小鳥遊ホシノの先輩   作:燐檎あめ

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連続低評価でオレンジになっちゃった(´ω`)

※後書きにアンケートを用意してあるので、良かったら答えていってください|´-`)チラッ


アリス奪還作戦-開始-

 アリスが連れて行かれてから、三日の時が経ち──

 

 

「それじゃあ、行こうか」

 

 

 ──先生たちは仲間(生徒)を取り戻すために、要塞都市エリドゥへと足を踏み入れる。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

【……何も来ないね。もしかして、アリスを返す気になってくれたのかな?】

 

 

 ほんの一分前にモモイが呟いた一言である。

 

 

「フラグ回収早すぎるってお姉ちゃん!!!」

 

「ごめーん!!!」

 

 

 たった今、ミドリとモモイが叫んだ一言である。

 

 

 ……会話内容から大方の予想はつくだろう。

 

 アリス奪還の為に、敵陣であるエリドゥへと踏み込んだ彼女たちは今、リオの作成したAMASに追いかけられていた。その数は──優に100を超える。

 

 いくら先生の指揮があるとはいえ、トラップ等を仕掛けることが出来ない攻め込む側の、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()相手取れる数ではない。

 

 

「ユズちゃんっ!」

 

「は、はいっ……!」

 

 

 勿論ただ追いかけられている訳ではなく、今のように広範囲爆撃等で少しでも追手の数を減らそうと試みたりもしているのだが……

 

 

「ま、また補充されたー!?」

 

 

 ……まるでわんこそばの様に減らした傍から補充されてしまうため、止まって迎撃するのは愚策、終わりの予想できない膨大な数に押し潰されて時間切れになってしまうと即座に判断し、こうして逃げ続けているという訳であった。

 

 まぁ……

 

 

(……ちゃんと、こっちに意識を向けてくれてるみたいだね)

 

 

 ──ここまで全て、作戦通りではあるのだが。

 

 

(相手の戦力は未知数。特記戦力については判明してるけど、逆に言っちゃえば特記戦力についてしか分からない)

 

(AMAS……リオが作成したっていう対デカグラマトン用のドローンの数は、アビドスでの決戦時に持ち出してくれたものだけでも相当数あった。……ビナーの攻撃でかなりの数が破壊されてはいたけど、だからといって残り少ないのかといえばそんな事は絶対に有り得ない)

 

 

 ここは言ってしまえばリオのホームグラウンドである。ビナー戦以上の……いや、比べ物にならない数の、それこそ万を超える数のAMASが配備されていると過程した上で行動すべきだと、先生は考えていた。

 

 

(リオ達にとって、最も警戒すべきこちらの戦力はネルだ。ネルの姿が……それどころか、エンジニア部やヴェリタスの皆の姿がまだ見えない今、ただ逃げ続けるだけの私とゲーム開発部だけに全戦力を差し向けるなんて、"非合理"な真似はしない。……いや、出来ないって言った方が正しいかな)

 

 

 此度の奪還作戦実行組の中で、アリスと最も近しいゲーム開発部は重要な立ち位置にいるが……こと戦闘面の脅威度で言えば、当然ながらネル率いるC&Cには遠く及ばない。……言い換えれば、ゲーム開発部にはネル程の脅威度がない。

 

 故に、いざ現れた時にすぐさま対応できるよう──

 

 

 ──戦力を、控えさせておかなければならない(常に、警戒しておく必要がある)

 

 

(エリドゥは、要塞都市って言うだけあって面積自体はかなり広いけど、建造物が多くて高いところから一望できるほど見晴らしは良くない。だから、恐らくモニターとかで私達のことも監視してるんだろうけど……それはつまり、いつ他の皆が現れるか分からない現状で、私たちに意識を割きつつ無数のモニターに目を向けて常に気を張ってなくちゃいけないって事になる)

 

 

 そうなれば当然、監視する者の疲労は溜まっていく一方である。ならば監視役を適宜交代すれば良いだろうと、普通なら考えられるのだが……こと今回に至っては、その法則は当てはまらない。

 

 

(AMASがある以上、純粋な戦闘における数の有利を覆すことは出来ないけど……AMASがどれだけあっても、向こうはリオとリンくんとトキちゃんの三人しかいないって言う事実は変わらない)

 

 

 リンとトキは当然ながら現場でこそ力を発揮する為、こちらの迎撃の為に控えておかなければならず……そうなれば必然、全体の監視を行えるのはリオしか残らない。

 

 ……疲労は溜まれど警戒をとくことは出来ず、逃げ続けるだけの先生たち相手とはいえ、監視を辞めることも出来ない。また他の生徒たちが姿を現す前に捕らえる為に追手の数を増やそうにも……道幅には限りがあるため、そもそもこれ以上増やせない。

 

 

(──そうやって、"時間を稼ぐ")

 

 

 タイムリミットをかけられてる側が時間を稼ぐだなんてと思うだろう。……普通なら、考えない。

 

 ──その常識を、逆手に取る。

 

 

(私たちがこうして意識を引きつつ逃げ続ければ、その分皆が"準備をする"時間が増える)

