小鳥遊ホシノの先輩   作:燐檎あめ

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書き始めた当初はまさかここまで来れるとは思っておらず……皆様、読んで下さり本当にありがとうございます!
これからも、『小鳥遊ホシノの先輩』をよろしくお願いします!


それでは、本編へどうぞ!


未来予測の弱点

 駆け出すと同時に迫り来るレーザーを、脱力し地に伏せる程に身を屈めることで回避する。

 

 

(幾らあたしの動きを読めるって言っても、撃ってくる方向には限りがある。……なら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 ──"先の先"の極致とも言える相手に対し、ネルは十分近く攻撃に晒され続ける事で無理矢理叩き込んだ、付け焼き刃の"後の先"で対抗する

 

 一歩踏み出す──着地点に向けて放たれた銃撃を、脚部に集中させた神秘で無理矢理弾き、破砕音を響かせながら、前へ

 

 ……対照的に脆くなった脇腹を銃弾が掠め、鮮血が滲む。

 

 

(動きを止めるな……ほんの一瞬でも止めちまえば、もう終わりだと思え)

 

 

 三方向から、レーザーが迫る。左脚、右肩甲骨、頭部に向かって放たれたそれらを、身を捩り回避しながら──更に前へ。……無理な回避をした代償に、足が地から離れた。

 

 前後左右、それから上空……計五方向から放たれるレーザー

 

 ……仮に空を蹴って回避しようとしたとしても、その分かりやすい予備動作から逃げた先に攻撃を"置かれる"事は想像に難くない。

 

 このままでは先程の戦闘の焼き増しとなる危機的な状況、しかし美甘ネルの表情に焦りはなく──彼女は、口角を釣り上げた。

 

 

「ぶっつけ本番だ!」

 

 

 瞬間──炸裂音が響き渡る。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 ──響き渡る炸裂音

 

 ──突如として視界から消えた相手

 

 ──警鐘

 

 

「ぐっ……!?」

 

 

 予測よりも先、直感に従い構えた腕に走る衝撃に顔を顰め──蹴り飛ばされる。

 

 一、二とバウンドし、跳ね起きながら予測した迫りくる銃撃をBIT三機を用いて展開したシールドで弾く──炸裂音が響く、予測していない衝撃が身体を襲う。

 

 一度ならず二度までも……立て続けに襲い掛かる予測不能の衝撃は、トキの顔に焦りの色を浮かべさせる。

 

 何が起きている?……と言うよりそもそも

 

 

 ──何故、アビ・エシュフが反応を示さない?

 

 

 故障ではない。……会長が作ってくださったアビ・エシュフがたった数度の衝撃で壊れることが無いことくらい理解している。……ならば何故と疑問符が浮かんだ矢先に──三度響く炸裂音と共に自らの真正面へと現れたネルと競り合う。

 

 

「どうやら、あたしの予想は間違ってなかったみてぇだな!」

 

「……どういうことですか」

 

 

 一体何を予想したというのか、頬を伝う冷や汗を拭うことなく睨め付けるトキに対し……ネルは自身が紐解いた、アビ・エシュフの常であれば弱点とも言えない、しかしことこの場においては致命的とも言える欠点について語る。……その間も決して手を止めることはなく、時折響く炸裂音を混じえ、攻め続けながら。

 

 

「そいつの予測精度は確かにすげぇよ、未来がわかるって言っても大言壮語にならねぇくらい凄いもんだ!」

 

「けどな、予知じゃなくて予測な以上、どうやったって計算するには情報が必要だろ……!」

 

「あたしの目線、筋肉の動き、呼吸、その他諸々の予備動作と……あと、思考回路か?……そういったもんをエリドゥのバックアップを受けながら演算して、未来視に近い予測をしてるんだろうが……ッ」

 

 

 ──それでも一つ、エリドゥでは決して計算し切れないものがある。

 

 

「……ッ!まさか!」

 

「気づいたみてぇだな!」

 

 

 どれだけ優れたコンピューターであろうとも、見えず知らないものは予測することはできない。……そう、例えエリドゥのバックアップを受けたアビ・エシュフであろうとも

 

 

「そいつは──」

 

 

 

 ──"()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()"

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「……っ」

 

 

 まさかそんなはずはと思いつつも、同時に納得もしてしまう。……元より、違和感はあったのだ。

 

 ──アビ・エシュフは、普段であればどれだけ速く動く相手でも先読みすることが可能である。それこそ通常形態であるαであっても、先読みして相手の初動を潰すくらい訳はない。

 

 ……それなのに時折、特にリンとの模擬戦をしている時に相手の動きに追いつけない時があった。

 

 単純に、相手の速さに追いつけていないだけだと思っていた。リオは製作者である自分の至らなさだと考え、いざと言う時の為にΩを作り出した。トキもまた自分がアビ・エシュフの性能を引き出しきれていないだけだと思い、これ迄鍛錬を積み重ねて来た。

 

 結果としてネルが言っていたように相手の微細な変化や思考回路を読み取る事で先読みの精度は更に上がり、相手に何もさせずに自分のやりたい事を押し通すことが出来るようになった筈だった。

 

 ──神秘を用いて身体能力をどれだけ上げようとも、身体を動かす為には少なからず筋肉に動きは見られるし、戦闘時における個々人の癖は消すことが出来ない。故に初動を潰してしまえば相手に何もさせない事が出来るし、仮に初撃を躱されたとしてもその後の動きを読んで対処が出来る……そう、思っていた。

 

 ……Ωは、完成してから日が浅い。……それでも、稼働テストで赤飛リンと模擬戦を行った際は、神秘操作を用いて身体能力を向上させた彼の動きすらも予測し対処する事が出来ていた。

