今回は砂の城作りと泳ぎの練習回
「それじゃ改めて、砂のお城作りと砂風呂からかな?」
「……?改めて、ですか?」
「ん、砂に関しては一家言ある」
「城か……ユメ、ホシノ、シロコ……ゴニョゴニョ」
「「「
「負けない。私達も頑張ろう、ヒフミ」
「は、はい!」
「私もお手伝いします」
「全員が城というのも味気ないですし……私は別のものを作りますね♡」
──十数分後
「「「「出来た、無敵要塞ザイガス」」」」*1
「「「無敵要塞ザイガスって何(ですか)!?」」」
「「無敵要塞ザイガス……!?くっ、
「ええっ!?これ私たちの負けなんですか……!?」
「こっちも出来ましたよー♡」*2
「なんてもの作ってるのよあんたは!エッチなのは駄目!」
他にも先生はノノミに埋められたり(※砂風呂)と各々好きに砂遊びをして楽しみ、ミッションのために写真を撮ったりしていると
ダダダダダダンッ!!!
と、観光地に似つかわしくない、しかしある意味キヴォトスらしく銃声が響き渡る。
見ればこちらに向かって銃を構えてかけてくる水着姿のスケバンが多数。明らかにこちらに向けて敵意を向けてきている様子が見て取れるが、リンを筆頭としたアビドス勢には当然一切の心当たりはない。となれば必然、恨みを買ったのはアズサたちトリニティ勢になる。
「……彼奴等になにかしたのか?」
「あうぅ……実はその、皆さんとお会いする前に一悶着ありまして……」
「彼奴等がヒフミの作った砂の城を壊したのが悪い」
「つまり、八つ当たりってことですね~」
困ったような、或いは呆れたような目を向けられたスケバンたちは激昂する。
「んだその目は!これだけの人数がいて勝てると……勝て、ると……?」
「……なぁ、なんか増えてないか?」
「それにあれは……まさか、無敵要塞ザイガスか!?!?」
「「「「「いやそれは知らねぇけど」」」」」
「くそっ、めちゃくちゃ完成度たけーじゃねぇか……っ!」
「「「「「だからそれは知らねぇって」」」」」
単純計算で倍以上に増えているのに気がついたスケバンたちの勢いが尻すぼみになっていく。……若干一名、別のことに気が取られているようだったが……まぁ、誤差だろう。
「って、んなことどうでもいいんだよ!人数が増えていようが知ったことか!こっちのがまだ多いんだ!」
「あらあら……どうやら、あちらはヤる気マンマンみたいですねぇ」
「なにのんびりしてるのよ!早く構えなさいって!」
まさに一触即発といった空気の中、コハルは未だに武器を構えずのんびりとしているハナコに呼びかけるが……
「いえ……その必要はないと思いますよ、コハルちゃん」
「はぁ!?あんたなに言って……あっ」
スケバン達が引き金を引くよりも早く、ヒフミやハナコ、コハルが動くよりも早く……スケバン達が宙を舞う。
「きひひひひひひっ!」
「おー、やるねぇ」
「正義実現委員会の委員長だから、当然と言えば当然」
「ホシノにわかりやすく言うと、ヒナやネルみたいな奴だな」
「なるほど~」
時間にして十秒掛かったかどうか……元々補修授業部と正実相手だけでも勝てていなかったのに、そこに少数精鋭のアビドス勢が加わったのだ。……たかだかスケバン十数名で勝てるような相手ではないのは、誰の目にも明らかだった。
無敵要塞ザイガスも、アズサ達が作った砂の城塞も、ついでに裸婦像も無事。まさに完全勝利と言えるだろう。
「えーっと……そ、それじゃあ次のミッションに移りましょうか!」
◇◇◇◇◇
「次は……泳ぎを習得する、と書かれてますね。ただ泳いでいる写真を撮るのではなく、泳げない人に教えているところを撮らないといけないのでしょうか?」
「……待った、もし全員泳げる場合、どう頑張っても実行できないんじゃないか?」
「その場合は、"ふり"でもいいんじゃないでしょうか?あくまでもミッション自体は、"そういう
「なるほど、流石ハナコだ。……問題ないか?監視役」
「え?……まぁ、大丈夫なんじゃないでしょうか」
方針は決まった。……全員泳げる前提で話をしている中、若干一名恥ずかしそうに目を逸らしているものもいるが、誰も気づいた様子はなく
「ふりをするにしても、教える役と教わる役はどうするのよ?……い、言っておくけど、私はちゃんと泳げるからね!?」
「では、コハルちゃんには教導役をお願いしましょうか♡教わるのは……ツルギさんで♡」
「……!?」
「はぁ!?わ、私がツルギ委員長に!?」
「はい♡後は、先生には当然教導役をお願いするとして……」
「私たちがやるとしたら、教え役かな?一緒に遊んではいるけど、私たちが泳ぐのを覚える練習をしてるところを撮っても意味ないだろうし……」
少し考えた後、ペアはくじ引きで決めることに。……ただし、先生については依頼で海に来ているということもあり、トリニティ組とペアを組む必要があったため二回ほど引き直したりしていたが。……始めに先生とヒフミ達トリニティ生だけで引けばよかっただろって?……それはそう
