前話でいただいた感想、みんな柴大将なら気付くよなって思ってて草なんだ。
……でも正直自分も読者だったら、そんな感想を抱いてたと思います。だって柴大将だし。
「いらっしゃいませ、柴関ラーメンです!何名様ですか?……はい、それでは空いてる席にご案内致しますね!」
「少々お待ちください!──大将!3番テーブル、替え玉です!」
「はいよー!」
先生からの電話が掛かって来てから少しして、お客さんが訪れ始める。中には他の学区から訪れているであろう人物もチラホラとおり、"流石柴関ラーメン"としみじみ思いながら、カオナシは店内を慌ただしく駆け回るセリカを眺めていた。
そろそろ来ないと席なくなりそうだなと考えていると、再び店の扉がガラガラと音を立てて開かれ、新たな客が店内に入ってくる。
「いらっしゃいませ!柴関ラーメンで──ッ!?」
これまでと同じように挨拶をしようとしたセリカが、驚きの余り言葉に詰まった様子を見せた。訪れた客の方に視線を向けるとそこには、対策委員会のメンバーと先生が立っていた。
「あの~☆6人なんですけど~!」
「あ、あはは……お疲れ様、セリカちゃん」
「ん、お疲れ様」「お疲れ~!」
「ごめんね、セリカちゃん。約束破っちゃって……美味しいラーメンが食べれるって聞いてつい」
「な、なんでみんながここに……ッ!?──はっ、まさかっ!」
セリカはグリンと顔をカオナシの方に向け睨みつける。*1
「カオナシさん、みんなに教えたわね!?」
『んむぉ?ほはいは』*2
カオナシは手を横に振り、自分のせいではないとアピールする。
「何言ってるかわかんないわよ!」
セリカにそういわれたカオナシは、口の中に残っているご飯を咀嚼し、飲み込んでから再び"自分のせいではない"と否定する。
『確かに俺がここでラーメンを食べてることは伝えたが、伝える前からすでに紫関ラーメンに来るのは決めてたらしいからな、決して俺のせいじゃないぞ』
「そうそう、今回はカオナシのせいじゃないよ~。ユメ先輩と話してたら、久しぶりにここのラーメンが食べたくなっちゃってねぇ。……後はまぁ、セリカちゃんのバイト先といえば、やっぱここしかないかな~って思って」
"たはは~"と笑いながらホシノは悪びれた様子も見せずに告げる。そんなホシノのことを、セリカは恨めしそうに睨みつける。そんなやり取りを続けていると──
「おぉ、アビドスの生徒さんか。セリカちゃん、お喋りはそれくらいにして注文受けてくれな」
──大将に窘められてしまった。
「うぅ…ごめんなさい、大将。それでは広い席にご案内します……こちらへどうぞ……」
………………
セリカの案内に従い、アビドスの生徒たちと先生は席に着く。その際に先生に対してシロコとノノミが「隣にどうぞ♪」という展開もあったが、割愛する。
そんな様を、カウンター席でチャーシュー丼を食べながら眺めるカオナシに向けて、ユメが呼びかける。
「カオナシさん!そんなところで一人で食べてないで、こっちで一緒に食べよ!」
"大将、良いよね?"と、一言断りを入れるのも忘れない。大将もまた、さほど間を置かずに"ああ、構わんよ"と応える。……カオナシに自由意志は無かった。
決められてしまったものは仕方ないと諦め、その手にチャーシュー丼を持って席を移動する。その際、柴大将に小声で"自分の正体については秘密にする様に"と念を押すのを忘れない。
柴大将が小さく頷いたのを確認して、アビドスの生徒たちの元へと向かっていった。
「カオナシさんも来た事だし、早速注文しよっか」
そう言ってユメはメニュー表を机の上に拡げる。そこには、多種多様なラーメンの写真が載っており、そのどれもが見るものの食欲を刺激してくる。
「えっ、どれもすっごく美味しそうなのに、こんなに安いの!?」
初めて柴関ラーメンに訪れた先生は驚愕する。
最近ではどこのラーメン店も、1000円近くする値段設定のところなのにも関わらず、ここは平均して7~800円ほど、店の名を冠する一番安い"柴関ラーメン"に至っては、580円というワンコイン+αくらいの値段で食べられるという事実に目を見開く。
個人経営のお店でこれ程金額が低いのは大変珍しく──まだシャーレに着任したばかりで給料が入っていない金欠気味の先生にとっては、この値段設定はとてもありがたいものであった。
「みんなはもう決めた?」
感動に打ち震えている間に気づけば先生以外の皆は決めていたらしく、慌てて先生も何を注文しようかと改めてメニュー表に目を向ける。
(やばい、どれもすっごく美味しそうで決めきれない──ッ)
しかし、再三言うようにどのラーメンも魅力的すぎて大いに迷う。そんな時に、ホシノから救いの手がさしのべられる。
「そんなに迷うなら、いっそ全種類頼んじゃえば~?」
──訂正、悪魔の囁きだった。
「いや流石にそれは無理だよ!?ちゃんと食べ切れる量にしないと!」
「あっはは、冗談冗談、そんなに真に受けないでよ~。……そうだねぇ、やっぱり最初に頼むならこの"柴関ラーメン"がオススメかなー」
"見ての通り値段が一番安いし、ここの看板メニューだからねぇ"──そう言ってホシノは写真を指差す。
「ホシノちゃんの言う通り、私も最初は"柴関ラーメン"がいいと思うな~。もし他の味が食べたくなったらまた皆で一緒に来たらいいし!」
"ね、みんな!"──そう言ってユメはホシノ達に笑い掛け、皆も笑顔で頷く。勿論セリカにも同意を求めるのは忘れない。
「セリカちゃんも、お休みの日にまた一緒に来ようね!」
セリカとしては"もう来ないで!"と言いたいが、純粋な笑顔で提案するユメに対してそんなことを言える程、非常にはなれなかった。
「………わかり、ました。いつかは分からないけど、その時はついて行きます」
──多感なお年頃故にツンツンとした態度をとってしまうセリカでも、ユメの笑顔の前では無力であった。
………………
注文を終えてから少しして、皆の目の前にラーメンの入った器が置かれる。
先生とユメ、ホシノの前には看板メニューである"柴関ラーメン"──ただし、ユメとホシノが注文したものには、トッピングとしてもやしが乗っている。
ノノミの前には、味のしみ込んだチャーシューがふんだんに乗せられた、醬油味のチャーシュー麺
シロコの前には、透き通るような琥珀色のスープが、まるで芸術品のような美しさを醸し出す塩ラーメン
アヤネの前には、大将が長い年月をかけて厳選し、選び抜いた味噌の濃厚な香りが漂う味噌ラーメン
カオナシの前には、大将がじっくりと骨の髄までうまみを引き出した豚骨と、紫関ラーメンにも使われている醤油をブレンドした豚骨醤油ラーメン
全員にいきわたったことを確認し、ユメの音頭にあわせて手を合わせ──"いただきます"との言葉と共に、目の前のラーメンに箸を伸ばした。
(うわ、すっごい……ストレート麺なのにしっかりとスープが絡んでる。どうなってるのこれ…?)
