現在ストックが14話くらい溜まっているので、番外編は2、3日に1話くらいのペースで投稿予定です。
※後書きの最後の方にちょっとしたおまけ(エピローグでアリスがケイに最初どんなお願いをしようとしていたか)が有ります|´-`)チラッ
『……赤飛リン、蟄ヲ蝨帝?蟶ゅく繝エ繧ゥ繝医せ縺ォ縲∵悽譚・縺ェ繧峨?蟄伜惠縺励↑縺?ュ医?繝倥う繝ュ繝シ繧呈戟縺」縺溷?逕キ蟄千函蠕?』
『……王女に悪影響が及ばないか、調べなければなりません』
アリスを連れ出した日の夜。監視を任されていた赤飛リンは、アリスを軟禁している部屋で一人の少女と対峙していた。
その少女は床を引きずる程の長髪を携え、ミレニアムの制服に身を包んだ監視対象の天童アリスと全く同じ見た目……否、同一の身体に宿るもうひとつの人格。
"名もなき神々の王女の鍵"、アリス暴走の根幹となる人格──Key
もしこの場に居るのが自分一人だったのならば、アリスは自責の念に駆られ眠りにつくことはなかっただろう。……けれど今は監視が目的とはいえこの場にはリンがいて、そんな彼に諭されたアリスは一時的な休息のために意識を落としたのだ。……そしてKeyはアリスが眠った後に表に出てきたという訳である。
……もしこの場にいるのが赤飛リンでなければ、*1彼女はそのまま要塞都市からミレニアム、果てはキヴォトスを掌握していたかもしれない。
本来ならば有り得ざる会合、張り詰めた空気の中で最初に口を開いたのは──Keyだった。
「何故貴方は、王女のヘイローを破壊しないのですか」
「……出てきたと思ったら何だ急に、アリスは兎も角、てっきりお前はヘイローの破壊をして欲しくない側だと思ってたんだが」
「何を当たり前のことを、王女のヘイローを破壊などさせるわけがないでしょう」
「私はただ、ヘイローを破壊すると言いながら無駄に期間を置いていることに対して疑問を呈しているだけです。即刻破壊せず、ましてや王女に無駄な事をさせている貴方の行動が理解が出来ません」
「……無駄な事?」
「……ゲーム、とやらの事です」
彼女の言にリンはポリポリと頭を掻きながら……"ただの時間潰しの為だ"と答える。
「こっちにも色々と準備が必要なんだよ。その間ただ監視してるだけってのも暇だか「嘘ですね」ら……」
「そんな明らさまに目を逸らして、バレないと思っているんですか?そもそも暇潰しと言うのであれば、貴方ひとりで独り寂しくやっていれば良いだけでしょう」
「──少なくとも、王女にやらせる必要はない筈です」
"嘘をつくな"と言いたげに、紅い瞳で睨みつけられた彼は……十数秒ほどの間を置いた後、"はぁー……"と観念するように大きな溜息を吐いた。
「そう大した理由じゃあない。……ただ、確かめたいだけだ」
「……何を」
「アリスの意思と、選択を」
Keyは怪訝そうな目を向ける。
「……矢張り、理解出来ませんね。殺そうとする相手の意思を確認して何をしようと言うのですか?私からしてみれば貴方の行動は、殺すと言いながら結局は言葉だけの、なんの覚悟もないくせに言葉だけは一丁前の、意気地のない人間の言葉にしか聞こえません」
「……ははっ、随分と酷い言い草だな」
「……何故、笑っているのですか。罵倒に快楽を感じる趣味でも「いやねぇよ?」」
あまりにも不名誉なレッテルを貼られそうになったリンは間髪入れずに否定した。
「……ただ、何だ。正直俺はお前の事をただのアリスの中に忍び込んだ危険人物位に思ってたんだが……さっきから理解出来ない、理解出来ないって色々とまぁ訊ねてくるお前を見てるとな」
「随分とまぁ──」
──"人間らしい感情も有るんだなぁって思ってな"
「…………は?」
"人間らしい"……そう言われたKeyは心底嫌そうな顔でリンを見るが、対する彼は気にも留めていない様子で………いや、何処か煽るような笑みを貼り付けながら、言の葉を紡いでいく。
「いやー、まさかお前がそんなにも俺の事を知ろうとしてくれてるなんてなぁ、嬉しすぎて思わず涙が出ちまいそうだ」
「は?別に貴方のことを知りたくて聞いていた訳ではありませんが?勘違いも甚だしいですね」
「照れる必要はないぞ。……よくよく考えてみれば最初、廃墟で顔を隠した俺の正体が分からずにムキになってたし。その時から俺の事を知ろうとしてくれてたのかぁ」
「は???ムキになってなんかいませんけど???貴方が特徴無さすぎただけですけど???」
「あ、アリスがいた廃工場の音声の正体ってKeyだったの?……ふーん?」
「………はっ!?」
リンはニンマリ、ニヤニヤと小馬鹿にしたような笑みを浮かべ、反対にKeyは顔を赤くしぷるぷると拳を震わせていた。……アリスとリンの関係性しか知らない第三者が見れば、その光景はある種の兄妹喧嘩のようにも見えるかもしれない。
「……王女が使命を思い出したその暁には、まず貴方から処理してあげます。それまでは精々、笑っておけば良いでしょう」
