……皆さん、やっぱり曇らせがお好きなんですねぇ、作者も好きです。
……あ、今話は前話までと違い、シリアル気味です。
※原作キャラ一部強化のタグを追加しました。
取り敢えず現段階の強化予定はアビドス組と、他一人が決定済みです。
ホシノとの戦いの後、血を流しすぎたことで気を失ったリンは、一面黒に覆われた一室で目を覚ました。
「………知らない天井だ」
そんなお決まりのセリフを口にした後、状況を把握するために起き上がろうとし───ベッドから転がり落ちた。
「いってぇ…なんなんだよまったく……」
そう言って、ベッドに手をついた───はずの、左手を見て気付く。自分の左手………否、肩から先がなくなっていることに。
「………は?なん───」
一瞬、思考が停止しかけるが、すぐに思い出す。
「───あぁ、そっか」
───俺、ホシノに負けたんだったな
リンは、自身の腕がなくなったことに対して───憎しみも、恨みも一切抱いていなかった。ただ──
(───負けるつもりはなかったんだけどなぁ………つよくなったなぁ、ホシノ)
───後輩の成長を喜ぶように、薄らと笑みを浮かべていた。
………………
「おや、お目覚めになられましたか」
感傷に浸っていると、程なくして部屋の扉が開き声をかけられた。そちらに目を向けると、そこには黒服が立っていた。
「あぁ、黒服か。………ユメとホシノは病院に連れて行ってくれたか?」
「えぇ、しっかりと連れて行きましたよ。確認したところ、二日ほど前には両名とも目を覚ましたそうです」
「そっか、二日ほど前……ん?つまり俺って二日も寝てたのか?」
"まじかー、結構寝てたなー"なんて口にするリンに対して
「いえ、リンさんが気を失ってからすでに五日経っていますよ」
──と黒服は告げた。
「…………」
───ガチィ?
………………
その後、思い出したかのように、"食事をよこせ!"と言わんばかりに腹が音を立て始める。
「……クックック、随分とお腹を空かせているようですね。まぁ五日も眠っていれば仕方のないことでしょう。───今何か食べるものをお持ちします」
「え、おう、ありがとう?」
リンがお礼を言うとともに黒服は部屋を出て行った。
(…………え?なんか対応丸くなってね?……違和感ありすぎて鳥肌立ってきた)
黒服のこれまでとは違う対応に、寒気を感じるリン。その後、黒服が持ってきた食べ物に対し、『何か変な物でも入ってるんじゃ……』と思うが、空腹にはあらがえず食べ進める。
カチャカチャ……パク、モグモグ…ゴクン……
「ごちそうさまでした」
「お粗末さまでした」
(………結局何もなかったな)
「ククッ、随分と警戒されてますね」
「今までの自分を顧みてみろ」
おっと失礼、とリンは白々しく言う。
「………まぁ、警戒されるのも無理もないと思いますが、せっかくリンさんと契約を結べるのです。契約相手を害そうなどとは考えませんよ」
"契約"、その言葉を聞き、自身が気を失う直前に黒服に向けて契約内容の草案を伝えていたことを思い出す。
また忘れてしまう前に、契約内容のすり合わせを行おうとリンが口を開こうとし───
「───あぁ、リンさん。契約内容についてですが、リンさんが気を失う前に告げていた内容で問題ないです」
───黒服の言葉に、口を噤んだ。
「なぁ、さっきからずっと思ってたんだが、これまでと対応が違いすぎるだろ。………いったいどういう風の吹き回しだ?」
リンが気を失う前に告げていた内容は、言ってしまっては何だが、比較的こちらに対する利が多い内容だった筈。それなのにも関わらず、すり合わせを行うことなく契約を結ぼうとする黒服に対して疑問を抱く。
「別に、そこまで深い理由はないですよ。ただ──当初予定していた実験よりも、より気になるものができた……それだけのことです。その気になるものを解明するためには、リンさんの協力が必須なので──まぁ、協力していただけるのであれば、契約については譲歩しても良いかと、そう思ったのですよ」
黒服の言葉に対し、さらに疑問符が浮かぶ。当初予定していた実験とは一体何なのか──それよりも優先して解明したい"気になるもの"とは一体何なのか……、いや、それは契約を結んだ後でもいいか
「では、契約書をお持ちしますので、少々お待ちください」
………………
「お待たせしました、こちらが契約書です。……念の為、認識に齟齬がないかを確認してください」
「おう」
リンは黒服から契約書を受け取り、改めて内容について確認する。
1.赤飛リン(※以後リンと記載)は契約期間中、黒服の研究に対して自身の生命活動に支障を来さない範囲で、可能な限り協力すること。