……何はともあれ、ペアを組み終えた彼女たちは、それぞれ海へ入っていく。
ちなみにだが、それぞれのペアは以下のような組み合わせとなっている。
1.ホシノ, シロコ
「リン先輩と一緒になったのはアズサちゃんかぁ……いいなぁ」
「……?なにか言った?」
「いや、何も言ってないよ~?……おじさんたちは撮る必要ないし、久しぶりに勝負でもする?シロコちゃん」
「ん、負けない」
2.ユメ, ヒフミ
「よろしくね、ヒフミちゃん!」
「は、はい!よろしくお願いします!」
3.アヤネ, ノノミ
「私たちは、皆さんの写真を撮りましょうか」
「かわいく撮ってあげましょう♪」
4.セリカ, マシロ
「えーっと……マシロだったわよね?正直、泳げる相手に教えるってのも変な感じがするけど……」
「やるからには、全力で楽しみましょう」
5.アズサ, リン
「リンに何かを教えてもらうのは、随分と久しぶりな気がする」
「まぁ、まだアズサがトリニティに転校する前の話だしな」
6.ハナコ, 先生
「うふふっ……手取り足取り隅々まで、よろしくお願いしますね、先生♡」
「隅々……ていうのはよくわからないけど、任せて」
◇◇◇◇◇
各々が組んだペア同士で泳ぐ練習(のフリ)を、或いは後輩に恥ずかしいところを見せないように一生懸命に泳ぐ練習をしたり*3している中、リンとアズサの会話は、周りとは少し違う様相を呈していた。
「トリニティでの生活はどうだ?友達はできたか?」
「……うん。ヒフミもハナコもコハルも、皆私にとって大切な友達だ」
「そうか……良かったな、アズサ」
リンに手を握られながらバタ足をするアズサは、喜びを噛みしめるように笑みを浮かべる。……が、その中にはほんの少しばかり、悲しみの色が混じっているようにも見えて……
「……心残りか?」
「……叶うなら、
"みんな"が指し示すのは、当然補修授業部の面々のことではない。……ならば誰の事を指し示すのか。それを知るのは今この場ではリンとアズサのみ。
「……そうだな、彼奴等はアズサと違って、あのクソババアの洗脳まがいの教育から未だに抜け出せてないからな」
「…………」
「多分……いや、ほぼ確実に彼奴等はまだ攻めてくるだろう。……そうなればもしかすると、アズサが彼奴等と戦わなくちゃいけなくなる時もあるかもしれない」
「……うん」
気分が沈む。……自分はアリウスを裏切った身、故にかつての仲間と……家族のように思う相手と戦わなくてはならない時もいずれ来るだろうということを、アズサは覚悟している。
……気づけばアズサはバタ足をやめ、その場に立ち尽くしていた。
アズサは、優しい心の持ち主だ。アリウスを裏切りはしたが、だからといってアリウスの殲滅を願っているわけではない。……むしろその逆、難しいことは理解しているが、叶うのならばアリウスとトリニティが和解し共に平和な道を歩んでほしいと願ってさえいる。
……自分の行いに後悔はない、けれど、自分だけがこんなにも幸せでいいのかと苦悩するアズサに対し
「──だから、今度はお前が彼奴等に教えてやるんだ」
リンは諭すように、彼女の頭を撫でる。
「……私が?……なにを?」
「そりゃあ勿論、世の中には楽しいことがたくさんあるって事をさ」
「楽しい、こと……」
リンは、こくりと頷く。
「憎しみや復讐心、それがそいつの心からの衝動だって言うなら、俺は否定しない。……俺自身、カイザーやビナーに対して恨みはもってたしな」
「けどな、それが植え付けられた偽りのもので、それのせいで世の中にあふれる楽しいことに目を向けられなくなってるんてんなら」
──思いっきりぶん殴って正気に戻してやるべきだと思ってる。
「……ぶん殴って?」
「おう、ぶん殴ってだ」
説得なんてそんな野蛮な、ここは穏便に暴力で……とでも言うようなリンの言葉に、アズサは思わずキョトンとした表情を浮かべてしまう。
……確かにアリウス流なら言葉よりも暴力で解決することのが多い……と言うよりも殆どだが、それをまさか相手の方から提案されるとは思っていなかった。
「視野の狭まった馬鹿は何言っても聞く耳持たないからな、だったら一発ぶん殴って思考に無理矢理にでも隙間作ってやった方が話も聞きやすくなるだろ」
「……できるかな、私に。……私の戦闘技術は、殆どがサオリに教わったものだけど……」
「出来るさ。……確かにアズサの戦い方はサオリから教えられたものが殆どかもしれない。言ってしまえば基本的な戦闘技術に関してはサオリはアズサの上位互換みたいなものだろう」
──けどお前には、あいつらと決定的に違う部分がある
「……違う部分?」
「ああ、幾つかあるが……そうだな、とりあえず、三つ」
リンは指をひとつ立てる。