 

 ──故に相手が神秘操作を用いる相手でも問題ないと、そう思い込んでしまっていた。

 

 神秘操作を可能とする者の絶対数がそもそも少ないが故に気づくことが出来なかった、模擬戦で相対した赤飛リンもやろうとしなかったが故に気づかなかった、普段であれば気にも止めない様な小さな欠陥を美甘ネルが突いた事により突如として顕在化した───致命的な()()

 

 

(……だとしても、アビ・エシュフならば相手のほんの僅かな筋肉の動きからでも予測出来るはずです。予兆すら感じさせず攻撃を加えるなんて、それこそ身体を動かさずに移動するくらいでない、と……)

 

 

 "まさか"と、トキの脳裏に一つの仮説が浮かび上がる。……有り得ない、そんな事をして身体が無事で済むはずがない。……けれど、先程の彼女の消えたと錯覚する様な移動速度と、捉えられなくなる瞬間に聞こえていた爆発したかのような炸裂音が、トキの脳裏を過ぎった仮説を補強する。

 

 

(神秘の放出により推進力を増しているだけであれば、其処に意識を割く分多少なりともアビ・エシュフであれば読み取れる筈……それすら無いと言うことは、つまり──ッ)

 

 

 

「──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 視線の先のネルは笑っていた。──"その通りだ"と、言わんばかりに。

 

 ……理屈は分かる。身体を動かさず、移動時の初動に自分の意思が介在ぜず、その推進力が神秘によるもののみであるというのなら……なるほど確かに、アビ・エシュフの予知にも等しい未来予測を掻い潜ることだって出来るだろう。

 

 しかしそれは同時に、起爆タイミングの予測が不可能な爆弾を自身の全身に巻き付けているようなものである。明確なタイミングは分からず、身構えることだって出来はしない。下手をすれば只々自爆するだけの、技と言うにはあまりにも不出来なもの。

 

 

(それを、この土壇場で……ッ)

 

 

 流石、という他無いだろう。いかに危機的な状況であろうとも、壁を乗り越え道を切り開き、勝利を手繰り寄せる……"勝利の象徴"の名は、決して伊達や酔狂で付けられたものではない。

 

 ──アビ・エシュフの未来予測に頼るだけでは美甘ネル相手に勝利を掴み取る事は到底不可能であるという事を、トキは改めて理解する。

 

 

「これでようやく、対等だな」

 

「……そうですね」

 

 

 ……ああ、そうだとも。──まだ未来予測が破られただけ、まだ、負けた訳ではない。

 

 明確な強い札がひとつ潰されはしたものの、そもそも未来予測はエリドゥの外に出れば使えなくなる手札でしかない。

 

 リンとリオが同盟を結び、リオの専属メイドとなった時点で、何れエリドゥの外でビナーを始めとした強大な敵と対峙する運命は定められていたが故に

 

 未来予測を使用出来ない環境下での戦闘を見据えて、敢えて封じての鍛錬を怠ること無く積み重ねてきた彼女は……相手の動きを予測できなくなった程度で勝利を諦める程、軟な鍛え方はしていない。

 

 

「「………」」

 

 

 合図はなく、しかし同時に得物を構え──二人は示し合わせたかのように、互いに向かって引金を引く。

 

 自身へと迫り来る弾丸を躱し、防ぎ──二人は同時に、駆け出した。

 

 

 ──互いに譲れぬものの為、ネルとトキは矜恃を胸に、最後の戦いへと臨む。




【美甘ネルの神秘操作技術について】
ネルパイセンのやった事のイメージは「移動限定版の、ヒロアカの爆豪勝己のクラスター」が一番近い

ネルは現在、神秘による身体能力の強化、放出による推進力の追加等の比較的基礎技能に近いことは出来るが、神秘操作技術はまだまだ未熟な物である。(※赤飛リン基準)
……短時間でカオナシのような精密操作が出来るようになるなんて思っちゃいない、かと言ってこのまま勝てるものでも無いと考えた彼女は逆転の発想に打って出た。

それ即ち──操作の手網を一部手放すことによる、神秘の暴発である。

神秘を過剰に溢れ出させながらも抑え込もうとする矛盾は、表層の至る所に神秘の込められた玉を作り出す。其処に外へ出ようとする神秘が溜め込まれ、風船のように膨らみ……軈て耐えられなくなった箇所が暴発することにより、予備動作のない推進力を得ることが出来るという仕組み。
溜めて溜めて溜めて弾けさせる分、放出よりも得られる瞬間的な加速力は高いが、爆発を感じ取った瞬間に上手く身体を動かさないと無様に転ぶだけになる。難易度はバカみたいに高いし、毎回ダメージを負う為正直割には合わないが……こと対アビ・エシュフにおいては無類の効果を発揮する。

ネルの戦闘センスと頑丈さがあって何とか使える博打技。他に出来るとしたら、それこそホシノやヒナなどの神秘総量の多い最上位勢かつ頑丈な子たちくらい。

赤飛リンがネルと同じ事をやろうとしたら、相手を倒すよりも先に身体が持たずにぶっ壊れるし、そもそも神秘の量が足りずに直ぐにガス欠になる。やるとしたら本当に必要なタイミングで瞬間的に使用するか、攻撃の際に部分的に使用して推進力とするか、若しくはシンプルに出力を下げるか。……人には得意不得意があるし、残念ながら彼の身体はそこまで頑丈ではない。



※神秘の流れを視認できる相手の不意を着くことは難しいという弱点もある。……神秘操作が可能で、その上で視認できる人物なんてのはほぼいないが、一応弱点である。
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