小鳥遊ホシノの先輩   作:燐檎あめ

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「示してみせなさい」

 ネルにトキの足止めを頼んだ先生たちは、足早にリオの座すビルへ──アリスが居るであろう場所へと駆けていく。

 

 命令を書き換えたAMASが壁となる事で、他の追跡を防ぎ……やがて彼女らは目的地へと辿り着き──その足を止めた。

 

 急いでいるはずの先生たちが足を止めた理由はただ一つ。……此度の件の重要人物──調月リオが、ビルの入口で一人立っていたからに他ならない。

 

 

「リオ……!」

 

「……来たのね、先生」

 

 

 ゲーム開発部、エンジニア部、ヴェリタス、C&C……そして、セミナーのユウカとノアへと視線を向け

 

 

「……そう、貴女達も」

 

 

 ……と、何処か呆れた様子──ではなく、納得した様子で呟く。そんな彼女に対して、"何故こんな事をしたのか、他にもっと良い方法は無かったのか"と詰めようとしたユウカは、それよりも前に一人前へと歩み出た少女の姿を捉え口を閉ざす。

 

 そうして誰よりも先に先陣を切った、此度の騒動の──アリス暴走事件の一番の被害者である彼女は、ビシッとリオを指差して

 

 

「会長!アリスを返してもらうよ!」

 

 

 ──一番の被害者のはずの彼女は、アリスを……仲間(友達)を取り戻しに来たと、宣言する。

 

 

「……何故?貴女はこの中で誰よりも被害を受けたじゃない。……下手をすればヘイローを破壊されていたかもしれないのに、どうして助けようとするのかしら?」

 

「どうして?……そんなの、アリスが私……ううん、私たちに取って大切な友達だからだよ!」

 

「……友達を傷付けるような人、本当に友達だって言えるのかしら」

 

「言える!たとえ友達同士でも喧嘩して、お互いを傷つけちゃうことだってあるもん。でも……それでも最後には仲直りできるのが友達だから!」

 

「っていうか私まだあの日からアリスと一度も話せてないし!ちゃんと面と向かって話させてよ!」

 

 

 モモイの懇願に対するリオの返答は当然"否"。彼女には悪いとは思うが……一度暴走してしまった以上、二度目がないという保証はどこにもないのだから。

 

 解放して、暴走して……今度は本当に死人が出るかもしれない。

 

 

「アリスを取り戻したいとここまで来た、その行動力と覚悟は認めましょう」

 

「でもあなたは……いえ、あなた達は感情論ばかりで、アリスが次に暴走した際の案の一つも出さない。……"返して"、"解放して"と言うばかり」

 

「起こる前ならば何とでも言えたわ。……暴走さえしなければ、()()()も監視で留めておけた」

 

「でも、あなた達は廃墟で眠っていた少女と言う"未知"の調査を怠り……その結果、アリスは暴走して実害が出た。ただの子供であるあなたたちは仕方ないにしても……先生、あなたは調査をするべきだった」

 

 

 ──生徒を信じたいと先生(あなた)は考え、そうして大人としての責任を果たさなかった

 

 

「"一度目"が起きてしまった以上、"二度目"が起きない保証なんてどこにもない、あなた達の我儘の所為で関係の無い人が、本来なら生きていられたはずの人が死んでしまうかもしれない。……その時、あなた達は責任を取れるの?そうなった時の覚悟が、あなた達にはあるのかしら?」

 

「……もし、ないと言うのならば──」

 

 

 ──全てを私たちに任せて、今すぐこの場から立ち去りなさい

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「……っ」

 

 

 ──リオの瞳がモモイを射抜く。

 

 冷たいその眼差しを向ける彼女には、ネルやリンのような一で多を蹂躙するような"強さ"はない。しかし、ミレニアムの生徒会長としての──上に立つ者としての"覚悟"がある。

 

 上っ面の言葉では決して揺らがぬ覚悟を秘めた彼女から放たれる重圧、常であれば思わず涙を流してしまっていたかもと思うほどのそれを一身に受けたモモイは──

 

 

「それでもわたし達は!アリスと一緒にいたいッ!!!」

 

 

 ──リオの目を真っ直ぐに見つめ、思いの丈をぶつけ返す。

 

 

「アリスがまた暴れるかもしれない?……なら、何度だって止めてみせる!」

 

「それにアリスがまた暴れたりしないように、自分の力をコントロール出来るようにわたしたちだって……具体的な案とかまだ何にも思い浮かんでないけど!それでも頑張って、みんなで考えて何とかする!」

 

アリス(仲間)には誰も殺させない、だからッ!!!」

 

 

 ──アリス(友達)を返してッ!!!!!

