小鳥遊ホシノの先輩   作:燐檎あめ

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今回、呪術廻戦要素が最後にちょっとだけ出ます。次話では本格的に出ます。


走馬灯

 ──ユメが襲われている様を目撃したリンは、すぐさま部屋を飛び出していこうとするが

 

「──そこをどけ、黒服」

 

 目の前に黒服が立ちふさがり、道を遮っていた。それを見たリンは、静かに──その身に宿る激情を隠そうとせず、ともすれば"これ以上邪魔をするようであれば今この場で殺す"とでも言わんばかりの視線を向けながら、そう告げた

 

「……誤解しないでいただきたい。リンさん、私は別に、貴方を邪魔しようなどとは考えておりませんよ」

 

 そう言うと黒服は、懐からあるものを──黒塗りの小型のインカムを取り出した

 

「これは…?」

「……かの存在について、まだ一部話せていないことがありまして。本当はこの後お話させていただこうと思っていたのですが、どうやら時間もないようですからね、……向かう道すがらにでもお教えいたします」

「……そうか」

 

 黒服からインカムを受け取る。そして黒服とすれ違う時

 

「────ありがとう」

 

 そう一言残すと、リンは部屋から飛び出していった

 

「……クックック、別に礼など必要ありませんよ」

 

 

………………

 

 

 ユメの元へと、砂漠を駆けていく

 

(はやく、早くっ…、早く早く早くッ…!)

 

 ──急がないと、ユメがッ……!

 

 焦る気持ちが募り、時折砂に足が取られそうになりながらも、決して足を止めることなく走り続ける。その時

 

 PiPiPi─

 黒服から受け取ったインカムが不意に音を立てる

 

「──ッ、なんだ!」

 

『……リンさん、先ほどお伝えしていたように、これから貴方が対峙する存在について改めてお教えします。そのままでいいのでお聞きください』

 

『貴方がこれから対峙するデカグラマトン──それは、セフィラの最上位に位置する、天上の三角形の一角』

『そのパスは理解を通じた結合。"違いを痛感する静観の理解者"の異名を持ちます。かの存在の名、それは──』

 

 ──ビナー(Binah)

 

『……数十年前に初めて目撃され、これまでに幾度か交戦を行った記録があります。リンさんが拾ったものは、その際に欠け落ちたものでしょう』

 

「…………」

 

 "ビナー"……ソイツが、アビドスに巣食うキヴォトスを危機に陥れる存在。それに数十年前と言ったら、丁度砂漠化が急激に進行し始めた時期と重なる──アビドスに害を為し、ユメやホシノの学生生活に苦悩を強いる元凶

 

 いずれ打破すべき元凶の存在を知り、殺意を覚えるが、今はその時ではないと無理やりに抑え込む。デカブツ(ビナー)を撃滅するよりも前に、まずはユメを助け出さないと──

 

 そんな決意を胸に抱き、ついにたどり着いたリンの目に映ったのは……

 

 ユメに向かって、人ひとり飲み込んで余りあるレーザー(アツィルトの光)が放たれる瞬間だった

 

 

 

………………

 

 

 

 目の前に、光が迫る。……『逃げないと』と思っても、度重なる攻撃を凌ぎ続けたことで疲労が溜まり、うまく足が動かない

 

(──どうして、こんなことになっちゃったんだろう)

 

 そんな後悔とともに────過去の思い出が、走馬灯のように流れてくる

 

 

 

 ──まだ幼かった頃、リンくんと一緒に遊んだ記憶

 鬼ごっこやかくれんぼ、缶蹴りや、近所の人たちが考えてくれた宝探しゲーム、色んな遊びをした。……そういえばその宝探しゲームがきっかけで、よくお宝探しをするようになったんだっけ

 追いかけっこをしていた時に転んでしまい、泣きそうになった私を必死でなだめてくれたこともあったなぁ……。あんまりにも必死すぎて、痛かったはずなのに気付いたら笑っちゃってたんだよね──

 

 

 ──アビドス高等学校に入学したころの思い出

 まだ入学したての頃は、先輩や、リンくん以外の同級生もいて……昔みたいにアビドスにたくさんの人が戻ってきたらいいな~、なんて、無邪気に思ってた。

 先輩たちもいるし、きっと何とかなるって、何の根拠も無しに思ってた。……でも、当時三年生だった先輩が卒業するころには、私とリンくん以外誰も残ってなかった……

 

 

 ──二年生になったころ

 一年もたたずに私とリンくんだけになっちゃって、『この先本当にアビドスを守っていけるのかな』って、らしくもないことを考えてしまうほどに気が沈んでしまっていた。……そんなときに、ホシノちゃんが来てくれた。