2.契約期間は一年。黒服はリンに対し契約金一億円の支払いを行う。
3.一年経過後も、黒服の研究に協力する。ただし、研究への協力は強制ではなく、また内容に応じて、黒服はリンに対して追加報酬を支払う。
4.ビナーの打破のため、黒服はリンに対して情報提供、及び技術提供を行う。ビナーの打破が成された際には、当機体の所有権の八割を黒服、二割をリンが得るものとする。
5.契約期間中、リンを除くアビドス高等学校に関わるものに対し、黒服からの一切の干渉を禁ずる。
内容をじっくりと確認し、問題ないと判断すると、リンは契約書にサインをして黒服に渡した。
「はい、これにて契約は締結となります。それではよろしくお願いします」
その言葉と共に、黒服は受け取った契約書を懐にしまう。そんな黒服の様子を横目に見ながら、リンは先程抱いた疑問を問うた。
「──ふむ、それでは順に説明致しましょうか。先ずは当初予定していた実験についてなのですが……もともとは、『ミメシス』で観測した神秘の裏側、つまり恐怖───それを、生きている生徒に適用することができるか、という実験を行うつもりでした」
"恐怖を生徒に適用する"という、詳細は分からないながらも、聞くからにやばそうな実験を行おうとしていたことに対して、戦慄を覚える。
「えぇ、思ってたよりもやばそうな単語が聞こえてきたんだけど……恐怖ってなん───」
「───は?お前そんなことをホシノに対してやろうとしてたのか?」
恐怖とは何ぞや?という疑問を黒服にぶつけようとして……、そんな危ない実験を、自身と同じような契約を持ち掛けていたホシノに対してもやろうとしていたという答えにいたり、一瞬にして怒りに囚われる。
仕方がないことだったとはいえ、大切な後輩を傷つけてしまったことに対して負い目を感じていたリンは今、"ユメやホシノを傷つける"ということに対し、過剰なまでに反応するようになっていた。
ありとあらゆる感情をそぎ落としたような表情で自身を見据えるリンに対し
「……落ち着いてください。今は少なくとも、貴方や貴方に関わりのある人物に対してはそのようなことをするつもりはありませんよ」
───と、努めて冷静さを装って、黒服はそう告げた。
「……………今はってのが気になるけど、まぁいいか」
「落ち着いていただけたようで何よりです。……次に、当初予定していた実験よりも気になるもの、というより現象ですね。こちらについてはリンさんもご存じだと思われます」
黒服に言われ、考える。思い当たるものがあるとすれば──
「──ビナーと戦ったときに発生したあの白い稲妻みたいな「ええその通りです!!」の、か……」
「あのような現象は、このキヴォトスに降り立ってからというものの、ただの一度も見たことがありません!あの戦いを観測させていただいていたのですが、籠められていた神秘に対してもたらされた影響は倍以上ありました!さらにはリンさんの神秘の操作性・出力の上昇、総量の微増といい、いったいどのような条件で発生するのか、リンさんしかできないのか、それとも他の生徒であっても可能なのか!解明したくて仕方がないのです!!ほかにも───」
「わかった、分かったからいったん落ち着けぇ!!」
「ンッンンッ…!すみません、お見苦しいところをお見せしました」
「…………いいよ、さっき俺もついカッとなったのもあるし、それでお相子ってことで」
"ありがとうございます"と一言言うと、黒服はビナー戦の際に発生した現象について、リンに何か知っているかを訊ねるが
「いや、俺もわからねぇ……てっきり黒服なら何かしら知ってるもんだと思ってたくらいだし」
「ふむ、そうですか……それでは、まずはあの現象を再現するところから実験を始めると致しましょうか。……リンさんは病み上がりですし、ある程度体調が回復してからにしましょう」
「ああ、そうしてくれると助かる」
話に一区切りがついたと判断して、立ち上がろうとし───左腕がないため手を付けないことに気付く
「──あー、ダメだな。まだ腕があったころの感覚が抜けねぇわ……」
"早く慣れないとな"と思いながら、右手を支えにして立ち上がる。
「それにしても、残念ですね。腕がなくなってしまったこともそうですが、それではもう能力は……」
「ん?使えるぞ?……まぁ確かに、一人では使えないけど」
そんな風に、ケロッとした様子で答えるリンに対し、黒服は"一体どういうことか"、と疑問をぶつける
「んー、直接経験してもらった方が早いかもな。……手を握手するみたいに、前に出してくれ」
「……こうですか?」
黒服が自身の指示通りに手を差し出したことを確認したリンは、手を振りかぶって
パァン!
