なのでもしかすると、予定より早く始まるかもしれないです。
──若干……若干?の不完全燃焼な形で模擬戦を終えた二人は受け取ったおしぼりで汚れを拭き取り……それでも足りぬと判断し、シャワーで汚れを落とし綺麗な服に着替え、対策委員会の部室に足を踏み入れた。
……二人の名誉の為にも明言しておくが、確りと時間はずらしている為万が一のご都合展開も起こってはいない。
「わるい、待たせたな。それじゃあ全員揃ったことだし、先ずはさっきの俺とヒナの模擬戦を見て疑問に思ったこと、感じたことを率直に述べてくれ」
言い終わると同時に、一斉に手を挙げる後輩たち。あまりにも勢いよく元気に手をあげるものだから、若干出遅れてしまったイオリは普段の勝気な様子とは真逆に小さく手を挙げる。
……単純に、対策委員会のノリについていけていないだけというのもあるが……知り合って間も無いため、それも仕方のないことであった。
「んー……それじゃあ先ずは客人でもある銀鏡から」
「えっ、私からなの!?……いや、まぁ別にいいんだけどさ。でも、うーん……」
「どうした?……悪いけど俺個人のプライベートについては答えられないからな?」
「そんな事聞くわけないだろっ!……身体を隠しながら後ろに下がるなぁっ!!」
〜閑話休題〜
「さて、それじゃあ改めて銀鏡が思ったことを聞かせてくれ」
先程までのやり取りが嘘のようにあっけらかんとした様子で告げるリンに対し、イオリは既にもう"師事を仰いだのは間違いだったかもしれない"と後悔を抱き始めていた。
(……いや、こうして黙ってても仕方ないよな。何でも良いって言ってたし、一つ一つ確認していけばいいか)
「まず初めに気になったのは、模擬戦が始まる前にちらっと話してるのが聞こえた"5、10、10"って言葉。そこの二人の会話を聞いて分数のことだってことはわかったんだけど、ストップウォッチとかタイマーを使わずに態々自分で時間を数えてたのはどういう意図があるんだ?」
「ふむ……あれは単純に、より正確な時間感覚を身に付けるためだな。時間制限のある何かを使ったりする時とかに、まだ余裕があると思ってたら制限時間を超えて使えなくなって隙を晒す……っていう事態を極力減らすのに役立つんだ」
「それに〜ちゃんとした時間感覚を身につければ、さっきのリン先輩みたいに恥ずかしい思いをしなくて済むひょうにもにゃりゅかりゃね〜」
「ホシノ、余計なことは言わんでよろしい」
最後の最後で気分が高揚しすぎて模擬戦の終了時刻が頭から抜けていた事を掘り返されたリンは、恥ずかしさ故に僅かに顔を赤くしながら後輩の頬をこねくり回していた。
(((言われたくないなら口を塞げばいいのに……)))*1
「……気を取り直して、次は?」
「はい♣︎リン先輩が足に着けてたあの重りってどこで買えるんでしょうか?」
「あれは特注品だから売ってはないな。ただ知り合いに作ってもらったものだから、頼めば用意はできるぞ。……というより、既にいくつか軽めのものは作ってもらってある」
「……因みに重量は?」
「俺が着けてたのは片側200kg、両脚で計400kgだな」
その後も幾つか質問が続き……ふとした拍子に、ヒナが手を挙げた。
「私からもひとつ、聞いてもいい?」
「勿論」
「ありがとう。……さっきの模擬戦の時、唐突に右腕に衝撃が走ったあれは何?貴方の体勢から考えて、あのタイミングで私の腕を弾くのは不可能だったはず」
"実際、弾くような素振りは見えなかった"……そう語る彼女の言葉に、リンは困ったように笑みを浮かべた。
「あれか……正直、狙ってやったわけじゃないって言うか……いや、ある意味狙ってはいたんだけどな?」
"まぁ、原理は理解できてるから説明は出来るけど"……と、彼は部室に備え付けられたホワイトボードに書き込んでいく。
「ヒナの疑問に答える前に、先ずは"白閃"って言うビナー討伐戦やさっきの模擬戦で見せたあの青白い稲妻が迸るような、もしくは火花が散るような現象について説明する必要がある」
「現象……?技術ではなく?」
「あぁ、白閃は基本的には狙って打てるものじゃないからな。……そうだな、ゲームで例えるなら"会心の一撃"やクリティカルみたいなものだと思ってくれたらいい。……発生確率はそれらよりも物凄く低いけど」
「……あれ?でもリン先輩は狙ったかのように出してませんでしたか?」
「対ビナーとの戦いにおいて必ず必要になると思ったからな。死ぬ気で"技"って言えるようになるまで試行錯誤を繰り返した賜物ってやつだ。まぁ、それでもまだ確実に打てるって訳では無いんだけどな……話を戻すぞ?」