 

(タイムリミットはある、時間はそう長くはかけられないけど……でもだからといって、焦って行動して全部台無しになるのは論外。……出来うる限りの準備を整えて、一気に盤面をひっくり返す)

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

『先生!エンジニア部とヴェリタスの皆さんの準備が完了したとの連絡がユウカさんより届きました!』

 

 

 ──先生にしか聞こえぬアロナの声が、耳朶を打つ。同時に先生は、先日ある"匿名の協力者"から送られてきたエリドゥの地図を再度脳内で描き、違和感のないように時折回り道をしながらゲーム開発部と共に走り続け……視界が開く。

 

 

「……っ!」

 

 

 ビル群から抜け出し、広場へと足を踏み入れた先生たちの目に映るは……数百、ともすれば千にも届くAMASの大群。圧倒的ですら生ぬるい、絶望的なまでの戦力差を前に先生たちは──

 

 

「作戦、通り……ッ!」

 

 

 ──冷や汗をかきながらも、笑っていた。

 

 

「ウタハちゃん!!!」

 

「──大きな声を出さずとも聞こえているさ」

 

 

 この場にいないはずの第三者の名を呼ぶと、間髪入れずにその者は虚空から姿を現し──右の手に握り締めたリモコンをAMASの軍勢へと向け、ポチッとスイッチを押した。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「……これは、まさか」

 

 

 無数のモニターを前に佇むその生徒は、ポツリと声を漏らす。彼女の視線の先、モニターに映る無数のAMAS……その約半数が──

 

 

「……命令(コード)を、書き換えられた?」

 

 

 ──味方であるはずの他のAMASを陣形の外側へと押しのけ、彼女──調月リオの座すビルへと続く、一本道を作り出していた。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「うーん……流石に全部上書きするのは無理だったか」

 

「うん……まだまだ、改良が必要」

 

「いやいや十分だって!これでアリスのところにまっすぐに迎えるんだし!」

 

 

 ウタハと、彼女と同じく()()()()姿()()()()()ハレは、眼の前の光景に納得がいかずに眉を潜める。……()()()()()()()()()を握りしめているようにも見える彼女たちの目元には、薄っすらと隈ができていた。

 

 

「ごめんねみんな、無理させちゃって……」

 

「いやなに、先生が謝る必要はないさ。二徹三徹くらい普段からしているし……ついでとはいえ、この光学迷彩布が実戦でも効果があることがわかったからね、わたしたちとしてはむしろ感謝したいくらいだ」

 

「……普段はちゃんと寝ようね?」

 

 

 苦笑する先生に対し、笑みでもって返すウタハ。……何はともあれ、彼女たちのおかげで道は開かれ、更には数の利を覆す……とまではいかないが、少なくとも対抗できるくらいにはできた。

 

 この場の広さ的にもこれ以上のAMASを投入するのは難しいだろうが……いつ制御権を奪い返されるかわからないため急いで行動した方が良いだろうと、先生が指示を出そうとした……その時

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──チェックメイトです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──音もなく、アビ・エシュフ(飛鳥馬トキ)が目の前に姿を現した。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 迫る機腕、キヴォトスの住民と比べれば遥かに脆い先生に当たれば一溜りもないであろうソレを前にして、先生は……否、この場にいる殆どの人間が動くことが出来ず、驚愕や焦燥の入り交じった声を上げることしか出来なかった。

 

 ……響く焦燥の声音、その数はこの場にいる生徒の数よりも多かった。

 

 

「見つけました」

 

 

 瞬間、先生に迫っていた筈の"死の気配"は霧散し、代わりにこの場にいる全員が──今も尚姿を隠していた筈の者を含めた全ての生徒が、宙を舞う。

 

 その光景を前に、一人無事だった先生は悟り、歯噛みする。──"自身を餌に、他のみんなが釣り出された"、と。

 

 彼女は、否、彼女たちは気付いていたのだろう。……ウタハやハレだけではない、他のエンジニア部やヴェリタスのメンバー……そしてC&Cが、奇襲のために姿を隠していたことを、確信していたのだろう。

 

 故に、奪還組で最も脆く、それでいて要となる先生を落とす"フリ"をして、隠れている生徒たちの位置を炙り出したのだ。

 

 ……だが

 

 

「……?」

 

 

 この場にいる生徒は、此度の作戦に参加している全ての生徒ではなかった。

 

 撃たれ、殴り飛ばされた生徒の中に──美甘ネルの姿は、何処にも無かった。

 

 

(……ネル先輩がいない?一体どこに……?)