──と、思いきり黒服の手を叩いた。その瞬間──リンと黒服の立ち位置が入れ替わる。
「な、使えるだろ?」
リンがそう言って振り返ると───手を抑えてうずくまりながら、プルプルと震えている黒服が目に映った。
「……何やってんの?」
「リンさん………私ヘイロー持ちの生徒と比べてそんなに頑丈じゃないので、もうちょっと加減してください……」
「………なんかすまん」
その後しばらくして、ようやく痛みが落ち着いた黒服は立ち上がり
「……リンさん、もしよろしければ義手をご用意いたしましょうか?」
──と、リンに告げた。
「あるなら欲しいけど……いいのか?」
「えぇ、もしかしたら能力が使えるようになるかもしれませんし。………また手を叩かれたくないですから」
「……ごめんて」
"では、お持ちしますね"と一言残し、再び黒服は部屋を出て行った。しばらくして、黒服が戻ってくる──その手には、一本の義手があった。
「それが──」
「はい。……まぁ、こちらの義手は機械製の何の変哲もない義手なのですが、無いよりはマシでしょう」
「ありがとう……金額は「必要ありませんよ」──いいのか?」
「えぇ、……実はリンさんが持ち帰ってきてくださったビナーの外殻がかなり大きく、梔子ユメさんを安全な場所へ連れていくという契約分をいただいてもなお有り余るほどでしたので、その分を買い取らせていただこうと思っていたのです。なので、義手の代金はそこから差し引くので気にしなくて良いですよ」
「そうそう、言い忘れていました。あの素晴らしい現象を見せていただいたお礼として、小鳥遊ホシノさんや梔子ユメさんは無償で病院に連れて行っています。なので、リンさんの左腕は買取という形を取らせていただきました」
──本当に、ビナー戦の前と対応が違いすぎて、リンはなんだか申し訳なく思えてきた。……"もうちょっとだけ対応を緩くしてもいいかな"と考えてしまうほどに*1
その後、義手を装着し──
「じゃあ、試すぞ」
──柏手を打った。結果は……
──能力は、発動せず
「……入れ替わりませんでしたね」
「……そうだなぁ、まあ予想してなかったわけじゃないし」
あっけらかんとした様子でそう言うが、心なしか落ち込んでいるように見える。……長年連れ添ってきて、散々使い方を模索した能力であったが故、そうなってしまうのも仕方のないことだろう。しかし、リンは──
「まぁ、あくまで一人では使えないってだけだし、いっか。……それに、今後もしかしたら使える方法が見つかるかもしれないしな」
──即座に意識を入れ替え、そう言った。腕を失ったのにも関わらず、諦めようとしないリンの姿を見た黒服は
「………私の方でも、何かしら方法がないか探してみます」
──と、気付いたら口にしていた。
(──?私はいったい何を言って……)
「ありがとな黒服、迷惑をかけるが、よろしく頼むよ」
(………まぁ、たまにはいいですかね)
「──お気になさらず、必ず見つかるわけではありませんし。……それに、私が作成した義手で能力を使えるようにするというのも、良い研究になりそうですからね」
そう告げると黒服は部屋を出ていくために、扉に向かって歩き出す。そして、扉をくぐり、閉めようとしたところで──
「あ、契約金の支払いとか、借金の肩代わりとかについては、借金完済の目途が立つまでしないでくれよ。減ってたら二人に俺の裏切りが嘘だったってバレちまうし、そうなったらホシノが気に病んじまうかもしれないからな」
「…………」
スー……ガチャン
「………あれ、聞こえなかったか?」
………………
(──すでに支払ってしまったのですが、どうしましょうか……)
「……過ぎてしまったことは仕方がないですね、気にしないことにしましょう」
そう言って、黒服は研究室に戻って行った。
能力自体は残っているけど、腕が無いから自分一人では使えない、でも相手の手を叩いて発動させる。簡易版無量空処後のあのシーンをイメージして書きました。
>契約期間は一年。
当初の予定では一年経過後、つまり前話のホシノちゃんが真実に気付いた直後に、黒服からの連絡があり「リンはいなくなった」と言わせる予定でしたが、前話の展開が変わったことでそれもなくなりました。
>おっと失礼、とリンは白々しく言う。
ここ何度か誤字報告を頂いていますが、リンであってます。
先日、一日のUA数が5300を超えました!さらにはお気に入り登録してくださった方が900人越え!まさか投稿し始めて一ヶ月もたたずに千人行くのか…!?
今後とも「小鳥遊ホシノの先輩」をよろしくお願いいたします!
当キヴォトスの先生は ※あくまでも参考程度です。必ずしも結果通りになるとは限りません。また、オネエ、姉御の場合はイオリの足は舐めません
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男
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女
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オネエ
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姉御