「白閃の発生条件はただ一つ──打撃との誤差0.000001秒以内に神秘を衝突させること。銃撃では発生させることは不可能で、必ず自分自身の肉体一つで放つ打撃でしか発生しない。ただし発生した場合、その打撃の威力は一切の例外なく2.5乗される」
「他にも発生した際の恩恵はあるけど、それについては今は一旦置いておくとして……白閃が齎す結果については、皆もよくわかっていると思う」
シロコたちは、先日の戦いにて頑強なビナーの装甲を容易く砕いていたリンの姿を思い出す。
「当然、あんな威力のモノは敵対してる相手でも無い限り直に打ち込むようなもんじゃないんだが……ヒナに向けて拳を突き出した時、"このまま打ち込めば白閃が発生する"って確信したから、意図的に神秘が衝突するタイミングをズラしたんだ。……そしたら打撃の後に遅れて神秘がぶつかって……って感じだな」
「この方法については前から思い付いてはいたんだが、ビナー相手にはそんな事しても意味無いから白閃を狙って出せるようにする鍛錬ばっかりしてて使う事は殆ど無かったんだけどな……今回の模擬戦で対人戦だとかなり有効だって分かったから、今後は使っていくつもりだ」
◇◇◇◇◇
ペンを置いた彼の傍に座っていたユメはちょんちょんと、幼馴染の腕を指先でつつく。
「リンくんリンくん、どんな感じかもう一回見せて貰ってもいい?」
「ん?いいぞ」
リンは差し出された手に向かって、ぺちっと軽いデコピンを打つ。ユメの様子からして、どうやら本当に時間差で二度目の衝撃が来ているようであった。
「お〜っ!ねぇねぇリンくん、私もやってみていいっ?」
「いいけど、ちゃんと加減しろよ」
「もちろんだよ!……えっと〜、確かこうやって……えいっ!」
ユメがリンの手のひらに向けてデコピンを打つと、"ペちっペちっ"と軽い音が二回鳴る。
……あまりにもあっさりと成功させた為に意外と簡単なんだろうかと言う感想を抱くシロコたちであったが……ちらりと聞こえてきたヒナとホシノの会話の内容からして、どうやらそうでは無いらしいと気付かされることになる。
「あんなにあっさり……小鳥遊ホシノ、貴女はできる?」
「いやー……出来なくはないと思うけど、先輩たちみたいにあんな軽い感じで、かつ狙ったタイミングでやるのは無理かも。……単純に神秘を放出したり、固めたりってのとは訳が違うからねぇ」
「そうよね……」
キヴォトス全土を見渡しても比肩しうるものがほとんど居ない、最上位の実力者であるヒナとホシノをして"難しい"と言わしめる神秘操作を容易く行う技量の高さ。
未だその全貌を知らぬイオリたちは、四人との大きな差を実感すると共に……その技術を得る為のお手本となる人物との縁を持てた事に、心の底から感謝した。
「みんな、神秘操作の有用性については…………うん、態々聞く必要もなさそうだな」
「まぁね、あんな戦いを魅せられて気になるなって言う方が無理があるでしょ」
「ん、先輩たちに負けてられない。全員私が追い抜く」
二人の言葉に同意するように、ノノミ、セリカ、そしてアヤネも頷きを返す。眩い輝きを放つその真っ直ぐな瞳を目にした彼は俯き──
「はぁ……本当に、いい目をするなお前たちは。……頼もしい限りだよまったく」
──口角を上げながら、小さくポツリと呟いた。
リンはそのまましばらく俯いていたが……顔を上げると笑みを浮かべながら後輩たち、そしてイオリを見据える。
「厳しいものになるだろうが……間違いなく、今よりもずっと強くなれる事は保証する。──ついてこれるな?」
「「「はいっ!!」」」
「いい返事だ。なら早速───修行開始と行こう」
「因みに名前はもう決まってるの?」
「一応な。名前は──"逕庭拳"」
という訳で、前回ヒナちゃんの右腕に衝撃が走った事象の正体は"逕庭拳"でした。
みんなの強化の方向性は既に決めてありますので、是非次回をお楽しみに!
感想などなど、お待ちしております|´-`)チラッ
当キヴォトスの先生は ※あくまでも参考程度です。必ずしも結果通りになるとは限りません。また、オネエ、姉御の場合はイオリの足は舐めません
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男
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女
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オネエ
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姉御