という訳で本編へどうぞ!
──二人の戦いは熾烈を極めていた。
上空から集中豪雨の如き様相で降り注ぐ銃弾を躱して、躱して、躱して、そして時折弾きながら地を駆け、隙を見ては銃弾を撃ち込む赤飛リンと、決して逃がすまいと彼を追うように銃口を向ける空崎ヒナ。
(これで模擬戦?………次元が違いすぎる)
只々唖然としながら見守ることしか出来ないイオリたち。
これだけの戦いを繰り広げながら、うち一人は自分たちと神秘の総量がそう変わらないというのが彼女たちは信じられず………その一方で、リンとの付き合いの長い二人は"まぁ、この位は当たり前だよね"という態度を崩さなかった。
◇◇◇◇◇
傍目から見れば拮抗しているようにも見える銃撃戦はその実──ヒナの方が優勢であった。……しかし、それも仕方の無いことだろう。
──何せ
どれだけ撃ち込もうともヒナへの有効打にはならず、程なくして彼は回避に専念するようになった。緩急をつけながら複雑な軌道を描き、時折瞬間移動でもしたかのように視界から消えるリンであったが……次第に回避先を先読みし始めたヒナの銃撃が、彼の身体を掠め始める。
「ユメ先輩」
「そうだね、そろそろ私達も準備しよっか」
徐に立ち上がるユメとホシノ。"準備とはなんの事か"と問おうとした矢先──戦況は、更なる変化を見せる。
──先程まで走り続けていたリンが、なんとここに来て足を止めたのだ。
対峙する相手のことを知る者がもし今の光景を目にしようものなら、十人中十人が口を揃えて"血迷ったか!?"と思わず声を荒らげかけないような状況において───彼は、笑っていた。
"カチッ"──と、空回る音が響く。
弾を撃ち尽くしたタイミングを見計らい、先程まで逃げに徹していたリンが一発の銃弾を込める。──先程までと何ら変わらないはずの、何の変哲もないそれを目にしたヒナの表情が僅かに険しくなった。
手早くリロードを行うが、流石に一発分込めるだけで済むリンには追いつけず──スナイパーライフルの銃口が火を吹く。
──青白い軌跡が走る
未だ神秘を視認することが出来ないシロコ達ですら一目で分かるほどの……可視化される程の神秘が込められた銃弾が、まるでレーザーを彷彿とさせる様相でもってヒナへと迫る。
対峙する彼女はこれを、翼を羽ばたかせ軌道上から逸れることによって回避。同時にリロードを終えた"終幕:デストロイヤー"の銃口を突きつけ、未だ動きのないリンへとその引鉄を引く……その瞬間
「「十分」」
パァンッ!!
──柏手の音が、晴れ渡る青空の元に響き渡る。
◇◇◇◇◇
「……ッ!」
突如として意識外の方向からの……真下から襲い来る衝撃に、ヒナの表情に驚愕の色が浮かぶ。
……己の身に直撃した訳では無い。しかしその一撃は──先程リンがヒナに向けて撃ち放ち、回避されたはずの銃弾は、彼女が構えた愛銃を真っ直ぐに捉えていた。
長年愛用したことにより彼女の神秘が染み込んだその銃は滅多な事では破壊されるようなことは無い程に頑丈ではあるが……むしろ今は、その強度が仇となっていた。
──不意をついた打ち上げるような衝撃により、"終幕:デストロイヤー"が彼女の手から零れ落ちる
"ガシャン"と音を立てながら少し離れた場所へと落ちる愛銃を横目に……ヒナは静かに地面へと降り立った。
「そう、今のが……神秘の宿るものなら生物、無生物問わずに入れ替える能力、敵に回ると随分と厄介ね。……今のは、足元に散らばる銃弾と入れ替えたってところかしら」
「流石、ビナーとの戦いの前に概要は教えてたとはいえ一発でそこまで辿り着くか。……バレちまったならもう通用しないか?」
「よく言う。……知ってても対処が容易じゃないことは貴方が一番分かってるくせに」
「………くくっ、ゲヘナ最強にそう言って貰えるなんてな」
「御託はいいから。残り十分──
「勿論」
そう言うや否や……リンは徐に、スラックスの裾を捲り始めた。
◇◇◇◇◇
"本気で"──二人が零した言葉を耳にしたイオリたちは、先程までの戦闘のその先がまだあるという事実に言葉を失う。
ただただ唖然とする彼女たちの視線の先で、リンは両脚に付けていた
ズドンッ!!