「まず一つ目、単純な戦闘技術について。あいつらはアリウス流の人を傷付ける戦い方しかしないが、アズサはトリニティや……後は俺が合間合間に教えたりしてた、人を傷付ける以外の戦い方を知っている。アリウス流だけなら確かにサオリに勝つのは難しいかもしれないが、アズサはサオリたちの知らない戦い方で意表を突ける」
「……」
リンは指をふたつ立てる。
「次に、心持ち。あいつらは直ぐに"全ては虚しい"とか見切りをつけて諦めるが、アズサはそれを理由に諦めたりしない。心持ちってのは何事においても大事な事だっていうのはアズサもよくわかってるだろう?」
「……うん」
リンは指を三つ立てる。
「そして最後、これが一番重要な要素だな。……アズサには──」
──大切だと思える、友達がいる
「……!」
俯いていた顔を上げる。技術や心持ちは確かに戦闘においては重要なファクターである、それは理解している。……だけどまさか、最後の要素が人間関係だと思わず、目を見開く。
……何よりも
「……とも、だち」
リンの言葉がストンと胸の内に収まり納得している自分がいる事に、アズサは驚いていた。
(そっか、だから私はあの時、アビドスに……)
「ああ、友達だ。……さっきも言ったが、アリウスはその殆どが恨みや憎しみで囚われてる。中には仲間……
「……!……そう、なのか?」
「ああ、実際に
「んで、まぁ話を戻すが……アリウスはババアに逆らえないから嫌々従ってるやつもそこそこ居る状況、そんな精神的にガタガタの状態じゃ、持ち得る本来のスペックは当然発揮できる筈もない。……この際だからはっきり言おうか」
──サオリを筆頭としてアリウスのヤツらは、自分のスペックを最大限発揮できてない
「……!?」
アズサは今度こそ、はっきりと驚きを露わにする。アズサは元々アリウススクワッドの所属、サオリから戦闘のいろはを教えられ、当然彼女の強さも身に染みて知っている。……にも関わらず、"本領が発揮できていない"と言われたのだ。……当然驚くに決まっているし、幾らリンの言うこととはいえ鵜呑みにできるはずもない。
「……本当に?」
「本当だとも。……アズサには以前、神秘について教えたことがあったよな?」
「うん、確かキヴォトスの住人なら誰しもが持ってるもので、私達みたいなヘイローを持ってる生徒はより多く保有してるものだったはず」
「その通り。更に言うなら、基本的に神秘の出力ってのは総量に比例するんだけどな──」
当然それだけで勝ち負けが決まるほど戦いというものは甘くは無いが、それでも重要なファクターのひとつになる。
──ただし、これはあくまでも
「先日のトリニティでの一件の際、ミカとセイアが喧嘩したのは覚えてるか?」
「うん、実際に見ることはなかったけど」
「まぁ、二人きりで喧嘩してたからな。……話を戻すが、二人を知るアズサからして、普通に考えてどっちが勝つと思う?」
「聖園ミカ」
「でも実際に勝ったのは?」
「……百合園セイア」
そう、勝ったのは百合園セイアだ。厳密にはミカの戦意が折れて中断という形にはなったが、そこに至るまでの戦いは確かにセイア優勢で進んでいたのだ。
「セイアがミカ相手に優位に立ち回れたのは、勿論セイアがそれだけ努力していたっていうのもある。……ただ、
「当時のミカは罪悪感で精神面がガタガタだった。反面、セイアはミカを……友が悪しき道に進もうとするのを止めてやるっていう覚悟があった」
「精神論で実力差を覆せるほど世の中は甘くないが、想いの差で未来は覆せる。……少なくとも、自らの内に宿る"神秘"は想いに応えてくれる」
「幾ら実力があろうと、嫌々従う奴に本当の力を発揮出来るはずがない。復讐心なら力を100%発揮出来るかもしれないが──」
──"大切なものを守りたい気持ちは、限界を超えて力を発揮出来る"
「アリウスの殆どは芯のない偽りの復讐心とババアへの恐怖心で動いてる。サオリは……アリウススクワッドという家族を守るっていう想いはあるかもしれないが、ババアへの恐怖心と諦観も混じってるからな。それでも鍛えられてはいるから限界ギリギリまで力を発揮することは出来るかもしれないが、
「反面、アズサにはヒフミを初めとした大切なものが、守りたいと思えるものがある」
真っ直ぐにアズサの目を見ながら、リンは一つずつ訊ねていく。
「友達は出来たか?」
──アズサは頷く
「大切か?」
──アズサは頷く
「命を賭けてでも守りたいか?」
──アズサはうなzゴツン
「……痛い」
「馬鹿かお前は、
「……ずるい、叩く前にそう聞いて欲しかった」
むくれてジト目を向けてくるアズサに対し、リンは何処吹く風といった様子で笑っていた。
「俺の二の舞になって欲しくないから、ちゃんと理解して欲しかったんだよ、悪いな」
「……さて、最後の質問だ」
──アズサは、サオリたちの事をどう思ってる?
