小鳥遊ホシノの先輩   作:燐檎あめ

122 / 126
番外編二話目!


……相性ゲーってあるよね


【番外編】語られぬ戦い

 ここから先は、ほんの数名を除いて知ることのない物語。先生らが知るのは全てが終わってからのこと。

 

 ミレニアム郊外の閉鎖地域でひっそりと兵を蓄えていた、全知、そしてビッグシスターの探知すらも潜り抜けた白き預言者と、あるAIとの取引によりかの存在を知った者の戦いの一幕である。

 

 言えることは、ただひとつ──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪ケセドヲイジメヌンデ…≫

 

 ──あまりにも、相性が悪すぎた(良すぎた)

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 アリスたちをリオの元に案内して一人離脱した赤飛リン。彼は本来であれば、あの場で離脱することなくアリスの辿り着いた"答え"を聞くつもりでいた。

 

 しかし案内している道中、先生たちに気づかれぬようアリスと入れ替わったケイからとある情報を齎された彼はこれを無視はできないと判断。やむを得ずアリスたちの元を離れる事を決断した次第であった。

 

 そうして能力を用いて何度かの位置替えの後、辿り着いたのはミレニアム郊外の閉鎖地域──ゲーム開発部と出会う前のアリス、そしてケイが居た"廃墟"と呼ばれる場所。そこには彼の他にもう二人、激しい決闘の末意識を失ったトキとネルの手当を終えたホシノとユメが彼を待っていた。

 

 

「悪いな、二人とも。……本当なら、あいつらの怪我の手当だけで終われるはずだったんだが」

 

「気にしないでい〜よ〜。もともとアリスちゃん達の試練として立ち塞がる予定だったのが必要なくなった分って思えばさ〜。……それに、こっちの方が気が楽だしね」

 

「そうだよリンくん!()()()()()()()()()()()()()()()って言うなら、みんなの為にも何とかしないとだよ!」

 

 

 淡々と武器の手入れをしながら、或いは"ふんすっ!"とやる気を滾らせながら、幼馴染と後輩は文句ひとつ言わずにリンを見る。

 

 

「そうか……ありがとな、二人とも。……それじゃ、早速行くとするか」

 

 

 二人が頷いたことを確認すると、彼らは目的地へと歩いていく。

 

 

「ねぇねぇリンくん。今から私たちが相手するのって、ビナーと同じ"預言者"っていうやつなんだよね?ネルちゃん……は難しいだろうけど、ヒナちゃんとか呼ばなくて良いの?」

 

「あ、それ私も気になってました。ビナーの時はあれだけ入念な準備を重ねてたのに、今回はどうして私たち三人だけでやろうと思ったんですか?」

 

 

 道中ユメとホシノは彼の突発的な行動に対して疑問を呈する。

 

 ……厳密には問うと言うよりは確認といった意味合いが近いだろうか。突飛ではあれど明確な理由があるのだろうと、二人は幼馴染(先輩)の事を信じていた。

 

 

「そうだな……本当なら"預言者"を相手にするなら戦力をしっかり揃えた方が良いんだろうけど、今回はちょっと事情が違ってな」

 

「っていうのも、今回の相手は自分で戦わずに作った兵隊をけしかけて来る手合いらしいんだよ」

 

「うへぇ……つまりビナーみたいな単体で強いやつじゃなくて……」

 

「所謂雑魚を大量召喚してくるサモナーみたいなやつってわけ」

 

「……?でも、それならやっぱりもっといっぱい人がいた方がいいんじゃない?負ける……とは思わないけど、手数が足りないような?」

 

「ユメの疑問は尤も。……なんだけど、実は最近ネルと徹底的に潰し回ってたやつがどうもそいつの兵隊らしくてな」

 

「……つまり、本当なら大量の兵隊を相手にしなくちゃいけないけど……」

 

「兵隊の数が足りてない、或いは作ってる最中であろう今がチャンスってこと〜?」

 

「そういう事。後はまぁ……これはもしかしたらになるんだがな?情報が間違ってなければ、今回のやつは──」

 

 

 ──多分、滅茶苦茶に相性が良い。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 程なくしてリンたちは"Divi:sion"と呼ばれる、アリス達が接触した機械と同名の、ミレニアム郊外にある廃棄された筈の兵器生産工場へと足を踏み入れる。

 

 ──瞬間現れるは、無数の白い機械の群れ。侵入者たる三人を機械達は取り囲み、一切の躊躇いなく引き金を引く。

 