──と、重々しい音を立てながら……金属の棒をぐるりと一周分纏めただけの、無骨な重りが地面に減り込んだ。
「ハァッ!?何あれ、あんなモノ付けてさっき迄戦ってたっていうの!?」
「凄いですね、あれってどこに売ってるんでしょう?私も欲しいです♣︎」
「あれ、もしかして私たちとの模擬戦の時も……?」
「ん……通りで。さっきリン先輩の足払いを受けた時の異様な硬さの理由がようやくわかった」
「リン先輩が受けと回避に徹してくれてて良かったわね……もしあれを付けたままかかと落としとか食らってようものならと思うと……ゾッとするわ」
最早驚きを超えて感心し始めた後輩たちを置いて、リンは"とーん、とーん……"と感覚を確かめるようにその場で数度跳ね、そして──
「それじゃあ───
──その姿を消した。
◇◇◇◇◇
(……相変わらず早い。……でも、
これまで何度もリンとの模擬戦を行ってきた彼女は、常人であれば目で追うことは不可能だと断言できるほどの超高速移動を行う彼の姿を、辛うじて捉えることが出来ていた。
実は縮地に対する適性がそう高くない自分。それでも、
(……いや、今は見に徹するべきね。狙うのはカウンター……と、言いたいところだけど──)
自身に向かって蹴撃を繰り出そうとしているリンの姿を捉えた彼女は両腕を前に構えて襲い来るであろう衝撃に備え───再び、柏手の音が響く。
「───ッ!!」
背部からの衝撃──咄嗟に両翼を盾にした事で直撃を防ぐことは出来たが、いつの間にやら宙に浮かされていた彼女は踏ん張りを効かせることが出来ずに蹴り飛ばされる。
──その最中で、ヒナは対峙する相手の能力の厄介さを改めて認識していた。
(──そう簡単にはいかないか。……柏手を打つという動作をトリガーとして発動する、他者の許諾の有無を問わずに強制的に座標の入れ替えを行う能力……今のは衝突の瞬間に私と立ち位置を入れ替えて、かつ私が宙に浮くようにしたと言った所ね)
そこまで思考したところで、彼女はバサリと翼を大きく広げ勢いを殺す。──見据える視線のその先で、再び両手を打ち合わせんとするリンの姿が目に映った。
彼の能力にどう対処するか、
ヒナはリンがいったい何と入れ替えを行おうとしているのか、その対象に自分が含まれているのか、それとも含まれていないのか……打った直後に即座に対応できるようにと全神経を研ぎ澄ませながら目の前の相手を注視し───柏手の音と共に彼が入れ替えたものを目にし、目を見開いた。
入れ替えの対象……それはヒナでも、リンでもなかった。彼が入れ替えたもの、それは彼の足元に落ちていた空薬莢のうちの一つと──
「……まさか、私に向けられる日が来るとは思わなかった」
空崎ヒナの愛銃──"終幕:デストロイヤー"
目の前に転移させたそれを腰だめに構えながら銃口を向け、リンはヒナに向けて銃弾の嵐を浴びせかける。
咄嗟にヒナは羽を羽ばたかせ、神秘の放出を併用し急上昇する事で射線から逃れるが、当然リンは逃がすまいと銃を傾け……もう間もなく弾が切れるというタイミングまで撃てども、空を翔ける彼女に追いつけないと見るや、一切の躊躇いなく手放した。
「……虚をつく分には有効だけど、やっぱりヒナ相手じゃ効果は薄いか」
「そのまま撃ち続けてくれても良かったのだけれど」
「冗談、俺がコイツを使ってもお前ほどの威力は見込めないことは撃ち始めた瞬間に理解できたからな。……なら両手を塞ぎ続けるメリットがない」
「そう、残念。……なら今度は、私が貴方の距離で戦ってあげる」
