

「見て分からねぇか?……てめぇの依頼にこれ以上付き合うつもりはねぇって言ってんだよ」

 

「同じ学園の生徒を……それも、何も分かってねぇ奴を誘拐しろだなんて、そんな依頼をあたしが黙々と熟すって本気で思ってんのか」

 

 

 

 直属の上司だろうと関係ない、気に入らないものは気に入らない……だから、命令を聞くつもりは無い。

 

 自らの意志に従い、先生たちの側に立つ事を明言した彼女に対し……リオは、首を横に振った。

 

 

 

「……いいえ、貴方ならきっと、彼女たちの側に立つと思っていたわ」

 

「………は?」

 

 

 

 裏切ることを予見していながら自分を呼んだというリオの言動に、ネルの脳裏に疑問符が浮かび上がる。

 

 ならば何故呼んだのかと問えば、返ってきたのは"ネルの立場をはっきりとさせるため"だと、リオは言う。

 

 

 

「大切な局面でそちら側に着かれたら厄介だもの、なら、こういった事は初めにはっきりとさせておくべきでしょう?」

 

「そうかよ。……で?んな事の為にあたしを呼んで、あのチビを連れて行けると思ってんのかよ」

 

「ええ、何も問題ないわ。……言ったでしょう?」

 

 

 

 ──"貴方がそちら側に着くことは、予測済みだと"

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 瞬間、ネルの背後に突如として現れた一つの人影。先生が"危ない!"と声をかけるのと時を同じくして、危険を感じ取った彼女は防御姿勢を取りながら振り返り──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 パァン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──響く柏手の音と共に、忽然とその姿を消した。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 突如として姿を消してしまったネルに、驚愕を露わにするゲーム開発部と先生は……直後に視界に捉えたある人物の姿に、大きく目を見開いた。

 

 

 

「……うそ」

 

「そん、な……っ」

 

 

 

 なぜ、ここに居るのか……どうして、()()()()()()()()()()()()

 

 ──廃部を阻止する為に、先生と共に力を貸してくれていたはずの()が、何故アリスを攫おうとする側に立っているのか。

 

 理解が追いつかないミドリとユズを置いて……アリスは、言の葉を紡ぐ。……彼女たちの視線の先には──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……おにい、さま?」

 

 

 

 ──赤飛リン(カオナシ)の姿が、映っていた。




過去編でリオと同盟を結んだ時点で、こうなる事は確定していました。

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