 

「悪いけど、お前らの相手をしてる暇はねぇんだ」

 

 

 パン、パン、パンと柏手を三度。進行方向かつ包囲網の最後尾に位置する三機と入れ替わる。

 

 

《……ッ!?》

 

 

 慌てた様子で三人を探すが、時既に遅し。神秘を込め射程範囲が大幅に広がったホシノの"Eye of Horus"による一撃が白い機械の群れを蹂躙する。

 

 ……強化されたビナーの装甲すらも破壊する一撃を前に、数を揃えただけの雑兵が耐えられる道理などあるはずも無かった。

 

 道を塞ぐ扉を壊し、彼らは歩みを進める。道中、白い機械の群れが手を替え品を替え、色々な形の包囲網で三人を排除しようとするのだが……リンが手を打ち鳴らすだけで直ぐに包囲網を抜けられ、或いは同士討ちを誘発され、蹂躙されていた。

 

 

「……お」

 

 

 途中、神秘を用いずに作られたのであろうオートマタが彼らを取り囲んだ。能力への対策だろうか、よく考えられている。

 

 

「……まぁ、意味ないけど」

 

 

 ……が、能力の対策を優先するがあまり脆くなってちゃ意味ないよね!という訳で全部ぶっ壊して三人は歩いていく。

 

 そうして全ての障害を跳ね除けた彼らは遂に、兵器工場の主が座す最奥へと辿り着いた。

 

 

「あれが……」

 

 

 彼らの目に映るのは、身の丈ほどの巨大な白い球体。周囲に数多の機械兵を侍らせるその姿は正しく一城の主と言うべきか。

 

 多勢に無勢、普通ならば即座に踵を返して戦力を整えてから相対すべき相手。……然し、恐らく同類なのだろうビナーと対峙した事のあるユメとホシノは、気負う様子を見せないどころか、どこか不思議そうに首を傾げていた。

 

 

「なんというか……」

 

「うん……あれ」

 

「「……ビナーより弱くない(弱いよね)……?」」

 

 

 ビナーと同格というのであれば間違いなく強いはずで、油断してはいけない相手の筈なのだ。なのにビナーに比べると些か覇気や威圧感が足りないというかなんというか……

 

 

「まぁ……うん、そうだな。俺らが総力を上げて倒したビナーが例外というか進化してたというか……例えるならあれは二年前のビナーと同格()()って感じだしな」

 

「後威圧感が足りないのは、さっきも言ったように単騎性能が高いやつじゃなくて雑魚をいっぱい呼び出す物量タイプだから、雑兵が複数居てもものともしない奴にとってはそこまで脅威に感じないのかもな」

 

 

 ホシノは言わずもがな、ユメも火力こそ足りないものの防御に関してはキヴォトス随一である。ケセド本体は無理にしても雑兵程度であれば最悪シールドを大きく広げていって壁に押付け圧し壊すことも出来るからこその"弱くない?"発言であった。

 

 とはいえ一般生徒や住民にとっては十分危険な相手であることには変わりないし、雑兵であっても色んなところに散らばられると対処が面倒になる。例え一体一体は大したことがないのだとしても、矢張り物量というのは厄介なのだ。

 

 

「そういえばリン先輩はなんかあの……ケセドでしたっけ?あれ相手に相性良いって言ってましたけど……」

 

「ん?……ああ」

 

 

 "ちょっと待ってな"と言ったリンの目が金色に染まる。"ホルスの瞳(Eye of Horus)"──神秘を目に集中させ動体視力の上昇や白閃の発生確率を上げるという技を発動したのを見て、なるほど確かに、先輩(リンくん)の白閃であればあの硬そうな外殻であっても壊せるだろうとユメとホシノは思う。

 

 ……が、しかし、彼は攻撃を仕掛けるでなく球体をじっと見ているだけだった。

 

 どうしたのだろうと話しかけようとしたも束の間、"なるほどなぁ……"と呟いた彼は目の前に空薬莢をポイっとひとつ放り投げると、徐ろに手を打ち鳴らした。

 

 

≪……?………………!?!?!?!?≫

 

 

 瞬間、入れ替わるようにして現れたのは、先程まで見ていたものよりも一回り小さい──"ヘイローを冠する真っ白な球体"

 

 目の前に現れたそれは機械でありながら何処か困惑した様子を見せたかと思えば、今度は慌てているようにも見受けられる。……これは、もしや

 

 

「リンくん……これってもしかして……」

 

「ケセドの本体だな」

 

「本体……」

 

 

 何とも言えない表情で、ユメとホシノは目の前の球体を見る。硬そうな、ともすれば単純な強度だけならビナーよりも頑丈そうな外殻に身を包んでいたのに、それを壊されるどころか無視されて引きずり出されたのか……ということはつまり、あの外殻は今ただの空薬莢を大事そうに守ってる………ってコト?!