ゲヘナ最強は再び地に降り立つ。前傾姿勢となった彼女は、その小さくも大きな力を秘めた肢体に"グググッ"と力を込めながら、背部にあしらわれた翼を大きく広げ──
「───ッ!?」
──"縮地+神秘放出+両翼による空気の押し出し"による超高速移動により、赤飛リンの眼前へと躍り出た。
◇◇◇◇◇
貫手が迫る──何時ぞやの時のように懐へと入り込んだヒナの身体に邪魔をされ、リンは柏手を打つことが出来ない。
残り1秒にも満たない時間で彼の臓腑を貫かんと言わんばかりの鋭さで迫る一撃に対し、彼は右足を一歩後ろに下げつつ軸を斜めにする事で紙一重で回避。
己の胴体の真横を通り過ぎる彼女の腕を掴むとそのまま勢いを利用して投げ飛ばそうとし……手を離す。──直後、先程まで彼の腕、その肘関節があった場所へと翼が振るわれた。
「───っぶな!!?」
"ブォンッ"と風切り音を鳴らす様子から、かなりの威力があったことが推測できる。もし直撃していようものなら骨が砕けかねない一撃に対して、彼は冷や汗を流しながらも───楽しそうに笑っていた。
拳を躱され、己へと背を向ける形となったヒナに対してリンは手刀を振り下ろす──右翼と右腕を盾にして防がれる。
左翼と右脚を地面に突き立てるようにして急制動を掛け、くるりと反転したヒナは左翼で地面を叩き押し出す勢いを利用しながら左脚でリンの右側頭部へと回し蹴り──深くしゃがみこんで回避すると共に全身の筋肉をフル稼働させ、抑えが解かれたバネの様に地を蹴り神秘を込めた右拳を叩きつける。
ヒナは両腕を交差させ、両翼を地面に突き立て真正面から受け止める。……普通であれば勢いを殺すように後ろに下がってダメージを最小限に抑えるべき所ではあるのだが……リン相手に限り彼女の行動は最適解であった。
(今ここで距離を離されたら、また能力を使われる)
──それ故の行動。己が身の頑丈さを最大限に活用し、真正面から受け止めた彼女は目の前に立つリンを逃がすまいと防御体勢を解き腕をのば──
「───ッ!?」
──そうとしたその刹那の瞬間……唐突に、自身の右腕が跳ね上げられた。
未だ拳を突き出したままの彼の体勢からして、手で弾かれた訳でも、蹴り上げられたわけでもないことは明白。……にも関わらず自身の右腕に走った衝撃に、空崎ヒナは目を丸くする。
一体何が起きたというのか……その答えを導き出すよりも早く───"パァン"と、柏手の音が耳朶を打つ。
──視界に移る景色が切り替わる
飛ばされた先は、校庭の端の端。自分の現在位置を把握した彼女は即座にリンへと振り返り……遠く離れたその先で、両腕を前に突き出す姿を捉えた。──視線の先で彼は左の掌を広げながら上に、右の掌を下に向け親指と中指で輪を作る。
「──人に向かって打ち込むようなものでもないし、かと言って校庭や学校の備品を殴る訳にもいかないからな」
「ッ!?」
ゾクリと、背筋を貫くような悪寒が走る。
ヒナは両腕、両翼を前面に構え、更には出力できうる限りの神秘を全て防御に回すという彼女らしからぬ全身全霊の防御体勢を取った。そんな彼女に対し……リンは手のひらの上に乗せた銃弾を右中指で勢い良く弾き飛ばす。
指と雷管がぶつかり合うその瞬間───神秘が、青白い火花を散らす。
◇
「……!今のって……!」
「ん、規模は小さいけど間違いない。リン先輩がビナーとの戦いで見せてた……確か、"白閃"って言う現象」
◇
迫る、迫る、迫る──突き進む衝撃は大気を震わせ、辺りに散らばっていた空薬莢を校庭の端へと吹き飛ばしながら、リンの打ち出した銃弾がヒナへと迫る。