◇◇◇◇◇
「…………」
"サオリたちの事をどう思ってるのか"……アズサは答えに窮してしまう。
ひとつ、思いがない訳ではない。けれど今の自分にそのような事を思う資格があると思えず、だからといって他の答えを出せる訳でもなく……
「アズサ」
俯く彼女の頭に、ポンと軽い衝撃。見上げれば、自身の頭を優しく撫でるリンの姿が目に映る。
アズサが何かを言うよりも先に、リンは口を開く。
「──自分の気持ちに、嘘はつかなくていい」
「……!」
「大事なのは自分がどう思ってるか、だ。自分の気持ちを偽っても苦しいだけだ、愛情でも憎しみでも何でもいい、アズサの想いを、本音を聞かせてくれ」
「私の、想い……」
胸に手を当て、考える。……いや、考えるまでもない、私は、今でも──
「──サオリたちの事を、家族だって思ってる。ヒフミたちと過ごす日常の為に、平和な未来の為に裏切ってしまったけど……それでも私は、いつか、サオリたちとも一緒に──」
──"笑い合える日々を"
「……そうか。……その気持ちを忘れさえしなければ、アズサの内に宿る神秘は応えてくれる。限界すらも超えて、アズサがサオリに勝つことだって出来るだろうさ」
"お前ならきっと出来る"、そんな想いを込めて最後にポンポンと頭を撫でたリンは、他のグループが一頻り泳ぎの練習を終え砂浜の方へと向かっていくのを見て、"俺たちも戻るか"と歩いていく。
……くいっと、パーカーの裾を引っ張られる感覚。振り返ると、アズサが裾を掴んでいるのが目に映る。
「どうした?」
「……リンはさっき、"自分一人で無理なら友達も巻き込め"って言ったよね」
「?……ああ、言ったな」
「……なら、
顔を上げ、アズサはリンを真っ直ぐに見つめる。
「私一人で何でも出来ると思えるほど自惚れてない。でも、私はいつの日かサオリ達ともまた一緒に過ごしたい。……今度は、恨みや憎しみに囚われない日常を……美味しいものを食べたり、今日みたいに遊んだり、そんな平和な日常を、みんなと」
「リンの言っていたように、サオリたちはきっと諦めてない。……近い内に、攻めてくると思う」
「だから、
"必ず成し遂げてみせるから"、そんな覚悟の秘められた瞳を前にしたリンの返答は──
「もちろん、力を貸してやる。俺もあのババアは気に入らねぇからな」
「……ありがとう、リンが力を貸してくれるなら百人力だ」
「おう。……それじゃ、戻るか」
「うん」
何れ来たる未来を見据え、決意を新たにした二人は友達、或いは幼馴染や後輩の元へと歩いていくのであった。
ホシノ「ムムム…」
シロコ「ん……ホシノ先輩、凄い顔してる。構って欲しいならそう言えばいいのに」
ホシノ「ソウイウノジャナイモン」
コハル&ツルギ以外は実際にランダムで決めました。
……リンとアズサがペアになったのでちょっと描写足すかぁって思ったら思いの外伸びました()
■一回目
G1ユメ, ノノミ
G2ヒフミ, アヤネ
G3ハナコ, セリカ
G4シロコ, アズサ
G5リン, 先生
G6マシロ, ホシノ
「俺と先生が教え合ってどうすんだ」
■二回目
G1ハナコ, マシロ
G2シロコ, ヒフミ
G3アヤネ, リン
G4ノノミ, ユメ
G5先生, ホシノ
G6セリカ, アズサ
「うへ~、おじさんが先生とペア組んでもねぇ……先生とペアを組むのはヒフミちゃんたちじゃないと」
■三回目
G1ホシノ, シロコ
G2ユメ, ヒフミ
G3アヤネ, ノノミ
G4セリカ, マシロ
G5アズサ, リン
G6ハナコ, 先生
「あらあら……よろしくお願いしますね、先生♡」