 

 

 他の生徒よりも素早く立て直して攻めてくるアスナを筆頭としたC&Cの攻撃を、まるで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、トキは周囲を警戒する。

 

 いなし、躱し、迎撃し──死角から迫り来る、朱色の襲撃者を捉えた。

 

 

「「──ッ!?」」

 

 

 ぶつかり合う両者は、互いに息を飲む。……飛鳥馬トキは、襲撃者の攻撃の、"予想外の重さ"に。

 

 襲撃者──C&Cリーダーの美甘ネルは、ガラにもなく仕掛けた死角からの不意打ちすらも、防がれた事に。

 

 ほんの一瞬の拮抗の後……二人は弾かれたように、距離を取った。

 

 

「……不意打ちは卑怯じゃないですか?ネル先輩」

 

「チビ共の所に戻ろうとしたあたしに対して奇襲してきたお前が言えたことかよ」

 

「……それもそうですね。では、これでチャラということにしてあげましょう」

 

「どの立場からモノ言ってんだてめぇは」

 

 

 両者ともに警戒を緩めることなく、互いを見据え……しかし、動かない。

 

 そんな一触即発の状況下に置いて、ネルは徐に"先生"と声を掛ける。

 

 

「前に言った通りだ、こいつの相手はあたしがする。……だから先生たちは、さっさとこの場から離脱してあのチビを助けに行け」

 

「……私が、行かせるとでも?」

 

 

 トキの言葉に、ネルは嗤う。

 

 

「全員を相手にして勝てるって、()()()()()()()()()()()?」

 

 

 ネルの言葉に、トキは眉を顰め……小さく、ため息をついた。

 

 

「……いいえ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……あぁ?」

 

 

 含みのある言い方、まるで"ネルだけなら勝てる"とでも言いたげな彼女の様子に、ネルは片眉を上げる。

 

 

「ハッ、いい度胸じゃねぇか。……ほら、さっさと行っちまいな。あたしも直ぐに追いつくからよ」

 

「で、でもネル先輩!全員でなら勝てるんでしょ!?なら、一緒に戦った方が「なぁ」──ッ!?」

 

 

「──お前らの目的はなんだ?」

 

 

「お前らの目的はトキを倒すことじゃねえだろ。お前らの目的は、あのチビを取り返す事のはずだろうが」

 

「目的を履き違えんな。……分かったらさっさと行け」

 

 

 こちらへと一切振り向くことなく、トキを見据えたまま告げられた言葉にハッとするゲーム開発部。……"そうだ、私たちの目的はアリスを取り戻してまたみんなで一緒にゲームをする事だ"と気を取り直すと、彼女たちは思い思いに激励の言葉を投げ掛け、この場を後にする。

 

 そして最後、先生は掛け出す前に一度ネルの方へと振り返り──

 

 

「……待ってるからね」

 

「……おう」

 

 

 返事をするようにSMGを握り締めた右手を掲げた彼女の姿を確認すると、先生もまたアリスを取り返すために駆けていった。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 美甘ネルと飛鳥馬トキ──生徒会長の調月リオと近しい関係の両名は、真逆の意志を持って相対する。

 

 ほんの些細な切っ掛けさえ有ればすぐにでも銃撃戦が始まりそうな、ピンと張り詰めた空気の中でネルは問う。

 

 

「ひとつ聞かせろ、後輩。……あいつらの目的はなんだ?」

 

「……既にご存知の筈では?」

 

「あぁ、知ってる。……だからこそ解せねぇんだよ」

 

「"アリスのヘイローを破壊する"……リオの目的にカオナシが反感を示さずに協力してる理由が、あたしには分からねぇ」

 

 

 ネルは言外に訴えかける。──"本当は、別の目的があるんじゃないか"と

 

 以前よりかは遥かにマシになったとはいえ、それでもなお合理主義の塊であるリオだけならば……"少数の犠牲でキヴォトス全体が救われるのならば、自分が全ての罪を被る覚悟でもってアリスのヘイローの破壊を決行する"という可能性も無くはないだろう。

 

 ……しかし、カオナシは違う。

 

 確かに彼もまた、リオと同じく合理的な考えでもって行動する人間ではあるが……それ以上に、一度でも身内と判断した相手には駄々甘になる人間だと、ネルは知っているのだ。

 

 そして彼のアリスに対する接し方には、間違いなくそういった"甘さ"があった。……そうでなければ、自分のことを"お兄様"と呼ぶことを許可するはずがないのだから。

 

 ……本当の本当に、もうそうする事でしか事態を解決することが出来ないとなれば、彼もまたヘイローの破壊という手段を選ぶかもしれない。

 

 しかし今はまだ──アリスは決定的に道を踏み外してはいない(魔王にはなっていない)

 

 故にネルは問うのだ。──"本当の目的を教えろ"と。

 

 

「……」

 

 

 対するトキの返答は"沈黙"、何も言わぬ後輩に対してネルは大きく、深くため息を吐くと……ギロリと、睨みつける。

 

 

「だんまり、か。……いいぜ、お前がそのつもりなら──」

 

 

 ──"ぶっ倒してから聞き出してやるよッ!!!"




光学迷彩布
→光学迷彩下着から着想を得て作成したもの。所謂透明マント。……普通こっちが先では?とか言っちゃいけない、だってエンジニア部だもの


【アンケート】
次話、「このままネルvsトキを最後まで書ききってから先生side」か、「とあるシーンまで先生sideを書いて、ネルvsトキ」、どっちがいいですか( 'ω')?
※回答締切:2025/9/30の朝

次話、どっちがいい?

  • 先生side
  • ネルvsトキ
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