「へぇ、そいつは光栄だな。……出来ればの話だけどな」
顔を顰めるKeyに、"そういう反応するから人間らしいって言ってるんだけどなぁ"と、リンは内心で苦笑する。
「くっ、何処までも癪に障りますね……!王女に兄と呼ばせる変態の癖に……!」
「おい待て俺から呼ぶように言ったわけじゃねぇぞ」
「こうなったら、録画ファイルをキヴォトス全土にばら蒔いて……!」
「何で録画なんかしてんの!?流石にライン越えだろ……!それやるんなら俺はキヴォトス中に"KeyちゃんはポンコツAI"って伝えるぞ!」
「誰がKeyちゃんですか!…………ポンコツAIじゃありません!!!」
売り言葉に買い言葉と言うべきか……二人の言い争いは暫く続くのであった。
◇◇◇◇◇
「「はぁ……はぁ……」」
それから暫くの時が経ち、二人は肩を不規則に上下させていた。
「強情だな、お前も……」
「それは…こちらのセリフです、王女が役目を放棄することなど有りえません……」
「そうかよ……なら、
息を整えたリンは挑発的な笑みを浮かべ、Keyを見る。……賭け、とはどういうことかと怪訝な表情を浮かべる彼女に対して、リンは言う。
「お前の言うように、アリスが役目を優先するなら……そうだな」
──何でも一つ、言うことを聞いてやるよ
「……ただし、ユメやホシノ、後輩たちに危害が及ばない範囲でな」
「……保険をかけるなんて随分と弱気ですね、自信がないのなら始めからそういえばいいものを」
「はぁ?自信がないだぁ?そういうのじゃなくて、単純に万が一……いや、億が一にも俺の勝手な賭けのせいで傷ついてほしくないだけだっての。……そういうお前だって、もし仮に俺が賭けに勝ってアリスが傷つくことをしろって言われたら困るだろ?」
「それは……そうですけど」
「納得してくれたようで何より」
"それで、そっちが負けたらどうするんだ?"と言外に促せば、Keyは暫く考え
「貴方の言うように……ありえないでしょうがもしもアリスが役目を放棄してその上で──」
──"再び、勇者とやらを目指すというのなら"
「……何でも一つ言うことを聞いてあげます。……勿論、アリスに危害を加えないようなことというのが条件ですが」
「……何でも、ねぇ」
無音、リンはKeyの言葉を脳内で反芻するように沈黙する。何でも、何でもかぁ……
「いや、女の子が何でもとか軽々しく言っちゃダメだろ。もうちょっとよく考えt……痛った、何で急に殴ったん???」
「もう黙っててくれません?」
「えぇ……?」
"俺別に間違ったこと言ってなくない……?"と言う彼のぼやきは、虚しく木霊するのみであった。
◇◇◇◇◇
その後は特に会話等はなく、無言の時間が続いていた。……お互いに相手のことを警戒しているから仕方がないと言えばそうなのだが、ただ待っているだけなのはつまらないと考えたリンはひとつの提案をすることにした。
「……アリスはちゃんと眠ってるか?」
「……なんですか急に。……しっかりとスリープモードになっていますが」
「そっか。……なら、ゲームしないか?」
「…………何故?」
「暇だから」
……この男は一体何を考えているのだろうか、意図はなんだ意図はと怪訝そうな表情をKeyは浮かべるが、残念ながらリンは何か明確な目的があって提案している訳ではなく、本当にただ"暇"というだけの理由で提案していた。
当然Keyが提案に乗る理由なんてひとつも無いため、彼女は断ろうとする……が
「なんだ、負けるのが怖いのか?」
「いい度胸ですね、
赤飛リンの無意識な煽りに青筋を浮かべた彼女は、反射的に承諾してしまう。
Keyは"やってしまった"と考えるが、承諾した以上今更取り下げることなど出来ない。……目の前の男を相手に背を向けて逃げ出すなど、彼女には看過できなかった。
「それで、なんのゲームをするんですか」
「ん?んー……そうだな、大激闘クラッシュシスターズでもするか」
もったりとした動きでリンはゲームの準備を進めていく。……と言っても、ゲーム機本体は既にセットされているため、カセットを入れ替えるだけだが。
……しかし、夜も遅いせいか意識がボーッとしている。このままではダメだと考えた彼は、意識を切り替える為に──パチンと、自身の両頬を叩いた。
「……何故急に自分の頬を?……やはりマz「だから違うっての」」
不名誉なレッテル貼りを再びキャンセルした彼はKeyにコントローラーを渡す。
「キャラは……よし、ド〇キーにするか」
「何でもいいです」*2
さっさとキャラを決めた二人は、対戦を開始する。
◇
「くっ、この……!」
「ガードして、埋めて、殴る」
「あっ!また……この、煽るなーっ!」
「ふっ……悔しかったらやり返してみな」
「上等です……!」
◇
「ふぅ……ふぅ……これで……!」
「あ、マ〇ボ。……あ、カ〇オーガ」
「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ!?」