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

(……これは)

 

 

 モモイを中心として、暖かな風が吹く。……それに気づいたのは、ある男から"神秘"というものについて教わっていた彼女、調月リオただ一人。

 

 

(彼と同じ神秘の操作及び放出……いえ、これは感情の昂りに呼応して無意識に溢れ出したといったところかしら)

 

 

 (赤飛リン)曰く──その者の精神状態により出力が変動する、神秘という力。トラウマや負い目等で精神的不調を起こして居るものはその分出力が乱れ、確固たる意志を持った者は常よりも大きな力を発揮するという、キヴォトスの生徒ならば誰しもが当たり前のように持つもの。

 

 神秘操作について触り程度にしか知らぬ彼女ですら感じ取れる程の神秘の奔流を前に──リオの口角が、彼女をよく知るものにしか気づけないくらいに小さく、小さく弧を描く。

 

 ……そして誰にも気づかれぬまま彼女は再び表情を正し、モモイを……モモイの言葉に呼応するように決意を再度固め直したゲーム開発部や先生たちを見据え、ゆっくりと口を開く。

 

 

「口先だけなら何とでも言えるわ。……ええ、でも、そうね」

 

「あの日アリスを連れ出す際に眠っていたあなたに何もチャンスを与えずにアリスのヘイローを壊すと言うのは、フェアじゃなかったわ」

 

 

 そう言って彼女が手元の端末を操作した、その直後。地面が揺れ──要塞都市エリドゥのビル群が動き出し、彼女らを中心として直径約1kmの大広間(ドーム)を作り出した。

 

 

「アリスの力、その一旦はあなた達も経験したでしょう?」

 

「無数のDivi:sionを呼び寄せ使役する力、圧倒的な"()"を操る力」

 

 

 彼女の言葉に呼応するように、四方八方から無数のAMASが広場に雪崩込む。

 

 

「そして彼女自身が持つ、強力な"個"としての力」

 

 

 彼女の前面の地面に穴が開き、奇怪な機械(ロボット)が現れる。

 

 

「才羽モモイ」

 

「……!」

 

「……あなたは先程、アリスが暴れても止めてみせると言ったわね」

 

「なら───()()()()()()()()

 

 

 総勢一万五千七百八十二のAMASと、アビドスに現れた機蛇の装甲を解析して作り出した"真アヴァンギャルド君"を打ち倒し、あなた達の覚悟が口先だけではないと証明してみせなさいと、リオは語る。

 

 

「……今なら、諦めて逃げ出しても構わないけれど」

 

 

 最後にそう言い残して、調月リオは忽然と姿を消した。……きっと、カオナシ(赤飛リン)の能力で監視の為に……いや、この戦場と、そしてトキとネルの戦いの行く末を見届けることが出来る場所へと、移動したのだろう。

 

 ……なんて事を考える余裕は、モモイたちには全くなかった。

 

 侮蔑や嘲笑の意味は全くない、ただの提案としての一言。……彼女にその気は無くとも、今この状況下で言われた側にとっては煽りにしか聞こえない一言。

 

 ……言われて黙っていられるほど、彼女たちは大人ではなかった。

 

 

「「「逃げるわけないでしょッ!!!(絶対に、逃げたりしない……!!)」」」

 

 

 "数の差なんて知ったことか"、"全部壊されても文句言わないでよ!"……そんな言葉を叫びながら、モモイ達は大切な仲間(友達)を取り戻すための戦いへと挑む。




煽リオ(無自覚)
「どうして怒ったのかしら……?」

調月リオの神秘操作について
→本当に触りだけ。リンやホシノみたいに攻防の配分を変えたり、放出して推進力に変えたりは出来ない。出来るのは、近くに居る対象から発せられた強い神秘を感じ取ることくらい。今後成長することは多分ない。


総勢一万五千七百八十二のAMAS
→適当にパッと思い浮かんだ数字を打ち込んだだけ、深い意味は無い。……最初は一万って書こうと思ってました。


次回は再びネルVSトキに戻ります
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