 ……初めて会ったときは目つきも鋭くて、『仲良くなれるかなぁ』なんて、不安に思ってしまったこともあったけど……。私とリンくんが考えた歓迎会を、少し恥ずかしがりながらも喜んでくれて、それが嬉しくって──気付けば私たち三人は、すぐに仲良くなっていた。喧嘩しちゃうこともあったけど、それでも最後には仲直りして、三人で笑い合っていた。

 

 

 ──初めて三人でお宝探しに行ったときは、結局何も見つからなくて……、でも、みんな顔が砂まみれになっちゃってるのを見て、三人で笑いあっていた。

 その後も何度も、何度も一緒にお宝探しをして……なんだかんだ文句を言いつつも、二人ともいつも一緒に来てくれた。

 最近では、過去の先輩たちの手紙を見つけて。その日の夜に、天に瞬く無数の流れ星を眺め、三人で一緒にお願い事もしたなぁ。

 この時に改めて、私たちなら絶対にアビドスを守っていけるって、そう思えた。

 

 

 ──初めて三人で指名手配犯を捕まえに行ったときは、ホシノちゃんの強さに吃驚した。相手の銃撃を受けてもビクともしないで、一方的に倒しちゃってた。……でも、何のためらいもなく銃撃の中に飛び込んでいくホシノちゃんのことが、心配だった。もしこんなことを続けて、ホシノちゃんの身に何かあったらって思うと不安で仕方なくて……。リンくんと一緒にどうしたらホシノちゃんが無茶なことをしなくて済むかなって考えたりもした。……最終的には、ホシノちゃんにもっと強くなってもらって、そんなホシノちゃんを守れるように、私たちがもっともーっと強くなる。そんな脳筋思考に落ち着いて、リンくんと二人で笑ってた。

 

 

 ──三人で一緒に、トリニティにお出かけにも行ったなぁ。きっかけはリンくんが福引で当てたスイーツ店の割引券で、そこに行くまでの道にも色んなものが売ってて、忙しなくキョロキョロと色んなものに目を向けてしまったのは、今思うと少し恥ずかしいことをしてしまったなって思う。

 ……相変わらずリンくんは、すっごい大きさのお菓子を頼んでぺろりと平らげちゃってた。……あれだけ食べても太らないなんてズルいなぁって思ってたら、ホシノちゃんも同じらしくて、世の理不尽さを感じちゃった。

 お互いに頼んだものを交換して食べさせあったりもしたなぁ。どれもおいしくって、また三人で来たいなぁって思ってたら、二人が『また来よう』って言ってくれた。……気付かれちゃったときは、もしかして食い意地張ってるとか思われてないよね?なんて、ちょっとドキドキしちゃった

 

 その後、何故か水族館のチケットを貰って、オープンしたら三人で一緒に行こうねって約束もしたけれど……

 

 ──ごめんね、私、約束守れそうにないや

 

(──ごめんね、二日前に"もう心配かけたりしない"って約束したばっかりなのに、守れそうにない。三人で一緒に頑張ろうって約束も、守れない)

 

 ごめんね、ごめんねと、約束が守れないことを心の中で謝り続ける。そして──

 

「──あ、私ここで、死んじゃうんだ……」

 

 そう、悟る

 

(二人が、ここにいなくて良かった……)

 ──二人が、危険な目に合わなくてよかった

 

 ……もっと色んなところに行きたかった。色んなことをしたかった。色んなものを食べたかった。

 ──もっと、もっと……、三人で、また新しく来る後輩も一緒に、色んな思い出を作りたかった。……楽しい思い出を、作りたかった。

 

(でも、もうそれもできない……)

 

 だって私は、ここで──

 

「……ぃやだ、私、もっと一緒に」

 

 しかし、どれだけ願っても、体は動いてくれない。疲労によって意識も朦朧としており、今にも気を失ってしまいそうになる

 

 ──まだ、死にたくない。まだ、生きていたい。お願い、誰か、だれかっ……

 

(ホシノちゃん、リンくんっ……)

 ──助けてっ

 

 そう小さく言葉を発するとともに、意識を失う

 

 

 

 

 

 

 ──その瞬間

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  パァンッ!

 

 ──柏手の音が、鳴り響いた




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皆さんありがとうございます!

当キヴォトスの先生についてのアンケートを先日用意しました。
その途中経過を見て、『みんな、やっぱり先生にはイオリの足舐めさせたいんだなぁ』って思いました、まる

当キヴォトスの先生は ※あくまでも参考程度です。必ずしも結果通りになるとは限りません。また、オネエ、姉御の場合はイオリの足は舐めません

  • オネエ
  • 姉御
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