「……なんかごめんね?アイテム無しでやる?」
「慈悲は要りません!……ッ!よし、これで……なんでト〇キント何ですかッ!!!」
◇
「よし、これで……!」
「っとまじか、落とされちまった」
「どうですか!あなたが私に勝とうなんて100年早いんですよ!」
「……」
「なんですか、悔しくて何も言い返せないんですか?」
「……いや、まだ残機一個しか減ってないからこれで勝ちだなーって」
「え?…………ああっ!」
「……まぁ、初めて数時間でこれだけ出来るなら上等だと思うぞ」
「煽りですか!?……煽ってないですねその顔は、余計に腹が立ちます!」
「流石に理不尽じゃない……?」
◇
「なあ、そろそろ終わりに……」
「はい?勝ち逃げなんて認めるはずがないでしょう」
「いや、もうすぐ朝だからアリスが起きるんじゃ……」
「……」
「……」
「……仕方ありませんね、今日のところはこのくらいにしてあげます」
"明日は必ず勝ちます"と、それだけ言い残すとKeyはアリスの中に引っ込んでいった。
◇◇◇◇◇
「……」
G.Bibleを探して廃墟に赴き出会った時のモモイとのやり取りから、"もしかしたらKeyにも感情があるのでは?"と頭の片隅で考えてはいた。……けれど、今まで確かめる術はなく調査を断念していた。
(……取り敢えず、自分にも感情があるってことを自覚させるための起点作りは出来たかな)
最初は本当に、ただ暇だったからゲームの提案をした。しかし今回、図らずしもKeyとの接触が叶い"これはチャンスかもしれない"と思い、焚きつけるために彼女を煽ってみた。
結果は上々、Keyはリンの思惑通り感情を顕にし、彼の想定以上にゲームにのめり込んだ。……のめり込んだのはゲームそのものに対する面白さからではなく、"煽られたままで終われない"という怒りの感情によるものかもしれないが。
だが、それでも──
──リンの操作キャラを場外へ吹っ飛ばした時、確かに彼女は笑っていたのだ
KeyはただのAIではない。こちらの推測通りであるならば王女であるアリスの言葉には逆らえないが、だからといって感情や、自ら選択する意思が無いわけじゃない。それが分かっただけでも十分な収穫だった。
少し煽り過ぎてしまったかもしれないなとは反省しつつも、結果としては中々に悪くない為後悔はしていなかった。
「ん、んぅ……あれ、お兄、さま?」
「おはようアリス、よく眠れたか?」
「おはようございます……はい、アリスはよく眠れた……と思うのですが……」
「……どうかしたのか?」
何か問題でもあったのかと気にしているリンに対して、アリスは"夢を見たんです"と言う。
「夢……?」
「はい、アリスがお兄様にゲームでボコボコにされて、いっぱい煽られる夢です。お兄様がそんな事するはずないのに……」
「……スゥゥゥ…」
ごめんねアリス、確かにアリスの事は一緒にゲームしてきて今まで一度も煽ったことないけど、理由があるとはいえついさっき内に宿るもうひとりの人格の方めっちゃ煽ってたんだ。……なんて、言えるはずもなく
「えっと……それじゃあ、今日も暇潰しに付き合ってくれるか?」
「はい。アリス、最期の時まで与えられたミッションをやり遂げてみせます」
(……うん……煽るのは、流石にちょっと控えよう)
と、彼は心に誓うのであった。
※本作では、アリスと出会う際に先生に承認を出したAIはケイちゃんとしています。ケイは連邦生徒会長の認めた相手(先生)に対する承認権限は持っているものの、扉を開ける権限は持っていなかった(連邦生徒会長によって奪われていた)ため、アリスに接触することができずずっとヤキモキしてました。先生を利用して扉を開けた後に接触しようとしましたが、扉を開けた後に強制的に例の場所へと移送されてしまい、周辺機器との接続も遮断され閉じ込められる形に。G.Bibleが保管されていたのはゲーム開発部がケイちゃんと接触するように事前に用意されていたもので、あとは原作通りの流れに〜って感じです。
この後からリンくんは、日中はアリスと、夜間はケイとお話(ゲーム)する事になりました。アリスはきっと眠る必要はありませんが、リンくんは何だかんだでアリスをちゃんと人間扱いしているので、"睡眠は心を保つ為にも必要"と諭していました。結果として夜にケイちゃんが表に出てくるようになってしまったので、リンくんは事態が解決するまで徹夜してました()
↓以下おまけ↓
エピローグでアリスがケイに何をお願いしようとしていたのか
「ケイも一緒に、お兄様をお兄様と呼びましょう!」
もしケイが全力で方向転換していなければ、カオナシ(リン)は血の繋がらない生徒二人に兄呼びさせるヤバいやつというレッテルが貼られることに……
……今アリスに呼ばれてるのは大丈夫なのかって?……ミレニアム生の殆どが「私もアリスちゃんのお姉ちゃんになりたかったッ!」ってなってるから問題にはなっていないです()