小鳥遊ホシノの先輩   作:燐檎あめ

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『業腹ですが、認めざるを得ませんね……結局、あの男の言う通りになってしまいました』
『王女が役割を放棄した事には思うところがない訳ではありませんが……』
『……』
『……』
『…………まぁ』




『…………こういうのも、悪くはないですね』


勇者の一撃

 戦闘によって破壊、或いはヒマリの手によってハッキングされ機能を停止していたAMASが、光の粒子となって宙に浮いたスーパーノヴァへと募っていく。

 

 

『この要塞都市エリドゥを利用出来れば、1万エクサバイト程のリソースは確保できましたが……それでは、意味がないようですから。今回は、機能停止したAMAS一万百九十二機の利用で留めておきましょう。……はっきり言って、雀の涙にしかなりませんが』

 

「因みに、どのくらいの量になるんですか?」

 

『17エクサバイトくらいですね』

 

「わぁ……!それだけあれば、色んなゲームをダウンロード出来そうです!」

 

『……容量じゃなくて、どちらかといえばファイルサイズとかの方ですからね?』

 

 

 ある種幻想的な光景を繰り広げているアリスは一人で(アリスとケイは)軽口を叩きながら、回収したリソースを用いてスーパーノヴァをアップデートしていく。

 

 

『今回はリソースの都合上、ちょっとした改造を施すくらいしか出来ませんが……まぁ、この程度の相手であれば十分でしょう』

 

「劇場版でよくある、後々のストーリーで明かされる強化モードを先行公開ってやつですね!」

 

『……その例えはよく分かりませんが、まぁそうですね』

 

 

 初めて扱う力。アリス一人であったのならば、きっと満足に扱う事は出来なかったであろう其れを……内に宿るもう一人の人格(ケイ)の手助けを受け使用しながらも、アリスは仲間たちの背から目を離さない。

 

 今のアリスは慣れない力を扱う為に無防備になっている。……けれど、みんながAMAS、そしてアバンギャルド君を足止めしてくれているから、彼女は力の行使に集中できている。

 

 頼もしい仲間たちが、自分の為にと駆け付けてくれた。……そして今も、攻撃の手が一切届かないように守ってくれている。

 

 

(……みんなと出会えたアリスは、本当に幸せ者です)

 

 

 モモイ、ミドリ、ユズ、先生……そして、お兄様(リン)。廃墟で一人眠っていた自分を連れ出して、色んなものを教えてくれた大切な人達。

 

 今この場にお兄様がいない事は少し残念ではあるが……リンの、リオの()()()()()()()()()アリスは仕方がない事だと割り切っていた。……共闘は、またの機会に。

 

 

(だから今は、アリスもアリスに出来る事を……)

 

「……ケイ、もう少し時間を早めることは可能ですか?」

 

『問題ありません。このくらいであれば元より、一分も必要ありませんから』

 

 

 彼女たちはリソースの回収を早め、スーパーノヴァの改造を早め……遂に、時は満ちた。

 

 一際大きな光とともに──勇者の剣は、新たなる姿となって再誕する。

 

 

「これが、進化した勇者の剣── 光の剣:スーパーノヴァMk-2です!」

 

「……!みんな、下がって!」

 

 

 先生の指示に従い全員が射線から外れた事を確認すると、アリスは光の剣を構える。──狙うは当然、一番の脅威であるアバンギャルド君。

 

 

「魔力充填──2()0()0()%!」

 

 改造時に余ったリソースを全て注ぎ込み、限界を超えて……今!

 

 

「「「いけぇ!アリスっ!(いって、アリスちゃん……!)」」」

 

 ──仲間()の声援を受けて、解き放つ!

 

 

 

 

 

 

 

 

「──光よッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 放たれるは極光。それは正しく、勇者の一撃と呼ぶに相応しい一射。

 

 これまで先生たちを苦戦せしめた多腕の機械(アバンギャルド君)を、ほんの一瞬の拮抗すら許さず撃ち壊し、余波でAMASを次々と破壊していく。

 

 時間にして約五秒ほど、程なくして光は収まり……アリスの齎した光景に、先生たちは皆一様に目を丸くする。

 

 彼女の放った光の直線上には文字通り、この場を覆っていたドームの壁も、その先も……全てを飲み込んだ光の先にはなにも、残されてはいなかった。

 

 まさに規格外の一撃、散々苦戦させられたとはいえ、跡形もなく消し飛ばされたアバンギャルド君がいっそかわいそうに思えてくるほどの光の一射。

 

 ゲーム開発部も、C&Cも、ヴェリタスも、生徒会も、特異現象捜査部も、もちろん先生も……眼の前に広がる光景に、言葉を失っていた。

 

 

「「「お、おおぉっ……!」」」

 

 

 ……唯一エンジニア部だけは、驚きではなくロマン溢れる一撃に純粋に興奮していたが。

 

 

 程なくして再起動を果たしたゲーム開発部の面々は、アリスを思いっきり抱きしめる。

 

 

「凄い、凄いよアリス!」

 

「あの変なロボット、すっごく硬かったんだよ!?それを、一撃って……!」

 

「かっこよかったよ、アリスちゃん……!」

 

「……!」

 

 

 もしかしたら怖がられるかもしれないと不安を抱いていたアリスだったが……皆驚きこそすれど、恐れる者は誰一人としておらず。そのことに気づいた彼女は、眼尻に涙を浮かべながら──

 

 

「みんなの……みんなが、いてくれたお陰です!」

 

 

 と、笑みを浮かべていたのであった。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 少しして落ち着いた彼女たちは、あたりを見渡す。アバンギャルド君は打倒したとはいえ、まだAMASは残っていたはずだが……

 

 

「……全部、止まってるね」

 

 

 どれも再度動き出す気配はなく、また増援の兆しもない。暫しの休息を挟んだ後、先生たちはアリスの開けた穴からドームの外へと出る。

 

 

「……!」

 

 

 AMASが待ち構えているなんてことはなく、しかしなにもいないというわけでもなかった。ドームの外で、ただ()()──

 

 

「……リンくん」

 

 

 カオナシ(赤飛リン)が、立っていた。

 

 すぐさま彼女らは警戒態勢を取るが……カオナシは戦闘態勢を取るどころか武器すら持たず、ましてやポケットに手を入れ能力の発動にすら一定のタイムラグが発生するような状態のまま、アリスたちを見ている。

 

 嘗められている……という訳では無いのだろう。……彼の瞳に敵意の色はなく、けれどもアリスを連れて行った一人であるが故に無条件に信じることもできず……

 

 傍目から見れば一触即発とも言える空気を壊したのは……渦中の人物であるアリスだった。

 

 

「お兄様……リオ先輩のところに、案内してもらってもいいですか?」

 

「ああ、始めからそのつもりでここに来たからな」

 

 

 "ついてこい"と、カオナシは彼女らに背を向けながら歩みを進め、事の真相を問うためにも先生たちは、彼の案内に従いついていく。

 

 

 ……此度の騒動も、終わりは近い。




⬛︎光の剣:スーパーノヴァMk-2
性能としてはちょっと強くなったスーパーノヴァ。見た目に殆ど変化は無いが、装飾として一部ケイの瞳と同じ色のラインが施されている。
本当なら真アバンギャルド君をああも容易く破壊し、その先にあるドームの壁も破壊できるほどの威力は"まだ"出せないのだが……アリスの強い"想い"に呼応して神秘の出力が増した結果、作中のような火力が出た。

──アリスの感情、そして想いは演算によるものではなく、()()()()()と世界に認められた瞬間である。



※なお、この光景を見ていた無名の司祭は発狂した模様
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