着弾まで0.1秒にすら満たないはずの極僅かな時間が、何十、何百秒にも引き伸ばされているような錯覚すら覚えてしまう程の驚異的な一撃を前に……真正面から受け止めるべきではないと判断したヒナは咄嗟に防御体勢を解き、出力できうる限りの神秘を右翼に集中させながら先端を前面に突き出した。
「────ッッ!!!」
進行方向に対して斜めになる様に突き出された翼の上を、ギャリギャリと金切音を響かせ火花を散らしながら銃弾が走る。襲い来る痛みを無視し……半ばまで突き進んだところで、翼を大きく外へと広げ弾き飛ばした。
──しかし、これで終わりではない。
白閃は確かに打撃の威力を2.5乗に引き上げ、もし直撃しようものなら類稀なる頑丈さを誇るビナーの装甲すら容易く砕く必殺の一撃となりうる現象ではあるが……その本質は、別にある。
白閃の本質、それは───己が身に宿る、
一度発生させるだけでも神秘に対する理解度に天と地程の差が生まれる"白閃"という現象をたった今発生させた彼の神秘は──清流のように静かに、しかして同時に激流のような激しさを持って身体中を駆け巡る。
端的に言うならば、彼は今──ゾーンに入っていた。
「クハッ」
滾る感情は、笑い声となってリンの口から溢れ出す。湧き上がる衝動のまま彼は一歩を踏み出し、ヒナですら視認できぬ程の移動速度でもって迫る──
「リンくーん!もう十分経ったよ〜!」
「……………」
……その直前で、幼馴染に模擬戦の終了を告げられたのであった。
「おつかれ〜。いやー、凄い戦いでおじさんびっくりしちゃったよ〜。はいこれ、先輩の模擬戦に付き合ってくれた風紀委員長ちゃんにはおじさんからおしぼりとスポドリを進呈してあげちゃうよ〜」
「あ、うん……ありが、とう?」
(………おじさん?)
重り
⇒ミレニアム製。1つにつき200kg。鍛錬用かつ、蹴撃に重みを持たせるためのもの。
基礎スペックの高いキヴォトスの住民にとっては10、20kg程度では苦にならないため、この重量に。
因みに何故こんな物をつけていたかと言うと……つい最近まで、能力が使えるようになる保証がなかったから。強者と対峙した際に大切なものを守り抜くための努力は惜しむまいと考えた結果辿り着いた脳筋鍛錬法の産物。※ビナー戦の時は当然外してる
……ノノミちゃんは300kgのダンベル用意したりしてるし、この位は良いですよね?
赤飛リンと対峙した際の対策
⇒距離を離すと能力を使われてしまう為、対峙した際は柏手を打つ隙を与えぬように絶え間ない攻撃を繰り出す必要がある。
遠距離からの攻撃だとどうしてもタイムラグが発生してしまうため、必然的に拳の届く超至近距離でのインファイトに持ち込む必要があるのだが……その距離は彼が最も得意とする距離である。
唐突に跳ね上げられたヒナの右腕
⇒呪術廻戦を知っている人なら一度は目にした事がある技
銃弾+白閃
⇒イメージは某電撃姫の超〇磁砲。……原理は全く違うし、そもそも電気使ってないけど。
感想や評価、ここすきなどお待ちしてます|´-`)チラッ
当キヴォトスの先生は ※あくまでも参考程度です。必ずしも結果通りになるとは限りません。また、オネエ、姉御の場合はイオリの足は舐めません
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男
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女
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オネエ
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姉御