麺を持ち上げた先生は、自身の目の前に広がる光景に期待を高める。"ふーふー"と軽く冷ました後、箸を口元に近づけ、麺を啜る。
「───っ」
(──なにこれ、おいしっ!モチモチしてるのにしっかりとしたコシがある。それでいて決して中途半端ってわけじゃなくて、すごくきれいに調和がとれてる……知らなかった、モチモチとコシってこんなにきれいに両立できるんだ)
(それに、さっき見てわかってたけど麺にスープがしっかりと絡んで、でも絡みすぎてるわけでもなくて……麺やスープのどっちかに偏らないほんとに丁度いい感じの塩梅になってる)
じっくりと一口目を嚙み締めた先生は、今度は蓮華に持ち替え、スープだけを味わい──
「ほぅ……」
と、感動のあまり息を吐いた。
(──暖かい。ラーメンの温かさってだけじゃない……食べる人のことを思って丁寧に、丹精を込めて作られた思いが──作った人の暖かな真心が伝わってくるような、繊細なのにしっかりとした味わい……)
「……美味しいなぁ」
………………
──先生はその後もじっくりと味わい尽くし、スープも最後まで飲み干した。
「ごちそうさまでした」
(こんなにも美味しいラーメンが、たったの580円で食べられるなんて……また明日も来ようかな)
そんな感想を抱きながら、周りに目を向けると──アビドスの生徒たちとカオナシが、じっと先生のことを見ていた。
「えっと……どうしたのみんな?そんなにジロジロみられると流石の私でもちょっと恥ずかしいんだけど……」
先生は不思議に思いながらそう訊ねると、みな口々に思ったことを告げる。
「……いや~、随分と美味しそうに食べるな~って思ってねぇ」
「うん、。いくら常連とはいえ私たちはただのお客さんなのに、先生が美味しそうに食べてるの見たらなんだか嬉しくなっちゃって」
「ん、言い食べっぷりだった」*3
「ですね☆」
『……』*4
「あはは……美味しくて夢中になっちゃいますよね、分かります」
そんな言葉を向けられた先生はというと──
「……いっそころしてぇ」
赤く染まった顔を両手で覆い、蚊の鳴くようなか細い声でそう呟いた。
………………
食べ終わった後は、みんな揃って大将にお礼を言った後、店を後にした。*5
セリカは皆が帰ったあとも勤務時間が終わるまで働き、辺りが暗くなったころに店を後にする。
(──今日、働きながら観察してて分かった。……いや、変に意地を張って、気付かないふりをしてただけか)
(先生も、カオナシさんも決して悪い人じゃない……ちょっとくらいなら、信じてあげても──)
そんなことを考えながら歩いていたからだろうか……気付けばセリカは、ヘルメット団に取り囲まれていた。
「黒見セリカだな?」
「……カタカタヘルメット団?あんたたち、あれだけボコボコにされたのに、まだ懲りずにこの辺をうろついてんの?」
冷めた目を向けてくるセリカに対して、ヘルメット団のメンバーはイラついた様子も隠さずに告げる──"捕えろ"と
「ハッ、なめんじゃないわよ。あんたたちなんて私一人でも──ッ!?」
ドドドドォォォンッ!!!
"十分よ!"──その言葉と共に駆けだそうとしたセリカに対し、とてつもない爆発と、それに伴う衝撃が襲い掛かる。
(何よ今の……対空砲?っ違う、今の爆発音はまさか……!)
「Flak41改……!?なんであんたらなんかがそんなものを……!」
(──くっ……ダメ、意識が朦朧としてきて……)
そこで、セリカの意識は途絶えてしまった。ヘルメット団の一人が近づき、完全に気を失っていることを確認する。
「……よし、しっかりとコイツを拘束してから荷台に乗せろ」
その命令に従い、セリカをしっかりと拘束した後にトラックの荷台に乗せるヘルメット団。
「よし、忘れ物はないな。──それではランデブーポイントに向かうぞ」
──その言葉と共に、トラックが発進。先ほどまでの喧騒が嘘だったかのように、セリカがいた場所は静寂に包まれていた。
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当キヴォトスの先生は ※あくまでも参考程度です。必ずしも結果通りになるとは限りません。また、オネエ、姉御の場合はイオリの足は舐めません
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