 

 もしこれが機械じゃなくて人だったのならば、ケセドは今頃号泣していただろう。……リンがケセドにやった事は例えるならば、ガチガチに部屋の扉に鍵を掛けた引きこもりを抵抗すら許さず問答無用で外に放り出して、そのついでに部屋にゴミを捨てていった様なものである。……うん、例えれば例えるほど余りにも酷いというか……

 

 目の前で抵抗する素振りすら見せない──本体にはそもそも攻撃機能が備わっていない──ケセドの本体を見ていると、相手はビナーと同じくキヴォトスの脅威となる存在のはずなのに、ユメとホシノはなんだか申し訳ない気持ちになってきた。

 

 

≪……っ!……っ!≫

 

「おいおい、どこに行こうというのかね」

 

 

 何とか転がって戻ろうとするケセドを、リンは無情にも元の位置に戻していく。……ケセドを守る兵士たちも、下手に動けば本体が破壊される為に動けないでいた。もうどっちが悪役か分からないよこれ

 

 

「えっ……とぉ……先輩?それどうするんですか?」

 

「どうって……壊すけど」

 

≪……っ!?≫

 

 

 慈悲の欠片もないその言葉に、逃げることもできないケセドは最早プルプルと震えることしか出来なかった。

 

 

「さて……最後に、言い残すことはあるか?」

 

 

 まぁ言葉を発する機能が備わっているかどうかは分からないがと考えていると

 

 

≪ケ……≫

 

「お?」

 

 

 まさか本当に喋れるとは。吼えることしかしていなかったビナーの印象が大きかったために少しばかり驚きながらも、油断や慢心ではなく純然たる事実として最早勝ちは揺らがぬために、リンはケセドの言葉に耳を傾ける。……今際の際の言葉を聞いてやるくらいの慈悲は彼にもあったらしい。

 

 

≪ケセドヲイジメヌンデ…≫

 

「……」

 

 

 ……まぁ

 

 

「だが断る」

 

 

 ……聞くだけだが。

 

 

≪ウワアアアアア!ケセドデルジ──≫

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「……さて、帰るか」

 

「あ、うん……そうだね」

 

 

 キヴォトスの滅びの一旦となるケセド相手に完封勝利を収めた彼等は帰路に着く。……その際ホシノとユメは一度振り返ると

 

 

「「南無……」」

 

 

 ロクな抵抗すら許されずに倒されたケセドに合掌、"次はもうちょっと対策しておこうね"と最早なんの意味もなさないアドバイスを贈ると、三人は揃って帰っていくのであった。




けせど《引き篭って玩具作ってたら引っ張り出されてボコボコにされました。訴えても良いですか?》
きゔぉとす「(外殻と繋がっていなかった君が悪いので)だめです」
けせど(´・ω・`)ソンナァ

⬛︎ホルスの瞳について
基本的な能力は作中描写にある通りだが、副次効果として神秘をよりはっきりと視認出来る効果もある。これにより、今回はケセドの本体が外殻の内側にある事を見抜いた。
あくまでも神秘を知覚しやすくするのみである為、相手の体内や体表の神秘の流れから次の手を予測する事は可能だが、物を透かして見たりとかは出来ない。
例えるならばHxHの凝、或いは神秘のみを対象とした白眼

⬛︎オリ主の能力……というか、不義遊戯について
服や鎧等の身に纏っているものや銃やスマホなど、所謂"装備品"、"所持品"は自動的に"ひとつのもの"として扱われる。その為、例えば人を対象とする場合に衣服だけ、人だけといった対象の取り方は出来ない。
※ただし、銃等の所持品から手を離している場合はその限りでは無い

ケセドについては装備を身に纏っているのではなく、強固な外殻の中に引きこもっている(部屋やシェルターの中に居る)と解釈された結果、今回のような事態に
グロッキー状態で装甲が開いた時のケセド君が明らかに浮いてるのが悪い()
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。